十数年ほど前へFEif世界に拉致られたナニカサレタ男が自分一人の問題からくる戦争に挑むまでの過程とその結末を綴るだけの物語   作:エーブリス

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もう一気に盤面進めちゃいましょうか。


別の日が来た時に

 

この1か月は、世界の軍事・政治が大きく動いた期間であった。

それは嘗ての【審判の季節】を思わせる激動っぷりで、世を知らぬ無垢な子どもにさえ暗雲の訪れを思わせる程だと、後世の歴史家達は語るだろう。

 

 

先ず、これまでかなり限定的な運用がされていた各国の機甲兵部隊は、デーモンによる被害拡大に伴い、国境…及びに都市部、農村部問わない有人地域の、デーモンに対する防衛に限り、多少の主体性が部隊ごとに認められる。

これ以降、時折V系アーマードコアが郊外や農村部周辺をパトロールする姿や、ノーマル系が都市部で定点的に警備する様子が多く見受けられるようになった。

 

また約1m未満の小型デーモンが確認された事も受け、以前より対ノスフェラトゥ部隊として活動していた、中立的な国際武装組織がそれらの小型デーモンも討伐対象に含める事を宣言。

同時に部隊における閉所戦闘の多さから、それに対応するため一時期ピストルカービン*1を試験的運用していたものの、9x19mmパラベラム弾や7.63x25mmマウザー弾といった拳銃弾の威力の低さ、及び貫通力不足から不採用となり、最終的に一先ずは通常の歩兵銃と使用弾薬を同じくするカービンライフルが採用される運びとなった。

 

そして、各地で出没する怪物に“デーモン”という共通の呼称が与えられたのは、正しくこの時期であった。

 

 

事は何も暗い話題ばかりでは無い。

三国は民衆の不安を緩和する為、技術解析局が復元した投影機(プロジェクター)を用い、各国王都にて娯楽目的の映像を公開。フィルムは異界から流れて来たものをそのまま流用した。

 

どこまで民の不安を取り除けたかは不明だが、映像の中にあった怪物を退治する英雄は、人々の密かな希望であった事は間違いない。

 

 

無論、表立った動きばかりでは無かった。

三大国だけでなく一部の諸公国*2の情報機関が幾つかの確定的な情報を基に“鴉頭”マーシレスの捜索、及びに本件との関わりの調査を開始した。

 

記録によれば、大陸のほぼ全土において忍びの者の活動が見受けられたとされている。

また、(知らずのうちにマーシレスに対し不覚を取られた)ゼロが指揮する暗夜隠密特殊部隊もまた自国内だけでなく白夜や透魔といった王都の影を渡り歩いていた事も確認済である。

 

更には技術解析局のもう一つの功績である、監視カメラを用いた調査も行われたようだが其方は大した効果を上げられなかったという。

 

 

 

 

 


塵芥

寄る辺

忘却


 

 

 

 

「成果は…たったこれだけか。

カメラ、とやらはどうだ?」

 

「ダメでした。何も映らなかったようで…」

 

「クソッ…!

骨折り損か…ッ」

 

ある場所の野営地。

サイゾウは机に並べられた数々の証拠品を忌々し気に見つめた。

 

「いや、寧ろこれだけ物品を揃えられたのが奇跡だ。

業腹だが…情報戦に置いて奴に敵う者など限られている。これ以上は望めん」

 

「カゲロウさんの言う通りです、兄さん。これだけでも手がかりにはなり得ます」

 

激昂しかけた兄を止める様に、スズカゼが証拠品の一つ――――使用済みの注射器を手に取り、解析を始めた。

 

 

「スズカゼ…ソレが何か分かるのか?」

 

「いえ。

しかし、形状と痕跡からして、何か液体を体内に入れる道具の様ですね」

 

「液体を、体内に…薬か?

だとすると、これは――――」

 

「――――医療器具か。

しかし中身はなんだ?」

 

「カゲロウさん、ちょっとみせて」

 

カゲロウの近くにいたミドリコが、注射器の中に残っていた液体を調べ始めた。

少なくとも、彼女以上に薬学に精通した者はココには居ないだろう。

 

 

「何か分かりましたか?ミドリコ」

 

「うーん、ほんの少しだけ…“芥子”のにおいがするよ」

 

「芥子…というと」

 

「鎮痛剤や鎮静剤の主な材料ですね、麻薬の材料となる事もありますが。

考えにくいですが、何か耐えがたい苦痛を感じて居たのでしょうか…?」

 

「そうだとしても肉体的なものではないだろう。

心臓を貫かれても再生して平然と生きている男だ」

 

「でもね?芥子のにおい以外にも色んなにおいがしたの。

だから…痛み止め、って決まったわけじゃないとおもう」

 

「むう…。

何にせよ、これ以上この道具から得られるものはない」

 

注射器の解析を打ち切ったサイゾウは、次に血の付いたメモを手に取った。

しかし、そこに記述された文字が余りにも読みづらく、皆は思わず「汚っ…」とつぶやいてしまった。

 

 

「…まあいい、マーシレスの悪筆は昔からの話だ。

正直、気が滅入るが…解析を始める」

 

そう言って、3人がメモ用紙を注視し始めたその時だった。

――――外で見張りをしていた衛兵が、天幕の中に入って来た。

 

「何用だ」

 

「はっ!

