【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
《ネルフ本部 司令室》
「確か君は今日非番だったと記憶しているが、何か用かね」
いつも通り口を開かない碇司令の代わりに冬月副司令が聞いてきた。
「はい。今日は非番ですが、聞いて頂きたい要望があります」
「ふむ、何かね」
「綾波レイさんとの同居について許可を頂きに参りました」
……またその話か、みたいな空気が滲んできて居心地が悪い。
でも引くわけにはいかない!
今日こそ許可してもらわないと!
しかし、いや『やはり』というべきか、碇司令からの返答は無情であった。
「伊吹二尉。以前、赤木博士に伝えた通りだ。許可はしない」
冬月副司令が続ける。
「それに、君の住居では部屋数が足りないのではなかったかね」
「転居を考えております。葛城一尉の住むコンフォート17です。学校にもネルフにも近く、緊急時には移動に葛城一尉を頼る事もでき」
「何故だ」
こちらの話を遮るように、碇司令が問う。
「……何故、というと」
「何故、レイに固執する」
「……大人だからです」
「何?」
「大人として、貢献してくれている子供たちには、できる限りの事をしてやるのが大人としての責任だと思うからです」
「……チルドレンの処遇については必要な措置が全てなされている。不要だ。その他については人類にとって必要な犠」
「犠牲というのは戦闘や訓練についてだけではありませんか」
被せてやったわ。意趣返しよ!
「私生活については犠牲と切り捨てるのではなく、報いてやるのが大人としての義務ではないのですか。シンジ君についても同じです。碇司令、いえ、シンジ君のお父様」
「……」
「一度でもいいからシンジ君と話をしてあげて下さい。パイロットになるよう伝えてから一度も」
「伊吹二尉。………………綾波レイとの同居は許可する。以上だ。他に話す事などない。下がりたまえ」
そうやって逃げるのね。けど、許可を引き出した以上、潮時、なんでしょうね……仕方ないか。
「……了解しました。失礼致します」
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はぁ……同居の許可が無理ならとシンジ君に会うよう説得するつもりが、逆に許可の事を捨て石にしてくるとか、どれだけ向き合いたくないのよ。
計画に固執するわけだわ。
一回、心をへし折られない限りダメな感じかしら……
けど、猛ダッシュしてきた甲斐はあったわね。これでついに家族補完計画が……
なんて考えていたら向こうからアスカちゃんが走ってくる。どうしたのかしら。
「アスカちゃん、どうしたの?」
すると全力疾走したからだろう、息を切らしながら答えるアスカちゃん。
「マヤ!……ぜぇ、はぁ……だ、だいじょ……ぶ? 無事!?」
「ぶ、無事って……何が?」
「直談判とか何考えてんのよ! で、どうだったの? 無理難題とか脅迫紛いな事言われなかった!?」
きっと私が叱責されたり減給とか降格されないか心配してくれたのね。つい顔が綻んでしまう。
「大丈夫! 心配してくれてありがとう。けど少し大袈裟よ?」
「大袈裟なのはそっちでしょ! 住む場所くらいで変た……ンンッ、司令のとこ行くとか、どうしてそこまで……」
「だって、家族の事だもの」
「……へ?」
「レイちゃんを置いていくわけにいかないけど、アスカちゃんにも『ただいま』って言ってほしいから……アスカちゃんの家族になりたいのよ、私が。必死になるのは当然でしょ?」
「……か、ぞく……」
両手でアスカちゃんの手をとって告げる。
「よろしくね? アスカちゃん」
アスカちゃんは、照れくさそうに答えてくれた。
「……よ、よろしく」
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残る唯一の心配事は、いざという時の『葛城さんの運転』かしらね……ハァ
家族として心通わせ始めたレイとは逆に、新しく加わるアスカに対し、シンジの心は重かった。
それでも愛する『姉』のため、彼はアスカと対峙する。
第拾九話「決戦、第壱中学校」
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