十数年ほど前へFEif世界に拉致られたナニカサレタ男が自分一人の問題からくる戦争に挑むまでの過程とその結末を綴るだけの物語   作:エーブリス

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今回、本編でかなり曖昧に書いてスルーしてしまった部分を掘り下げるのですが、その際幾分かの改変がございますのでご了承を。



蛮勇―motivation―

 


どういう訳だったのか。この時のカムイが指揮する軍の行動は、余りにも速かった。

エメラルドグリーンの光を放つ、無限渓谷の大虚(おおうつろ)が旧透魔王国へと繋がるワームホールだと突き止めるのに3日と掛からなかったからだ。しかしその要因については今も判明していない。

 

兵力は当然の如く、多くが集められた。当時まだまだ数に限りがあった弾薬もほとんど彼らに使われた。一説によれば、かき集められた死罪人や“何故か”急遽志願して来た貧民街の住人らを用いて先遣隊とした記録があるのだが、当時の国王らの気質や正確、方針からして全くのデマ若しくは家臣や王子王女らの独断であるとされている。

 

ともあれ先遣隊が送られた事実は存在するようで、彼らとの通信途絶後まもなく本隊の突入が決行されたようだ。

そして、これ以降の記録は残されていない。恐らく抹消されたのだろう。


 

 

 

 

 

唸り、呻き、叫び、血、悲、哀、悪、憎しみ、血、怒り、疑心、悲鳴、猜疑、虚偽、血、絶叫、愛、傷、鎖、血、枷、鉄格子、戦、荒、血…いえる事がないまま抱えて…

 

 

 

 

 

 

 

何時までもこびり付くのは、先まで見ていた悪夢の残滓。

振り払おうとして、大げさに動いてみるが、何時まで経ってもそれが晴れる事は無い。

テフロンの禿げたフライパン、それに焦げ付いた食材の欠片…それによく似ている。無理に剝がそうとして、全く動じず、只表面を撫でるだけに終わる…そういう感じだ。

 

 

いい加減、気が付いていた。

何かをして消えるモノではない…一生付き合って、向き合っていかなければならない問題だったようだ。

 

しかし、だからと言って今から「よし、向き合おう」となれる訳じゃない。そんなヤツを実際に見たことはない…俺より心の強いヤツだって、足搔きに足搔いたような事だ。

 

「出来る訳、ねえってのに…ッ!」

 

そんな奇跡を引き寄せるのに、どれだけの道を拓く必要があると思っている。どれほど天文学的な数字の中を彷徨うと思っている…!

れ以上やっていられない。初志などぽっきりと折れてしまった、なのにまだ道は続いている。

 

 

 

――――この悪夢の残滓が削ぎ落されたのは、現実がそれどころじゃなくなったからだ。

砲撃音の腹の内側まで叩くような衝撃、鼓膜を小刻みに突くような銃声、布を引き裂くというには少々野太い悲鳴…それらがあんまりにも突然、そして突拍子もなく響いたので、尾を握られた猫みたいに飛び跳ねてしまった。多分センチになってたのも関係があるのだろう。

 

一旦岩陰に身を隠し、そっと爆音が飛んできたであろう方角を覗いてみる。

すると、犀型の群れが何者かとの戦闘中であるのが伺えた。一体何と戦っている?

 

よく見りゃ相手が人だってのは分かった…V系だがACも数機確認できる。

しかし装備がちぐはぐだったり、ACのパーツが安物(ジャンク)まみれだったりと、国軍らしからぬ体たらくであったので、そこいらのならず者である事も割とすぐ分かった。

 

しかし、どうしてそんな奴らが此処に来たのかが分からない…確かに俺達の息がかかってない奴らは、もう表で地味な仕事をする以外には稼ぐに稼げないのが現状なので、一部の賊共がなりふり構わなくなり凶暴化している実例は聞いている。

そういうデカいヤマに賭けるのは昔からよくある事だ…まあ見ての通り、大抵は碌なオチになりやしないのだが。

 

でも何かが納得できない…言葉に出来ないが、どうにも違和感を感じる。

今さっき“デカいヤマ”がどうこうと語ったのだけれど、正直言って「態々ここまでするか?」という疑念もある。いくら人それぞれと言えども、だ。

 

しかし旧透魔には回収しきれていない財宝や歴史的価値のある物品が存在するのも事実なんだけど。

 

 

「…!?(アイツ、確か――――)」

 

んな事を思っていた折、ふと見覚えのあるヤツが視界に入った。

特に接点のある野郎でも無かったが、しかしソイツはとっくに牢にぶち込まれて終身刑か斬首・絞首刑を喰らっていたハズだ。

 