ただ今、暗夜の情報分析官が到着いたしました!」

 

「分析官…?

取り敢えず、こちらに」

 

「はっ!」

 

衛兵が入り口を開けると、長髪の女性が天幕内に入って来た。

…それは彼女が自己紹介をするまでもなく、ここにいる4人が良く知る人物であった。

 

 

「技術解析局暗夜支部からマークス王の命で来ました、スミカです。

…と言うより、お久しぶりです」

 

「お前は…!」

 

「スミカ―!ひさりぶりー!」「ええ、久しぶり。ミドリコ」

 

やってきたのは、渦中の人物・マーシレスの娘であるスミカであった。

 

 

「早速ですが、父が残した物品はこちらに集められていると聞きましたが」

 

「ああ……丁度良かった。

スミカ、これが何か分かるか?」

 

そう言ってカゲロウがメモを手渡す。ソレを見たスミカは嫌悪感を隠す気も無く「うっわ汚ッ」と――それもかなり大きな声で――言い放つ。その直後に彼女は咳払いをし、改めてメモを見た。

 

「これは…構図からして、スケジュール表かと。

父はしょっちゅうこの書き方をしていました。最も、書いたら書いたで、結局自分でも読めなくなり、放置するのが常でしたが」

 

「読めるのか?」

 

「そうなってくると、また話が違います。

何せ、いつにも増して汚いモノですので…どうせ左手なんかで書いたものですわ」

 

そうやってすぐ横着する人ですから…と、スミカはメモの中から比較的読める文字をピックアップした。

 

「ここ、ギリギリ読めますね。

ケ、モ、ノ…と。何を意味するのかはサッパリですが」

 

「確かにスミカさんの言う通り、予定表にも見えなくはありません。

この下を指す矢印、きっとこちらに記載した内容を順番に行う趣旨があったものでしょう」

 

「ホントだ…」

 

「しかし肝心な内容が全く分からんな。

丸められた跡からして取るに足らん覚書だったのではないか?」

 

「断言こそできませんがそれも在り得るでしょう。

この落書きの精査はそこそこに、次の物品に取り掛かった方が有意義であるかと」

 

「確かにその通りだ。

しかし…残るのは、訳も分からぬ絡繰ばかりだが…」

 

カゲロウは残りの証拠品に視線を移すが、そこにあるのは凡そこの世界では作り得ない、日本でいう所の平成前後で作られたようなハイレベルな電子機器ばかりであった。

 

 

スミカはその一つを「これならば分かります」と臆することなく手に取り、ガチャガチャと操作を始めた。

 

「あ、それミドリコもしってる!

確か“ぼいすれこーだー”っていうんだよね?」

 

「そう。名前の通り、収集した音声を大体そっくりそのまんま記録する道具よ。

何なら音声の収録や記録に使われている技術を一つ一つ説明してもいいけれど…流石にそんな時間も無さそうね」

 

その内、彼女はボイスレコーダーの再生の準備を終え、直ぐにでも音声を流せる状態にした。それを察したスズカゼとカゲロウは周囲の衛兵に余計な物音を出さぬよう指示を出す。

 

「では…」

 

再生ボタンを押されたレコーダーは、自らのメモリに保存されていた音声を吐き出し始めた。

 

 

 

…最初に雑音に塗れて流れたのは、この世界では全く馴染のないロック調の音楽だった。

 

『――――――…~♪』

 

次に聞こえたのは、曲に合わせて歌詞を口ずさむマーシレスの声だった。

何故自らの人生を引っ掻き回しているのか?いつになれば自分の心が癒えるのか?そんな意味を含んだ歌詞を、しかし此処に居る誰もが聞き取る事は無かった。

 

そして暫く曲が流れ、それが終わるとゴソゴソと何かを漁る音がする。

 

『また、次の日が来るとき…ね』

 

意味を多く含むような呟きの後、どすっと何処かに勢いよく腰かけるような音が鳴った。

ここまで大した情報も無く、5人は次第に諦めかけていた――――その時だった。

 

 

『明日はコウガ公国国王の白夜訪問でそこらじゅう…。

ハァ、どうすっか…』

 

「…オイ。

聞いたか?」

 

「アシュラさんの、白夜訪問…それを口にしたという事は、つまり」

 

「襲撃か?

