【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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ピチピチなのは諦めた

 

 

はい、前回作戦で終了前にぶっ倒れた伊吹マヤです。

 

 

心労だったようです。

 

 

特に変な夢とかは見ませんでしたよ。

 

 

自分が「これだから若い男は」なんて言ってる場面なんて。

 

 

……ああああああああああああああああ何なの!? この世界はどっち? どっちなの!? もぉぉぉぉぉぉぉ

 

 

……ふぅ。

 

 

とりあえず意外と無事でピンピンしてたシンジ君とレイちゃんにメチャクチャ心配されました。

 

 

シンジ君はわかるとして起きた時レイちゃんがポロポロ泣いてたのはビックリしました。

 

 

ほんとにごめんなさい。反省してます。心配させてスミマセンデシタ……

 

 

……正直、一杯一杯だったのよね。

 

 

今まで『規定ルート』だと思っていたのにラミエルが変形して「あ、これは本格的にヤバいかも知れない」と思っちゃって自棄っぱちになって『史実』と掛け離れた策を捩じ込んだり、その結果として国連軍、戦自合わせて多数の戦死者を出してしまったり、『知らないラミエル』だったから作戦自体うまくいくか不安だったり……

 

 

で、作戦成功と二人の無事を確信して安心したから気が抜けて倒れたのよね……

 

 

元々メンタル弱い方だったから、反動は効果覿面(てきめん)よ。

 

 

……事後処理でみんなに迷惑かけちゃって、本当に申し訳ない……

 

 

……それに戦死者についても、言ってしまえば『私の我が儘が原因』であって、本来なら『死ななかったはずの人たち』なのだから。

 

 

少しボンヤリする事が多くなった私を心配して、二人が何かと気にかけてくれる。

 

 

……結局心配させてるし……

 

 

ここ1ヶ月くらいはジェットアローンの件以外は何も起きなかったので、非番の日に三人一緒にカラオケへ行ったり、家でのんびりしたり、たまに外食に出たり、平和に過ごしていた。

 

 

平和が一番。

 

 

そういえばJAのイベントにはネルフ側に招待のお呼びがなかったり、暴走事故ではなく単なる機能停止だったりと『史実』とは違った結果になったのは、元々そういう世界だったのか、私の行動による変化だったのか……まぁ、大事にならなかったから、いいか。

 

 

そんな、ややメンタルにガタが来ている私は、今VTOLで機上の人です。

 

 

目的地はニミッツ級航空母艦オーバー・ザ・レインボー……

 

 

 

 

…………。

 

 

 

 

海軍の人には合わせる顔ないって言ってるじゃないですかぁぁぁヤダー!!

 

 

え、何で? 何で私も? って聞いたら葛城さんが「あちらから是非にって呼ばれてるから」ってそれつまり「よく来やがったなコノヤロー」って感じに簀巻きで甲板から突き落とされるやつですねわかりましたシンジ君レイちゃん短い間だったけどありがとう元気でね。

 

 

……まぁ、それはさすがにないでしょうけど、そんな下らない想像でもしてないと精神が持たないんで。

 

 

たぶん言葉のハンマーでボッコボコに袋叩きされるくらいはあるんだろうなぁ……

 

 

国連側は戦艦1隻、巡洋艦1隻、駆逐艦5隻が沈んだりスクラップ。

戦自側は戦艦1隻が大破、駆逐艦3隻が沈没。

合わせて死者約6500人。

 

 

私のせいで「レンジでチン」か……

 

 

『重さ』で潰れそうよ……

 

 

そんな憂鬱を顔に出さないようにしつつVTOLに揺られていた。

 

 

「いやぁ、マヤさん来るとわかっとったらサクラも連れて来るんやったわ。()ぅてみたい言うてましたから」

 

 

「……私なんて大した事してないわ? 念のためで連絡しただけだもの。でも、会ってみたいっていうなら今度お邪魔しようかしら」

 

 

「ホンマですか! ほな都合のえぇ日があったら教えたって下さい。あいつ喜ぶやろなぁ」

 

 

サクラちゃんかぁ……この世界では『拗らせた感じ』にならないといいけど。

 

 

計画を阻止できれば……できるの? 私に。どうやって?

