【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
それを唐突に悲劇が襲う。
真実を知った時、彼女の胸に去来する思いは何か。
第壱話「マヤさんは諦めた」
さぁ! 今回もサービス、サービスぅ♪
マヤさんは諦めた
私の名前は伊吹マヤ。
どこにでもいるネルフのオペレーターだった、先日までは。
その日、非番だった私はいつも通り部屋の掃除をしていた。
ところが誤ってフローリングワイパーを踏んづけ滑り、後頭部から派手に転倒したのだ。
遠ざかっていく天井がスローモーションのように感じ「あ、これ私死んだかも知れない」と思ったあの瞬間を、私は一生忘れないだろう。
朝から掃除を始めたはずが、意識を取り戻した時は既に夕暮れだった。
しかし、問題はそこではなかった。
現状を再確認していた時、意識を失う前にはなかったはずの様々な知識が私の中には存在していたのだ。
人類補完計画、赤い世界……
だが私の心を埋め尽くした絶望はそんな事ではなく、
「そんな……先輩……碇司令と……不潔……」
割りと個人的な事だった。
茜色に染まる部屋で一人、さめざめと泣いた。
泣き止んだ頃には憧れの喪失と共に色々な事を諦めていた。
どれだけ知識があっても、私は単なるオペレーターで、エヴァに乗れるわけでも、先輩のような頭脳があるわけでも、ガチの軍人である葛城さんのような戦闘能力があるわけでもなく、ゼーレに対抗できるような政治力や戦略眼があるわけでもない。
どうせ後2、3年で赤い世界の一部に溶けて死ぬのだ。
……だったら、せめて自分の好きなように生きよう。
とはいえ、この国にベーシックインカムなんて気の利いた制度があるわけではないし、仮にもネルフ職員、つまり高給取りなのだから、今まで通り働くしかない。
……例え、対使徒戦が始まったら 激 務 に 襲 わ れ る と わかっていても。
だから……
《翌日、ネルフ食堂にて》
「どう? 美味しい? 嫌いなものとか入ってなかったかな」
「……大丈夫。美味しいです」
とりあえず手作り弁当でレイちゃんに餌付けしてみた。
無表情、無反応、人形じみていて話せば配慮などない喋り方の彼女は周りからは少し気味悪がられているためか、彼女に構う私も変わり者扱いされつつあるが気にしない。
知識のある私からすれば、彼女は身も心もまっさらな、これ以上ないくらい『きれいな』存在で、喋り方についても、それはただ表現の仕方を知らないだけなのだとわかっていた。
なので、お弁当をチマチマ食べる彼女の姿に私は、むしろ小動物的な愛らしさを感じていた。
色々と参っていた私は、レイちゃんとの交流に心癒されていたのだ。
それからというもの事ある毎に世話を焼き「人間らしい生活を」と彼女を引き取ろうとしてみたり(結局許可されなかったが、たまたま空いていた隣の部屋に引っ越させる事はできた)と、穏やかで楽しい日々をエンジョイしていた。
零号機起動実験、その日までは。
自分とは関わりの薄い他者としか思わなかった職員、伊吹マヤ。
彼女からの任務外での接触に、レイの心は揺らめく。
他者の温もりを知ったレイの心に芽生えたものとは。
次回 第弐話「伊吹二尉は不思議な人」
この次もサービス、サービスぅ♪