十数年ほど前へFEif世界に拉致られたナニカサレタ男が自分一人の問題からくる戦争に挑むまでの過程とその結末を綴るだけの物語   作:エーブリス

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久しぶりにマーシィ視点入りまーす。


ミスオブトゥモローオンザシンアイス

 

「…」

 

「驚いたよ。

疾走する黒衣の騎手ってのが、悪名高き鴉頭だったとはね」

 

「!…。

チッ、元反乱軍か」

 

いつもそう…いつもいつも、正気に戻ってから己の所業に気が付く。

どうしてこんな事に?何故こんな事を?間に合っていない後悔ばかり抱き込んで、ずっと迷走を続ける。

 

 

「…シュヴァリエまで動いているたぁ、思わなんだ」

 

「コウガは兎も角、私達はあんたの事でなんか動いてないよ。

でも…マーシレスと言えば、今回の一件における重要参考人じゃないかい?」

 

ここ数日ずっと感じているのが、後ろから心を引っ張られるような感覚だ。

例えるならば…外出を始めて数分後ふとした機会で後ろを振り返り「そう言えば家の鍵を閉めただろうか?」と不安になるような…それと似て、少し違うものだ。

 

 

「手足さえ残らなかった男の…何に用がある。

んな事言っておいて、まさか旧友の仇だとか言い出すんじゃねえな?」

 

「それとこれとは話が別だよ。

態々自分でケリつけたんだ、今更持ち出す気もないね」

 

「…だろうな。そうでなくては、俺は3年前……お前を殺してた。

例え自分の首にどんだけ金がかかっても」

 

「私はあんたとは違う。

此処に居る理由だってそうだ、未来の為なんだ」

 

それの前に立って尚、恐れるものがあったというのか。

いいや、それは昔からだった。あの日あの時…アイツら以外の、俺に連なる――俺を含めた――総てを抹消せんとした時から。

 

死ねばよかっただろう。今更己が頭を潰す程度、造作も無かったハズだ。

 

 

「ならお前…猶更俺に構う理由はないだろ。

やる事と言ぁ、薄氷へと根を下ろし、明日からの神話を積み上げていく事じゃね?」

 

「…その明日が薄氷の上にある事を知ってるのはアンタだけだろう」

 

「薄氷の上に立つ事は、何も珍しい事じゃない。

明日ってのはきっと、いつも薄氷の上に咲いている不確かな命の花だ…だから」

 

目に映る全てが混沌とするのなら、その眼を瞑ればいい。

そうして考えて分かるのは…今一度でも足を止めれば俺は二度と走れないという事だけ。残念なことに、口ほどにも学の無いこの頭ではこれが限界だった。

 

 

「お前らは…知らなくていい。

根を下ろす薄氷の下に…どんな地獄が沈んでいるのかなんて」

 

「何処行くつもりだい?

言ったろう、別に昔のことを掘り返すつもりは無いが…騎士として、アンタをここで取り押さえるって」

 

「分からなかったぞ、直球で言え。

つか、勘弁してくれ…今ちょうど手品のネタを切らしているんだ」

 

「それは良かった…アンタと斬り合わなくて済むようで」

 

「…んな事は言っちゃいない」

 

 

――――咄嗟に軍刀を引き抜き、その横振りをフェイントとして、そのままクリムゾンの足元にリボルバーの弾丸を撃ち込む。

生まれた隙の内に回れ右、からの全力疾走。尚且つトレントを並走させ、その背中に飛び乗り、瞬く間に森林を脱出した。

 

「何ッ!?

くッ――――待て!」

 

「そう言われてッ…!」

 

今、あのシュヴァリエの騎士は影響力も大きい。おそらく直ぐに非常線を張る筈だし、俺の行動も幾分か予測してくるだろう。

 

彼女の指揮官としての能力はカムイの様に光るものがある訳では無い。

しかし全く平凡という訳ではないのだ、少なくとも一手詰まると直ぐ火力頼みのゴリ押しに意向する奴よりずっと有能だろう。

 

思えば“彼女ら”には酷い事をした。

 

さて、どのようにしてクリムゾンの一隊から逃げ切るべきか。

結論から言うと50%の確率で、トレントに全力疾走させているだけで逃げ切れる。コイツの最高速にはドラゴンや天馬含めて、この世界の軍用生物は絶対に追いつけない。奴らが人伝で情報のやり取りをしていればどこか遠くに行くだけで逃走が成立する。

