【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
「……つまり、使徒という我々の理解が全く及ばない敵を相手に、今まともに動かせるエヴァは初号機のみ、修繕するにも予算は有限であり無駄は一切許されないのが、私達の現状というわけ。だからこそ先程
技術部と作戦部の合同ミーティング。
……と言っても結局のところ、使徒の死骸を解析してすら「わからないという事がわかった」程度なのが現実である以上、できる事は「どのような敵を想定しているか」という確実性に欠ける内容と「それに対してやろうとしている事、できる事」を開示するくらいしかない。
それでも何もないよりはマシなのだろうけど。
今日のところは一度持ち帰ってもらうだけになるでしょうね。
「リツコ、この間の戦闘でライフルが有効性に欠けるとわかったわけだけど、もうちょっち何とかならないかしらね、例えば弾頭とか」
……あぁ、そういう事。
今日は妙に難しい顔をしてると思ってたけど、つまり「面白くない」のね、きっと。
自分の指示で思ったように「復讐」できなかった、と。
特に大きなトラブルもなく、エヴァの損傷も軽微、パイロットも軽症。
気が
せっかく順調だというのに、良くない傾向だわ。
やっぱり、まだ引きずってるのね……
今の精神状態で下手な話し方をすると「自分の復讐に横槍を入れた」マヤに飛び火しそうね……めんどくさい……
「……今のところ拳銃タイプの火器には自己鍛造弾を使用してみる予定ではあるけど、ライフルは劣化ウラン弾のままね。予算の問題よ。数をばらまくならセルフシャープニング効果に期待する方が費用対効果はマシなのよ。まぁ、どっちみち射撃武器は
「わかったわ、何か新しく装備が完成したらその
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「さて、そろそろ出
最初だから仕方ないでしょうけど、こんなものかしらね。
次回からは作戦部側からの新たな視点とかもらえたらいいのだけど。
「先輩、まとめたものは後で送っておきますので、お先に失礼します」
……すっかり
なんて、私は口に出してからかったりするつもりはないけど、
「えぇ、お疲れ様」
「あらマヤちゃん、お疲れ。さては帰りたくてパタパタしてたわね?」
……ミサトはからかうのよね。
「あ、すみません……夕食作って待っててくれてると思うと。顔に出てましたか」
「すっかりお母さんが板に付いちゃって」
「……そんな大層なものじゃないですよ」
……? 気のせいかしら。何か……
「ま、気持ちはわかるけど過保護になっちゃダメよ? 私達は戦争してるんだから」
「……時には非情な指示もしなければいけないからこそ、それ以外の時は大事にしてあげたいんです、私は。あの子たちは代わりに戦って『くれてる』だけで、そのための道具なんかじゃありませんから」
……わからないけど、何かマヤの地雷踏んづけたんじゃないかしらミサト。
「……そりゃ、そうかも知れないけど、あんまり入れ込みすぎて切り替えできなくなるんじゃないかと思ったのよ」
「大丈夫です。私は戦いに『余計な気持ち』を持ち込むつもりはないので。失礼します」
……ミサト? フリーズしてるわよ?
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……で、帰るつもりだったのに私は何故か居酒屋にいて、目の前には塩をかけられたナメクジみたいなミサトがいるんだけど、どうしてこうなったのかしらね。
というか、こんなに飲んだのに寝てないミサトの肝臓を調べてみたいわね。開いちゃダメかしら。
心のモヤモヤと一緒に煙を思い切り吐き出す。
「それ、あなたがマヤを無意識にマスコット扱いしてたから勝手にダメージ入ってるだけじゃないかしら。少なくとも、意外と見てるものよ彼女。あなたが何か面白くなさそうな事くらい気付いておかしくないと思うわ?」
「そうなの?……てか、え、バレてた?」
「どれだけの付き合いだと思ってるのよ……まだ引きずってるんでしょ。自覚してないと足を掬われるわよ?」
「……覚えてはおくわ」
「ふてくされながら言うんじゃないわよ……それと多分だけど、あなた何か地雷踏んだのよ」
「マヤちゃんの? 何よ」
「知らないわよ。私は別にあの子の親じゃないんだから」
吸い殻を揉み消しながら、つい溜め息をつく。
「けどセンパイとか呼ばれてんでしょ。何か聞いてたりしないの?」
「何も……まぁ、最初に会った頃と比べたら性格変わったかしらね」
「そうなの?」
次の一本に火を付けつつ、あの子と出会った頃を思い出す。
「大学にいたのを見つけて、私の誘いでネルフへ。暗かったわよ? 知識や技術の習得にしか関心がない。何かを楽しんでるという表情を見せた事がなかったわね」
「別人じゃない……」
「家庭環境でも悪かったのではないの? 知らないけど」
……家庭環境……そう言えば、資料では彼女の母親は……まぁ、全てがそのせいとも限らないし、プライベートをべらべら喋るのはNGよね。
それに、その気になればミサトの権限でも
などと、立ち上る紫煙を目で
「家庭環境って……シンジ君預けて大丈夫だったのかしら」
「あなたが言うの? それ。……割れ鍋に
とりあえず、あなたの『巣穴』よりマシじゃないかしら、とは言わないであげるわ。
「何にせよ、あの子だっていい大人なのだし、あなたが気にしないであげれば向こうも気にしないわよ。仲直りするというほど明確に決裂したわけでなし、下手に踏み込むよりマシでしょう」
……全く、ネルフにはワケありしかいないのかしら。
私も含め。
自身の『知っている』通りに進む現状、変えられない未来への諦観。
無自覚な逃避と安心に浸るマヤを、無情な世界は許さなかった。
変わり始める未来に恐怖したマヤは、ついに、戦う事を決意する。
第拾伍話「逃げるのは諦めた」
さぁ! 次回もサービス、サービスぅ♪