十数年ほど前へFEif世界に拉致られたナニカサレタ男が自分一人の問題からくる戦争に挑むまでの過程とその結末を綴るだけの物語 作:エーブリス
FE新作、なんか銃もってる奴いたっぽくて「遂に来たか」と。
第一、今までも度々時代が進むクセに神がちょいちょい干渉するから?そういう進歩がなかなか見れなんだ。
引き返せなくなった者の…
『…正直な所、思ってはいるんじゃない?
彼、間違いなく限界が来ているって…』
『っ…』
『――――もう2か3年も前ね。
本当に彼がやったのか、疑わしいけれど――――ともあれ、国家の目を欺き、あれだけの大事を成し遂げた。
成し遂げて…しまった』
『…多分、マーシィだと…思う』
『そう…あなたが言うならば、きっとそうよね。
でも――――今はどう?同じ人間がやったと思えないくらい、次々とボロが出ている』
『…』
『犯罪者と、怪物との違いがあったとして…力が十分に発揮できていないのは事実。
フェイクにしたって、余計な混乱が起きる事を…彼が望む筈もない』
『…っ』
『やりましょう…手遅れに、なる前に』
『――――付いて来て、十分な武器がある筈』
漸く、あの時の選択に…自身が持てた。
左腕同士を鎖が繋いで、その上で向き合って。
やっとあの人の状態が分かった。
もうダメだ、お互いに限界だった。
一度見た顔だとは思った。
最初は確か…共同任務で、彼の“過去の手がかり”を失った後。
一頻り泣いて、泣きじゃくって、ついに泣き止んだ時の顔。
狂ったふりで誤魔化していた気力が、ぷつんと切れてしまった顔。
…いや、本当に狂ってはいたけど。
それでもマーシィは、きっと進もうとする。
何も成さないと分かって尚…。
相変わらず、強情だけなら誰にも譲らない。
だから、何時もと同じ。
あのヤケクソを…止める、目を覚まさせてやる。
…酷い言い草だけども、そうでもしないと。
きっと私しか、止められない。
「…今、いくから」
左腕の隣を後にした。
杞憂だとは思うけど――――死なないで、と願いながら。
【約一年前、日本にて】
「…ねえ、久しぶりに美人な幼馴染と会うのに、何か奢ろうって気は無い訳?」
「ほざけ、寝言は寝て言え、夢も寝て見ろ。
その
「殺す」
この、本当に見た目だけの女は…まあ、相変わらずで安心した。
懐かしいな、初めて会った時――――最初、この雪のような銀髪に一発で心を奪われたっけな。
けれど乱暴な性格が次々と露わになる度、どんどんと冷めていった記憶は今でも焼き付いている。
終いにゃ、コイツが女だって事も忘れちまった。
まあ、キレると直ぐ手が出る…というか足が出て関節もキメる女だったし。
何回か死にかけたよ、こいつのキャメルクラッチで。
でも今は…こいつのタイキックを、軽々と躱せる。
…まあ、躱したら躱したで、なんか虚しくなった。
喰らった方がこう、ノリ的に面白かったな…って。
「ほんと、帰ってこれたんだなって感じがするよ。
お前の…すぐ人を蹴飛ばす社不ゴリラっぷりが見れてさ」
「躱すな!