次にそのろくでなし共を遠巻きから見ている数人の忍者を見た途端、違和感の正体を理解した。

全部、国の差し金だったようだ。どうやら、囚人を駆り立てる他に、そこらのならず者共を焚きつけて捨て石に利用したらしい。

 

「…カムイの手口じゃねえな(しかしリョウマもマークスもやりそうにない…やるとしたらレオンだな)」

 

別にあの暗夜第二王子が気に入らないから貶すワケではないが、彼ならばこれぐらいの手段は当然の様にやり得るだろう。

トップが人情主義なのだ、それを支え切れるヤツがマキャベリアンだとしても、寧ろそれは「強固な組織の証」でしかないと個人的には考えている。勿論今のは誉め言葉だとも。

 

 

とは言え困った事になった…行動が早すぎる。

確かに先遣隊くらい放つだろうとは思っていた、そしてその内カムイらが突っ込んでくるとも予測はしていた…けど、こんな早くに行動するなんて思っても居なかった。

 

あんな毒々しい見た目のワームホールを、1~2日程度の躊躇いで人を突っ込ませるか?

死罪人や賊は兎も角、あの忍者は明らかに捨て石じゃない…手練れの上忍だ。そいつ等まで捨てるつもりでいるのは、倫理的観点は兎も角として合理的観点から見てもマトモとは思えない。

 

…あの大虚の正体を、かなり早く突き止めたに違いない。

親父が居るんで、何かSCP的な危険性を指摘するもんだと思っていたのに…こうなりゃ、事故を覚悟で人が死ぬレベルのバリアか何かでも考えて同時展開しておくべきだったと、また後悔を重ねた。

 

そもそも、後悔なんて掘り返したらキリが無い。

あの大虚を拓く作戦自体、最初はもっと後発で出す計画だったのだ…俺があらかじめ、小さな扉を通じてこちらに潜り込んだ後、地上に残して来た無人兵器群を呼び込むための一手として。

 

だが…俺は、感傷に押されて無駄な事をやり過ぎた。やっぱり誰かの痛みなんて分からないくらいが良かったのだ…遂に足取りを致命的なまでに掴まれ、早とちりでこの大穴を開けるのと突入作戦を同時並行してしまった。

 

 

あいつらの行動が早いとかそれ以前の問題だ…あんなの、遅かれ早かれ俺に追いつくに決まっている。純粋に俺の失策でしかない。

 

このレベルの大ポカを“彼女ら”の前でしなかったのが幸いなのか…それとも、彼女らという支えがある内にしていた方がまだマシだったのか。

最早プランBがやたら順調に進んでいるのが誰かの皮肉に思えて仕方がない。

 

実際にはそれとは程遠いのは理解している…だが、この状況が余りにも“詰み”のように思えて仕方がない。いいや、詰みだ…その時点で終わりだ。そうなのだ、そう決めたのだから。

 

後15分程の充電しかない光学迷彩を起動し、先遣隊の奴らに気が付かれる前にさっさとその場を離れた。

同時に骨伝導を利用し、内部メモリに保存されていた音声データを再生する。

 

使い過ぎたのか、データが破損してガビガビの砂嵐しか響かなくなったが…これを聞くたびに、不思議と足を進めるための勇気が湧いてくる。

 

 

勇気――――そんな建前、いいや…モノは言い様という事か。

実際のそれは自傷行為にも近い。あの時は何時もそうだった…折れて、妥協案に奔ろうとする自分を、この音声で何度も何度も“脅迫”した。お前(おれ)にベルカを捨てられるのか?スミカを捨てられるのか?まさか繰り返しの中で生きようとはしていまいな?と。

 

今の有様をみれば、それが何だったのか容易に想像もつくだろう。

目指すべき場所は確かにどんな犠牲でも払えるに値していた…ただ、負債の支払いについて見誤っていた。

 

 

――――砂嵐の中に一瞬だけ、掠れた親しい声(或いは“それらしき音”)が鼓膜を撫で、神経がぴくりと跳ね上がる。

分かり切った話だろうが…これが俺の蛮勇、その源だ。最早詳しくは覚えていないが、この時に語った夢の続きを見るため、ほぼ同一人物で構成された屍山血河を渡った。

 

でも…あの悪夢の残滓がこびり付いた時から、感じてしまった。

この強烈な黒魔術が、とうとう力を失う…その瞬間を。

 

 

 

 


それは、見も知らぬ誰か(自分)の悲願・夢だったのか?

