【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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勘違いは諦めた

 

「は、はじめまして!鈴原サクラです!あの時はお世話になりました!よよ、よろしくおねがいします!」

 

 

「伊吹マヤです。こちらこそよろしくね」

 

 

「サクラ、緊張しすぎやで? マヤさん、すんまへん」

 

 

「ううん、気にしないで?」

 

 

今日は非番なので鈴原サクラちゃんを訪ねてみる事にした。

 

 

……緊張してるのかしら。

 

 

「そうだ、手ぶらじゃ悪いかと思ってクッキー焼いてきたの。よかったら食べて?」

 

 

「え!? そうなんですか!? あ、あ、お茶いれますんでちょっと待っとってくださ、あわわわ

 

 

慌てすぎて転びそうになったサクラちゃんを支えてあげた。……なんでそんなに?

 

 

「あああすみません……」

 

 

「いいのよ? そんなに慌てないで。……どうしてそんなに緊張してるの?」

 

 

「え、あの、お兄ちゃんからマヤさんは『ものすごい仕事できる人で、軍人さんたちからも尊敬されてて、オペレーターさんなのにパイロットさんと一緒にエヴァに乗って怪獣をやっつけちゃう人や』て聞いたから……すごい人なんやなぁって」

 

 

 待 っ て 。

 

 

何かオカシイわ? 軍人さんたちからは『気に入られてる』だけよね? あと同乗したのだって、私なんて半分振り回されてるようなものだったのに。

 

 

伝言ゲーム状態だわ……今サクラちゃんの頭の中ではイメージがすごい事になっちゃってる気が……誤解を解いた方がいいわよね……でも、どうやって?

 

 

とりあえず『私なんて無力なオペレーターにすぎない』って説明してみよう。

 

 

「……尊敬してくれるのは嬉しいけど、私は大した事なんてしてないわ? 自分にできる事を精一杯やって、やっとみんなの役に立ててるだけよ。……聞いてると思うけどパイロットはみんな、あなたのお兄さんくらいの歳で、本当なら戦いなんて危険な事させたくないんだけど、人類のためにって戦ってくれてるの。あの子たちの方が、ずっと立派よ」

 

 

「……」

 

 

「あの子たちね、親がいなくて私が引き取って世話してるの。せめて頑張ってくれてる子たちの家族になりたくて。だけどね? あのエヴァっていうのは傷つくとパイロットも同じくらい痛い思いをする怖いものなの。私はただのオペレーターだから、大切な家族がすごく痛い思いをしてても代わってあげる事さえできないの」

 

 

「……」

 

 

「悔しいし、とっても悲しい。守ってもらってばかりよ。だから、せめて自分のできる事を必死にやってるだけ。みんながケガして帰ってきても、治してあげる事もできない。ホント、私なんて大したものじゃないわ」

 

 

「……マヤさん……」

 

 

「こんな事なら医学の勉強もしておけばよかったって思うくらいよ」

 

 

「! 私が! お医者さんになります!」

 

 

「……え?」

 

 

「いつかお医者さんになって、パイロットさんたちを治すんや! マヤさんが悲しまんでえぇように!」

 

 

「……サクラちゃん……ありがとう! おかげで勇気が湧いてきたわ?」

 

 

誤解を解こうとしただけだったのに、サクラちゃんの真っ直ぐな思いに心打たれてしまった。……この子のためにも止めたいわね、人類補完計画。

 

 

と、その時、私の端末が鳴った。

 

 

「ゴメンねサクラちゃん、緊急連絡なの……はい伊吹です。……え!? わかりました、すぐ向かいます」

 

 

「マヤさん、敵ですか?」

 

 

「えぇ、折角お邪魔したのにごめんなさい」

 

 

「気にせんで下さい。どうかお気をつけて」

 

 

「ありがとうトウジ君」

 

 

「マヤさん!今日は来てくれてホンマうれしかったです!応援してます、がんばって!」

 

 

「うん! それじゃ、またね? 避難指示が出るようだったら、すぐ逃げるのよ?」

 

 

私はサクラちゃんが不安がらないよう明るく親指を立ててみせ、その場を後にした。

 

 

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「マヤさん、カッコえぇ……」

 

 

「せやな……ところでサクラ。さっきの本気か? 医者なるいうたら大変やで?」

 

 

「本気に決まってるやん! マヤさん助けたいんや!」

 

 

「…そか、ほな頑張らなアカンな!」

 

(サクラが医者なれるように、ワシも頑張らな)

 

 

