十数年ほど前へFEif世界に拉致られたナニカサレタ男が自分一人の問題からくる戦争に挑むまでの過程とその結末を綴るだけの物語 作:エーブリス
――――それはスミカが複数の煩雑な手続きの為、一度研究機関に戻った時の話。
件の手続きが終わった後、所属する研究室の同僚へ、持ち出したレーザーライフルの返却を兼ねて挨拶に向かっていた。
「そうか…今度はカムイ王にお呼ばれしたのか。
…君は何処を取ったって、僕らが束になっても敵わない程優秀だからね。当然と言っちゃ当然か」
「言い過ぎ、流石にあんた等が一斉にかかって来られたら手も足も出ないわよ。
それにカムイ様とは昔からちょっとした面識があったの。つまり今回ばっかりは完全にコネよ――――あ、これまだ使う?」
施設の物置にて、彼女はウィンチェスターM1895を1本手に取り、同僚に問いかけた。
「それは…とっくの前に研究が終わったヤツだね。設計図も在庫も十分だから、好きにして構わない。
――――所で、この非実弾式射撃兵装、細部が変わっているけど…もしかして壊した?」
「ああ、ソレね………えっと、その筋の専門家が見てくれたんだけど、どうにも粗悪なパーツが使われてたらしくて。だから
因みに、その筋の専門家とは祖父のジンの事である。
世紀末のような世界に住まう彼をして、「逆に希少性が高い(程に粗悪なパーツが使われている)」と言わしめる酷いパーツだったらしく、最悪の場合は機関部が暴走してエネルギーが四方八方に飛び散る所だったようだ。
「それは有難いし、君の事だから疑いはしないが…せめて許可は取ってから行うべきだよ」
「許可は取ったわよ、事後に。
その為のこの書類なワケ、クソが。全く…お陰で進んでなかった研究まで進んだ訳なんだし、もう少し考えてくれてもいいのに、あのクソレールキャノン伯爵め…」
「また聞かれるよ…。
確かに、伯爵のレールキャノンへの惚れ込み具合は少し問題だと思うけれどね」
どうやら部署の責任者に少し問題がある様だが…まあ、問題が悪化したその時にどうにかなるだろう。
ここで同僚が「そう言えば…」と、ある話を切り出した。
「知っているか?
また情報部門にやたら多額の支援金が振り込まれたらしい」
「情報部門って…確かネットワーク関係を扱ってる研究室でしょ?
あの時、誰も興味持たなかったクセに」
スミカの言う様に、この世界においてのインターネット関連の技術は、技術の内容自体の先進的過ぎるが故の煩雑さそしてソコからくる実用化の難しさ、機械工学系統に比べた外見的特徴の地味さ…そして何よりもプレゼンターの手際の悪さから、貴族や資産家に対して碌にPRが出来ず、出資者にそれ程見向きされなかった技術分野だ。
だと言うのに、何処かの誰かがいつも出資している。
その誰かは余程頭が良くてインターネットの特性をよく理解したか、若しくは逆張りをしたがるどうしようもないバカかのどちらかだ。そう、研究機関の誰もが思っている。
「僕としては、道楽者の金持ちが物珍しさで、いたずらに金を放り込んだようにしか見えないのだけれどね。
全く、迷惑な話だ…まるで僕たちの研究が対して意味がないように思われるじゃないか。今一番必要とされてる分野だぞ?後急速な先進は使う方を置いてけぼりにして…」
「アンタいっつも言い過ぎなのよ、オーバーリアクションって言うのソレ。
後、国の方が機甲兵部隊とかでアーマードコアを重要視している今はウチの部署も安泰よ。クソ忙しいけれど」
――――というのが、約1日前の話である。
そしてスミカがキャッスルへと戻った現在…。
「――――って事があって。
ねえ、おじいちゃん?聞いてる?」
「っ、ああ…レールキャノン伯爵って本当に居るんだなぁって」
「え、ソコ?」
少なくとも、ジンの思うレールキャノン伯爵よりは今の所、まだマシな部類だろう。
「いやー…インターネット技術の有用性の認識、ね。
第一、なんだってプレゼンをミスるんだ?何を言ったんだ…単に「安楽椅子に座ったまま、世界中の書物や昨今の情勢を見る事が出来る技術です」と言えばいいだけだろうに」
「それがピンと来なかったんでしょ…後プレゼンターが相当可笑しな事言ったとか。
若しくは通信技術との差別化に失敗したとかじゃない?そもそも技術的に実用化が難しいって話だったし」
音声のみの通信は現在、有線通信技術が学園都市内に、無線通信技術の一部が軍に限定的な運用がなされている。正直、この世界は声を遠くに届けられる以上の利便さは今の所求められていないようだ。
或いは、ただ単にインターネットの概要が(彼らにとって)浮世離れし過ぎたものだったからか。
「――――けど今は、誰かが世界中をネットの海で繋ぐ事の有用性と現実性に気が付いて、先行投資しているらしいって話だ。
それでスミカちゃんは…その“誰か”を知りたいんだろ?」
「えぇ、まぁね。
別にどうしても知りたいって訳じゃないけど…ここまで話題にしてたら、少し気になるわ」
