十数年ほど前へFEif世界に拉致られたナニカサレタ男が自分一人の問題からくる戦争に挑むまでの過程とその結末を綴るだけの物語   作:エーブリス

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あけましておめでとうございます。
例のAC新作の報告を受けて急遽思いついた内容です(もうそろそろ1か月経つぞバカめ…)。


機甲馬鹿一代

終戦から早数年、当時を機会としてこの世界に広まったアーマードコアの運用は、今や新たな段階へと進みつつあった。

 

 

嘗ては三国ともノーマル、V系問わずに中量二脚型が運用されていたが、現在は(V系に限るものの)あらゆる脚部が運用されている。

 

先ず白夜王国では軽量二脚、及びに軽量逆関節型…そして狙撃兵装を装備した重量級のタンク型及びに四脚型が広く普及している。

これは本国が古来より軽装の機動力に優れた兵種、及びに弓兵等の長距離運用を中心とする兵種の運用に長けていた背景があり、そう言った文化がACの脚部運用にも反映されたようだ。

 

また、ごく最近になって高い銃身製造技術のノウハウを得たようであり、今後は高精度な射撃兵装の誕生が望まれる。

 

 

次に暗夜王国だが、こちらでは白夜とは対照的に重量二脚や重量逆関節、そして中~軽量級の四脚型の運用が見られる。

最早言うまでもないが、重量二脚はアーマーナイト等重装甲兵種を運用していた名残だろう。また比較的軽装備の、機動力を確保した4脚が好まれている傾向は騎馬の伝統が現れている様に思える。

 

元より硬度や耐久度に優れる鋼鉄の製造技術があった国だ、将来的に優れた本体部品の製造が可能になるだろう。

 

 

そしてまだ国としての歴史が実質浅い状態にある透魔王国は、特に脚部や重量に兵装等の拘りが見られない。

戦時中、ありとあらゆる兵種の混合的運用を行っていた国王カムイらしいといえばそうなのだが、国の規模と相まって、少々寄せ集めであるような部分は否めないという事実もあって、そこが一部の兵法家による非難の的にもなっているきらいがある。

 

しかし、実のところ電子機器等のソフトウェア技術が一番進んでいるのは透魔なのだ。

 

 

…当然だが、オーバードウェポンはどの国も採用していない。

 

 

――――何はともあれ、今はそれら三国がいがみ合う時代ではない。

寧ろ手を取り合う時だ…そんな“彼ら”の共通の敵は、未だ各地に根強く存在する無法者、及びに近年世間を騒がすデーモンなる怪物だ。

 

「やはり王都周辺でのノーマル系の警備運用は一定の成果を齎しているようだな…既にデーモン及び賊の撃退事例も多く上がっている」

 

「あの系統は最大火力は兎も角、単騎性能は見込めるからね。

けど…やっぱり維持費が高すぎるな。最悪、1機だけで予算を大きく削れらてしまうかも」

 

「これ以上性能を落とせば、態々V系と換える理由も無くなる…か。

一応、資金を引いても一定効果の認める手段はあるが…」

 

そう言って、円卓にばらまかれた資料の一つを眺めるマークスが眉を顰めた。

 

 

…“ネクスト”。

それが資料に記された機体種の名前である。

 

確かに当機体はどんなに安価なパーツを用いても、町一つを1機でカバーできる程の力が望める。しかし、それでも三人がこれの運用を断固拒否するのには、致命的過ぎる欠点があった。

 

「やはり“汚染”か」

 

そう、ネクストは原動力となるコジマ粒子に強い毒性を持っており、そんなものをバラまきながら戦う機体など防衛に持ち込む訳には行かない。そもそもネクスト自体の高出力からなる高威力は単純な考え方で見ても過剰である…例え汚染が無くともその威力でどこかの街が滅びかねない。

 

「土地を護るつもりで、結局土地を滅ぼしたら世話が無いな…」

 

「…やっぱり、現状の機甲兵部隊の運用はV系の戦力増強に力を入れるべきだね」

 

そう言って、カムイは天幕の外を眺めた。

 

 

 

――――現在、三国の機甲兵部隊による合同演習が行われていた。

あらゆる脚部に装甲量そして武装を施したACの軍団による、主に中量級以上のデーモン群及びにAC・MTを用いる賊を想定した模擬戦闘は、しかし規模で言えばまだまだ小さなものだった。

 

正直、大きな戦争が終わって軍縮があったという事もある…しかし、それ以上にACというオーバーテクノロジーをまだ持て余しているのも事実だ。

 