一々一々、人をゴリラゴリラって…!あと社不はアンタ程じゃないから!」
「そこまでゴリラ言ったら後一回ゴリラ言えよ」
ゴリラゴリラゴリラである。
学名だよ常識だろ、ヨーグルトの蓋の裏に書いてあっただろう。
「そんなんだからモテな――――クソっ!課程がどうあれ、結婚まで言ってるの本当に理不尽よね、アンタが」
「あぁ、ざまぁねえぜ…この手の話題で、お前に勝てたのマジ快感」
俺が結婚した話なんかは、もう1日前に済ませておいた。
驚かれたかと?当たり前だろ、女と縁遠い男だと思われてたんだから。
女がワナワナと震える様子なんざ、暫く振りに見たぜ。
まあ、あのヘタレプロポーズの事をうっかり喋った時は「やっぱりトウヤだわwww」ってクソほど煽られたのだが。
言わなきゃよかった、何で言ったんだ…。
そしてエレーナは…まあ、男なんざ出来ている訳がねえ。
借りに居たとして、長くは持たんだろうよ…持つようなのは筋金入りのマゾだ、ウチの娘みたいな。
…にしても、なんかコイツとスミカ、似てる気もするな。
んで、その幼馴染は今…なんかSNSで活動しているらしい。
その件を聞いて「護身術でも広めてるのか?」と、やはりゴリラ扱いしてみたら…うん、蹴られた。
まさかR指定な事してねえよな?してたら余計に笑うぞ。
「…まあ、いいやどうでも。
どうなのよ?その女と」
「え?あぁ、ベルカとは……まぁ、迷惑かけてばっかり」
突然、ベルカとの関係を聞かれて…ドキッとしてしまった。
そしてうっかり――――いいや、ちゃんと意識して、だな。
本当の事を話した…手短に。
なんか、ここで取り繕うと、余計に現実が辛くなる気がして…つい、本当の事を言っちまった。
どうせ揶揄われるんだろうな…と、目の前の銀ゴリラが、まるで鬼の首を取ったようになるのを何時までも待っていた。
しかし、コイツの口角は…何故か何時までたっても上がらない。
「…嗤えよ」
「笑えないっての。
どうせ、アンタも無駄に相手の事さ…気に掛け過ぎて、自滅的に追い込まれてるんでしょ?」
「…。
それはそうだけど、なんか自分もそうみたいな言い方、何?」
「ちょっと言い方、気にかけてくれてる相手にどうなのよ?」
「あぁ…。
悪い…、悪い」
「こっちだって心配してんの…本当に」
ゴリラが?と、茶化そうと思ったが…やめた。
エレーナが俺を本当の弟の様に心配してくれているのは、まあ昔からの事だった。
実際、コイツの方が“本当なら”歳一つ上だからな。
本当に、なんだかんだで気に掛けられている。
だからあの惨めな少年時代、こいつだけを辛うじて“味方”として見る事が出来た。
…だから、数年に一度しか会えなかったのが、本当にもどかしかった。
親に話せない事は全部こいつに投げかけた…後、俺が勧めたゲームを全部遊んで、ものの見事にハマってくれたのはエレーナだけだ。
…正直、今まで俺も気が立ち過ぎてたと思っている。
けど――――正直、茶化してほしかったのかもしれない。
そんな悩む事じゃないって…そんな事で悩む俺が馬鹿に見える、って。
もっとあいつの気が回らなければと…そう呪ってしまう。
…高望み、し過ぎかな。
余りに残酷な事を考えてしまった。
これをうっかり口に出さなくてよかった、こっちは気軽な殴り合いで済まなくなる。
結局、感情が“坩堝”っていう小難しい単語の模範例になってしまった。
そりゃ着地点すら見失いもする。
…自分の事が分からないのは、今に始まった事でもないが。
「…どういう子?あんたの、奥さん」
「なんだろな、先ず俺らの周りじゃ見ないタイプだわ。
口数が少なくて、周りを見る目も鋭くて…身内以外に微笑まない。
けど手が出るのは大分遅い、そういう」
「あぁ、ごめん…専門外。
いッチャン何考えてるか分かんないタイプ」
「専門出来る女とかいるんか?」
「…あんたに言うのは悔しいけど、ほぼ無し。
なんで分析で手伝いしようと思ったんだろ」
だろうな…と、心の中で頷く。
こんなナリと性格して、案外コミュニティー的にはマイノリティの女なんだよなコイツ。