「そっか…まあ、少し考えてみようか。
一番得する奴が事件の真犯人って奴で」
ジンの一言の後、スミカは「うーん」と唸った。
「情報伝達能力の進化なんて、人類の大多数が得しそうだけど。
…その中でも、将来的な思惑がしっかり描けるような人間でしょ?それでもまだ絞り切れないって」
「だろうな。
というわけで、多分この問題は金の道筋を辿る以外に捜索する方法はほぼほぼ無いってこった」
「そういう時間、私達にあるわけ?」
「無いな。
トウヤの捜索もある…って事で、この話はここでお終いさ」
この一言の後、ACの整備に用いていた工具類の片づけを始めた。
マーシレスの捜索を決意し、それをファットマンに相談するにあたって幾つかの整備用具と予備パーツ等はどうにか持ち込んだのだが、十全とは言えず今後の補給も望めない。弾丸もこの世界では限りがあり無駄遣いは許されない状況だ。
故に数日前の戦闘でヒートハウザーを使い過ぎたのは正直な所、非常に危うかった。
「あの…ジンさん、今いいかい?」
ジンが全身にこびりついた機械油と汗を拭い終えた時、即席ガレージにカムイがやってきた。
「!、これはこれは陛下。
あー…何かご依頼が?」
「そこまで重要な事でもないけれどね。
でもこれは恐らくジンさんと…それとスミカが適任だと思うんだ――――」
カムイはこの後、指令の内容を述べた。
――――これが、約半日ほど前の出来事であり、今現在暗夜領内の屋敷…その庭を真っ直ぐ歩いている理由である。
「しっかし俺に貴族への対応の仕事が回ってくるなんてなぁ。
トウヤの事とは言え、宮仕えしてる人員も居るだろうに」
「使いの立場はそこまで必要ないんじゃないの?他国とは言え、同盟国の国王名義で来ている訳だし。
それにおじいちゃんなら下手にトラブルも起こさなそうだからね」
「…これがバレない限りは、ね」
そう言ってジンはスミカに、隠し持っていた装飾の華美な旧式の半自動拳銃をちらりと見せた。
「観賞用じゃん。
火力足りるの?」
「装飾なんて良くも悪くもガワだけなんだ。
元々どこの将校が使っていたのか知らないが…必要分の火力はあるさ」
一見、見た目以外になんの意味もない装飾も、いざバレて状況が不味くなった場合も国王からの賜り物と言えるだろう。というより実際賜り物である。
寧ろ怖いのは、トグルアクション故の動作不良の多さである。
今回二人が派遣された理由、それはこの屋敷の主の領地周辺にて発生した黒衣の騎手――――つまりマーシレスと思われる人物の目撃情報、その調査だ。話によれば、偶々ここ周辺を通った行商人が、この屋敷から黒い外套姿の誰かが“異様に早い駿馬”に乗って飛び出していったとの事だ。
「黒衣の騎手が、父さん…って言うのは、クリムゾンさんからの報告で確定しているのよね」
「らしいな…。
――――あ、所でクリムゾンって人は、その…騎士なのか?」
「ええそうよ。
シュバリエ公国の…今は騎士長だったかしら」
「女性?」
「そっ。
派手なの好きっぽいから、見れば分かると思う」
「ああそうか…女騎士で、クリムゾン…」
何を想ったのか、彼は孫娘の前で…事もあろうに、鼻の下を伸ばす。
スミカからは角度的に、それが見えない。
「…?
何かあったの」
「っ!ああ。
…いや、気にしないで」
ジンもかなり助平のようだ、
そもそもこのやり取りをする必要あったんだか無かったんだかよく分からない。
何はともあれ、もう屋敷は目の前だ。
使用人に案内されて庭を通り過ぎ、今にも大きな大きな扉は開かんとしている。ジンとスミカは今一度、身だしなみを整えた。
国王の使いとは言え二人の身分は一応平民相当。
対して、向こうは暗夜有数の大貴族である。
「ヴァール卿、カムイ王の使者がお見えになりました」
「あぁ、ご苦労。
――――よく来たね二人共。話は聞いているよ…さ、立ち話では疲れるだろう。入りなさい」
出てきたのは貴族…と言うよりも戦士に近い、派手で分厚い服装の上からでも分かる程筋肉質な大男だった。
騎士の家柄ならばこの手のマッシブ体系は珍しくもない。
だが…このヴァールという貴族は文官よりの貴族であると聞いていた。
そのために、少なくともスミカは面食らってしまった。
いつその筋肉を使うつもりだ…と。
■ ■ ■ ■ ■
~暗夜某所にて…~
それまでは数ある防衛拠点の一つに過ぎなかったこの砦も、今や軍の重要な情報集積地として機能している。
暗夜王子レオンは、先んじて到着していた臣下ゼロに案内され、映像情報を保管している一室を訪れた。
「それではレオン様、暫しお待ちを。
――――あの区画の映像は?」
「こちらです、隊長。
少し時間が掛かるので」
そう言って、管理者は覚束ない手つきで映像装置の操作を始めた。
普段は装置の取り扱いに慣れた、他の者が居るらしいのだが…間が悪い事に、その者は出払っているようだ。
「…ゼロ、カメラの成果は無かったんじゃないのか?」
