十数年ほど前へFEif世界に拉致られたナニカサレタ男が自分一人の問題からくる戦争に挑むまでの過程とその結末を綴るだけの物語   作:エーブリス

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今回、少し前後編の分け方変えます。


あこがれとしかばねのけものみち

 

そのコックピットには、ありきたりな操縦桿や各種ボタンなんて存在しなかった。

あるのは少し座り心地の悪い椅子と、俺の神経に直通する様々な管のみ。それを通して、俺はカイザーを文字通り手足の如く操れた。

 

だからなのか、大気圏を突破する際に発生する熱量を直に感じれている気がした。

 

 

――――あの瞬間、溢れて来た感覚は今でも覚えている。

まるで宇宙戦争映画のような光景に、相変わらず飛び込んでくる複数の無線。中には俺の返事を求める声もいくつかあり、久しぶりに耳と目を閉じ、口を噤みたいとかんがえそうになった。

 

一先ず身体が先に動いてくれたのは幸運だったのかもしれない。

 

無数の化け物に守られて、地球の軌道上を漂い落ち始めたクレイドル。人類の代わりに“爆弾”を詰め込んだそれを一つでも逃せば、もれなく地球は緑豊かな惑星から高温ガス溢れる惑星に…最悪の場合、第二の太陽とも言うべき超高温高質量の恒星と化す。

 

…カイザーのスペックには、感謝しかない。

お陰で1つ2つと、クレイドルを潰していくのにはそこまで苦労しなかった。

 

 

胡散臭い専門家の「爆弾が起動する前ならば無茶しても問題がない」という言葉を信じ、漸く最後の1つに取りかかろうとした時には…少し遅かった。

 

遂に爆弾が起動し、今までのような無茶が一切出来なくなった。

かと言ってこの質量を前にどうすればいいのかも分からない…俺はヤケクソになって、クレイドルを押し返そうとした。

 

 

無論、あのデカさだ…カイザーとて、結局十数m級のメカでどうにか出来るようなら最初からもっとどうにかなっている。逆に諸共押し流される内、大気圏の中に再び突入した。幾つかの背部機関が熱でやられ、アラートがコックピット内に鳴り響く。

 

ダメだと思いながらも、それでも無駄に腕に力を入れようとする。戻る道さえ焼き尽くした男の非力なる悪あがき…本当は、其れはそんなもので終わる筈だった。

 

 

機体爆発の一歩手前…アレに“繋がる”事が無ければ。

 

 

 

 

 

 

「ッ…!

…ったく、夢見が良いんだか悪いんだか」

 

今朝見た夢は、そんな懐かしい内容だった。

スマホのアラームを止め、脱ぎ散らかしていた服を一つ一つ身に纏って、最後に3年前から愛用している戦闘服を蒸着した。

 

あの戦争の後も、俺は自分の身体のアップデートを際限なく続けた。嘗て俺から俺の証明を奪い、代わりに手にしたちょっとした力の行使で内からも外からも“不確かな存在”となり、個を喪失し続ける者としての生を強制したこの身体を憎んでいたと言うのに…今やこの身体が齎す力に俺は依存し切っている。今やこの力が無ければ…いいや、更に強くしなければならないという強迫観念の中で生きている。

 

或いは“マツダ・トウヤ”という嘗ての自分を取り戻し――――否、其れよりも以前に“マーシィ”という、誰かに愛されていて心地のいい自分(ゴースト)が生まれた事で身体(シェル)への執着が無くなり、何かのタガが外れたのだろうか。

 

 

今では銃撃補正もかなり強化されている。

相変わらず超長距離射撃には向かないが、それでもSMGやPDW…そしてショットガン等の比較的交戦想定距離の短い銃火器ならば万全に扱えるだろう。

 

お陰で――逃げた先の世界の問題もあったのだが――めっきり大剣等の特大近接武器を持つ機会も減り、最近の主武装といえばこのブルバップ式ショットガン…所謂KSGだ。ちょっと前まではサイガを使っていたが、バカみたいにマガジンを使い切ってはその辺に捨てていたが為に在庫が無くなってしまったため、あえなくチューブマガジンタイプを再購入した。

 

 

どうであれ、AKやその他レトロな前装式ぐらいしか出回っていない世界だ。

そう言った訳もあってショットガン1丁でも3年前のアレではどうにかなった…だがカラシニコフの流出さえなければもっと事態は楽だっただろうし、そもそもあんな事をする理由もなかった。

 

「次はブローニングM2でも買うかね…」

 

俺はこの秘密基地兼火薬庫の片隅で、KSGに10ゲージショットシェルを装填した。ああ、言い忘れていたがこのKSGには独自の改造を施してある、なんせ強化人間のボディで中々無茶もできるので普通なら肩が外れるような代物も使いたい放題だ。