これら模擬戦の指揮を執るのは、一人のガタイの良い男を中心とした数人の各国将軍たち。

そしてこの中心人物、実はかの異界(VD世界)から来た傭兵で、嘗ては【機甲道】なる武道的集団において師範代に当たる「倒龍」の位に居た(随分前にあるきっかけで追放されたようだが…)という男だ。

 

単純な操縦技術もさることながら、あらゆる搦手や狡猾なAC運用にも長けているというこの傭兵は、ジンより以前に国王直属の令により各国機甲兵団への協力を行っている身である。

 

 

因みに運よく“黒い鳥”ジンとは過去の戦場にて縁が無かったが、互いに名は知り得ている。

ジンは彼を「機甲道で最も危険な男だった(らしい)」と聞き及んでいた。

 

 

さて、この元・機甲道の男はこの世界の文化にも少なくない影響を与えている。

――――何を隠そう、この世界におけるAC部隊を指す【機甲兵】の呼び名についてだ。

 

アーマードコアという長ったらしい名前で呼び続けるのは全くの論外として、アルファベット表記の頭文字を抜いた“AC”という略語は好みの問題なのか、どうもこの世界では馴染まず、故にこの傭兵の古巣である機甲道から取った機甲兵なるカタい呼び名が定着したようだ。

 

余談だが、これを理由としてジンが各国将軍らの集う定例会議にてガリアンソードを話題に出して恥をかいた。

 

 

 

「――――いや、広げすぎるのも…か」

 

「そうだな、カムイ。

今はいいが…いずれデーモン騒ぎも収束する。その時、持て余したアーマードコアがどうなるか…」

 

「一応パーツごとにスペアとして保管するという案もあるが…それでも余るだろうな」

 

3人の国王は、難題そのものの数の多さに頭を抱え込む。

 

 

「…とりあえずこの一件は僕らで決めるのは止めよう、兄さん達の方でも有識者に話を聞いてみてくれ」

 

そう言って、カムイら国王たちは次の話題へと移った。

 

  ■ ■ ■   ■ ■ ■

 

 

 

 

 

 

  ■ ■ ■   ■ ■ ■

 

「――――それで、機甲兵部隊の拡大範囲に関する意見…ね。

グレイ、この事で何か役立つ異界の知識とかは無いの?」

 

「無いな。生憎、俺は銃器(こいつ)の扱いを学ぶので精一杯だったんだ。

何であれ、一先ずは町に聞き込み調査に行ってくるぜ…国民の声も、大事な指標だろうしな」

 

そう言って、グレイは何処かへと去って行った。

漸く忍びらしい事が出来るようである…忘れかけているようだが彼は別にモダンな戦闘インストラクターが本業ではない。

 

「グレイの忍らしいところ、ひさしぶりにみたかも」

 

「そうね、ミドリコ。

…所でスミカは今どこ?出来れば開発担当の話も聞きたいのだけれど…」

 

「えっと…スミカは、いま…」

 

ミドリコが申し訳なさそうというか、気まずそうというか、どうにも消極的な紹介をしたのにはしっかりとワケがある。

…彼女が指差した先に居るスミカは、幾つかの書類を抱えてブツブツと呪詛か念仏を吐き連ねていた。

 

「…えっと、随分お疲れのようね」

 

「はなしによれば、きょうの演習で得られた情報をふぃーどばっく?する作業でとってもいそがしいんだって」

 

この作業のせいで一昨日、スミカは発狂して何処かに飛び出し――――翌日、やたら肌ツヤが良くなって帰って来たのは一部で有名である。

 

 

「それじゃ、誰に話を聞こうかしら…」

 

マトイが悩んでいる所に、ちょうどACによる戦争を知る傭兵ジンが通りかかった。

 

機甲兵って…機甲界ガリアンが元ネタじゃなかったのか…

 

「あ!ジンさんジンさん!

ちょっといいかな?」

 

「ん?ミドリコちゃん…それにマトイちゃんまで。

どうかしたのかな?」

 

「んっとね、この事なんだけれど…」

 

ミドリコは彼に対して件の事が書かれてある書類を差し出した。

 

 

「うーん、ふむふむ。

…成程。戦後の処理か。重大事項だな、確かに今日のAKの流出だってそうだもんな。

俺の、生まれた方の世界もそうだった」

 

「そうだったのね…ジンさんの世界でも――――あ、生まれた世界と傭兵をやっていた世界は別だったかしら?」

 

「まあね」

 

ジンは渡された書類を返した。

 

「聞けば、ジンさんが傭兵をやっていた世界も3つの国――――というより、巨大勢力によって均衡が保たれていたのよね?