だがその誰かは何処かに去り、自分だけが残されてしまった…何故己だけが苦しまねばならない。

 

怒りの訳は足りていた、復讐に値するには十分過ぎた…それらが悍ましき神秘と繋がったのも、当然の権利だと考えていた。


 

 

 

 

カムイ一行…もとい、三国連合軍は旧透魔領地にて既に活動拠点を展開。

入り口である大虚が時間と共に縮小するという事もあり、当初は限られた戦力のみの投入が検討されていたが、既に現地がデーモンの巣窟である事と、旧透魔について詳しいアクアが「まだ使える出入口がある」と言及した事により、最終的に十分な戦力が引っ張り出された。

 

しかし、そこではノスタルジックな感傷には浸っていられない。

個々での戦いを経て得られた良いモノは、確かにあった…だがこの地に今も残るのは悲しみだ。

 

 

多くの命が失われた…見も知らぬ無辜の人々も、それらを護るために戦った兵士たちも。

元凶たる透魔竜ハイドラの配下に扮し、水面下で対抗組織を指揮していた前暗夜王ガロンもここ(正確にはより下の世界)にて果てた。

 

そして…カムイ達にとって、より親しい者も…最後にここで見た時より姿を消している。

 

「ギュンター…何処に行ってしまったんだろうな…」

 

「はい…」

 

老騎士、ギュンター。

カムイの従者が一人であったが、同時にハイドラに半ば操られてその眷属になりかけた男。

しかしその干渉を、己の精神力を以て抗い続け、最後には剣で己の腹を串刺してその妖力を撥ね退けた、傑物と言うべき騎士。

 

彼らはその始終を見たっきり――ギュンター自身の喝もあって――その老騎士の前から去ってしまったので、生死は分からない。

とは言え、あの傷で…あの年だ。きっと助からなかったのだろう。しかしカムイ達は、その亡骸を見るまでは“まだ生きている”と思いたい気持ちを、心のどこかにそれぞれ抱えていた。

 

 

「カムイ陛下、先行していた密偵達による情報が纏まりました。

ご確認を」

 

「!…ああ」

 

呼ばれ、来た道を辿り戻る時…先ほど否定したノスタルジーをカムイは感じて居た。

しかしそれはこの場所ではない、遥か遠く…でも無いが、この地から離れた場所にある、北の城塞での記憶だ。

 

あそこには悲しみもあったが、同量の…いいやそれ以上の喜びさえあった。

しかしその過去に戻れはしないし、そこに答も無い。きっと彼は、当時に戻りたいとは一瞬たりとも思っていないだろう…今が良いとか、昔が良かったとかでは無く、昔は昔で…今は今。信じたモノを胸に、ただ進み続ける…そういう人間だ。

 

例えその道が、何かの意思により敷かれたレールの分岐だったとしてもカムイは決して折れない。

 

 

「こちらです。

詳しい説明はレオン殿下がするようなので、私は整備に回ってます」

 

「分かった。

ありがとう、ジンさん」

 

彼は案内された天幕に入った。

 

 

「兄さん、待ってたよ。

…にしても今回はアーマードコアとかの出し入れの問題があるせいでマイキャッスルだけの運用が出来ないのが痛いな…行軍の速度に影響が出そうだ」

 

「輸送そのものの速度は以前よりも格段に速くなっているから、十分釣り合うと思うよ。

それに人力だけじゃ到底倒しきれる相手でもなさそうだし」

 

主戦力が人並だったハイドラとは違い、今回は人10~20人が束になってようやく倒せるような化け物が敵戦力の最小単位だ。

 

「そうだね。

ついでに本題――つまり密偵からの報告――に入るけれど、どうやらここのデーモンは地上のより強力な個体が多いそうだ。酷いとライフルの弾まで跳ね返したとか」

 

「ライフルの、弾を…。

それが判明してるって事は、直接戦闘が?」

 

「やむを得ず…という事らしい。

でも、そのお陰で旧透魔領に蔓延っている奴らの詳細が大分分かった。これがその資料ね」

 

レオンはA4サイズ用紙によるモダンチックな形態の資料をカムイに手渡した。

どうやら撮影資料を添付するにあたって「その方が手早く作れる」として、技術者たちの協力の元に異界技術を使用したらしい。

 

「ともかく、ありがとう…次の会議で参考になるかもしれない」

 

「詳しい生態調査はやっていないから、そこまで使えるか分からないけれどね。

それと――――」

 

この一言の後、彼はまた密偵の結果報告を続けた。

 