 

弾代が嵩むのが悩みだが…。

 

弾の装填が終わったKSGにショルダーベルトを付けて肩にかけ、予備のリニア機構付きモーゼルハンドガンを腰部背面ホルスターに。そして“奥の手”と“更に奥の手”を脚部ホルスターに装填した後、鞘に納刀された高周波ブレードを手に取った。

 

「…一応こいつも、か」

 

この高周波ブレード、高周波機構の方は財団経由で用意した自前のモノだが、日本刀の部分は貰い物だ。ある日本の海軍機関に所属していた時の部下からの貰い物で、元はと言えば艦載砲の火力で初めてちゃんとしたダメージを与えられる化け物を叩き斬るためのものだ、切れ味も耐久力も白夜で手に入る業物とでは比べ物にならないだろう…。

 

 

何から何までオーバーキルな武装の数々だが、最悪この身一つで大軍と戦わなければならないのだ…まだ足りないくらいである。

 

最後にククリナイフとカランビットをそれぞれ取り出しやすい位置にマウントし、各種予備弾薬をセットして一連の準備が完了した。そして出ていく前にノートパソコンを弄り、銀行を通して“家主”に家賃を支払った。

 

 

思えば、かなり久しぶりに自我や自意識、自己証明の哲学を語ったような気がする。元はと言えば記憶…正しくは自己証明を失った自分が、自分らしさとかそう言った個の保全を保つための方法を模索するために始めた事で、結婚してからは一切やっていなかった。

 

それは彼女が俺のゴーストを補完してくれている事もあったのだが、それ以上に自己犠牲に勤しむ機会が多くなった事だろう…皮肉なもんだ、己が個を護り続ける為に自己中心的に行動していた男が、今度はごく少数だが他を護り続けるために自己を削り続けるとは。

 

 

…いや、あの利他的行動も結局は、自分を観測し続けてくれる第三者の確保という、極めて利己的な行動だったのかもしれない。

 

何を突き詰めても結局自分のため。

(鴉頭)の事を知り、今更武勲を立てる為にベルカとスミカを巻き込んだ奴らをカイザーで握りつぶしてから…目に映る全ての無法者で屍山血河を築き上げたのも、鴉頭の都市伝説を完全に闇へと葬り込んだのも、そして己という鴉頭の実存在を消す為に他世界に逃げたのも、家族の為のようで…結局は自己中心、いいや自己満足だったのかもしれない。

 

誰か教えてくれ…俺は何処まで利己的に生き続けるんだ?

 

 

 

 

 

 


 記録L:2022/4/1

ID:001SAURONNO09RAVENHEAD

俺はここにいる -・・- -・ ・・ ・-・・・ --- ・--- ・・-・- ・--・ -・・・- ・--・ ・--・ ・・ -・-- ・-・-- ・・・- ---

備考:


 

 

 

 

 

 

「どうした、何があった!?」

 

たった今、現場に黒鎧の騎士が到達した。

彼こそが現暗夜王国国王、マークスである。

 

「ま、マークス様!?

あ、アレを…」

 

質問を受けた兵士は、最早語るより見る方が速いと言わんばかりに前方を、ほんの少しゆっくりと指差した。

 

 

確かに論より証拠ではあった、これ以上に付随する情報が無いのなら。

…醜く太った怪物と、全身あちこちが光る鋼鉄の怪物が戦っている。そんな事を説明されただけでどれだけの人間が信じられるのだろうか?

 

「なんだ…あの生物は」

 

「分かりません。

しかし…あの鋼鉄の化け物は、何でも町の中から現れたとの事で」

 

「町の中、だと…?」

 

マークスは町の方角を振り返った。

確かにそこには、あの鋼鉄が驀進してきたであろう痕があちこちに、且つ一直線に残されている。

 

「何故あんなものが…いや、今はいい。

ではあの、鬼か悪魔のような怪物は?」

 

「そちらは全く分かりません…詳しい調査をしようにも、あの暴れようでは」

 

「ああ。

機甲兵部隊はどうした?到着していないのか?」

 

機甲兵部隊とは、三大国が少数保持されたマッスルトレーサー及びにアーマードコア(ノーマル、V仕様)の部隊である。

今までにない…ある種の常識等を覆しうるとして国王他数名の有識な権力者による慎重な運用が国際条約において義務付けられている。

 

「いえ、既に到着しています。

ですが2体が争っている手前、同時に相手するよりどちらかが力尽きてから攻撃を加えた方が安全であるとして、現在周囲の街や村に被害が及ばない様に警備に当たっております」

 

「そうか…ありがとう」

 

今回、機甲兵部隊が現場に直行出来たのは先週の首脳会談後の警備規定により各地に常駐していたためである。実は少し現場の判断が混じっており、下手すれば軍法会議モノだが…まあ、マークスの裁量次第だろう。

 

 

「一先ず通常の歩兵、騎兵の部隊も…引き続き怪物の包囲に当たるように」

 

「はっ!」

 

伝令を受けた兵士が走り去るのと同時に、マークスもまた神器ジークフリートを握りしめた。

そこへもう一人…彼と同じ黒い鎧を身に纏った成年が騎馬を駆りて近づいてくる。マークスの息子、ジークベルトである。

 

「父上!」

 

「ジークベルト!?