いや、そういう男ではない…ハズだが…」

 

突如として飛び出した重要な一言に、周囲は騒然とする。

スミカはこれを受けて一度レコーダーの再生を止め、自らの見解を述べた。

 

「確かに、これだけ聞くとアシュラさんの襲撃を企てている様にも聞こえますが…カゲロウさんの言う通り、父の動機を鑑みるにその可能性は限りなく低いと思われます。

恐らく父は不用意に秩序が乱れる事を望んでいません」

 

「動機?

スミカ、貴様何か知っているのか?」

 

サイゾウが若干詰め寄るようにスミカへ問いかけるが、彼女はそれに臆することなくハッキリと口を開いた。

 

「少し、長くなりますが――――…ッ!?」

 

 

――余りにも突然の事だった。

 

ズドン!と…腹にズッシリ響くような轟音が彼女の話を遮る。

天幕にいる皆、何事かと周囲を見回すように狼狽える内、先ほどスミカを案内した衛兵が天幕へと突撃してきた。

 

 

「た、大変です!

野営地に、で、デーモンが!!」

 

ウソでしょこんな時に!

 

サイゾウ、スズカゼ、カゲロウ、ミドリコらがそれぞれの得物を手にするのと同じように、スミカもまたアタッシュケースから――銃火器にも似た――物々しい機器を引っ張り出した。

 

「それは…?」

 

技術解析局(ウチ)でも特に研究の進んでいない非実弾式射撃兵装(レーザーライフル)です。

壊れると大目玉確定ですが、一応許可は取って持ち出しました。火力も高い上に、魔法なんかと違って撃つ前にペチャクチャ詠唱しなくて済むので」

 

「スミカ…いちおう魔術師、だよね?」

 

「だからよ」

 

 

「何と言うか…随分用意が良いと言いますか…」

 

「“こんな事もあろうかと”は出来るだけ言える様にしとけと、父から教わりましたので」

 

和マンチ上等、それがマーシレス一家の家訓であるようだ。

 

 

それは兎も角、5人が外へ出ると野営地はかなり混沌としていた。

流石に兵士達が蹂躙されて地獄絵図とはなっていないようだが、あちこちで鳴り響く銃声と、迫り来る犬型のデーモンや獣人型のデーモンが皆から現実感覚を奪っていた。

 

しかし、何時までも圧倒されている訳には行かない。

スミカは直ぐに獣人型の頭部に狙いを定め、何の躊躇なく咄嗟に引き金を引いた。

 

 

最初の一発は、獣人型の4つある目のうち1つを貫通しただけに留まったが、続く第二射で脳天を貫き絶命させる。

 

「意外と脆いわね、アイツ」

 

「敵、第二波接近!

後方からです!」

 

「ウソでしょ!?挟撃されてんの!?」

 

一般兵士の報告に、スミカは驚愕の表情を隠せなかった。

 

 

「何なら後方からの増援の方が多いぞ…マズイな…」

 

「ああもう!

クソ!クソ!全員ヘソ噛んで死ね!このッ!」

 

彼女がキレるのも無理はない…後で分かった事だが、今回確認されたデーモンの数はそれ以前の最高記録の約2倍。全体のデーモン出没記録から見ても上から3番目に多い数であった。

 

 

そんな大群を大した総合戦闘力のない…なんなら半数が非戦闘員の調査隊で迎え撃たねばならぬというのだ。

デーモン一体一体の戦闘力は不明だが、明らかに強い生命体である以上、こちらにも増援が無い限り勝利は先ず無いだろう。

 

「一先ず緊急用の烽火を上げて来た…しばらくすれば増援が来る。

それまで何としても持ちこたえるぞ!」

 

「とは言え、だ…サイゾウ、この数を迎え撃つには流石に武器も兵も足りない。非戦闘員も多く居る。

此処はデーモンの侵攻を食い止めながら撤退し、増援部隊と合流した方がいいのではないか?」

 

「………そうだな。

総員、撤退!侍部隊は非戦闘員を護衛しろ、余計な荷物は置いて行け!」

 

頭を冷やし、判断能力を取り戻したサイゾウは、まだデーモンの包囲が完了していない点を付き、ほぼ全ての物資と共に野営地の放棄を宣言した。

 

「本気ですか!?サイゾウ様!