「ところがまた映像を精査した所、不審な点が幾つか見つかったようです。
俺もまだ確認していないので証拠として十分かどうかは謎ですが…」
「分かった。
一先ず確かめよう…あの鴉男、壊す事と隠す事に関しては一流だからね」
二人が話し終える丁度その時、プロジェクターの準備が終わり何時でも再生できる状態に至った。
「準備終わりました、いつでも再生できます」
「ありがとう。
流してくれ」
「はっ」
管理者の操作で、画面が動き出した。
――――最初の映像に収められていたのは、屋根の瓦が不自然に割れる瞬間だった。
「これは…」
「一応、貧民街の最深部で撮られたものですが…いくらなんでも劣化で割れたとは思えませんね」
「次の映像です」
――――その次は、壁に一瞬だけ突き立てられたナイフが現れるというものだった。
ほんの一瞬なので見逃しそうになるが、確かにその瞬間にはナイフが存在し…コンマ数秒後には何も無かったかのように消え去っていた。
この世界ではまだ広まってはいないものの、内容は「心霊映像」と呼ばれるソレそのものだった。
「悪趣味な…」
「現地調査はしたのか?」
「ええ。
結果は………はい、どうやら映像と同じ個所に痕跡と思われる溝があったようで。ナイフ本体は抜き取られたのか見つかりませんでした」
どうやらナイフが刺さっていたのが現実のようだ。
「抜いた者の特定は?」
「現在行っております。
…次で最後です」
そして3つ目の、最後の映像…これが最もショッキングだった。
――――何も無い所に一瞬、暗くて大きな目を持った頭部が現れたのだ。
「ッ…!」
「…ハイドラの、手先なのか?」
「そう思われたのですが…旧透魔兵は僅かに紫色の輪郭が浮かび上がるので、恐らく別物かと。
――――中にはこれと前二つの不可解な現象を纏めて“悪霊”と呼ぶ者も隊にはいるようです」
「悪霊…」
■ ■ ■ ■ ■
屋敷の窓から見下ろすのは、広くそして整然とした街の風景。
ヴァール自治区と呼ばれるそこは、ちょうど数年前より始まった再開発計画が順調に進み、より近代的かつシステマティックなカタチへと変貌した。
「――――で、この節目の日にようやく異界技術の試験的導入が始まったのさ。
もう少し早く導入する事も出来たが…私の家は堅実さがウリでね」
「成程。
しかし何故、再開発を?」
「何故…か。
そこは“領民のため”とバッサリ言い切るのが理想の領主なのだろうが…正直な所、“自分のため”というのが本音だな。だって便利だろう?より早く、効率的に、欲しいものが欲しいだけ届いて、更に代金も余分に払う事無く手に入るんだ。それで皆も大助かりだと言うのだから文句も言われまい」
ヴァールは伸びをしながら「税金かけ過ぎて行政処分とかメンドくさいし…」とつぶやいた。
…ここまで長々と世間話をしていたが、そろそろ本題に入らなくてはならない。
「…ああ、無駄話が長くなってしまったね。
ええと、なんだっけ――――ああ、件の“黒衣の騎手”の話か」
「はい、ヴァール卿。既に耳に挟んでいるとは思いますが…」
それまで話していたジンに代わり、今度はスミカが概要を語り始めた。
この時、ふとジンの目には珍しいものが映った。
ヴァールのコレクションであろう、幾つかの生物のはく製及びに標本である。確認出来た生物は土蜘蛛、大蝙蝠、蠍、蟷螂、カメレオン、雀蜂等である。その背後には目立たないようにウツボカズラが栽培されている。
これらの動植物は何処から来たのか?標本の中には暗夜の環境では間違いなく育たないような生き物もいる。
とは言えここら一帯は――先ほども話していたように――物流の要のような場所だ、きっと別の国か…或いは異界から流れて来たものを取引で手に入れたのだろう。
「ふむ…そうか、例の“審判の季節”の…。
ウチに立ち寄ったという事は、何か必要な“物”があったのだろうか?」
「確かにそれが一番あり得る話ですね。
例えば弾薬等は数を必要としますので、単価は安い方が…」
「おじいちゃん、3年前から許可のない銃弾の売買取引は違法なのよ。暗夜じゃ」
スミカはジンの予測を遮ったが、そこへヴァールが「あり得ない話ではない」と、ある一つの“法の抜け穴”を示した。
「…実は、暗夜王国は全ての弾薬に流通制限を設けている訳では無い。
代表されるのは、散弾銃に用いられる弾…所謂ショットシェルとか言う奴だ。確か、あの、ええと…金属ではない、軽くて加工しやすいという」
「プラスチックですね、正確には熱可塑性樹脂。
製造については現状、大陸及び周辺の諸公国でも確立されていませんが…加工そのものは広く知れ渡っています」
「ああそうだ、プラスチック。
で、そのショットシェルには制限が無い、とまでは行かないが其処らの拳銃、狩猟銃、歩兵銃の弾丸に比べれば全く緩い方だ。とは言え規制が緩いのには相応の訳がある」
「絶対数の少なさ…ですね」