私はそこに答…とは行かなくとも、大きく参考になる部分があると思ったのだけれど」

 

「んー、言われてみれば…確かにこの世界もあっちも3勢力によるバランスだな。

――――でもちょっとウチの方は、参考にならないと思うな。先ず天秤の釣り合い方が違う…んや、そもそもアレは釣り合いなんてもんじゃない」

 

「どういうこと?」

 

「先ず、この世界は暗夜・白夜・透魔がそれぞれ手を取り合って、互いを補う様にして均衡を保っているだろ?

多分それが一番理想的なやり方だ…失うモノが少なくていい。でもうち等…シリウスにヴェニデ、そしてエヴァーグリーンファミリー…まあEGF(こういう呼び方はこちらじゃ流行らないようだが…)は違う。先ず互いの手なんて死んでも取ったりしない」

 

「…互いに矛先を向けあって、バランスを取っているのね。

考え方の違いかしら?」

 

「そうだ、大方その通り。

実際の所は“食い合い”と言った方が良い。土地とか資源とか、それに一番はタワーっていう、大昔の超技術が眠る遺跡の取り合いであの世界は今も戦を断続的に行っている…食っては喰われ、食われては喰い、そうして結果的にバランスを保っているようなものさ」

 

マトイとミドリコは、自らが冷や汗をかいているのを実感した。

きっとこの世界も…カムイをはじめとした自分たちの活躍が実を結ばなかったら、ジンの語る世界のような悍ましい状態へと至ったのかもしれない。

 

そして其の先に待ち受けるのは…。

 

「――――ジンさんの世界、良く滅んでないわね」

 

「一度は滅んだみたいだよ。

その大昔の滅びの遺産が、さっきのタワーってわけで…ま、意外と人間崖っぷちでどうにかなるようには出来てるんだろうけど――――フゥ、これ以上はやめておくよ、その戦争で喰わして貰ってる身が批判していいわけないしよ」

 

一頻りしゃべった彼は「話を戻そうか」と、ACの配備拡大に関する話題を再び語り始めた。

 

「ともかく“どれくらいの量を作ればいいか”なんて事、具体的な数字は出ないけれど…“どのように作ればいいか”って事なら、またちょっと違うかもしれない。

それこそAKが良い例さ。所で二人はアレがコッチの生まれでも此処でも爆発的に…そうだな、“流行”したのはなんでだと思うかい?」

 

「うーん、まず銃ってすっごく強いのに、びっくりするほど簡単で…それがいっぱいあるから?」

 

「ミドリコのいう事も確かなのだけれど…それ以前に“構造”があると思うわ。

この前の、カミラ様に案内されて接収した高性能な銃火器を見て思ったわ。あんな機械細工を量産しようと思うと、相当な国力が必要になる。その点、AKは他の銃よりも簡略化された内部構造と部品を持っているから…ある程度の国力で十分以上に量産できると思う。きっと性能は落ちるでしょうけど」

 

「むう、流石…白夜きっての天才だ、俺が何度も何度も二次データを読み直して得た情報をこうもさっぱり、それも自分で出してくる。

――――確かにAKはやたらと数が多いし、だからこんなに世界まで跨いでここに流れて来たのだろうけど、それは三段論法の内の2段目だ。一段目に来る論法は彼女の言う通り“構造が簡単で作りやすい”事なんだ。

だから当時ソビエトがライセンスをバラまいた国以外でも密かに作り続けている小国や犯罪組織はおそらく今も存在するだろう…きっとその気になりゃ、作業机の上でも人殺すくらいにゃなる。俺の生まれた日本も――ちょっと差異はあるが――こちらでいう戦後は平和ボケ国家なんて自他ともに認識されるくらいにはのどかな国で、銃もしっかり法で規制されたお陰で中々お目にかからんかったが、それでも密かに作っていた危ない奴らはいたよ。

…まあ2発に1発はチャンバーがイカれそうなやつだったみたいだけど。

でも人殺せる可能性があるならそれはれっきとした危険物だ。ACも同じで、きっとアーマードトルーパー擬きを作っちまうと想像以上に不味い」

 

「あーまーどとるーぱー?」

 

「あぁ。その単語は忘れてくれ…要は死ぬほど作りやすい代わりに小突いただけで壊れそうなメカの事だ。

…また高橋作品が出ちゃったよ

 