 

 

 

一方、整備に回る…と言いつつ、現在気持ちの整理で荒れている(数日前まではレポートの整理で荒れていた)孫娘(スミカ)の様子を見に来たジンは今、研究資料の保管所へとたどり着いていた。

 

「スミカちゃん、居――――ないか。

そりゃそうだ…」

 

恐らく彼女は今、自室に引き籠っているのだろう。

例の、マーシレスの記録を全て確認し終えた後…あらゆる要素を含む疲労から、まるで彷徨う幽霊のようにここを去ってしまった。

 

その後に行ったカムイら指揮陣への報告はどうにか行えたが、それ以降の足取りについては最早何も言う事が出来なかった。

 

 

今はその際におざなりにされた資料室の後片付けだ。

どうやら彼の知らない間に、スミカ…或いは他の誰かが立ち寄った形跡があり、ジンの見慣れないモノが存在した。

 

「なんだ?この仮面。

…あー、そういや材質がどうこうって」

 

彼女の所属している技術解析局は未来的な異界技術の解析のみに目が行きがちだが、その実はこの世界には存在しない異界物質の解析も行っているのだ。テーブルに重ねられた、それぞれ【父】【母】【子】を示す儀式的な仮面もまたその一環なのだろう。

 

 

ジンがその仮面を退かすと、財団のマークがプリントされた冊子があった。

 

「全く…」

 

今回の一件で、彼はマーシレスに関する情報を多く手にすることが出来た…その意味では財団に感謝しているが、そもそもの原因と言えば財団が何処ぞのショッカー宜しくマーシレス(トウヤ)の身体を弄り回した事に発する。

 

けれどもその改造手術も、瀕死の彼を救うという名目もある事をジンは把握していた…何でこうも現実とは多極化するものなのだろうか。

 

 

そう彼是と悩むうち、あっという間に整理が終わった。

元から少々片付いていたようだ。

 

「…本当にACの整備に行く、か」

 

一まとめにされた三つの仮面を、意味ありげに机の中央に置いて、今度こそジンは野営地の整備場へと向かった。

 

 

 




第四節は基本的に準備の話やな…と思ってたけど、かなりトントンで進めたから、もしかすると次回にもなんか衝突を書けるかもしらん。

しっかし前回の展開からして、どうにか表情を取り繕えそうなジンは兎も角、割と感情が表に出がちなスミカとかどう描写すりゃええんやって…。


取り敢えず予定では多分7節か8節あたりで終いになるとは思います。ちゃんと年内に終わらせられればいいんだけど…























[タイトル:来年の事を言えば鬼が笑う]…再生開始



『――――ここか?』

『フッッッ…はずれ。
全然、違う』

『えぇー、本当にござるかぁ?
ホントにィ?』

『っ…ち、ちがうって、もう』

『いやもうアタリの反応してるんよベルカ。
ほら、ほら』

『やめっ…。
お、音が響くからッ…』

  [笑い声]

『わかった、わかった…から…フフッ…』

『はい、俺の勝ちー。
…アレ?何でこんな事してたんだっけ』

『…さあ?』

『うん。どーでもいいや…疲れたし。
横ォ、なって、おけ?』

『ええ、どうぞ』

『はーい失礼しまーす』

『…ねえ、所でマーシィ?』

『何でしょう?』

『少し…考えていたの。
戦いが終わったら、私達…どんな所に家を建てようかしら、って』

  [暫く沈黙]

『…変、だったかしら?』

『いや、いやいやいや、いや。
ただ単に…ベルカがそういう事気にするの、なんか珍しい…かなぁって』

『そう、ね。
変わったわ…私』

『本当に…さっきのアレもさ、昔じゃ提案しただけでドえらい目に遭いそうだし。
はは、は…』

『…』

『家、ねぇ…そんな未来が…

『?、何か?』

『あぁいや、何でもない。
んと、あぁ――――んま、適当言うと…都会は避けたいなーって。ぶっちゃけ近所付き合いとか出来る気がしなくってさ』

『えぇ。
でも、あまり町から離れると…買い物が大変』

『そこなんよ…問題。
…俺のツテ、どうにかつなげれば配達システムみたいな事やれるか…?』

『出来るの?そんな事』

『どうだろう。
まあ、やってみるさ…きっと…きっと…その上で、住む所はその時なってから考えよ?』

『分かったわ。
ありがとう…』

『あぁ…』



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ナニカサレタ男のマーシレス周りの人間関係表とか、そういう過去の振り返り的なの欲しい

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