先も言ったが、他人の色恋沙汰もあまり知らない筈だ。
…何時だったか、今度はこちらからエレーナの家に出向いた事がある。
昨今の国際情勢から見れば、コイツの家族はかなりデリケートな関係の上に成り立っていた。
いや別に家族間の仲が冷めきってたとかじゃ無くて…人種がな。
それが関係しているのか?俺にはてんで分からない。
だが、彼女は地域の児童コミュニティーからは綺麗サッパリ切り離されていたのは事実だ。
元より友達作りにくい性格だもんな。
覚えてるよ…いかにも「私、カースト上位なんです」って感じの女がさ、エレーナの事すごい蔑んだ目で見てたあの日の事。
そして、正しく自分が世界の王だと疑わない、カースト上位の男どもが投げた卵。
直後に鼻腔を刺激した臭いから、間違いなく腐っていたのだろう…それが眼前を通り抜けたあの瞬間。
…殴りに行けば良かったとは、今でも思っている。
いくら身体が弱かった俺でもあの時、直ぐに見つけた岩――だいたいダチョウの卵くらい――を手に応戦すれば、1人は持っていけただろう。
でも…エレーナは俺をずっと押さえつけた…自分の背中に隠す様に。
守ろうとしたのだろう、その方の比重がきっと強かったハズ。
…正直、それが悔しくて仕方なかった。
アイツに守られたことじゃない、アイツが守らざるを得なかった事が、だ。
…あ、いや、多分前者の事でも悔しかった。
俺が“鴉頭のマーシレス”になってからも、何となくこの記憶がチラついた。
記憶を取り戻した今だから「この事なんだな」という風にパズルのピースがはめ込まれるが…あの時はもっと漠然とした怒りだった。
西田幾多郎の言う純粋体験に似て非なる、理由が無いソレを言葉にすることはもう出来ないだろう。
暫く物思いに耽った後、現実へと返って来た。
あの日の俺が噛み締めた悔しさを…どうにも今度は、幼馴染の奥歯に食い込んでいる様だった。
こいつをフォローするつもりで「まぁ…」と、どうにか言葉を紡ぐ。
「なーんか、さ…一人娘がお前とクリソツなんだわ。
あの子との和解の時に聞くよ、お前の見解」
「娘…早くない?
でも、私と……そっか」
「…?」
ふと今までの生涯で、エレーナの放った、何か大事な主語を意図的にごっそり抜いた様な一言で…これまでコイツから全く感じた事のなかった空気を今この瞬間、読み取れた。
俗的に言えば“湿度”とでも言うべきか。
そういう加湿器女は結婚後、幾度となく出会って…その度にトラブルに見舞われたが、エレーナから感じるのはそれとは全く違う。
あの手の横恋慕に狂った女たちとは、根本から何かが違う。
何か何処か、言葉に出来ない所で“乾ききって”いる。
「黄昏ている」なんて言葉が似合うのだろうか。
…黄昏るような姿とか、なんかとんでもない話題が裏にある気がする。
ぶっちゃけ、なんだか「うわっ…」って感じの、寒気にも似た雰囲気が拭いきれない。
何でお前如きが黄昏れとんねん。
――――いや違う、幼馴染のそんな姿を見たくないだけだ。
彼女の強気だけが…俺の外殻だったあの頃からの感覚だから。
「…本題がまだだったな、俺ら二人でこんなとこ歩いて」
「そう、ね。
正直、話すのも怖かった。コレを言うと私達の関係が全部壊れそうだし、それに…」
信じてもらえないと思った。
そう…聞こえるギリギリの声がした時、周りは山道で、目の前には寂れた建物があった。
エレーナに夢中で、周りの景色など気にもしなかった。
途中なんだかえらく急な坂道を渡っている、とは思ったが。
彼女がドアノブに鍵を挿入し、施錠を解く。
「…ねえ、トウヤ」
まるで覚悟を決めた様な、幼馴染の表情に…流石に返事を躊躇う。
そうだ――――俺達は今日、旧友との昔話に花を咲かせに来たんじゃない。
ましてや、勝手に上手く行かなくしている、俺とベルカの悩みを聞いてもらいに来た訳じゃ、決してない。
いやそうして貰いたかったが…さっきので、どうも無理そうだと悟った。
「もし…私の口から、アニメやマンガの見過ぎみたいな説明されたら…信じれる?」
「…それが“大事な話”なんだろ?
