【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
マヤのナビは最高だったわ!
ATフィールドの新しい使い方、まさに『目から鱗』だったし、何よりあの華麗な撃破!
今までで最高のパフォーマンスを発揮できたもの!
……ファーストとかサードなんていいから、アタシ専属のオペレーターになってくれたらいいのに。
何にせよ忘れられないデビュー戦になったわね!
それに……
もう……何考えてるのよアタシ。
『ママが見ててくれた気がした』なんて、子供じゃあるまいし。
もしくはオカルトよね、そんなの。
……オカルトといえば、マヤってエスパーか何かじゃないの?
あの『傘』のタイミングには驚いたわ。
「波しぶきかしら」なんて言ってたけど、水滴なんて感じなかったし。
……まぁ、おかげで助かったけどね?
いくらガキ共相手とはいえ見られたらヤだもん。
『傘』だけじゃないわ。
あの時の……
……けど、プラグスーツ渡した時は本当にキョトンとしてたし、一緒に乗せようとした時も完全に慌ててたし……『読めてる』ってわけじゃないか……
まぁ、オカルトなんて信じてないけどさ? アタシ。
でも、だったら……
「……なんで、わかるのよ。アタシがほしい言葉なんか……」
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ネルフ本部に到着して、今さら日本のミドルスクールに入れなんて言われてゲンナリしたけど、予定では即編入だったのが2日ズレたのよね。
理由が、ボロボロとはいえ使徒の死骸を回収できたからってのと、ATフィールドの新たな活用法を見せたから……
つまり『アタシがあまりにも鮮やかな活躍をした結果』だったから、最初はご機嫌だったんだけど……こんな事になるなら学校の方がマシだったかも知れないわね……
「検査、検査……検査検査検査ケンサ! 一体いつまで続くのよ!! もういいじゃない!!! ……これ以上やっても何も出ないわよ……」
「……ゴメンね? アスカちゃん……一緒にガンバろ?」
やや活きが悪くなったマヤがアタシに言った。
そう、『一緒に』なのだ。
パイロットでもないのに同乗して、それでも『アタシの華麗な活躍』の足を引っ張らなかった事を理由に、マヤも『検査をされる側』なのだ。
「……普段は検査する側だから私も正直疲れてきちゃったけど、みんなはいつも『これ』なのよね。改善案とか、少し考えてみるね?」
さすが『できる女』マヤね、是非この煩雑さを解消してほしいわ!
「……そろそろお昼休憩だから、アスカちゃん一緒に食べない?」
『やっと』で『お昼』なのがツラいわ、ホント。
「いいわね。まだよく知らないからオススメとか教えてほしいし」
「もちろん。それじゃ行きましょ?」
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「ゴメンね? 本当はお弁当でも作ってきてあげたかったけど」
アタシはマヤと食後トークを楽しんでいた。
「え、お弁当? ど、どうしてよ」
「うん。シンジ君とレイちゃんにも作ってあげてるから、アスカちゃんもどうかなって。できる時は、ね? 仕事の都合とかあるし。そういう時は逆にシンジ君に作ってもらってるの、朝とか夕食とかも」
「……え? もしかして一緒に住んでんの?」
「うん。レイちゃんはお隣だけど」
「なんでマヤと一緒に住んでんのよ! サードって司令の息子でしょ?」
あのヒゲ親父と住むのが筋じゃない!
なんでマヤのとこに住んでんのよ!