何故ここに…」

 

「緊急事態と聞きつけて、ここに。

――――あれは、怪物!?」

 

2匹の怪物を見たジークベルトが咄嗟に討伐へと駆け出そうとするが、寸での所でマークスが「待て」と彼を制止する。

 

「何故です!?

あのままではいずれ町や村に被害がっ…!」

 

「今、あの怪物共は互いに争っている。それを同時に相手をしてはこちらの被害は計り知れん」

 

その言葉で、ジークベルトは父親の真意を知った…何であれ、今は(町に被害が及ばぬ限り)静観を貫く他ないのだ。

 

「では、他に何かっ…」

 

「今は待つのだ、ジークベルト。

逸る気持ちは分かるが…待つしかない」

 

直後の事だった。

鬼か悪魔のような怪物――――デーモンが、鋼鉄の怪物――――スカヴェンジャーの脳天に棍棒を振り下ろし沈黙させた。そのままデーモンは念に念を入れるかのように、執拗に棍棒をひれ伏すスカヴェンジャーへと叩きつけた。

 

金属が拉げる音と共に、飛び散った金属片が周囲に撒き散らされていく。

どう見たって、既に決着はついている…が、ここで動き出すのは早計だ。

 

 

やがて、デーモンが棍棒を振り下ろす手を止めたかと思えば、スカヴェンジャーの死体(便宜上、このように記す)に蹲った。

 

「あの怪物、一体何を…?」

 

「分からん…。

――――いや、まさか」

 

眉を顰めるマークスは、この時かなり強烈な悪寒を感じて居た。

嘗ての戦争で常軌を逸す存在を見て来た彼には、デーモンがスカヴェンジャーを“食べて”いるように見えたからだ。

 

そして、食べてどうするのか――――それの結論に至った時、彼は飛び跳ねる様に駆け出した。

 

「ち、父上?

一体何を」

 

誰か!誰か機甲兵部隊に指示を送れ!

あの怪物を今すぐ攻撃させろ!さもなくば手遅れに――――

 

マークスが臨時司令部に駆け寄り、怒号を上げた。

その瞬間――――デーモンのいる方角から生々しい破裂音が響き渡る。

 

遅かったか、と…マークスが冷や汗をどっとかきながら、恐る恐るデーモンを見た。

 

 

しかし何という事だろう…デーモンは立ち尽くしたまま、全く動いていない。

それどこか…頭部が丸々吹き飛ばされている。

 

死んだのか?だとして、誰が殺したのだろうか…破壊の痕からして機甲兵部隊の者によるとは推測できるだろう。念の為、マークスは魔術師たちに魔術が使われた痕跡を尋ねると、魔術師たちは首を横に振った。

 

 

「…既に、指示を出していたのか?」

 

マークスが全部隊の責任者に問う。

 

「いえ、我々も静観を貫いておりました」

 

「では…部隊の誰かが勝手に攻撃を?」

 

「その可能性もあります。

しかし…ここでは無線が通じないので確認は後になります」

 

「…分かった、そのまま死体の処理及びに周囲の警戒を引き続き頼む。

方法はそちらに任せるぞ」

 

「はっ!」

 

マークスは責任者に指示を出した後、再びデーモンの死体をみた。

 

 

彼の予期した通り、デーモンの体表にはスカヴェンジャーの両翼のような身体的特徴が生まれつつあったように見える。

 

結局は未然に終わったが…あの後、静観を続けていたらどうなっていたのだろうか?それを考えるだけでも恐ろしい。そして本当に機甲兵部隊の誰かが攻撃したのだろうか?よくよく考えてみれば近場で銃声は聞こえなかった…あの時マークスもまたかなりの大声を上げていた事もあるが。

 

「…。(或いは…)」

 

彼は背後を振り向き、遠い遠い山の頂を見つめ続けていた…。

 

 

 




本当はここでカイザーがすっ飛んで来ても良かったけれど…此処で出しちゃうと流石に早く進み過ぎちゃうというか…。

ナニカサレタ男のマーシレス周りの人間関係表とか、そういう過去の振り返り的なの欲しい

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