 

しかし、今やこの世界も多少なりとも国力がある所は無線機を導入している。そうでなくとも松明なり烽火なりで指令を出せるのなら、流石に一直線に逃げては簡単に追いつかれてしまう。

50%とは言ったが、恐らく後者だと考えた方が良い。

 

 

そう考えている内に、運よく廃棄された砦を見つけた。

更に運の良い事に扉もしっかり付いている。とは言え…あの場所はあまり馬を住まわせるには良くないのだが…。

 

「…仕方ない、か」

 

俺は砦の門をこじ開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


踊れ踊れ、炎の上で踊り狂え。

痛みと恐怖という糸に吊られて、阿鼻叫喚の声を巻き散らせ。

 

投げ損ねた者は言う、お前もそうなのか?と。

投げ入れた者は吐き捨てる、知った事じゃあないと。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

カムイ一行が戦線に加わった…だからと言って、戦況が良くなった訳ではない。

何せ、主力たる銃士隊の弾薬が既に尽きかけている。それなのに、デーモンの軍勢は勢いを更に増しているのだ。

 

「ダメだ、相手の布陣が広い…。

やはり数が足りないか…!」

 

「!…ッ。

東北東より敵増援!カムイ様、ご指示を」

 

「なんだって!?

――皆、陣形を狭めてくれ!このままじゃ防御が薄すぎる!スズカゼ、銃士隊の弾薬は?」

 

「もうじき底をつくそうで…。

予備の小型銃*1ならば余りがあるそうですが」

 

「恐らく、その程度の威力じゃ全く足りない。

銃士隊は下がらせてくれ…後は僕たちだけで耐え抜くしかない」

 

一応、カムイ達にも一縷の望みがあった。

彼らが見た烽火は、元より白夜軍の増援を呼ぶためのモノだったのだ。それが駆け付ける前に、カムイらが戦線に加わっただけであり、決してカムイ達を呼ぶためでは無い。

 

助けに来た手前、助けてもらうのは本末転倒の様ではあるが、元々圧倒的物量を前に敵わぬと知っていて、尚も人命救助の為に飛び入りしたのだ。既に非戦闘員の8割は一応避難に成功しており、その面ではカムイ達の行動も意味があったというモノである。

 

それに、何も無策で来た訳でも無い。

 

 

…獣人型を斬り捨てるカムイの背後で、アクアが銃剣で犬型の脳天を貫いた。

 

「アクア、そろそろ前線を下げよう。

“準備”の方は?」

 

「ええ…大丈夫よ。

調査隊の人にも手伝ってもらったから、予定より早く終わったわ」

 

「それはよかった。

――――全員、撤退だ!」

 

カムイ一行は前線の後退を開始した。

サイゾウ、スズカゼ、カゲロウ等を筆頭とする忍び衆やそれに属する者達による殿の元、皆が決まった道を纏まって通り、少数精鋭故のフットワークの軽さでそれは数分で完了した。

 

最後に殿達もまた、“最後の準備”を終えると共に撤退し、デーモンを迎え撃つ構えが完了した。

 

 

「果たしてどれ程の効果があるか…」

 

「動作は補償しますが、威力の方は何とも。

…それと、グレイが何やら大砲らしき物を用意したらしいのですが」

 

「え?

あ、ああ…」

 

スズカゼが指差した方向で、グレイが確かに大砲のようなものを引っ張り手を振っていた。

 

 

彼が持ってきたのは大砲ではなく、手回し式のガトリング砲…それを2門だ。

細かい最終点検をスミカと共に行いつつ、たった今弾薬と共に準備が完了した様である。

 

「僕らが持ってきたんだ。

効果の程はあまり分からないけれど、彼が言うには防衛にはうってつけだそうで――――」

 

 

その時――――彼らの前方で爆音が鳴り響いた!

始まったのだ。そう、カムイ達が撤退時に行っていたのは数種類の罠の設置である。竹槍を敷き詰めた落とし穴に、古くから存在する火薬を用いた罠。そして更には押収した(マーシレスの物と思われる)手榴弾を用いた罠等、古めかしいモノから最新の技術を用いたモノまで様々な罠がデーモンの進行上に仕掛けられていたのだ!