……なんか面白くない。
「それは……」
周りを気にするように、マヤは声を潜めて言った。
「……シンジ君、司令に全然相手にしてもらえないのよ」
「……で、マヤが押し付けられたの?」
「ううん?私が引き取ったの。……いきなり呼びつけられて訓練もなしにエヴァに乗れって言われて、その上一人暮らしなんて、あんまりだと思ったのよ」
「は? ……呼びつけられて、って、その前は? だいたい訓練もなしに、って、それ……死ねって言われたようなもんじゃない」
「……10年くらい親戚のところに。その間、一切連絡もなし。……司令の考えは正直、私もわからないわ」
……親の七光りだと思ってたけど、どうも話が違ってきたわね。
「あとレイちゃんも、今でこそ職員寮で隣に住んでるけど、前はボロボロのマンションに一人暮らし。本当は一緒に暮らしたいけど司令の許可が降りなくて」
「司令の許可? どういう事?」
「人と関わらせたくないのかも知れないわね……理由は知らないけど」
「……でも、一緒に食事したりするのは黙認されてるのよね?」
「うん、だけどいつもってわけじゃなくて、たまに司令から食事に呼ばれたりもしてるみたい」
……聞けば聞くほどワケわかんないわね。
サードは冷遇されててマヤが引き取った。
ファーストも冷遇されてる? けど食事には呼ぶ。息子を差し置いて。
どういう関係よ。
……理由……。うーん……
……。
…………。
ん? 『食事』?
! ま、まさか……
あのヒゲ親父『そういう趣味』なの!?
いや、けど、それならどうして『マヤの干渉を黙認』するの?
いくらマヤが世話を焼きたがるとしても、そんなの強権で黙らせれば……怪しまれるから? 都合のいい時だけ呼びたいから?
他には……
その時、なんとも言えないおぞましい考えが頭を過った!
ま、まさか、『息子から奪いたい』なんて言わないわよね?
いやいや、いやいやいやいや、まさか、それはさすがに……
……サードの扱いを考えたらあり得なくはないか。
うひぃ! だとしたら完全にヤバい外道ド鬼畜変態オヤジじゃない!
関わらないようにしな、い、と……
アタシは目の前で『キョトン?』としたマヤの顔を見た。
……もしや、マヤもヤバいんじゃ……そうだわ、大人とはいえハイスクールの制服だって似合いそうなくらい可愛いもの。だ、だから『引き取らせた』!? あり得る! ファーストは同世代だから一緒に住んだりしたら何か起きるかも知れないけど、マヤに手を出すような度胸サードにあるとは思えないもの。せいぜい『淡い片思い』……あの変態ヒゲ親父にとって最高の状況なんだわ! 冗談じゃない!! ファーストは『御愁傷様』だけどマヤはダメ!! 絶対イヤ!!……けど今のところ何の証拠もない以上、できる事といったら……
そうだわ! アタシがマヤと一緒に住んだらいいのよ!!
この『人を疑う事さえ知らなそう』な優しくて純朴なマヤだもの、アッという間に騙されて『食べられ』ちゃうに決まってるわ! おまけに『父親から相手にされなくてイジケてそう』なモヤシのサードじゃ戦力にならないもの! アタシが目を光らせてないと!
……ファーストは犠牲になったのよ。あの無感情も『そのせい』で心が死んだのかも知れないわね。……少しくらいは優しくしてやろうかしら。何にせよ犠牲を無駄にしないためにも、アタシがマヤを守ってやらなきゃ!
そうと決まれば、
「マ」
「あ! そろそろ時間ね、行かないと……アスカちゃん、どうかした?」
「な、なんでもないわ! 行きましょ?」
チイッ! まぁいいわ。まずは検査地獄を終わらせないと。
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「やぁぁぁぁっと終わったぁぁぁ!」
「お疲れ様、アスカちゃん」
長い戦いだったわ……これでようやく
「……でね、アスカちゃん、そのぅ、とても言いにくいんだけど……」
「……なによ」
「アスカちゃん、今度から学校あるじゃない? それで、ね? ……この後、学校の説明とか手続きを」
え゛?
「イヤぁぁぁぁぁぁ! まだあるの!? そんなの明日でいいじゃない!!」
「でも今日のうちに終わらせて、明日はしっかり休んだ方がいいと思うの」
「そりゃ、言いたい事はわかるけど……」
「ゴメン! ゴメンね! すぐ終わらせるから……」
「もぅ……わかったわよ。さっさと片付けましょ?」
「ありがと! それじゃ案内するから着いてきて?」
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《ネルフ本部 第二会議室》
「こんなとこ使うの? 大仰ね。マヤのデスクでマンツーマンとかでいいじゃない」
「まぁまぁ。とりあえず入って?」
ドアを開いてみたら中は真っ暗……
「ちょっと、ホントにココ?真っ暗じゃない」
「ゴメンゴメン、すぐ電気つけるね?」
と、明るくなって真っ先に目に飛び込んだのは『ようこそ日本へ!』というデカイ横断幕だった。
……へ?