 

 

どれも考えは纏まらないまま、オーバー・ザ・レインボーが見えてくる。

 

 

……とりあえず今は、目の前の事に覚悟を決めよう。

 

 

「そろそろだね……ところでマヤね……さん、どうして傘なんて持ってきたの? 晴れてるけど」

 

 

シンジ君に問われた私の手には『私には少し大きいかな?』というサイズな花柄の可愛い傘。間に合わせで買ったけど少し気に入ってる。

 

 

「……海の上は天気が変わりやすいって言うし、波を被るかも知れないじゃない?」

 

 

「そっか、なるほどね」

 

 

……そういう事にしておく。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「Hello! ミサト!」

 

 

ペールイエローのワンピースで自信たっぷりに現れたアスカちゃん。

 

 

元気いっぱいねー、なんて、つい頬が緩んでしまう。

 

 

この展開だから『こっちの世界』だと思うんだけど、うーん、ワカラナイ……

 

 

……さりげなくシンジ君たちの後ろに移動しておく。

 

 

そして、甲板を吹き抜ける一陣の風!

 

 

翻るアスカちゃんのスカート!!

 

 

あられもなく下着が晒され……る前に少年たちの前に展開する花柄の傘。

 

 

それは暫しの後、再び畳まれた。

 

 

その向こうにはスカートを押さえ顔を僅かに赤らめつつこちら側を睨み付けるアスカちゃん。

 

 

「雨かと思ったけど、波しぶきだったのかしら」

 

 

わざとらしく呟いてみた。

 

 

……やっぱり『そういうの』は、いけないと思うの。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「引き渡しを拒否されるというのは、どういう事でしょうか」

 

 

葛城さんと艦隊提督(ヤシマ作戦の時に来てくれた艦隊とは別なので違う人だ)が、弐号機の引き渡しについて話をしているけど、正直半分くらい頭に入ってこない。

 

 

……ぁー、この険悪な感じの流れで袋叩きにされるんだろうなぁ、私。

 

 

「葛城一尉、勘違いしないでもらいたい。私は何も、君らへの嫌がらせに引き渡しを拒否しているわけではない。……下らん事を抜かして、Ms.イブキに叱られたくはないしな」

 

 

そう言って、こちらを見て笑う提督。

 

 

……。

 

 

……えっ、私ですかぁ!?

 

 

「どっ、どういう事でしょうか!? なんで……」

 

 

「この艦の艦長、あぁ、彼なんだが……」

 

 

そう言って横にいる人物を示す提督。

 

 

……あれ、艦長さん、なんか見覚えが……

 

 

「こいつがな、この前『うちの兄が叱られたらしい、いい気味だ』と」

 

 

「提督、部下たちのいる前で、その話は勘弁して下さい」

 

 

「はっはっ、それもそうだな。スマンスマン」

 

 

……ヤシマ作戦の時の艦隊提督!

 

 

やっと得心のいった私に艦長が姿勢を正し言った。

 

 

「伊吹二尉、君が警告を発してくれたおかげで兄と、君は知らないだろうが、今年あの艦隊に配属されたばかりの可愛い甥っ子が命拾いした。感謝している」

 

 

「か、感謝だなんて、そんな、私は職務を果たしただけで、それに……元はと言えば私が支援要請なんて案を出したばかりに、多くの方が犠牲に……」

 

 

「……あれは君の発案だったのか」

 

 

提督が少し驚いたように言う。

 

 

……伝わってなかったのか。

 

 

てっきり知っているから呼んだのかと……あぁ、呼んだ理由は「さっきの話」だったのね。

 

 

……墓穴を掘ったわけだ。

 

 

けど、それでいいんだわ。

責められるべきだと自分で思うもの。

 

 

そう思っている私に、提督が口を開いた。

 