ジンが言及したように、この世界にはかの戦争の影響で大量の銃火器が流出したものの、大半はアサルトライフルやボルトアクションライフルそしてハンドガンの類であり、どういう訳か散弾銃の流出は極端に少なく、一部では「(その数は)100はおろか50にも満たない」と言われる程だった。
そのあおりを受けて、ショットシェルもまたこの世界では貴重品であり、人々の間ではトロフィーの一種として「使うもの」では無く「飾るもの」という認識でまかり通っているのだ。
そんなものを大量購入しては、いくら安売りしていたとしても簡単に資金が吹っ飛ぶし、何より足がつく。
「…だが、公開されている情報によれば、かの事件の現場ではショットシェルが大量に見つかっているのではなかったかね?それも更に貴重な大口径仕様を…。
何はともあれ、良ければこの街の流通情報を見ると良い。町の“ディーウィーズ・バーグ”と書かれた看板のある建物へ、これを提示すれば見せてくれるだろう」
そう言って、スミカへヴァールから1枚のカードが手渡された。
「合言葉は「時計職人に紹介された」だ。
安全保障上、カードとセットにしているのだよ…二重安全措置という奴だ」
「ありがとうございます。
それでは…お忙しいところ失礼いたしました」
「(時計職人…ディーウィー、ズ…)態々ありがとうございます、ヴァール卿」
「構わないよ。
…所でジン君。さっき彼女、君の事“おじいちゃん”と…」
「えぇ、っと…少し、というより、ものすごぉく複雑な家庭環境でして…」
「あっ…。
わかった、止めておこう。一先ず此方からも情報集積場への連絡は入れておこう」
「重ね重ねありがとうございます。
では…」
ジンは深く頭を下げた後、部屋から退出した。
…その後、ヴァールは執事とアイコンタクトを取った後に電話の受話器へと手を掛けた。
「――――私だ」
□ □ □ □ □
~白夜、テンジン砦にて~
「!、おいあんた、待ってくれ。
それは拳銃用の45ACP弾じゃない。やや似てはいるがコイツは一部歩兵銃に用いる458SOCOM弾だ。しかし参ったな――――マトイ、いるか?」
「何かあったの?」
「特殊弾薬が出ちまった、何か臨時の籠とかあるか?」
「そうね…。
――――とりあえず、この箱を使いましょ。少し大きいけれど」
現在、カムイ一行は白夜のテンジン砦にて補給を行っていた。
この手の采配に長けたツバキとマトイの親子が指揮系統の中心に立ち、各種物品に専門的知識のある者がハブアンドスポーク形式で指示を出していた。
「それにしても、あなた一体どこで銃の知識を身に付けたの?」
「異界の、あちこちだ。
理由は…とりあえず「今後を見据えた活動」って事にしておいてくれ」
「…?、分かったわ。
――――あ、非実弾型射撃兵装。ここにもあったのね」
「うわぁ、マジか…レーザーとかプラズマは専門外だ。
寧ろこういうのはスミカが一番詳しいんだけどなぁ」
グレイが頭を掻きながら、遠い空を見つめた。
…結局の所レーザーライフルは専用の箱に詰められた状態だったので木箱等の容器を用いず、精密な扱いを求めるような表記も見られなかった為、異界技術の剛性を信じてそのまま荷台に詰め込まれた。
「これで全部か。
後は…帳簿の回収、ね。面倒臭ぇ…」
グレイがぼやくその後ろで、倉庫の奥から荷物ごと運ばれたのであろう1匹の
□ □ □ □ □
「ねえ、おじいちゃん。
思ったんだけどさ…ヴァール卿、多分情報部門に出資した貴族なんじゃない?」
「確かにあるっちゃある話だなぁ。何せこの…っと、スゥー…資料の山だからな。
Excelか何かで管理した方が断然楽だろ」
帳簿等の資料が積まれた木箱を持ち上げたジンは、痛めたのか腰をさすった。
結局二人はディーウィー・バーグ内の全資料を調べたものの、目ぼしい情報は無かった。
ショットシェルはアクセサリ目的として1個や2個の流通が偶にあった程度であり、他の特殊弾頭も目ぼしいような取引は見当たらなかった。一応弾薬以外の物品にも注目してはみたが、結果は同様である。
「ここ来る前の聞き込み調査でも大したコト分からなかったし…あの情報ガセなんじゃないかしら」
「目撃者が一人ってのも少し怪しいよなぁ…見間違えたんじゃねえか?」
こうは言うものの、元より当たればラッキー程度の調査ではあるのは百も承知だ。
「…ねえ、実は用があったのは屋敷の方だったりしない?」
「あー、あぁ…どうなんだ?
確かに目撃地点は屋敷周辺だが…しっかし、ガサツで詰めの甘いトウヤがここまで隠せるか?」
「そのガサツで詰めの甘いトコが出たのが目撃証言だったりね」
これ以上の釣果は見込めないとして、二人は取り出した資料をすべて元に戻し、資料の管理担当に礼を言ってディーウィー・バーグを後にした。
…自治区内を歩く途中、スミカは何気ない質問をジンに投げかけた。
「ねえ…あのさ、父さんって、子供の頃どんな感じだった?」
「トウヤが?
