【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
今日はみんなのハーモニクステスト。
シンクロ率はアスカちゃんがトップだけど、テストの伸び自体はシンジ君がいい感じ。成長期ね!
「3人ともお疲れ様」
「みんなお疲れ様!」
先輩が、次いで私が労いの言葉をかけた。
続けて先輩はシンジ君のテスト結果を褒める。
「それとシンジ君、よくやったわ」
「何がですか?」
「ハーモニクスが前回より8も伸びているわ。たいした数字よ」
と言ってもシンジ君にはピンとこないわよね。
ただアスカちゃんはプライドを刺激されたらしい。
「でもアタシより40も少ないじゃん?」
「あら、10日で8よ。たいした物だわ」
先輩、シンジ君ばかり褒めないで下さい。
アスカちゃんが面白くなさそうです。
そっと私がフォローに入る。
「アスカちゃん、運用する私たちにとっては、みんなに高い数値を出してほしいだけなの。アスカちゃんみたいにね?」
暗に『あなたが目標ラインにいるのよ?』と伝えてあげると、納得してくれたらしい。
「それは、まぁ……そうよね!」
機嫌を直してくれてよかった。
……先輩、メンタルは大事ですよ?
「上を目指すといえば……みんな、葛城さん昇進したのよ。今度からは三佐ね」
「へー、ミサトがねぇ」
「……あによぅ、その反応は」
「べっつにー?」
「言いたい事あるなら言いなさいよアスカ!」
「あ、ミ、ミサトさんおめでとうございます」
「……ありがとうシンちゃん、いい子ねぇ……」
「まぁシンジ君はピンときてないでしょうけど」
「ぐふぅ! ……マヤちゃん、そういう事は黙っててくれてもいいんじゃないかしら」
「あれ……あ、スミマセン、そうですよね」
「まったく……そうそう、昇進と言ったらマヤちゃんも一尉になったのよ? ピンとこないだろうけど」
スミマセンって……まぁ私自身ピンときてないんですけどね?
「え! そうなの!? おめでとマヤ姉!」
「ちょっと! 私と反応違うじゃない!……マヤ『姉』?」
「……ハッ! べ、べ、別に何て呼ぼうが勝手じゃない!」
「ふーん? ほーん?」
あ、ヤバい。この流れは……遅かった。葛城さんの視線がこっちに
「ずいぶん仲良いみたいじゃなーい?」
ニマニマしてる……こうなったら開き直るしかない!
「そりゃあ、みんなの『姉』ですから!!」
「顔真っ赤にしながら言っても説得力ないわよ? うりうり」
くぅ! 肘で突っつかないで下さい!
「ちなみにシンちゃんとかレイには何て呼ばれてんの? うーん?」
はわわ、被害が拡大してる……シンジ君も真っ赤に……アスカちゃんは早々に戦線離脱!? レイちゃん助けてぇ!
「……私はマヤお姉ちゃんと呼んでいます」
お手々ぎゅっ。
シンジ君は少し楽になったみたいだけど私は沸騰寸前よー!!
「あ、あ、そうだミサトさん! 昇進祝いしましょう! マヤ姉さんのお祝いもするし!」
シンジ君ナイス話題転換!
「……うーん、私は別にいいわよ。家族水入らずの邪魔して馬に蹴られたくないし」
言葉のチョイスが変です葛城さん!
「……馬なんて飼ってませんよ?」
シンジ君……ホッコリ
「ミサト、折角だし祝ってもらえばいいじゃない?」
それまで愉快そうに見てた先輩からも助け舟……でも乗り気じゃないみたいですね? 葛城さん。
「ミサトさん、嬉しくないんですか? 昇進」
「ぜんぜん嬉しくないって事はないのよ。少しはあるわ。でもそれが、ここにいる目的じゃないから……」
あぁ、これは……よし、目先を変えてあげよう。
「葛城さん、いいじゃないですか。努力してきたって証拠だと思います。自分へのご褒美とでも思えば、どうです?」
「……ご褒美、ねぇ?」
「マヤ、ミサトにそんな事言ってはダメよ。ビールの量が増えるだけだわ?」
「ハッ! そうだわ! お給料が上がれば!……そうねマヤちゃん! いい事ね!」
……なんか違うけど、ネガティブに陥るよりは、マシ、よね? たぶん……
この後、先輩も招いてウチで二人の昇進祝いが行われる事が決まった。
完全に酔っ払いと化した葛城さんの面倒を見る事にはなったけど、悪い方向ではない……わよね?