 

「……伊吹二尉、私は、いや恐らくだが、戦自の諸君や戦死者の皆も同じだろう……君に、感謝しているのだよ」

 

 

「……ぇ」

 

 

「我々は軍人だ。皆、何かを守りたいからこそ、この仕事をしている。

 

だが実際はどうだね。

 

使徒などというワケのわからん化け物を相手に、我々の通常兵器は役に立たず、できる事といえば偵察や荷運び、攻撃できても精々N2くらいで、それすら足止めにしかならん。

 

そして君の認識する通り、人命は重い。

 

それ故、上の連中はメンツをこそ優先してしまう。

『どうせ人死にが出るだけで無駄なのだから』とな。

 

……本当は戦いたいのだよ。

当然だろう。誰が好き好んで子供らを矢面に立たせるね。

 

だが我々軍人は、上からの命令は絶対だ。

 

君らの側から働きかけてもらった事で初めて、我々は『戦場』を得られたのだ。

 

……確かに犠牲となった者たちは残念だった。

 

だが私の記憶が確かであれば君はネルフの、しかもエヴァ運用の担当だったはずだ。

 

彼らの存在を無視したとしても咎められはしなかったろう。

 

それでも君は彼らを忘れず警告を発してくれた。できる限りの事をしてくれた。

 

それに不測の事態などというものは、通常の戦争でもよくある事でしかない。

彼らが死んだのは『敵が撃ったから』だ。君のせいではない。

 

君が、我々の存在に意味を与えてくれたのだよ。

軍人にとって、その意味はとても重いものだ。

 

だからこそ君には、胸を張っていてもらいたい。それでこそ彼らも報われるというものなのだ。

 

……ネルフ技官の君には、少々理解の難しい事かも知れんが、軍人とはそういう生き物なのだよ。わかってくれるかね?」

 

 

「……謹んで、感謝をお受け取り致します」

 

 

「それでいい。……葛城一尉、そういう事だ。もちろん組織のメンツという部分が欠片もないとは言わんが、むしろ我々自身の船乗りとしてのプライドの問題だよ。先の作戦における戦友にして恩人、今は客人だ。君らと積み荷を無事に陸へ送り届ける事は我々の誇りなのだよ。わかってもらいたい」

 

 

「……そこまで言われては、引き下がるしかございませんわね。先程は失礼いたしました」

 

 

「わかってもらえれば結構。寄港した際にはすぐに引き渡そう」

 

 

「とはいえ万が一緊急事態、つまり使徒が現れた際には発艦の許可を滞りなきよう、お願い致します」

 

 

「わかっている。間接的にとはいえ奴らの脅威を目の当たりにしたのだ。『諸君ら抜きでも』などと傲る気はないとも。もちろんそのような事態に見舞われないのが最良ではあるが、見つけた場合はすぐ君たちに知らせよう。そのために監視は厳にしている。イルカ一匹見逃しはせんよ。目は船乗りの命だからな」

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「ずいぶん気に入られているみたいね?」

 

 

葛城さんが私に笑いかけた。

 

 

「……正直まだ気持ちは追い付いていませんけど」

 

 

「いいじゃないの。素直に受け取っておくべきだわ?」

 

 

「……はい」

 

 

とはいえ、難しい事だ。

ゆっくり自分の中で消化していくしかない。

 

 

……ところで、先程から視線を感じる。

 

 

そちらに目を向けてみればアスカちゃんが

 

 

(……! プィッ)……目を反らされてしまった。

 

 

……とりあえずコミュニケーションよね。

 

 

そうだ、

 

 

「アスカちゃん、もし良かったら弐号機見せてもらえない?」

 

 

そう言って私はアスカちゃんを連れて弐号機のところへ行くのだった。

 

 

……なにやら後ろの方で「なんでアンタが」とか「寝相は相変わらずかい?」とか聞こえるけど、『不潔』な人に興味ないもの。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「これこそが世界初、実戦用に作られた本物のエヴァンゲリオンよ! 正式タイプのね!」