 

罠によって、今度はデーモンが死屍累々とし始め、異形達の屍山血河が築き上げられた。

 

「良し…!

今だッ!」

 

「あぁ!

…撃ぇーーーーーーーーッ!

 

追い打ちとしてガトリング砲2門の掃射を行い、異形の屍が一段と増えた。

 

 

「こちらも負けてられないね。

…全員、放て!」

 

隙を生じぬ3段構え。

王族の中で先んじてカムイ達一行に参加していたタクミら弓兵隊による矢の雨により、デーモンの総数は一気に減った。

 

 

敵を半減させども、元々の分母が多かっただけにまだまだ数多く、その進撃も止まる気配が無い。

しかし陣形や地形などは現状カムイらが非常に有利だ、例え矢や弾薬が尽きたとしても、侵入口の限られる現在の地形では白兵戦でも粒ぞろいの彼らなら容易に迎え撃てるだろう。

 

そのハズ…だったのだが。

 

 

「おい!

後ろから誰か来るぞ!!」

 

誰が言ったか、確かに後方から一人、ものすごい形相と息遣いで、こちらに奔って来る人影が見えた。どうやら若い調査隊員らしく、前述のようにその顔は非常に怯え切っていた。

 

「い、一体何が?」

 

「あ、あぁ…ああああ!」

 

恐怖が最高潮に達し、最早まともに喋る事は出来ていない…が、自らがやって来た方向をずっと指差す様子から、何が起きたのかを察する事は出来る。

 

まさか…一行らの中で動揺が走る。

それだけは現実となって欲しくなかった、例え頭の片隅でその光景を思い浮かべたとしても。しかし後方のパンドラの箱…或いはシュレディンガーの猫はまさに今、物々しい音を立てて此方へと迫っているのだ…!

 

「そんなッ…」

 

カムイが呟いた瞬間、後方の丘から何かが勢いよく飛び出した!

それは犬型か?獣人型か?いいやそれとも更なる猛威を振るう犀型だろうか?

 

 

――――否。それはデーモンではなく1機のV系アーマードコアだった。

 

「き、機甲兵!?」

 

マトイが叫んだ様に、その場に居る誰もが白夜の機甲兵部隊が到着したのかと思った。

しかし確認できたのはV型一機のみ、それ以外の機影は随伴兵含めて何処にも見当たらない。

 

そして、何よりの違和感に、いち早く気が付いたのはサイゾウだった。

 

「おい…何だあのアーマードコア」

 

「え?

どういう事?サイゾウ…」

 

「あんな部品と兵装、我々の機甲兵部隊では採用していないハズ。“誰”だ、アレは…!?」

 

サイゾウは今も尚、国王リョウマの側近として使える身…重大プロジェクトである機甲兵部隊計画の詳細をある程度把握していても不思議ではない。

 

彼が虚空へと疑問を投げかけた時には、そのアーマードコアは右腕に装備したヒートハウザーを数発発射し、榴散弾をバラまいて犬型や獣人型の群れを殲滅。

そのまま流れる様な足さばき…というより、ブースターさばきで群れを翻弄し、左腕のレーザーブレードを数回振るって、幾匹かの獣人型を斬り捨てた後、ハイブーストからのブーストチャージによって犀型を吹っ飛ばした。

 

吹っ飛ばされた犀型は、幾匹かの犬型或いは獣人型を轢きながらすっ飛び、最後は硬い岩山に激突して動かなくなった。

 

 

 

新設された各国の機甲兵部隊は数こそあれど、ここまでの動きを見せる熟練したパイロットは今の所存在していない。そもそもブーストチャージ自体、国の機甲兵部隊(のV系操縦者)は皆その機能を知らずに使っていない始末である。

 

 

デーモン達は、目の前に現れた異質な存在に…存在しなかったハズの畏怖の感情を抱いた。

ああ、そうだ…この焼け焦げた鴉のエンブレムこそ、かの伝承“黒い鳥”の体現者。ご照覧あれい、世界を滅ぼした力さえねじ伏せる、理不尽な単体最高戦力の力を。

 

 

 

*1
拳銃




何となく忘れられているかもしれませんが、ナニカサレタ男シリーズにおける黒い鳥はマーシレスの親父です。

ナニカサレタ男のマーシレス周りの人間関係表とか、そういう過去の振り返り的なの欲しい

  • ほしい
  • いらん
  • ガンイージ(無効票)
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