「………つまり、一目みるだけじゃわからないようなむずかしい絡繰にすればいいってこと?」

 

「うん。ちょっと言い方悪くすれば、国家や市民国民全人類の為に命をほどほどに削れる選りすぐりの兵隊を集めて、そいつらにうんと操縦を難しくしたACの技術を徹底的に叩き込めば五件落着した後ん流出は…それほど気にしなくてすむ。

――――ってのは一つの考え方だな。正直これじゃ時間が掛かり過ぎる」

 

「そうね…。

でも、ありがとう。おかげで会議が大分進みそうだわ」

 

「いやぁ、もっといい意見出るんじゃないかな?まあ次の会議には俺も出る事になってるから…何かあったらこっちからも助け船は出せるよ」

 

ジンは手に持った書類を整え直し、もう一度目を通した。

 

 

 

「…しっかし、妙だな。

ACって略称が流行らなかった割には、アブトマットカラシニコフをAKだなんて呼ぶんだから」

 

「AKっていうのが正式名称だと思ってたからかしら…?

正直感性よりも慣れが強い気がするわ」

 

「そういうもんか」

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇   ◇  ◇  ◇   ◇  ◇  ◇

合同演習から数日後…待機していた三国機甲兵部隊は、透魔国境付近の山脈を根城とする大規模かつ危険性の高い盗賊団の掃討へと向かっていた。

 

 

――――たった今、紅い流れ星が賊の根城へと直撃する!

 

『こちら透魔特機、ロケットの直撃を確認した。

それじゃ、こちらは一歩下がらせてもらうとしようか。将軍殿…万が一にも、リスクは冒せないんでな』

 

上空まで飛び上がった軽量級逆関節機が落下し、森林へと身を潜めた。

 

『了解した。

…白夜部隊、状況を報告せよ』

 

『白夜二号機、異常なし』

 

『…こちら白夜三号機、周囲に機影無し。

作戦通り警戒陣を解き目標への突撃体制へと移る…ったく、三国組んでの初仕事が賊狩りとはね…

 

白塗りのACたちが開いた翼のような陣形を狭め、弓から放たれた矢のように細い陣形を取る。

 

『聞こえてるぞ三号機、口を慎め。

――――こちら白夜指揮官(オペレーター)、部隊が配置に付いた。其方に合わせる』

 

 

『暗夜オペレーター了解、こちらも行動に移る。

――――暗夜部隊、前進せよ。演習を忘れるな、出来る限り攻撃を引き付けるのだ』

 

『暗夜一号機了解。

各機、聞いたな?突撃ッ!』

 

黒光りする重量二脚の一個中隊が、照明弾と共に突撃を開始した。

各機が持つ、超大型のTEシールドは、暗夜機甲兵部隊がアーマーナイトの延長線上であるという認識の元作られた、この世界独自の兵装だ。

 

その内、隊長機と思われるそれの右手にはライフルではなくハルバード型の近接兵装が装備されている。

これもまた暗夜独自のもので、どちらかと言えば象徴的な意味合いが強いのだが、重厚なそれは二脚のACの姿勢を容易に崩し得る。

 

 

山賊らもまた続々とAC及び異界の通常兵器が動きだし、一手遅れて応戦を開始する。

…この兵器保有数がこの賊らを三国の力で潰すに相応しいとした理由である。

 

実は本日の任務、どうやらきっかけが“匿名のタレコミ”であるそうだが…今は関係ない。

 

 

ハウザーをバラまいていた賊のタンク型ACが突如吹き飛ぶ。

安いジャンク品が見るも無残に飛び散り、やがてジェネレータが爆発する。

 

『敵のシューター兵を撃破』

 

やったのは、白夜の狙撃型四脚だ。

 

『助かった!

…んじゃ、こちらも一暴れさせていただきましょうかね!』

 

『遅れるなよ、3号機!』

 

岩陰から飛び出した白夜の軽量逆関節が、武器腕のヒートキャノンを1発1発丁寧に撃ち込みながら、その機動力で攪乱しつつ確実に敵機の数を減らす。その下で軽量二脚が速射型ハンドガンで弾幕を形成する。

 

 

交戦から数分と経たぬうちに、賊の壊滅は目前へと迫った。

――――しかし、そう簡単に物事を終わらせたくないのが運命というものである。

 

『…ッ!これは――――全機に次ぐ、緊急事態だ。

作戦領域の南東方向よりデーモンの一群が接近中、どうする…』

 

『我々暗夜部隊が対処しよう…残りの賊は、任せられるか?白夜』

 

『…問題ない。

――――白夜各機、仕上げを急げ』

 

『ちょ、急かすなよ…そういうのに俺弱いんだから。

…三号機了解』

『二号機了解』

『一号機了解…殲滅を急ぐ』

 

この通信の後、白夜機甲兵部隊は物陰から飛び出し、最高火力を一気に賊らへと叩きつけた。

 

 

 

『…こちら総指揮官、状況は把握した。

私も現場へ急行しよう。透魔機甲兵部隊とスペシャルゲストも一緒だ』

 

『ッ!?教官殿!

