十数年ほど前へFEif世界に拉致られたナニカサレタ男が自分一人の問題からくる戦争に挑むまでの過程とその結末を綴るだけの物語 作:エーブリス
攻殻SACで言うとボクサーの話とかタチコマ/映画監督の話とか、そこら辺みたいな感じです。
残されたものを追って。
数日前、カムイが自らデーモン騒ぎの調査を目的として旅に出た事で、再びマイキャッスルが開かれた。
設備等はリリスが度々手入れを行っていた様で、老朽化等の心配をする事無く運用する事が出来た…一応、龍脈によって作用する世界なので、管理に手間はかからないのかもしれない。
何はともあれ、この異空間に“戻って来た”者達は、設備を懐かしみ、散策なりへそくりの回収なりを行っていた。中にはストイックに武器の手入れをしたり、防衛装置の点検を行ったりする者が居たりと、その反応は様々だった。
――――その様子を見ながら、初めてここに“やって来た”者、ジンは釣り堀の隅で釣り糸を垂らし、何かが掛かるのをじつと待っていた。
釣りとは確かに楽しいものだ…しかし、それは娯楽として行う場合であり、食料調達の観点からは魚市場が恋しくなる程手間が掛かる。いっその事、投網でもして魚達を文字通りの一網打尽にしてやりたい、とジンは考えたものの、自分に投網を扱うスキルが無い事を思い出し嘆いた。
「…おっと」
ぼやいている内に、また一匹釣り針にかかった。
…釣り上げたのはやはり一般的な見た目の、サケ科サケ目らしい川魚だった。
「あぁ…地元の川釣り思い出すな…」
もう長い事帰っていない、故国の風景を思い浮かべながら、吊り上げた魚をポリバケツ*1の中に放り込んだ。これで4匹目である…1匹あたり70cm以上はある事を考えれば、ここではそれなりの釣果だろう。最もジンはそう感じて居ないようだが。
…新入りの彼ではあるが、実のところその存在は大きい。
異界出身、ACパイロット、尚且つ凄腕という目立つような特徴をこれでもかと持っているので当然だろうが、それ以上に“マーシレスの親”という部分が大きいのだ。
当初、ジンは己の息子が活躍していたようで鼻が高いと感じて居た…のだが、皆のよそよそしい様子から訝しみ、スミカが見せて来た一枚の紙きれからすべてを察した。
その紙切れ…というか、張り紙だった縦長の洋紙に大きく書かれた題名は【マーシレスの禁止リスト】。ソレを見るなり、ジンは
「ハァ…何やってんだよ、トウヤ…(というか「彼だけの問題ではない」ってどういうことだ…他にも居るのか?)」
とは言え、何も彼だけが問題児という訳ではないし、強化人間の力は随所随所で軍への大きな貢献に繋がっていた。それが曲がりなりにも集団内で(多少曲りなりにも)受け入れられていた理由なのだろう…。
…今、そのマーシレスは此処にいない。
代わりのように
此処の所、ずっと
あの日…彼を海から引き上げる事を優先していれば何かが違っていたのだろうか?そんな事を、今も考えながら。
「どうだ?釣れるか?」
「ん?
…ああ、オーディンか。ご覧の通りさ」
「どれどれ?
…おー、結構釣れてるな!流石は鋼すら斬り裂く鉄騎を駆りて敵を悉く滅する、旗めく黒い翼の――――」
「やめろやめろやめろ、共感性羞恥で俺まで恥ずかしくなってくる!
…俺としちゃ、時間をかけた割りには4匹だけ、なんてのはショボ過ぎやしないかと思うがな。保存しようにも、魚介類は足が早いしなぁ」
「だからって、網なんかで文字通り一網打尽なんかにしたら、釣り堀の魚が居なくなるだろ。
それだけはマズイって」
先ほど自分が考えていた事をすっぱ抜かれた上に、正論で論破されてしまい、ジンはぎくりとほんのちょっぴり心臓を冷やした。
「そう…だな。
野に獣がいなくなれば猟犬は無用になる、だから猟犬は獣を狩りつくすのを避ける…そういう事か」
「何だソレ、恰好いいセリフだな」
「ああ…。
愛読書からの引用だよ。銀河英雄伝説って言う」
「銀河…英雄伝説!?
滅茶苦茶血が騒ぐ名前だな!」
「内容以外と渋めだぞー」
オーディンと会話をしながら、ジンは「そろそろか…」とつぶやきながら、釣竿を畳み撤収する準備を整えた。
「あんまり生魚を常温に放置するのもな…。
――――オーディン、悪いが食糧庫まで案内してくれるか?まだちょっと覚えられなくってな」
「おう、いいぜ」
ジンはオーディンに連れられて食糧庫まで向かった。
「しかし、傭兵のおっさんかぁ…」
「知り合いに似たようなヤツが、他に居たみたいな言い方だな」
「その、知り合いって言うか…地元の友達の親父が正にそうなんだよ。
昔っから、いつも筋肉痛が遅く来る人でな。雰囲気もジンに似てるんだ…傭兵特有の感覚ってやつかな?」
間違いなく少女を追いかけていた男*2の事だろう。
「あぁ。
…実は筋肉痛が遅く来るのに加齢は関係ないらしいぞ」
「そうなのか?