お前が、まるで人でも殺しそうなくらいシリアスな貌して」
殺しそう…なんて言うが、間違いない。
もうすでに、済ませてしまった顔だ。
後、三流SFみたいな実体験なら…俺でも出来る。
「…教えろよ、真実ってのをさ」
「…結果として、すげぇ陳腐なSFが出て来た訳。
なんつーかなぁ、ほら、皆川亮二先生の作品で幾分か見たような…さ。
まあ、そんなのは受け入れられん理由でもない」
今俺が、思い出話を語るのは――――無数の銃口に向けて。
一体この…俺達の子供らが、どれだけ真剣に聞いてくれてるか何て、知りもしないが。
「でもよ、今でも喉つっかえてるのはさ…は、ハハッ……もう、あら無ェわ。
そう言う事だったのかって、ンなからくりがあったのかって。もうアホっぽい…」
吐き出す言葉に困って、感情をぶちまけるだけのマシーンに成りつつあった俺を、本当に子らはどう見ているんだ。
兎も角、話…というか、時間稼ぎは終わった。
そろそろ銃口に対するアンサーを、応報をせねば。
「…どうやら運命がカードを混ぜ、俺らが勝負するらしいぜ。
勝負は一度ッきり、という訳でもない。しかし俺は鬼札!知っての通りな」
さて、お前達は何だ?という問いかけは無い。
クソが、グレイのやつヘルシング見てこなかったのかよ、日本国に居たくせに…いやあの日本国、昔の戦艦が人型兵器に作り変えられたりしたけど。
…んな事ァ、どうだっていい。
自分で言うまでよ。
「――――お前らは何だ?
手元の札は、ブタか…あるいは革命か!」
あれ、革命って鬼札の強さ変わるか?
…自分の発言を見直す内に、1発の銃声が響く。
それを皮切りに、多種多様な銃火器のオーケストラが幕を開いた。
中にはショットガンもある…見間違いじゃない、強化人間の探知能力なめるなよ。
現に俺の後頭部と鼻先を、バックショットが掠めたのだ。
ショットガンの実践運用は俺か、俺の息が掛かった奴らの専売特許だったハズだが。
…間違いない、俺の隠し武器庫のモノだ。
ベルカはともかく、他に許可を出した覚えは無い!
お陰ですこぶるやり辛い…!
俺の世界でも一戦級の最新火器ばっか使いやがって、オマケに大口径のJHPとか小賢しい事も考えやがる。
「ッ…第一っ、殺すと覚えが悪いようなヤツばっかッ…!」
お陰で豆鉄砲一つも使えやしない。
「そりゃ良い事聞いたッ…!」
「ぬぉおッ…!」
現在、先のベルカに対する件で…義手が外れて、隻腕状態である。
その無くなった左腕側に、グレイが苦無片手に割り込んで来た。
「こっちはッ…!半分殺せと、親父たちから厳命されているッ!
じゃないと、あんた止められんからな!」
切っ先が眼前を掠める。
まあ掠めてるのは切っ先どころか銃弾、鏃、モノのついでに爪と牙まで何でもござれ。
戦場で言うのも今更過ぎるのだが、まるで危険物のデパートだな…と。
雑兵じゃこんな数の凶器に命を狙われる事は…いや、俺が居る限り、そうとも限らんか。
戦時中、死因が「仲間の遺体による打撲」は俺のせいで珍しくなかった筈。
一先ず、迫る苦無の刃をカランビットナイフで防ぐ。
「ッ…!」
「んー?一気に元気なくなっちゃったねぇ?