 

 

「さすがカッコいいわね!」

 

 

アスカちゃんがチームワークを軽視する傾向に対して『史実』での葛城さんは少し頭ごなしだったと思うの。

 

 

まずは、しっかりとアスカちゃんの事を認めてあげる方がいいと思うのよね。

 

 

「そんなスゴいエヴァに乗れるくらい頑張ってきたのよね」

 

 

そう私が言うと、何故か一瞬ポカンとした表情になった後、

 

 

「……そ、そうよ! 親の七光りでパイロットになったサードとかとは違うんだから!」

 

 

と、どこか嬉しそう。

今のは正解だったらしい。

でも、

 

 

「……資料とかでもあなたの優秀さは知ってるけど、それってあくまで他人の評価でしかないのよね。今まで大変だった事とか辛かった事みたいな、あなた本人の思いなんて書かれてないし……他人と比べての事よりもアスカちゃん自身の事が知りたいな」

 

 

「……」

 

 

「だから、これからいっぱいお話がしたいわ? よく顔を合わせる事にもなるだろうし仲良くしたいの。どう?」

 

 

「……し、しょうがないわね! 仲良くしてやろうじゃないのよ……」

 

 

「よかった!」

 

 

と、一安心していたところに警報が鳴り響き、私の端末にも葛城さんから連絡が入った。

 

 

〈艦隊が使徒を発見したと報告があったわ!マヤちゃん今どこ?〉

 

 

「アスカちゃんと一緒に弐号機のところです! アスカちゃん、使徒よ! 葛城さん、発艦許可は」

 

 

〈既に出てるわ! ちょうど良かった、発進の準備をお願い!〉

 

 

来たわね。

さぁアスカちゃんのデビュー戦よ!

 

 

「了解! アスカちゃん発艦の許可が出……」

「はい! マヤ、これ!」

 

 

そう言ってアスカちゃんはプラグスーツを差し出してきた。

 

 

……。

 

 

プ ラ グ ス ー ツ を 差 し 出 し て き た 。

 

 

え、なんで、どうして私に? いやいやこれシンジ君が着る流れじゃない、やーねーアスカちゃんったら冗談ばっかり、ほらシンジ君? 出番よ? あらシンジ君どこに

 

 

 

シ ン ジ 君 置 い て き た わ 。

 

 

 

あああああああああああああああそうだった忘れ

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「ほらモタモタしない! 特等席で見せてあげるって言ってんだからさっさと」

 

 

「ああああ待って待ってサイズ違うってキツイキツイいろんなとこ引っ張られて痛いのよちょっ」

 

 

プシュッってするまでもなく既にパッツンパッツンなのよ待っ

 

 

「ほら仕上げ」

 

 

プシュッ

 

 

く、苦しいぃ……

 

 

「文句いわない我慢して乗った乗った!」

 

 

半ば強引にエントリープラグへ押し込まれる私。

 

 

どうしてこんな事に……シンジ君いないんだったら一人で出撃すればいいじゃない。

 

 

運命は変えられないの? いや現在進行形で変わっちゃってるけど。原形なんて跡形もなく変わってるけど。あぁ私が乗るから『二人乗り』っていう原形は合ってるわね。

 

 

そうこうしてる間に満たされるLCL。

 

 

ガボボゴホゲホ……そういえばLCLなんて初体験よね、当然だけど。

 

 

気持ち悪い……

 

 

けど子供たちはいつもコレ頑張ってるのよね……私が泣き言いうわけには

 

 

って 違 う !

 

 

「ノイズ? マヤ、日本語で考えてるでしょ! ドイツ語で考えて!」

 

 

「ぇ? ドイツ語はちょっと……英語なら少し」

 

 

「もぅ! いいわよ、じゃあ……日本語をベーシックに!」

 

 

というか、そもそもパイロットのシンジ君ならまだしも私なんて完全な『 異 物 』じゃない! ノイズ入りまくってシンクロ率とか大変な事になっちゃう!