ちなみにアスカちゃんは、さすがに帰っちゃうのは申し訳ないと思ったのか、陰から様子を見てたらしい。むぅぅ。
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昇進祝いから4日後、司令や副司令の留守中で衛星軌道上に使徒を発見したとの一報が入った。
しかし、モニターに映った姿を見て、私は目を疑った。
次はサハクィエルのはずだし、実際、相手が今いるのは宇宙。
……なのに、まるで『レリエル』だった。
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「えぇえっ!? 手で、受け止める!?」
アスカちゃんが驚いて声を上げた。無理もない……
それに対し、葛城さんが肯定する。
「そう。落下予測地点にエヴァを配置、ATフィールド最大で、あなたたちが直接、使徒を受け止めるのよ」
シンジ君が質問した。
「使徒がコースを大きく外れたら?」
「その時はアウト」
次に、アスカちゃんが質問した。
「機体が衝撃に耐えられなかったら?」
「その時もアウトね」
不安気な様子でシンジ君が訊ねる。
「……勝算は?」
「神のみぞ知る、と言ったところかしら」
呆れ気味な様子で、アスカちゃんがボヤく。
「……これでうまく行ったら、まさに奇跡ね」
「奇跡ってのは、起こしてこそ初めて価値が出るものよ」
「つまり、何とかして見せろ、って事?」
「……悪いけど、ほかに方法がないの。この作戦は」
「作戦と言えるの!?これが!」
さすがに耐え兼ねて声を荒げるアスカちゃん。
自嘲気味に、葛城さんがそれを認めた。
「ほんと、言えないわね。だから、いやなら辞退できるわ」
「「「…………」」」
三人は、沈黙で答える。
「みんな、いいのね?」
最後の確認に、再びの沈黙で返した。
「……一応規則だと遺書を書くことになってるけど、どうする?」
「別にいいわ! そんなつもりないもの」
「……私もいい。必要、ないもの」
「僕も、いいです」
「……すまないわね……終わったらみんなにステーキおごるから!」
「えぇっ、ほんと!?」
「約束するわ!」
「わぁーい!」
「忘れないでよ!」
本当はわかっているのだろう。無理やり明るくして見せているのが痛々しく感じる。
「期待してて!」
葛城さんも、無理して明るく返していた。
「あのぅ……」
言い出しにくく、私はオズオズと手をあげながら聞いた。
「何も、受け止める必要はないんじゃないですか?」
「「「……へ?」」」「……?」
気の抜けた声を出す三人。
レイちゃんはキョトン顔。
私はタブレットで資料を呼び出し、葛城さんに見せた。
「試作品ですが、指向性爆薬のようにN2地雷にも指向性を持たせてみたんです。本来なら放射状に拡散する威力も50%近く上方向に集中できるはずです。それを落下予測地点に設置するんですよ。爆発反応装甲みたいなものです」
「…………」
「設置したら後は全力で逃げてもらって、倒せなくても減速と落下は終わってるはずなので、コアだけサクッと……ダメでしょうか」
……ぶっちゃけ、みんなには近づいてほしくなかったのだ。
だって『レリエル』である。
下手に近づいては飲み込まれてしまう。
ただ『質量攻撃するのか、ディラックの海なのか』という辺りが見えない。
レリエルであれば今モニターで見えているのは影、と思ってしまいそうになるが、地上に影(本体)が広がるまでは、あれが『本当に本体』だと思う。
『史実』では初号機はアレを砕いて出てきた。という事は、いつの間にか影と本体が逆転していたという事で、逆に、地上に影を落とすタイミングのどこかで影が本体になるのかも知れない。
まぁ、質量攻撃にせよディラックの海にせよ、地上に着く直前に吹き飛ばしてやればいい。
質量攻撃するタイプならトドメを、もし減速させた結果、ディラックの海を展開するなら、その時は……
……それはそうと、葛城さん? 聞こえてます? 葛城さーん。どうしますかー? 返事して下さ
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結局あれは擬態で、サハクィエルで正解だった。
大気圏に突入して羽を広げたのを見た時はコッソリ安堵してしまった。
三機は指向性N2地雷を各1個ずつ抱えてMAGIのナビゲーションに従い疾走。
MAGIには予め、何れかのエヴァが中心部へ間に合った時点で残り2機を『中心部の両脇』へ誘導、設置完了後は中心部を3方向からATフィールドで包囲できる配置へと各機をナビゲートするように設定してある。
三機は設置を無事完了。配置に着きATフィールドを全開にした。
これにより使徒のフィールドを僅かにでも中和すると共に、落下やN2の衝撃に備える。
それから間を置かず、使徒に向かって三つの巨大な火柱が噴き上がった。
使徒は『N2砲』とも言うべき爆発を受け減速、指向性地雷は効率的に作動したらしく、周囲への衝撃波は通常のN2地雷に比べて極めて弱かった。
そして使徒は落下。
衝撃波で地表が凪ぎ払われて更地になるなど広範囲に被害は出たものの、『富士五湖が一つになって本部ごと太平洋と繋がる』ような事にはならず、やや弱ってバタバタしている使徒に(なんか人型の部位が出てきたりコアをグルグル回して抵抗してたものの)トドメを刺して作戦は終了した。
終 了 し た 。
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あの後、司令と副司令から通信が入り、葛城さんが
「申し訳ありません! 私の勝手な判断で巨大な更地を作ってしまいました! 責任はすべて私にあります!!」
と、ヤケクソ気味に報告した事で司令は「構わん」と言ったのに対し副司令はピクッと少し動揺して『後始末が大変なんだろうなぁ』と、ちょっとだけ気の毒に思った場面はあったものの、大きな問題にほならなかった。
……なんだけど、
私は今、葛城さんが子供たちに奢るため連れてきたラーメン屋で、葛城さんの
「……仕方なかったんですよ。完成したばかりの試作品だったんですから。連絡が遅れたのは申し訳なく思いますけど、急に必要となったわけで」
「もぅいーわょ……私なんか……ヒック……なぁんの役にもたってないじゃーない」
「そんな事ありませんって。位置取りの『女の勘』だってバッチリだったじゃないですか」
「ヒック……それらって結局、最終的にはMAGIが補正で……ヒック……いっそマヤちゃんが作戦部長に「頑張って下さいお願いします死んじゃいますから」
「らいじょーぶ! もうマヤちゃん一尉らし、やれるやれる! ヒック」
……飲酒運転させるわけいかないっていうのもあるけど、日向さん早く来てー!!
MAGIの定期点検中にネルフ本部は危機を迎える。
負傷するマヤ。自信を喪失するミサト。
果たして、人類の未来は……
第弐拾七話「せめて、作戦部長らしく」
さぁ! 今回もサービス、サービスぅ♪