グ、レ、イ、くーんッ!!!!」
「んぐぉおッ…!」
強めに鳩尾を蹴ってしまったが…忍者の子だ、こんなので死んでもらっては困る。
後コイツには、向こうの日本で散々ナイフファイトを叩き込んだ。
…釈迦に説法?まあその、白夜の忍びには無い、現代マーシャルアーツ的な技術をね…。
教えて欲しいって言うから仕方なく。
何で俺がその手の技術持ってると思ったよ。
…ともあれ、だ。故にこのガキには刷り込まれている。
――――俺相手に、暗器同士の戦いは勝算が薄いという認識が。
そもそもカムイについて行った連中は皆、俺を仮想敵とする際…どうもグレソを持つ時より、暗器類、或いはサーベルを持つ時の方を警戒している様だ。
まあ自覚はある…あの大剣を持つと、どうにも動きが“お雑”になる。
余りの火力に、ついつい調子に乗ってしまうのだ。
それなりの猛者なら、その雑さに見える隙が大きいのだろう。
されども暗器は「CQCなら俺の方が上」という訳だ。
戦闘思考及び動作等のスピード全般そして精密性、及び素のパワー出力で勝りまくっている。
常人にスタプラのラッシュが対処できるかよ!
「――――キサラギぃ!
だからお前の矢は素直過ぎんだよ!タイミングがバレバレよぉ」
「うわぁあッ、跳ね返ったッ!?」
矢をジェダイのブラスター弾き宜しく、発射元へと返した。
そこには弓を構えていたキサラギが居た…鳩が豆鉄砲を食ったよう、ってのは正しくアレだ。
全く、人と獣は違うとあれほど…どうも“狩人”の勘が抜けていない気もする。
狙いがすこぶる良い分、コンピュータによる狙撃の予測も容易い。
…いや、狙撃のタイミングも完璧なんだがな。
単に俺との相性が悪い、というだけか。
そういえば…こいつの親父にも、ちょっかい掛け過ぎたせいで若干嫌われてんだよなぁ父子共々。
タクミ君とは若干、同じ穴の狢みたいな所がある訳だが…まぁ、同族嫌悪の類だな。
ま、向こうにも同類項だと見抜かれ、手痛い反撃を舌戦で喰らって泣き寝入りしたのも…クソみてーな記憶だな、忘れよう。
…と言うか、子世代全員来ているのか?
え、親の監修無し?いや…もうそういう年齢じゃねえのか。
いや…良く見れば、ちょいちょい居ないヤツがいる。
先ず魔導士系の奴らは居ないのは確かだ…まあ、銃が出て来た関係で後方支援みたいな色が強くなったのもあるが。
ぱっと見、うちの子…スミカは先ず見かけない。
今頃ACでも弄り回してるんだろうか…親父の。
そして思い出した順だとシャラも居ないな。
あのテンプレ根暗女、俺を“常人なら効果出る前に死ぬ”呪術の実験台にしやがったのはよく覚えてる…しかも戦闘中。
今思えばアレ完全に黒閃だったね。
そしてその弾みで、矢の雨(4~5本程度)から守ったマトイも見ないな…バリバリ前線の子なのに。
あの日から約2日半、彼女が俺を見る目が可笑しかった…惚れっぽいとは言うけどさぁ。
何なら結婚もしてスミカも生まれたタイミングなのよ、思えばここから面倒な横恋慕発生装置としての人生が始まった様にも思える。
んで、俺の大ポカを見事季語入り五七五に収めて表現したミタマも見かけない。
あの時はあんまりに見事だったので、怒るのも忘れて「おぉ、ワザマエ」と褒めたっけか…その後思い出してイラついた、4秒くらい。
――――随分気分の良い事考えるじゃないか、一番気持ちがダウンしてる時だってのに。
まさか帰りたがっているのか?あの中に。
…分かっているさ、いくら何でも。
もう自分でも、正直一人では限界だと思っている。
帰りたいよ…ぶっちゃけ。
だが、どう頭を下げればいい?