まあ、ともかく…そのおっさん、どういう訳か上流貴族のお嬢様と結婚出来ちまってさ」
「本当にどういう訳だ!?
…って言ってもここの人達――――それこそオーディン、お前もそうだろう?」
オーディンの妻はエリーゼである。
しかし、よくよく考えればオーディンもまた別の王族の血を引く者であり、それを考えると立場の差のギャップは本来無いモノのようにも思える。
「ああ…確かに、そう言えばそうだった。
思えば俺が昔居た自警団も、此処みたいな雰囲気があったからなぁ…何と言うか、立場とか生まれの差とか、実はそれほど気にしないと言うか…」
「生き物の収斂進化みたいな話だな。
――――待て、という事はオーディン。お前…その、王族の配偶者って事だよな?」
ジンは今更オーディンの立場を思い出した。
「ああ、そうだな。
…あ!だからって今更口調改めなくてもいいからな!?」
「い、いいのか?」
「俺だって正直丁寧な話し方されるのは慣れてないし、カムイ様とかだって態々気にしねーよ!」
実際、相手が誰であろうがタメ口を使う者はマーシレス以外にも数人存在する。
とは言えそれらは精神の発達に何かしらの問題があったり、そもそも人外であったりと、それなりの訳があるのだが…まあマーシレスも似たようなものだ。
「そう、か…」
「大体マーシレスの親父だろ?
もっとこう、堂々とタメ口使っても良いと思うぞ?お前の物腰低い敬語、気味が悪いって訳じゃ無いが…甲冑兵が天馬に乗っているかのような違和感があるんだ」
「本当に本当に、一体全体何をやって来たんだ」
この一言で彼は更に頭を抱えた。
己の息子は、一体全体何をしでかしてしまったのか?引っ込みかけていた不安がぶり返し、ジンは全身から冷や汗が噴き出すのをリアルタイムで感じた。戦場でマズイ状況に出くわした時ですら、こんな感覚には陥らないと言うのに…と。
ある意味、碌に構わなかった自分の落ち度を抉り返されているようで、彼はこれ以上深堀りする事が出来なかった。もしも此処でジンがマーシレスの「裏返しグラビティ」や「お前の法衣がギャグ」等に代表されるレオンへの発言を聞いたら卒倒する事間違いない。
何はともあれ、大分脱線してしまった話の軌道修正を行う事にした。
「それで…その、令嬢と俺の同業者との間の子…つまりお前のダチはどんな感じなんだ?
父親を反面教師としてしっかり育ったのか?」
「いやぁ、それがこう…あいつもあいつで賊っぽいというか…なんかこう、髪がこんな感じにそり立ってて、「んだとコラ」ってことある毎に言ってる…」
「ヤンキーかよ!
オラつきまくってんじゃねえか!どう見たってその親父の影響だろうが!」
ジンはオーディンの色々意外すぎる友人に思わず吹き出し、ダハハと笑い声をあげた。
「それがな?その母親の方も母親で、所々暴力的で、昔話した時は「いざという時は日傘で賊の股間を殴り飛ばしてやる」とか言ってた事もあるんだ」
「あー、バーサークお嬢様であらせられたか。
そんな両親の元で育ったもんで、ソイツも腕っぷしが…」
「いや、全く強くないぞ。
寧ろ運動音痴で…趣味もバイオリンとか紅茶とかって具合だ」
ジンはこの返しに思わず「ブッフォ」と噴き出した。
「え?何?何?何?
小指立てんの?ティーカップ持ってる時」
「あー…そう言えば立ててたな」
「こう?」
「いや、もっとピーンと」
この時オーディンは「やっぱりマーシレスの親父だな」と、ジンの言葉の節々から感じて居た。やはりどんな環境であれ、親子である限り受け継がれる要素はあるのだろうか?
そうこうしている内、二人は食糧庫にたどり着いていた。
「…ここだ。
因みに魚は右奥の3段目だからな」
「ああ、ありがとう」
「それとマーシレスの事はあんまり心配すんなよ!
あいつみたいなの、此処じゃそんなに珍しくないから!」
オーディンが去り際に言った言葉に、やはりジンは困惑したような表情で「他にも居るのか…」と呟き、食糧庫の中に入って行った。
…因みにこの言葉の真髄を理解するのは、ゼロがカムイ一行に再び加わる後の話である。
なんかこう、普通に喋らせるとオーディンの血を騒がせるタイミング見失う。という訳でオーディンがジンに対して普通の喋り方多めで話してたのは、本編中にもある様にジンの共感性羞恥が彼是って事でオナシャス。
それと、今初代ナニカサレタ男を見ると「うわぁ」ってなる所が多いんだけど、未だにマーシレスとレオンのやり取りで、マーシレスに「お前の法衣がギャグなんだよ」って言わせてた瞬間の昔の自分(の文章)だけは好き。
ナニカサレタ男のマーシレス周りの人間関係表とか、そういう過去の振り返り的なの欲しい
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ほしい
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いらん
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ガンイージ(無効票)