そうだな…物静か、かな?誰かと話すよりも、一人で本を読んでいるのが好きな子だった」
「あははっ、根暗ってコトじゃん。
ホント、まんま私じゃない」
「そうなのか?その割には随分話せているだろ」
「私の場合…メンドクサっ!って思ったらそのままゴリ押して、突っぱねて、そのまま一人になっちゃってるタイプ。
特に傭兵やってた頃はね。カムイ様の所に入ってからは協調性とか大事だったし、そこまで酷くはないつもりだったけどね」
でも傍から見たら違ったかも…と、彼女は独り言ちた。
「スミカちゃんも傭兵やってたんだ…」
「そ。本当はやらなくても良かったハズだったんだけど…。
ねえ、秘境については聞いてる?」
「ああ…一応、トウヤから色々と。
時間の流れの違いとか」
「よかった、話が早くて。
…私が住んでた秘境ね、どっからどう入ったんだか、盗賊にやられちゃったの…父さんも、母さんも、見てなかった隙に」
その一言によって、空気が重く暗く引き締まった。
「で、住む所も無くなって…それで稼ぎが必要になったからってだけなの傭兵やってたのは。父さんもおじいちゃんもやってたから、家業を引き継いだくらいの気持ちね。私が幸運だったのかもしれないけど、聞いてた話よりも親切な人が居たからそこまで苦でも無かったわ」
「そ、そう…か」
話している内、いつの間にか街を出ていた。
辺りが暗いのは暗夜なので当然だが、既にかなりの時間が経ってしまっている。
「でも私…あの日から、ずっと壊れたままなの」
「壊れッ。
――――――――スミカちゃん、下がって」
ジンが突如、ただならぬ気配を感じ取り咄嗟にスミカの前へと立った。
二人が居るのは街はずれの森の中…障害物が多いだけ、人数差はある程度覆せるかもしれないが…それは逆に自分らの視認性も悪い事を意味する。
互いにそれぞれの得物(拳銃、触媒杖)を手に、倒木に身を潜めて様子を伺った。
「4、5、6――――大体17人って所ね」
「いや、18人だ。一人木々に扮して隠れてやがる」
「ギリースーツ、って奴?」
「いや、木の皮を撒いてるだけだ。
雑だが…気が付かなかったらやばかった」
ジンは手に予備の弾薬を持ち、敵の人数と見比べた。
「参ったな…デスクワーカーがボーチャードピストル一丁でどうしろと」
「デスクワーク?どこが?」「椅子座って戦ってる」「デスクって机でしょ?」「似たようなもんだよ」
彼の電子顕微鏡並の拡大解釈はさておき、状況はかなり不味かった。
二人の得物はそれぞれ火力や連射速度、弾速等のどれかしらに致命的な弱点を抱えている武装。対して相手は確認できただけでも5.56㎜のショートカービンを4,5人…そしてショットガンが二人か三人程度と火力面でも圧倒的な差があった。
先ほどまで、探しに探していた
「うっそ、アイツら散弾銃持ってる…」
「何処で仕入れたんだ、何処で…!
ともかくアレに近づくのはマズ過ぎる、距離をとり続けよう」
しかし、ショットガンは有効射程距離だけでも約50m程度はある武器だ。ゲーム等では会話するような距離でしか効力がない場合が多いものの、実際はゲームにおけるアサルトライフル程の交戦距離でも戦える武器なのだ*1。
――――そのショットガンが、ついに火を噴く!
飛び散った複数の弾丸のうち幾つかが二人の傍に立つ樹木へと衝突する。その時、ジンは妙な感覚を覚えた。
「…?(待て、いくら何でも破壊力が無さすぎる…この音は絶対バックショット弾じゃない、バードショットか…!)」
既に語るまでも無いだろうが、バックショットとは鹿等の中型生物及びに対人に用いられる、6㎜程度の鉄球が6~9粒ほど込められた種類のショットシェルである。対してバードショットは、鳥類や小型生物等の狩猟に用いられる、5㎜かそれにも満たない様な粒を無数に込めた実包だ。
無論、それはバックショットに対して破壊力は断然少ない…というかそんな破壊力を持っていたら鳥の肉が吹っ飛んでしまう。一粒あたりの貫通力は120mほどあるがあくまで皮膚貫通力である。
とは言え、無数の細かい鉄くずを飛ばすので、至近距離で撃たれようものならそれはそれは悲惨な事になる。
「(とは言え結局問題はショートカービンと、スナイパーの方なんだよなぁ…不意を付くしかないな)スミカちゃん、確か魔法使えたよね?」
「ええ…何なら姿や音を消すようなヤツもあるけど、音消す方はちょっと光出て位置がバレるし、姿を消すの方も多分この中だと音でバレるわ…それに姿消すと言っても半透明だし」
「あるんだ、姿消える魔法…取り敢えず音の方は大丈夫だ、俺が攪乱する」
「分かった。
私の魔法、撃つたびに位置が露呈するから援護は難しいけれど…出来るだけやってみる」
「ありがとう…でも無理はしない様に、本当は透明になって何処かに隠れててほしいけど」
そう言ってジンは右手に拳銃、左手にダガーを持ち行動を開始した。
どうやら相手は――装備こそやたら考えられているが――所詮ゴロツキだったようで、布陣にはそこかしこに隙が見受けられた。それを何処からでも崩せる算段を既に整えた辺り、流石は“黒い鳥”と言った所だろう。
「ッ…(あぁは言ったけど、スミカちゃん絶対動くだろうな…正直一人の方がやり易いけど、仕方ないか今後も団体戦多くなるし)」
既に拳銃の2射で一人を仕留めた彼は、集中する弾幕の間を縫って、今しがた倒した男の銃を拾った。
…そこで更に衝撃の事実が発覚する。
「は、はぁ?(410番ゲージ銃!?そんなのでバードショットを…通りで火力がやたら低かった訳だ)」
410番ゲージ(410ゲージ、.410口径、.410インチとも)、それは我々の世界で広く流通しているショットシェルの中でもかなり口径の小さいものであり、少なくとも広く流通しているショットシェルの中では最小口径のもの。サイズ相応の火力は主に小動物を近距離で仕留める場合に用いられるものであり、対人であっても精々カージャック対策やホームディフェンス等の護身用として用いられる程度だ。
ジンは相手の本気を疑った、本当に殺す気があったのか?いや…そう考えてしまうのは彼自身の主観であり、この散弾銃に乏しい世界では410ゲージでも立派な対人用散弾銃の一つであるのかもしれない。
…何であれ、拳銃の弾もそんなにある訳ではないので、手数は多い方が良いとして、それと予備弾薬を頂戴した。
「マジかよ全く…(これでショートカービンにゴム弾か空砲入ってたら、いよいよって所だな)」
直後、近くの木に着弾した5.56弾が木端を飛び散らせたので、少なくともショートカービンには実弾が入っている事を理解した。ショットガンのレバーを操作して次弾を装填し、チューブ弾倉に1発弾を込めた。
よく見れば敵の中には杖を持ち歩いている者が居る…本来この世界で杖は回復や補助の魔法に用い、攻撃魔法は魔導書を用いるのがセオリーだ。スミカが使う、ソウルの結晶魔術は接続された異界から流れた、異端の魔術なのだ。
ともあれ、相手には負傷した仲間を手当てする程度の仲間意識はあるらしい。
「回復役、ね…(んじゃ、もうちょっとタクティカルな事が出来るな)」
410番とて人を負傷させる程の力は十分ある…ジンは敵の布の薄い所、或いは皮膚が露出してる所を死角から狙い、1名を負傷させた。
「がッ…!?