下げた結果、恐れていた事態が発生した時…どう防げばいい?
何より今更巻き込めるのか?
何のために一人で戦い始めたと思っている。
手遅れか?いいや…まだ先手は撃てる。
まだだ、まだ終わってないんだ。
「…今度はそっちが元気無くなってるけど?」
「んなッ…!」
俺のナーバスを知ってか知らずか、左脇からディーアが体術をねじ込んで来た。
このジェネリック竜崎も確か、当時スミカとつるんでた一人だったか…いやありがとうね、ウチの子の友達になってくれて。
正直彼本人とはあんまり関わりが無いので、それ以上は無い。
とは言え、徒手空拳の腕は父親のジョーカー並…いやもっと上だ。
オマケに母親のフローラ由来か、冷気的な力も混じってる…それでスケート紛いにスピード稼ぐの、ちょっと羨ましいしズルいだろ。
しかし寒いのは寧ろ好都合、ソフトウェアの動作が安定する!
「…甘いなッ!」
「うわッ!…グァッ」
「不用意にタイマン続けたのが仇になったな!」
一瞬の隙を突き、両脚を彼の首に絡ませた。
十八番のフランケンシュタイナーだ、ホントはこれで頚椎骨折からの全身強打で死に至るルートもあるが…まあそんな事できないので、プロレス的に優しくやってやるさ。
最後は変則ロビンスペシャルだがな!
――――が、ここで一瞬、素早く鋭い何かが俺の表皮を切り裂く。
「ッ
――――キヌちゃーん、今は遊ぶ時間じゃありませんよー?」
「うん、知ってるよ…だから全力なの、絶対止めるって」
「ああそう…言いつけ守れてえらいね。
もっと出鱈目に生きたらどうだ」
キヌ(変身済)を前に、体勢を直ぐに立て直す。
ディーア?食われた拍子に変なトコ投げちゃったな…確か後ろだった気がする。
直後、その後ろ方向からドスン!と、これまた変身したベロアが迫る。
どうもディーアは彼女が受け止めたらしい。
「もう騙されませんよ…臭いは覚えました」
「え、何の話――――あー、影武者ね。
アレ綺麗に引っかかってくれて、見てるコッチは面白かったぜ」
へっ…と、先の件を鼻で笑うと、それが逆鱗に触れたのか?えらい唸り声が双方より聞こえた。
しかし…流石にこの二人レベルの人外相手となると、流石に隻腕では厳しくなってきた。
――――仕方がない、もう切り札を出すか。
義手無しでやると、接続口が壊れるからやりたくなかったが…。
「…にしても2人そろって変身とは、ちぃとズルかない?」
「改造人間が何言ってんだ」
「グレイお前、半月は寝たきり生活覚悟しとけよ」
コイツなんか俺に噛みつきがちだよな…いや、色々事情は知ってますけど。
――――俺の体温が、急激に上がる。
視界の拡張現実でもアラートが出てるが、正直ソレが必要無いくらい体感で分かる。
「ッ…!な、何!この…海老焼いてるみたいな臭い!」
「おいキヌ、人が屁ェこいたみたいに言うんじゃねぇよ。
――――変身」
態々口に出す必要は無かったが…気分だ。
次の瞬間――――俺の身体が、燃えた。
正直熱いし、無茶苦茶痛い。
細胞を急激に変化させてるので当然と言えばそうだが…もっと苦痛無く出来んのかコレ。
「ッ!?!?!」
「お次は何だよ…!」
俺をキャンプファイヤーに見立てる様に囲むヒヨッ子達は、流石に燃えてる人間へと突っ込むだけの蛮勇さは持たないようで、それぞれの得物を構えて事態の進展を待っていた。
その内、炎も鎮まり…中から出て来た俺の姿に、恐らく驚く事だろう。
「――――ッ、また変な手品を」
「ま、マーシレスさんが…バッタのお化けになっちゃった!?」
「正確にはリオックやらアーマードクリケットやら…蟋蟀の類のDNAをな。