流石に電子機器を置いて行くのは…」

 

衛兵の一人の言い分も正しかった。

何せ、監視カメラやそれらを動かす発電機等の電子機器はこの世界に置いて超のつく貴重品。壊れたからと言ってそうそう替えの利く物ではない。

 

「流石に人命に換える事は出来ません。

…兄さん、非戦闘員及び護衛部隊が撤退を開始しました。銃士隊の撤退を開始します」

 

「了解した、スズカゼ。

それと我らも前線に加わるぞ」

 

「はい!」

 

サイゾウら忍三人が最前線へと駆け出し、既に銃士隊に肉薄しかけていた犬の群れを槍兵隊と共に蹴散らし始めた。

 

 

「やっぱりあの人達も色々人間跳び越してるわよね。

――――っと!私達も下がらないと。ミドリコ!」

 

「うん!

ひだりは任せて!みぎをおねがい!」

 

スミカとミドリコは攻防一体の陣を組み、デーモンの掃討を行いながら軍と共に撤退を行う。

 

 

…“それ”が表れたのは、そんな時だった。

水牛、あるいは犀を思わせる四足歩行の巨獣が、ものすごい速度で前衛防御部隊による陣形のど真ん中を突っ切ってきたのだ!ある物は跳ね飛ばされ、ある物は踏み潰され、ある物は角で貫かれ…数多くの死者を出しながら一直線に突撃する。

 

その進路上に居るのは…スミカとミドリコだった。

 

「スミカさん!ミドリコ!

危ない!」

 

いち早く気が付いたスズカゼは、しかし声こそどうにか届けども、庇いに行くには遠過ぎ、そして巨獣の足が早すぎた。

 

「ッ!」

 

気が付いたスミカがレーザーライフルで迎撃するものの、放った全ての弾が巨獣の表皮に弾かれてしまう。最早避けるだけの暇が無い…スミカは、隣のミドリコだけでもと彼女に覆いかぶさり庇った。

 

 

その時――――強烈な速度で彼女らの頭上を飛来したソレが、巨獣の左側面を掠め、硬質な表皮を一気に削り取った。その痛みで巨獣は狼狽え、足を止める。その隙に逃げようとスミカとミドリコが立ち上がった時…巨獣と同じくらいの体格の、しかし大分華奢な獣が巨獣目掛けて飛来した!

 

「ぅおおおおおおおおりゃああああああああ!!!」

 

よく見ればそれは、カムイ…いや、カンナの竜体だった。

 

「か、カンナ…!?

どうして此処に!?」

 

何せ彼女は、透魔王国の王女であるハズなのだ…そうそう外出できる立場にないハズである。

 

 

カンナと巨獣が取っ組み合う内、何処からともなく透魔竜特有の瑞々しい火炎弾が飛来し、犬型デーモンの群れを吹っ飛ばした!

 

「今度は!?」

 

「もしかして…!

ねえ、あれ!」

 

ミドリコが指差した先にいたのは、左手を変形させて龍脈の力を借り、竜のブレスを連射するカムイの姿だった。もう何が起きているのか…と、二人が油断していると、いつの間にか近くにまで迫っていた犬型デーモンに手裏剣が刺さり絶命した。

 

手裏剣を投げたのはサイゾウである。

 

「貴様ら、何をしている!

足と手を止めるな、死にたいのか!」

 

「す、すみません…。

というか、もしかしてカムイ…様とカンナが増援!?」

 

「いや、カムイ…王が近くにいる事自体聞いていなかったが。

或いは…昔の様に…」

 

カムイへの敬称に慣れていない二人。

訳アリとは言え、王族に敬語を使わなくともどうにかなっている辺り、この世界(或いはカムイ自身)色々と緩い…のかもしれない。

 

 

「昔?」

 

「いや、いい。

兎も角…二人共無事なら戦線に戻れ。もしかすると、状況をある程度打開できるかもしれん」

 

「分かりました。

…行けるわね、ミドリコ」

 

「うん!」

 

今度は和弓から薙刀に持ち替えたミドリコが前衛に、そして腰撃ちからストックを肩に付けて精密射撃の体勢となったスミカが後衛でそのまま攻めに転じた。

 

 

それと時を同じくして、銃士隊がカムイやカンナ…及びに彼と合流していた数人の嘗ての仲間の援護を受けて更に弾幕を張り、前線を押し上げていく。誰も…どこからともなく響いてくる強烈な噴射音に一切耳を傾ける事無く、引き金を引いてはボルトを後退させ、空の薬莢を排出し再びボルトを戻して、狙い、撃つ…それを繰り返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
サブマシンガンは弾の消費から最初から採用見送りとなった

*2
主に再建直後のコウガ公国




よく考えたらミドリコはもう若干幼女脱却してるよな?一応適当な時系列としては戦争から5年程度は経ってる設定だぞ…この小説。

ナニカサレタ男のマーシレス周りの人間関係表とか、そういう過去の振り返り的なの欲しい

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