い、痛ェ!痛ぇ”!クッソォア!」
負傷した男の、悲痛な断末魔が響き渡った。
それに反応し回復役が(杖の射程距離内まで)即座に駆け付ける…が、彼もまた待ち伏せしていたジンに両脚を拳銃で撃ち抜かれ、ついでに聞き手もショットガンで潰され動けなくなってしまった。
…同時に、空から振って来たソウルの矢が敵のスナイパーに当たり、しっかりと手負いにさせた。どうやらスミカも同じことを考えていたらしい。
ジンは、相手の統制が乱れている事を肌で感じて居た…場合にもよるが、後2人か3人殺すか負傷するかさせれば撤退するかもしれない。何なら威嚇射撃しているだけでも良さそうな気がしてきた――――そんな事を思った所で、また戦場の空気を感じてみると強烈な違和感を感じた。
流石に乱れすぎだ…まるで化け物にでも出くわしたかのような。
「可笑しい…(いくら何でも慌てすぎだろ、まだそこまで暴れてねえぞ?相手は素人通り越して童貞*2か?いや動き自体はそこそこ場数踏んでるソレだったんだよな…)」
何か見落としが無いか…一瞬顔を上げて辺りを見回した、その時だった!
「うぉおおおああああああああああああああああ!!!」
「ッ!?(やばッ!)」
何処に潜んでいたのか、手斧を持った男が襲い掛かり、取っ組み合いの状態となった。
敵の頭を叩き割らんとする力、それを何処かに逸らそうとする力、この二つが正面からぶつかり合い、互いの身体が右往左往する。
「このッ!」
そして取っ組み合いに勝利したジンが、相手の体勢を大きく崩した瞬間…男の頭部は弾け飛び、真っ赤なミートソースと化した。
この光景に驚く間も無く、更に新しい敵が飛び出す――――が、相手はまるで熊のような…ジンが今まで見たことも無い巨大な生物に襲われ、先ずその一撃によって耳と顔半分を削がれた。
「うを、うわ、わ、うわあああああああああああああああ!!!!」
男は必死にもがくが、先のジンのように対等に渡り合う事さえ許されず、一方的に貪り食われていった。
彼はその、赤のアクセントを持つ、黒い体表の化け物に恐れ戦きながらも、冷静にショットガンの銃口を向けた。ゆっくり、ゆっくりと…出来るだけバイタルを狙う様に。
「…大丈夫、彼女は敵じゃない」
「ッ!?
き、君は――――」
声の後、ぱしゅっ…という抑制された破裂音が響いた。
ジンがそれに対して放心していると、今度は同じ場所から口笛が響き、その約5秒後に何処かで大爆音が鳴り響いた。
漸く我に返ったジンは、後ろから来た声の主を思い出す。
「――――もう、君は戦わないと思っていた。
トウヤがそう言っていた、から」
「マーシィを追いかける為に、まだ戦い続けられるわ…お義父さん」
振り返った先に居た、蒼髪の女――――ベルカは手に持ったバトルライフルの弾倉を交換し、銃口を下ろした。
「…というかかなりゴツいの持ってるね。
重く無いの?」
「大丈夫、斧より軽いわ」
「おーい!二人共大丈夫かー!?」
「ん?
――――って、うぁあ!?もう一体いたー!?」
ジンとベルカの元に駆け寄って来たのは、マーナガルムに変身したままのフランネルだった。
ズシンズシンと迫力満点の形相に、ジンは思わず構えてしまった。
そこへ、もう一体のマーナガルム――――ベロアが近づく。
「お、お次は何だ…?」
「パパ…このおじさん、とても驚いてます」
「おおっと…わりーな、オッサン。
あー…スミカから聞いたんだけど、マーシレスの親父なんだって?」
「え?
あ…は、はい」
まるで不良に絡まれた根暗高校生のような反応をするジン。
そこへ、噂をすれば何とやら…スミカが赤毛の女――――ルーナと共にやって来た。
「まさか、こんな所で会うなんてね…」
「ッ!
母さん!」
「スミカ…大丈夫?怪我してない?」「え?ほらもう、完璧ですよぉ」
まるで同窓会にも似た雰囲気に、少し置いてけぼりなジンだったが…そこにトドメを刺すような存在が、大きなストロークの羽音と共に現れる。
「二人共、いい加減変身を解きなさい」
「「はーい」」
魔竜に乗った女性――――カミラの言いつけに従い、フランネルとベロアは人間態に戻った。
「わ、
竜から降りたカミラは、手に持った分隊支援火器を肩に担ぎながらジン達の元へと歩み寄った。相変わらず一歩一歩の度に、彼女の身体のあちこちがよろしくない感じに揺れている。
「ごめんなさいね、うちの人が」
「あ、いえ…(すげー恰好の貴婦人が、RPK担いでる…)」
■ ■ ■ □ □ □
「クソ、右腕痛ぇ…モルセーグの野郎どこ行きやがった。
だが――――この賭けは、俺の」
襲撃犯のリーダーだった、顔全体に蜘蛛の刺青をした男の足元が弾けた。
男が前をよく見ると…ジン達が目の前に立ちはだかっている。
「チッ…そう簡単にはいかねえってか?」
「武器を捨てなさい、ジョロウ。
今度はその趣味の悪い顔を撃つ」
「知っているの?ベルカ」
「ええ…白夜出身の、ギャンブル狂いの殺し屋。腕は良いって訳じゃないけど」
ジョロウと呼ばれたその男は、ベルカに対して「言うじゃねえか、殺し屋ベルカ」と、まだ不敵な笑みを浮かべながらつぶやいた。その様子を見たジンは、どうも普通の脅しが効かないように感じて、別のアプローチを仕掛けた。
「アンタ、コッチで雇い直そうか?