一先ず、コレでイーブン。左手も良好だ」
キヌや俺の説明通りだ、俺は今蟋蟀怪人みたいな状態になっている。
この状態になると、義手が無くても左手が生えて来る…指4本だけどな。
「…マジの化け物になったぞ」
「寧ろ化けの皮剥がれたってか…」
そして相変わらず、あの二人組は結構好き勝手言ってくれる。
纏めてエポニーヌのオカズになってまえ。
それはそうと…この姿になった以上、下手に手を出すと命に係わる。
またライブ感でやらかした。
どうするんだ…流石に経験豊富な九尾とマーナガルム相手でも過剰なレベルのスペックだぞ…我ながらこんなに力を蓄え、何に怯えているんだか。
いや、そんな問答とっくに答えを出した。
今の戦いの為に、無限に力がいると――――そう答えた筈。
その筈。
…。
ともあれ現状打破の一手を考えねば。
防御力もスピードもダンチなので、無理くり逃げる手もある。
真っ直ぐ走ればいいだけだ。
が…此処に待ち伏せされた以上、この前みたいな罠は確実にあるだろう。
またサイヤ人のトレーニングルームみたいな空間に放り込まれたくは無い。
「…仕方ない。
まだ遊んでやるよ――――1時間延長だ、俺が金出すぜ」
特定の誰かに向けるでもなく…この場全ての奴らに向けて、手招きを見せた。
「――――今日は、ありがとう。
知りたくなかったでしょ…こんな真実」
「いや、逆だ…知れてよかったよ」
「…」
「…」
「…。
――――やっぱ止めにしよう、このノリ。お前のショボくれてる所とか違和感で鳥肌立つわ」
「は?え…いやいや!だからって、どう切り替えるワケ!?」
「え?じゃあ…。
拉麺
「何でそれで流れ変わると思ったのよ」
「いや変えられるとは思ってなかった。
ただ…あんなん知った後でも、今まで通りにやりてーなっていう…なんだろ、願望?」
「…あんたこそ、そんな…何?ボケてない、キザっぽいセリフ、似合いませんけど」
「うるせ黙れゴリラ。
――――ほら元通り」
「取って付けたように言って…」
――――9つ。
それは、真の脅威となる数。
嘗て確かに…獣は、その地の奥深くに居た。
強大な漂流物の一つであったソレが、
そこでまた、多くの命を喰らった。
求めていた
…結局のところ、獣は“律され”たのだ。
嘗て自らを喰らった者によって。
…世界の業と、8名の若き勇士たちの“色”を掠め取りながら。
そして今、光と闇の世界にて…彼らは脅威となる。
「――――見えた、先ず1体。
狼だから…【零落の雪狼】か」
「何が零落しているのか、さっぱりわからん程に見事な佇まいだな。
子分であろう他の狼型からは想像もできん」
「全くだ、マークス王。
俺よりも“白夜王”然としている」
父シノノメの白鎧を受け継がず、未だ昔からの赤構えを纏うリョウマが語った。
「…リョウマ兄さん?」
「安心しろ、冗談だタクミ。
所詮獣如きに負けはせん」
旧透魔侵攻が始まって数日…カムイ達は前の戦闘より、多大な情報を得た。
その情報と照らし合わせる様に、遠方を観察する。
「次は…あの巨獣のような灰色は【斬り拓くもの】だね。
正直、一番みずぼらしい…なんだか名前負けしている気もするが…」
「とは言え、あの四肢の太さと巨体だ…膂力は明らかに脅威だろう」
彼らが見る2体の、より大きな四足の獣。
それぞれ【犬型】【犀型】のデーモンと酷似していた…尤も、それらより強力そうな見た目ではあるが。
おそらく、これらの主なのだろう。
途中「お待たせ」と、別の作業より戻ったカミラ及び、同行していたジンが合流。
彼女は次なる“主”を指差した。
「あの巨大な蝶々…【クリア・レイディ】だったかしら?