パン! パパパン!
呆然としているアタシにクラッカーのカラーテープが降り注いだ。
見ればミサトにサードにファースト、さっきまで憎き検査の鬼だったリツコ、あと……えーと、オペレーターよね……ロン毛の……シゲル? と、メガネの……マコト、だったかしら。みんなしてニヤニヤ顔。
「アスカちゃん! 日本へようこそ! それとデビュー戦の勝利おめでとう!」
そう言いながらマヤもクラッカーをパン!
どこに持ってたのよ。
……ぇえ?
「え、マヤ? 手続きと説明……」
「ゴメンね? あれウソ! せっかくだから驚かせようと思って」
「いやぁ、だいたい準備は終わってたけど検査とかで予定狂ったから、どうなるか心配だったぜ」と、シゲル。
「ま、よき同僚マヤちゃんからの頼みだからな。協力するのは当ぜ「とか言って本当は葛城さんにいいとこ見せ」コラァ!」
なんて、シゲルと漫才を始めるマコト。
「それにしたってリツコ、検査長引かせすぎじゃない? まぁ、おかげでシンジ君は盛り付け慌てないで済んだみたいだけど」
ちょっと待ちなさいよミサト、検査地獄の理由って
「あら、必要な分をしただけよ。それで余裕ができたなら何も文句を言われる理由はないでしょ?」
あれが必要な分ってのも納得いかないけどね?リツコ。
「と、ともかくお疲れ様。せめて歓迎会は楽しんでよ」
気を使ってか申し訳なさげに言うサード。
「……美味しいわよ」
って、主役より先に食ってんじゃないわよファースト!
「ぁあ! 乾杯まだなのにレイちゃんもう食べ……アスカちゃんにグラス、グラス!」
……プッ「アハハハハ! もう! グダグダじゃないのよ! マヤ慌てすぎ!」
もう順序もへったくれもないけど、まぁいいわ!
「マヤ、ありがと!」
その後、「並べる料理はドイツ風に……カルテスエッセン?だっけ……みたいにしてみたの」とか「1週間前からザワークラウト漬けておいたの」ってマヤの手料理が大半だと知って、ちょっとだけ(本当にちょっとよ!)涙腺が緩みかけたのは秘密!
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「マヤと同居?」
次の日、アタシはリツコのデスクに来て言った(こいつホント仕事の鬼ね……昨日の検査結果を精査したいからって?)
「そうよ! ……本当は昨日いうつもりだったんだけど、タイミング逃しちゃって」
「そう言えば、まだ端末あなたに渡してなかったわね。なら私から連絡してみるわ。けど、あの子の部屋は単身者向けだし、あの子が同意したとしても引っ越しが先になるわね。部屋数足りないもの」
おのれサード……「ともかく聞いてみて!」
「はいはい。…………あぁ、マヤ? 私よ。実はアスカがあなたと同居したいって、え? えぇ、わかったわ……」
「……なんて?」
「少し待ってほしいそうよ?」
なによ、返事くらいすぐしなさいよ。
……ダメならダメって言えばいいじゃない。
「……いいえ気にしないで?……え? いや、でもいいの?……わかったわ、伝えておく。それじゃ」
「……どうだった?」
「ミサトが住んでるコンフォート17にちょうどいい空き部屋があるから転居申請するそうよ」
「……はぇ!? 即決なの!?」
なによ! 不安になって損したじゃない!
それにしても『即決』って……さ、さすがね!やっぱりアタシとはいいコンビになり
「えぇ。ただ、レイを置いていくわけにいかないとかで、同居の許可をもらいに碇司令に直談判するとか」
……。
マ ヤ が 危 な い 。
アスカという新たな家族を迎え入れるため、マヤはネルフの最高権力者に立ち向かう。
自身の子にも向き合うべきと訴えるマヤに、ゲンドウの心の壁は厚かった。
第拾八話「親子の対話は諦めた」
さぁ! 次回もサービス、サービスぅ♪