いくらで雇われた…ソイツさえ言えば報酬以上のカネはくれてやる」
「駄目よ、お義父さん。
あの蜘蛛男は賭けが絡まないと仕事を引き受けないわ」「うわ、父さんより雇用条件面倒くさい」
マーシレスは金<気分なので雇用難易度で言えばまだジョロウの方がマシである。
しかし、対するジョロウの答えはかなり意外なものだった。
「へへへ…だがよ、俺の雇用条件にはァ、アンタらに雇い主を聞かれたらよ、素直に答えるってのがあるんだ。
だから教えてやる。奴の名は――――――――“スタッグ”?」
スタッグ…というのが雇い主の名前、かと思われたが、どうも様子がおかしい。
やがてジョロウの顔はみるみると青ざめ、身体全体が震え出したかと思えば、突如彼から機械音が響いた。
「お、おい、待て!スタッグ!俺は何も失敗しちゃ――――――――て、テメェ!“ロシンバ”も初ッ端からこの気だったな!?
青かった顔は、徐々に怒りで赤くなり、あちらこちらに腕を振り回したり、全身を服の上から搔きむしったりして暴れ始めた。
「お、おい、何かアイツ暴れ始めたぞ!?」
「…裏切られた?」
「ま、まさか――――」
周囲の皆がジョロウの豹変に混乱する中、ジンは彼の身にこの後起こる事が脳裏に過った。
そんなベタベタな…とは思いながら。
「クソ、クソッ!クソォ!
――――奴らは、先ず最初に“蜘蛛”を倒す。そういう事か」
あれだけ暴れていたジョロウは、スンと急に冷静さを取り戻し…。
――――ぼんっ、という音を立てて全身が破裂した。
飛び散った血肉の欠片で周囲を赤く染め、生々しい爪痕を残して…ジョロウという男は始末されたようだ。
死に際の言葉からして、最初から捨てられるモノだったのかもしれない。
「…手がかり、ナシ」
「迷宮入りね。
――――それとおじいちゃん、手どけて」「あ、あぁ」
咄嗟にスミカの目を隠し、ショッキングな一瞬を見せない様にしていたジンは、その手をどけた。
…この時、誰も背後に居た“黒衣の騎手”の存在に気が付かなかった。
□ □ □ ■ ■ ■
「…お義父さん、何読んでたの?」
「ベルカちゃん?
いや、ちょっと経済学の本をね」
ジンは、手に持っていた…コリンズなる人物が書いた本を畳み、齧っていた干し烏賊を飲み込んで身体を起こし、身体をベルカの方に向けた。
「ねえ、マーシィの事だけれど…何か見つかった?」
「いいや…全くさ。
あんまりにも証拠が出ないもんで、何か見落としてるんじゃないかと」
彼の報告に、ベルカは「そう…」と、非常に残念そうな顔を隠さず、空けられていたジンの隣に座った。
「…この銃、マーシィと最後に話した時に貰ったものなの。
正確には保管庫の鍵を、だけれど。「何かあったら迷わず使って」って」
そう言って彼女は、用意されたバトルライフルに目を落とした。
射撃精度や反動制御に影響しないギリギリまで軽量化、ショートバレル化されている他、反動もより少なくなる設計のプラットフォームを選んである上に、サイレンサーまで付属している。小柄で、奇襲攻撃を主とする彼女に合わせられたカスタムのようだ。
「そうか。
物の用意だけは妙に良い、あいつらしいな」
「ええ…そうね」
銃身を撫でる彼女の顔を覗けば、やはり悲しみに満ちた様な顔をしていたので…ジンは彼女の肩にそっと手を乗せた。
「大丈夫…今度見つけたら、首根っこ掴んでだって引き戻すから。
それにトウヤ、あんな人と喋るの嫌いっぽいけど、実の所かなりの構ってちゃんだから…きっと何処かでまた顔を出すよ」
「…そうよね。彼、直ぐ一人になるくせに。
ありがと、お義父さん」
ベルカは、幾分か笑顔を取り戻した様だった。
「…所で、これは?」
「あー。昨日の件、やっぱり引っかかる事があってね…本当に、勘でしかないけど、トウヤが関わっている気がして、さ」
彼女が指差した先に会ったのは、テーブルの上の覚え書きだった。
書いたのはジンだ。
内容は「最初は蜘蛛、ロシンバ炉心場、露心、炉心馬、蜘蛛男、スタッグ、ディーウィー=D.W=ダーウィン?、ValWal、web、ス?」といったものだ。
「この、塗り潰してる所は?」
「ふざけて書いた内容だ、気にしないでくれ。
…そっちの方は、何か思い当たるような内容はある?」
「さあ…。
でも、ジョロウについてはとうとう焼きが回ったのね、って。身体に爆弾付けられて死ぬなんて」
「全くだ。
…ん?待てよ。まさかだけど…」
ふと、ジンの中に一つの予測が過った。
「……なあ、ベルカちゃん。トウヤの此処でのあだ名って「鴉」だよな?」
「ええ、鴉頭。
鴉みたいな仮面をつけてた事が由来だけど…どうしたの?」
「…どうしても鴉の字が浮かんでこない。
やっぱりアイツ関わってないのか?」
彼はまたペンで用紙にカリカリと書き込みを始めた。
「トウヤ、何故だか分からないけどヘンな言葉遊びをする癖あるだろ?」