アレに対抗するための対空設備、いつでも出せるわ」
彼女が言う通り、その巨大アゲハとも言うべき佇まいは、言うまでも無く【飛行・蝶型】の主だろう。
「ありがとう、カミラ姉さん。
後は…そこの【疾風の鱗殻】か。似たようなデーモンが確認されているのは」
そしてカムイが視線を向けた先には…橙色をした巨人が居た。
怪物たちの中では珍しく無機物的な外見は、彼らの感覚で言えばAC…そしてこの世界に古来よりあったゴーレムに近いものだ。
そして、この地に降り立ってより確認された、射撃を行う【人型】に酷似している。
次いでジンが、視線の先に居る“黒兎”を見て呟く。
どうにも記憶の中にある類似物がチラつくようだ。
「アレどうみても黒いウルクススだろ…」
「…?
もしかして【黒きカルバノグ】の事か?」
「!、はい…ヒノカ王女。
まあちょっと記憶の中にある、兎の怪物と被りましてな…」
「成程、カルバノグというのは怪物の名か…」
「(あ、そっちじゃないけど…まあいいや)正確には、その怪物が住まう場所です」
多少の雑談はさておき、今言及された黒きカルバノグなる大兎には、配下個体と思われる群れが確認されていない。
しかしそれは、先の斬り拓くものが他の犀型を伴っていないのと同じく…特に群れるような習性が無いだけの可能性もある。
いずれにしても気は抜けない。
…だが、現実はそれ以上の非常事態で塗れていた。
「【蒼涙の女王】【双牙龍】【憎悪せしメキ・ナンキ】【クレナイゴゼン】。
この場に全部いるぞ…それぞれの縄張りから出ないハズでは?」
「ああ…少なくとも“左腕”には、そうあった」
多少の憂いを孕んだリョウマの目先は…パソコンの画面へと落ちた。
その本体が接続されているのは、まごう事なき文字通りの“左腕”だ。
…そう、先の交戦において、マーシレスが逃走の為切り離した義手である。
ソレ自体が実は、彼と様々な機器を有線的に繋ぐ接続端子であり、尚且つ大型の電子記録保存機構でもある。
ベルカが持ち帰ったそれを軍の情報部隊が解析…やたらに厳重だったプロテクトを突破し、漸く手に入れた情報。
それが9体の“領主”という、倒すべき敵の名前と…。
「まあ、どっちにしろ全員倒す予定だったからね。
流石に一網打尽とは行かなそうだけど、今回で一気に2か3体葬れば上出来じゃないかな」
「うむ…そして9体全員を倒した後、現れる――――」
全ての元凶である“根源”の呼び名。
カムイは画面をスクロールし、その項目を映す。
彼はマークスの言葉に続ける様に、そっと…誰に聞かれるかのギリギリという怖で、呟いた。
「――――【古き獣】」
そうだ、どう変質したのであれ…デーモンの主とは、かくあるべきだ。
それに挑む為、人の知恵は白き亜神を生み出した。
やがてそれの中核は467個へと増殖し、それに伴って
人の記録が覚えていない、太古の王勢を…時代ごと取り込みながら。
…故に“律”は現れた。
だからこそ、獣は御された。
…誰に。
この際なので子世代との関わり書いてみたけど、マーシィのダメ人間っぽさがなんか…。
ナニカサレタ男のマーシレス周りの人間関係表とか、そういう過去の振り返り的なの欲しい
-
ほしい
-
いらん
-
ガンイージ(無効票)