まさか貴方が…』

 

『おや、敗北者の援護は不服かね?』

 

『そ、そんな事はッ…恩に着ます。

――――こちらオペレーター。暗夜各機、聞いたか?教官殿にみっともない所を見せるんじゃあないぞ!』

 

思わぬ援軍により、沸き立つ暗夜部隊。

最高潮に達した士気の元、暗夜の重量二脚部隊は前進を開始した。

 

 

『こちら暗夜一号機、群れの先頭が見えた!

捕捉距離に入り次第迎撃を開始する』

 

『了解した、そちらに任せる』

 

隊長機の報告の16秒後、群れの先頭のデーモンへの一次ロックが始まる。

同時に暗夜隊各機が掃射を開始。隊長機もプラズマミサイルを発射し始めた。

 

吐き出される大口径弾の弾幕は、確かに牛頭等と言った大型種は片っ端から処理していた。

しかし犬型等の小型種は、時折弾幕をすり抜けて彼らに肉薄しかけている。

 

『ッ!

デカいのはいいが、この場合細かいのが厄介だ…』

 

『心配するな、小型のデーモンにアーマードコアの装甲を削り切るだけの――――ッ!?

なんだ、この数値は』

 

オペレーターは何かに驚愕しつつも、それらを部隊へと的確にフィードバックする。

…それは、何匹かの小型種が今までにない超高温を発している事を示していた。

 

 

『…何か不味い。

各機、下がれッ――――』

 

隊長機からの指令の途中、まだ少し離れた地点に居た小型種が突然“爆ぜた”ッ!

…この時、それを直に見た全員が察した。

 

 

『じ、自爆ッ!?嘘でしょう!?』

 

『見ろ、あの窪み(クレーター)…ACはおろか、盾ですら数発喰らえばッ…!』

 

『――――怯むな!

各機、後退を開始。幸い大型種はノロマだ…小型種を最優先に撃破しろ!』

 

しかし、魔の悪い事に直後、犀型が猛スピードで突っ込んで来た!

あれの突撃は例え重量級ACでもかなり堪える…しかし寧ろこの場合は犀の一撃で怯んだ所に自爆型の総攻撃を貰うのが最も恐ろしい。

 

 

暗夜部隊は犀型に何発かの弾丸を放った…が、その全てが分厚い甲羅によって阻まれてしまう。

最早此処迄――――そう思われた時、ふと遠方から連続した三発の砲声が轟いた。

 

 

『な、何だ――――』

 

気が付いた時には、犀へと3つのHEAT弾が直撃していた。

それまでの走破の慣性すら押し殺す程の衝撃で横に吹っ飛ばされ、犀はやがて沈黙した。

 

 

 

『ふむ。

やはりバトルライフルを正式採用すべきだったか?』

 

『きょ、教官!?』

 

数日前の演習にて総指揮を執った、彼らの教官――――名を凰蓮とする、嘗て機甲道に所属していたAC乗りの傭兵が暗夜部隊の前へと降り立った瞬間、その背後にて自爆型の群れが纏めて爆ぜた。

 

「いやぁ悪いね、機甲道の。まさかヒートハウザーの弾、こぉんなに融通させて貰っちゃうなんて」

 

次いで到着した透魔のUNAC部隊、及びにスペシャルゲスト――――“黒い鳥”ジンが、凰蓮の隣に着地する。

 

『畏まる程の事でもない。

君はただ、その“黒い鳥”たる力を私らに魅せてくれればいい』

 

「それじゃ、ご期待通りにッ…」

 

ジンがグライドブーストで駆け出した後、それに追従するUNACと共にデーモンの掃討を開始した。

 

 

『さて、君達…何を手間取っている?