 

 

どうなっちゃうの!? 大丈夫なの!?

 

 

ああああ神様仏様惣流・キョウコ・ツェッペリン様どうかアスカちゃんをお助け下さいぃぃぃぃぃぃ!!

 

 

「…………?」

 

 

「どうしたの? アスカちゃん」

 

 

「! ……な、なんでもない! ……さ! 行くわよ!」

 

 

「ま、待って、作戦は? まず電源を接続に行かないと! B型装備だけど、どうやって」

 

 

「船を踏み台に」

 

 

「船員に被害が出るかも知れないじゃない!」

 

 

「じゃあどうしろってのよ!?」

 

 

うーん……じゃあ……

 

 

「……アスカちゃん、足元にATフィールド張れる?」

 

 

「…は? 足元?」

 

 

「飛び出して着水直前にフィールドを足場にする、海を拒絶するのよ……まだ誰もやった事ないけど……」

 

 

「まだ……誰も……ふふ、んふふふ……面白い! やったろぅじゃない!!」

 

 

弐号機の目が光った!……ような気がする。

 

 

〈アスカ! 状況は!〉

葛城さんから通信が入った。

 

 

「葛城さん! 弐号機、発進準備よし!」

 

 

〈了解! ……って、なんでマヤちゃんそこにいるの!?〉

 

 

「……こ、これには深い訳が」

 

 

「さぁ、アタシの実力、見せてやるわ! 弐号機、発進!!」

 

 

「葛城さん今からそっち行ってケーブル接続しま゛っ

 

 

こんなにGかかるのね……

 

 

それはともかく……被せられていたシートを外套のように纏い、弐号機は発進した。

 

 

「それじゃ飛ぶわよ! 掴まってて!」

 

 

「うん゛!」G苦しい……

 

 

ものすごい加速度で艦が遠ざかる怖い……

そして浮遊感って落ちる落ちてる怖い怖い怖い怖

 

 

「ATフィールド展開!!」

 

 

 ぐ え ぇ 。

 

 

落ちる、止まる、再びG。

 

 

胃の中がミキサーになったみたい……

 

 

一方のアスカちゃんは

 

 

「……やった……できた! できたわマヤ!!」

 

 

「すごいわアスカちゃん! さすがね!!」

 

 

パイロットのメンタル管理は大事パイロットのメンタル管理は大事パイロッ……

 

 

……と、苦しさや気持ち悪さを気合いと根性で押さえ付けて褒めちぎる。

 

 

もう必死。

 

 

再びフィールドからのジャンプ。

 

 

これで到着できるは、ず……って!

 

 

「アスカちゃん! この高さじゃ艦が!」

 

 

内部電源を節約するにはフィールド展開の回数を少なくするしかない。

 

 

だから高く飛んで距離を稼いだけれど……

 

 

「まっっかせなさい!」

 

 

みるみる近づくオーバー・ザ・レインボーの甲板……と、その直前に弱いブレーキ感?

 

 

気がつけば弐号機は危なっかしく片足で着艦し、バランスをとっていた。

 

 

「ぅおっとと、と、と……ふぅ、よし! なんとかなったわね!!」

 

 

「アスカちゃん、今、何したの?」

 

 

「さっきマヤが『海を拒絶』って言ってたじゃない? やってみた感覚で思ったのよ。『加速度も拒絶できるんじゃないか』って」

 

 

「……す、スゴいわアスカちゃん!! そんな事できるの!?」

 

 

「……ふ、ふふん! アタシを誰だと思ってるの? この天才アスカ様にかかれば楽勝よ!」

 

 

……さっき危なそうだった事はスルーしてあげた。

 

 

それにしても私なんて『異物』がいるのに、感覚でそこまで使いこなすんだから本当にすごい。

 

 

まぁ『新しいオモチャを手に入れた子供』みたいにも見えるけど……

 

 

そしてアスカちゃんは流れるような動作でケーブルソケットを接続。

 

 

このあたりは訓練の賜物という感じね。

 

 

「で、ミサト! 使徒は」

 

 

言いかけた瞬間、目の前の海から口を開けて飛びかかるガギエル!