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小笠原諸島近海から紀伊半島沖に向かう巨大な潜行物体を確認したとの報告が入った。

 

 

発見が早かったらしく、かなり余裕のある連絡だった。

 

 

……まぁ画像を見る限りイスラフェルなんだけど。どうしても緊張感ないのよね……

 

 

ヤシマ作戦後の復興も完全ではない事から『史実』通り水際作戦という流れである。

 

 

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零号機の損傷は軽微ではあったものの、改修の最終調整が間に合わず、今回は留守番である。

 

 

……で、結局は使徒を真っ二つにした弐号機は張り倒され、仕切り直しに撤退する事となったが……

 

 

「初号機で海上に、ですか?」

 

 

冬月副司令がN2で地形が変わる事を(政治的なやり取りを)嫌がり、弐号機の『海面跳び』を例に挙げたのだった。

 

 

「赤木君、初号機で可能かね」

 

 

「シンクロ率で言えば、ですが、あとはパイロットの技量次第かと」

 

 

〈……やります

 

 

え!?

 

 

……表情から察するに、もしかしてアスカちゃんを例に出されたから意地になってる?

 

 

……そういえば最近、アスカちゃんとバトルしてるのをよく見かけるし。

 

 

()くして初号機による誘導が始まった、のだが……

 

 

初号機はケーブルをパージ、使徒二体の間を駆け抜けた。

 

 

その後を追いかける使徒二体。

 

 

……シンジ君、フィールド利いてる? それ『右足が沈む前に左足を出せばいい』をやってるだけでATフィールド関係ない気が……すごいけど。

 

 

使徒も走って追いかけている。

泳いできたやつだったはずだけど、初号機が猛スピードだから泳ぐより走った方が速いって事かしら。

 

 

「シンジ君! 今よ、潜って!」

 

 

葛城さんの指示で急停止、踵で水しぶきを上げながら急潜航する初号機。

というより沈んだ。

 

 

初号機が消えた海上でN2の衝撃が使徒を襲う。

 

 

と、とにかく誘導は成功したのだった。

 

 

…ちなみに初号機は電池切れで『土左衛門』、弐号機は『主人公の死から始まるあのゲームのパッケージ画』のような姿で沈黙していた。そういえば赤い服だったわね主人公。

 

 

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ユニゾン攻撃案が決まったけど『史実』とは違って最初から一緒に暮らしてるし、楽勝だろうと思っていた。

 

 

でも実際には『慣れている分』張り合ってしまう二人……あれ、私のせいでヤバい?

 

 

私がハラハラしていると、レイちゃんが仲裁に入った。

 

 

……そうだ!

 

 

私は先輩に連絡を入れた。

 

 

〈レイを『指揮者』に?〉

 

 

「零号機の改修は終わってますし、自己鍛造弾を装填するハンドガンも使用できますよね。使徒を牽制して位置取りやタイミングなど調整、二人の間を取り持つというのはどうでしょう」

 

 

〈……MAGIで計算して、ミサトに提案してみるわ〉

 

 

「よろしくお願いします」

 

 

二人で不安定でも、三人なら!

 

 

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『指揮者』レイちゃんを加えたユニゾン作戦は成功した。

 

 

邪魔にならない立ち位置から、シンジ君が僅かに遅れたら牽制弾を、アスカちゃん側の使徒の位置が悪ければ足元を狙い撃ちサイドステップを踏ませた。

 

 

レイちゃんは戦闘全体を見て調整する役目を立派に果たしてくれたのだった。

 

 

二人も最後は見事なユニゾンキックで、使徒のコア同時破壊を実現した。

 

 

使徒の爆発をバックにキレイな着地を決めた二体のエヴァは、なにやら『ヒーローもの』っぽく見えてカッコよかった。

 

 

最初は自分一人の活躍でない事からブツブツ言っていたアスカちゃんも、後で記録映像を見てご満悦である。

 

 

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後日、ご満悦なアスカちゃんが学校で自慢(姉自慢2割を含む)した結果、『クッキーのお返しに』と手土産持参で遊びにきたサクラちゃんの目から発せられるキラキラが6割増しになり、私がたじろぐ事になったのだが、これはもう諦めよう。

 

 

……かわいい、けど眩しい! 直視できない!

 





マヤと家族になったアスカだが、自身の知らないマヤの秘密を、シンジは知っていた事に憤慨する。
心の距離のあり方に迷う家族。
それでも使徒らしき物体発見の報に、アスカは死地へ赴く。

第弐拾弐話「プールと、マグマと、温泉と」

さぁ! 次回もサービス、サービスぅ♪
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