より前衛的な陣形も教えたはずだが』

 

『し、しかし我らの要は防御では…?』

 

『あれを見たまえ、宙を舞う“黒い鳥”の暴れっぷりを。

ヘイトはあちらに全て向いている…細かい気遣いは彼に丸投げして、ただひたすらに援護射撃をするといい。

各機ガトリングに持ち替えろ――――異論は無いな、オペレーター』

 

『はい…。

私も遠方ではありますが、火砲にて援護します』

 

『私らには当てないでくれよ。

――――さあ行くぞ!』

 

彼の指揮の元、暗夜部隊が一点攻勢の突撃を開始する!

 

『こちらも忘れてもらっちゃ困るぜッ!』

 

『一先ず我々は攪乱に徹する。

…本命はあの黒いアーマードコアだ!絶対に討たせるなッ!』

 

それと時を同じくして、賊の討伐が完了した白夜部隊が合流。

本格的に殲滅が始まった。

 

 

 

 

この後、デーモンの襲撃記録の中では4番目に速い時間で討伐が完了した。

後の世に残っている記録では、今回の戦闘による損耗は弾薬費と極軽微な破損以外に無かったらしく、またこの世界における機甲兵運用の歴史のターニングポイントとしても広く語られる事となり、当時は人々の安心を呼んだ事で大きな経済効果すら生んだともされている。

◇  ◇  ◇   ◇  ◇  ◇   ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって、暗夜の研究機関。

この度行われた各国機甲兵の合同演習及びに合同作戦によって得られた戦闘データの統合の為、ある研究室には夥しい書類の山が築かれていた。

 

それの対処に追われた一人の少女――――スミカが物凄い形相でそれを睨んでいた。

 

「スミカ!

聞いたかい!君のお父上のACがまたデーモンの――――」

 

もう見た。結構前めで…。

それと父さんじゃなくておじいちゃん。アンタ何回言わすのよ」

 

「す、すまない…」

 

「謝るぐらい暇ならコレ手伝えバカ。

ったく、これじゃ本業に全く手が付かないじゃないのよ…」

 

そういって、彼女は淡々と報告書を作成しているのだった。

…書きかけの設計図と数多の資料を、もの惜しげに見つめながら…。

 

 

「にしても…君、いくら何でも今の段階で――――」

 

その設計図に伸びた同僚の手を、スミカは乱暴に叩き落とす。

 

「触んな、バカ、アホ。

いいからコッチやれクズ」

 

「クズは無いだろクズは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

誰もが寝静まった町の中央を、かの“黒衣の騎手”が駆ける。

それに追走する、二機の従者…名を「アロー」と「シャドー」と言った所か…まあ、奴らが目的の為に町中を走り回っているのだ。

なんて貧乏くじな任務だ…二つ返事で了承した仕事が、一歩間違えれば国家反逆罪の片棒を担がされるなど冗談ではない。なまじ只ならぬ覚悟の元に行っている行為なだけに一層質が悪い。

あの二機はそれぞれ緑と茶の塗装が施されているが、これは別に白夜の忍兄弟をモチーフにしたわけではない。寧ろ“元ネタ”はまた別の所にある。

 

 

「そっちの区画に入ったわ!

回り込んで、私が追い立てる!」

 

「分かったわ。

…無理はしないで、ルーナ」

 

「お互い様よ」

 

ルーナが後方よりアサルトライフルによる威嚇射撃を行い、それをベルカがハニーバジャーを手に竜に騎乗しながら最短距離で先回りしていく。どうやらこっちの方も正常に動作しているようで安心した。

何せ、バトルライフルの調整に手間取り、こちらはバレルを高カスタマイズ性にした以外は大したカスタムもしなかったもので。

今ようやく気が付いたが、あの竜騎兵の彼女があの時の“腕”だったのか…成程、罪の女神と同じ名前だとはな。

 

場面を切り替えると、ベルカが低空から威嚇射撃を行っている光景があった。

…ふと、彼女が銃を下ろし、騎手を注視する。やっぱり気が付いたか。

突然、銃撃が不自然に止まる…まあ、そうだろうな。奴の女だ、癖の一つや二つぐらい見抜くのだろう…シャルロットやラウラもそうだった。女というのはここぞという時の嗅覚が訓練された猟犬のように鋭い。

ここいらで悟られる訳には行かないので、せめてもの時間稼ぎとして彼女の元へ跳躍力に優れたアローを向かわせ、思考の妨害を試みる。

 

 

その隙に破壊力のあるシャドーで陸路を無理やりにでも切り開こう…と考えた所、急遽もう1人の竜騎兵が現れる。

…王女サマだ、いや元王女か。多分俺の武器庫から持ち出したのであろうRPKを構えている以外は記憶の通りの姿だ。

あれがあの国の王族…だった者か。この世界でも特に危ない女とは聞いたが、実際そのようだった。

「もう終わりよ…いつまであの子を苦しめるつもり?」

とは言え、発言や思考自体は至極真っ当なものである。というよりあの男も相当だ…自分もそうだが、使者ってのは自分に惚れた女を泣かせる定めか趣味でもあるのか?