 

 

「く、口ぃ!? ……こ、んのぉぉ!!」

 

 

背負い投げの要領で、背後の海に放り投げる弐号機!

 

 

「アスカちゃん! 今、口の中にコアが見えたの。あれを破壊すれば倒せるわ」

 

 

「って言ったって……口ん中に飛び込めっての?」

 

 

……活きのいい状態では危険。

 

 

でも弱らせるにしたって、武器なんて……武器?

 

 

「アスカちゃん、海上でフィールドを足場に使徒を真上へ投げられそう? 100メートル以上」

 

 

「真上? ……ふん! 500メートル上にだって投げてやるわよ?」

 

 

「葛城さん! 艦隊に支援砲撃を要請して下さい! 目標は弐号機上空100メートル以上500メートル未満! これから弐号機が海上で使徒を真上に放り投げます!」

 

 

〈そういう事……了解!〉

 

 

「なるほど、面白い事ばっかり思いつくわね……やってやるわ!」

 

 

「砲撃で弱らせたら口をこじ開け入り込んで、ナイフで仕止めて!」

 

 

こちら旗艦オーバー・ザ・レインボー。全艦に通達。ネルフより支援砲撃要請あり。目標はエヴァンゲリオン弐号機上空約400ヤード。Ms.イブキがウィリアム・テルをご所望だ。外した砲手は一週間便所掃除だと提督命令が出ている。化け物に太平洋艦隊の実力を示してもらいたい。砲撃準備の後、号令を待て。以上

 

 

「……ホント気に入られてるわね。マヤ、何したのよ?」

 

 

「……帰ったら話すわ。さぁ、お願い!」

 

 

「了ぉー解っ!!」

 

 

弐号機は使徒を追って海上に飛び出す。

 

 

先程の背負い投げ後、ガギエルは大きく旋回、こちらに向かっているらしい。

 

 

ケーブルの限界近くまで艦から離れ海上で待ち構える弐号機。

 

 

遠くに水中の影を捉えた、その瞬間、海を盛り上げ、ぶち抜き、派手な水音と白波を荒ぶらせながら、その巨体に似合わぬ速力で飛んでくるガギエルを

 

 

 

 

掴んだ!!

 

 

 

 

「ぅおおおぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

アスカちゃんは、弐号機は海の上を踊るように美しいターンを以て、ガギエルの恐るべき速力を回転力へ、回転力を、上空への飛翔力へと変換し、解き放った!!

 

 

撃てぇぇっ!!

 

 

ガギエルが爆ぜた。

 

 

太平洋艦隊から放たれる大小様々な砲弾、ミサイル、ロケット弾が、使徒を空中で踊らせた。

 

 

「さぁ、ウィリアム・テルの次は白鯨狩りよ!!」

 

 

全身くまなく損傷したガギエルは一矢報いんとばかりに落下しながら弐号機を捕らえるべく顎を開いた。

 

 

そいつを

 

 

弐号機はナイフを抜き放ち姿勢を下げ、海面へのフィールド圧力を一気に増し、その反発力と脚力によって

 

 

待ってたわ!!!!

 

 

ガギエルの口めがけて飛び立った!!

 

 

……私の動体視力では追随できなかったものの、高速で突き出されたナイフはガギエルのコアを貫いた、らしい。

 

 

使徒、殲滅。

 

 

惣流・アスカ・ラングレー、鮮やかなデビュー戦だった。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

……ちなみにエントリープラグを出た私は、甲板からLCLと一緒に『撒き餌』を海へと吐き出した。

 





マヤから生まれて初めて与えられる打算なき温もりに、アスカは心を開き始める。
同時に、自分が身を置く組織の異常性を感じたアスカは、生まれて初めて誰かを思い行動する。

第拾七話「アスカ、来日後」

さぁ! 次回もサービス、サービスぅ♪
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