「そうね…彼なりにカッコつけたいだけだとは思うけど…必要もないのにやるから、いつも隠し事がバレる」
ジンが「Wal」の部分に当て字をしようとした時、ベルカが「そう言えば」と、今回の件で思い当たる事を口にした。
「お義父さんとスミカが尋ねた、ヴァールって大貴族…幾つか
例えば…ゼロからの情報だと「何処かの誰かみたいに、ある時期以前の記録が全くない」そう」
「ん?それは…異界出身って事か?」
そう言った事例は、マーシレスの他にもオーディン、ラズワルド、ルーナが該当する。
「かもしれない、ってぐらいだけど」
「…そうなると、思い当たるフシがある。
ヴァール卿、見るからにとても健康に気を使っている様だったんだ。あの手の貴族って大体が生活習慣病まっしぐらの生活を誇らしげにするし」
「健康…。
騎士の家柄でも無いのに、そんなのに気を使う貴族なんて見た事無いわ」
職業上、要人暗殺もこなした経験もあるベルカでさえ、体脂肪率が危険域ではない貴族は見た事が無いという。
ある程度上の――それも文官的な――貴族は、そういった栄養士が卒倒するような不健康な生活を続ける事を一種のステータスとして扱うのだ。
健康に気を使うだとか…果ては筋肉トレーニング等、下民の行為として忌み嫌う。
「……まあ、それだとちょっと根拠として薄いけどね。
昔、成田三樹夫が柳生一族でやったような感じのが、こっちにも居ないなんて言いきれない」
それだと“はみ出し者”という事なってしまう。
流通を扱う身で、他の家とのコミュニケーションに支障が出る事は避けたいだろう。
…兎も角、二人は少し考え過ぎていたようだ。
「――――ご飯食べよ、ベルカちゃん。
今日の担当誰だっけ?」
「今日はピエリだから、大丈夫」
「えっ“大丈夫”って。
え?何ソレ、外れとかあるの?」
「ウチの彼とかそうよ」
「あーうん…だろうなぁ。というか出禁だったな」
「よう、
「だろうな、想定内だよスタッグビートル。元よりアントネストを構築するための下地だったからね…それの破壊から生まれるものが重要さ」
「そうか。流石は元GAFA社員…ロジスティクス的だな」
「発案はリオックの方だよ、性格には彼が統治するAIだが。それに私の世界のGAFAは深海共のおかげでまるっきり壊滅状態さ…いるだけ無駄、って奴だったよ」
「成程、天下のGAFAが…錆びた巨人とはな。俺の世界でもそこそこに生き残ったのに。だが“時計職人”はやり過ぎだ、ジンという男ならビジョナリーカンパニーぐらいすぐ気が付くぞ?」
「何、私の出身ぐらい露呈したところで何も問題ないさ。あの娘…それとも“マンティス”と呼ぶべきか?彼女が通う学校には何人かアメリカ人を見かけたぞ?」
「そうかいドイツ人。ついでに言えば計画自体もバレたとして、あの甘ちゃん揃いの王族連中ならば大して苦言を呈すこともあるまいな」
「全くだ…しかしリオックの存在がバレたら少々マズイかもな」
「そもそも奴とマンティスの家族が為の計画だ。俺達はただそこに利害の一致が存在するから乗っかっているに過ぎない」
「私達に声をかけたのもそのためだろう…お陰で私の自治区はこの通りだ。ウハウハなんてもんじゃない」
「別に俺は稼ぎなんざどうでもいいが…。ともあれ、ネスト開通の報告を“サーベル”“ウイング”“トライリーフ”にも伝えて来る」
「分かった。今後ともよろしく…ジュン・ササキ」
「その名は捨てた。所で思ったんだが…リオック、奴の変身態…正直インドネシアの悪霊には見えない。正直言ってカマドウマじゃないのか?」
「言ってやるな、気にしてるんだ…彼。だって「便所蟋蟀」だぞ?」
「気の毒に…」
正直出資者関連の話、そもそも研究機関が国営かつ国が王政でコンペる必要あったか?とちょっとだけ思うけど…まあ、違和感あるようでしたら貴族社会のめんどくさい所(凄い抽象的な言い方)が出たんだなとか、ジオンのモビルスーツ的なノリだなとか思っておいてください。
それにアレだ、結局の所は物語よ、物語。
リアル志向もいいけど…物語ってのは、書く側も、読む側も、もっと柔らかぁい頭で関わらなきゃ(苦しい言い訳)。
そう言えば今回の話、ちょっと今回のミステリー部分のヒントになるけど…偶然人狼枠居たなぁって。金色じゃないけど。
どうでもいいけど多分ゼロはマーシレスの事「人生ナメてんだろ」とか思ってる(適当)。
ナニカサレタ男のマーシレス周りの人間関係表とか、そういう過去の振り返り的なの欲しい
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ほしい
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いらん
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ガンイージ(無効票)