耳が痛い、全くもって耳が痛い。

黒衣の騎手はそれでも臆することなく、弾幕の中を突っ切る。そしてシャドーへの指令を上書きし、敢えて周囲の建物を破壊する事でその破片を用いて王女サマの足止めを行う。

 

「ッ…なんて滅茶苦茶な」

 

「カミラ様!?

このッ…」

本当に何と無茶苦茶な機械人形だ、あのサイズであれだけの火力を…まあ案の定おつむがとても残念なようだが

あぁ、ルーナがノーマークだった。

このままだとシャドーの自立ニューロンでは面倒が起きかねないため、一先ず電脳にダイブして擬似的なマニュアル操作に切り替える。

 

…遅延がヒドい、大規模ゲームルールでEU鯖に飛ばされた時の方がまだマシだ。

こちらの環境が環境なので仕方ないが、シャドーのハードウェア性能的にも正直彼女を(それも真正面から)相手にして何分も持たせられるとは考えられないが…やるしかない。

恐らくこの感覚は…あの男が直接操作に切り替えたのだろう。高高度でドッグファイトをしながら…よくやるよ。

 

一先ずアサルトライフルの弾を数発、引きずり倒した瓦礫で防ぎつつ、その死角から死角を縫って走り、背後から攻撃を仕掛ける。

 

「ッ!

見え見えなのよ!」

 

一撃目はショートソードで防がれたが、それは予知済みだ。

こちらはその剣を右手で掴み、ちょうど綱引き状態になる程度の出力に抑えたまま、左手で彼女の身体を抑え…この状態で命令を上書きしつつ自立モードに戻す。

 

…最悪の場合、かなりコストの高い汎用自立兵器が1つお釈迦になるだろう。が、元を言えば財団の所有物だ、壊してナンボ。

 

ともかくこれなら相手の手数を封じ、対抗策(パターン)の少ないシャドーでも百戦錬磨の彼女相手に数分は持つ。

 

 

しかし此処で別の問題が生じた――――黒衣の騎手が、既にチェックメイト…にはまだ遠いが、どうにもチェック寸前には至っている。

もうそろそろファンサービスをしている暇も無くなって来た…一先ずカイザーを高速巡行形態にして、空域を脱出…そのまま目的地への急行を最優先とした。

心はまだやれると猛っているのだが、正直な所は潮時が来たような気はしていた…年老いていくのを肌身で感じていくのと感覚がよく似てると思った。まあ奴にとっては十分な時間を稼げただろう。さてと、俺はどうするべきか…情けなく命乞いをして、無理矢理働かされたと嘘を吐くか?などと下らない事を考えていたら、目の前に壁が迫っていた。とうとう年貢の納め時という奴が来たようだ。死なない身体なので、老衰死が迫って来るような気分で僅かばかりに新鮮だ。

 

…そして遂に、地上では黒衣の騎手が王手にかけられる。

だが目的は達した。一先ずアローとシャドーには撤退の命令を下そう…奴も、そう簡単に捕まるタマではないし、これも作戦の一環だとは伝えてある。

あの馬鹿野郎、本当に碌な指示すら出しやしない…次は金をふんだくるべきか。

「グルルルル…ようやく捕まえたぞ、マーシレス。

大人しく馬から降りろ…降りてくれ」

 

「私もパパやママのお友達を傷つけたくありません、早く降りてください」

どうやら、まだ私の事を奴だと思い込んでいるようだ。人狼だと聞いたので匂いもごかましてみたが…意外と効果覿面らしい。

袋小路に追い詰められた騎手は、それでもピクリとも動かず警告に応じない。

 

「まだ抵抗する気?

本気で撃つわよ!」

この女が元々当たりが強いのだとしても、妙に扱いが悪い様な気がしてきた…正直結婚から2,3年で妻子を置いて放浪するような男なので当然と言えば当然だが…何だかそれ以前の話であるような気もしてきた。

ルーナがアサルトライフルを構え、トリガーに指をかける。

 

 

「…無駄よルーナ。

ソイツは多分、今の状況が目的」

やはり奴の女は気が付いていた…犬の嗅覚は誤魔化せても、女の嗅覚までは何時も誤魔化せてない

「目的?

と言うか、ソイツって……」

もういい、もういいだろう…いい加減にあの馬鹿のフリをするのも疲れて来た上に、罪悪感まで出てきた。やはり金を要求しよう…使い道など無いのだが、まあ気分の問題である。

 

…黒衣の騎手はベルカが口を開いた時に漸くフードに手を掛けた。

それと同時に、寝ぼけて遅刻して来た…ああ、“黒い鳥”がやっと合流する。

また新しいのが来た。ボケた頭の記憶が正しければ、あのジジィは奴の親父だったハズだ。とは言え奴自身、所謂試験管ベイビーなのでどうにも血のつながりが怪しいのだが…というか恐らくあの男、俺が不死人と化した時の年齢とおそらくタメだろう。

「お、遅くなった。すまな――――お、おい」

ふと思い出す…成長したシャルロットの倅の面倒を見た時の記憶だ。彼女よろしくよく懐いたが…あまりかまってやれずに疎遠となってしまった。あいつの葬式にすら出れなかった…おそらく死んだものと扱っているだろう。

黒い外套の下から現れた、騎手の素顔…それに対して誰もが、予定調和の如く驚愕した。

皆々様、多種多様なリアクションを見せて下さり役者冥利に尽きる限りだ…全く。

 

それは確かに皆の想定していた人相と同じ白髪だったが…その顔立ちは全く違った。水分の一滴まで朽ちたように枯れ果てた印象で、まるで50か60ほどの男のように見える壮年の男だった。

 

「…誰だ、お前」

まあそうだろう…必ずそう言うハズなのだ。倅かと思ったら、こんな枯れた男が出てくるのだから一種の質の悪いホラーである。

“黒い鳥”の一言は、恐らくその場に居る全員の気持ちを表していただろう。

…そして黒衣の騎手――――いいや、【彼】は当初の予定通り、ここに来てようやく口を開いた。

 

さて、俺もいい加減店じまいとさせてもらおうか。

「“二人目”からの伝言だ。

――――国王共々、さっさとこの件から手を引け。ただ地上にあぶれた雑魚を、一つ一つ摘み取るだけでいい。二度と関わるな」

 

直後、男の目前に炎の壁が立ち上がり、追跡を遮った。

再びトレントに跨り、その軍馬の脚力で袋小路の壁を飛び越えそして遠くへと去って行った。

呪術で眼前に火を放った後、俺は孤鬼を操って壁を越えて作戦領域から離脱した…昔からパワフルな軍馬だったが、あの趣味の悪い連中が弄ってからというもの、身体能力が悪食と共に加速していった。全く…こんな愛馬の姿を見て、あの日記の老人はどう思うのか。天国で。

 

 

 

 

 

 

 

 




これの連載終わったら…そうだな、オリジナルでマヴラヴオルタ系の人類対外生物系のロボットものでも書こうかなと。

…実は大まかなプロットは決まっているという。



それと今回ちょっとした小ネタで出した機甲界ガリアン、あの作品的に考えるならFEif世界の人はアレを“魔法で動くゴーレムの類”と考えそうと思ったのですが…そう言えば白夜側には絡繰、まあつまり僕らの世界(一応「現実世界」と今後呼称)でもおなじみの物理法則によって動く機構があったな…と。

だから一瞬思いついた「スミカがACが魔法で動くゴーレムとは全くの別物であることを丁寧丁寧丁寧に解説したという展開」を没ったんです。だって「ゴーレムと言うよりアレは絡繰です」でカタが付きそうだし、仮にそういうプレゼンをする展開やるには時系列が進み過ぎてたし。


それとスマン、ガリアンとボトムズまではやれたけどダグラムまでは手が回らなかった。


んで、もう何となく分かってるとは思いますけど…なんか変な貧乏くじ引きに行ったグレイは兎も角、マトイを濫用し過ぎってのはまあ自覚してます。
でもね…個人的に覚醒だとベルベットかティアモだったってのもあるんですけど、マトイとかの有能系キャラがすこぶる使いやすいんですよこういう時に。他の子世代も書きたいんだけどなぁ…というか前回の話でルッツ使わなかったのが若干痛いというか。


…え?何?何でネリスがロケット使ってんのかって?
そう言う作戦だったの気にしないで。





まあ、これで番外編的な話は終わりです。
次回から本編再会します。

ナニカサレタ男のマーシレス周りの人間関係表とか、そういう過去の振り返り的なの欲しい

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