【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
「昨日ケガしたばっかりじゃない! 無理しないで休めばいいのに……」
アスカちゃんが心配して引き留めようとする。ゴメンね。
「そうもいかないの。実験の予定が押してるから。それに少し打っただけよ」
「……実験って、中止になったやつ? アタシらへのお呼び、まだ聞いてないけど」
「ううん。エヴァ関連じゃなくて……周辺設備、かな」
「……少し打っただけでも油断大敵! もし具合悪くなったら無理しないでよ?」
「うん、ありがと。いってきます」
「ハァ……いってらっしゃい!」
「いってらっしゃい姉さん」
「……いってらっしゃい」
三人に見送られて、私は玄関を出た。
心配してくれるみんなには悪いけど、時間がない。
「23日、か。それだって予定通り来るとは限らないけど……レイちゃんの誕生日、できたらいいな……」
言葉とは裏腹に、正直、自信はない。
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「……もう、マジメというか何というか……」
「周辺設備……なんだろうね?」
「さーね。防御壁とか?」
「うーん……『想定』への対策?」
「あぁ、マヤ姉とリツコとMAGIで作った『的中率8割』とかいうアレ? 宇宙のやつも微生物のやつも当たったわよね。確かに対策が追っ着いてないとも聞くし」
「……精神攻撃というのも、あったと思うわ」
「そんなの対策できるもんじゃないでしょ。『うっさい死ね』って念じてみる?」
「ははは、アスカ……」
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《リツコの研究室》
「……今日のところはこのくらいにしておきましょう」
「なんとか完成しそうですね、先輩」
「できれば使わないに越した事ないのだけれど、『的中率8割』というのが逆にプレッシャーよね」
的中率……『想定』という名の、ほぼ私からの入れ知恵だもの。
「本部の外壁は目処が立ってますよね。あとは宇宙装備…は難しいとして、代わりに衛星ですか」
「装備はエネルギー源の問題がね……衛星も、まだ少しかかるでしょうね」
「LHCは実証実験がまだですよね……」
「瞬間的に蒸発するとはいえ、副司令あたりが周囲への影響を危惧してるから……この前の『更地』で、慎重になってるのよ」
私は声を潜めて聞いてみた。
「……アメリカでしたっけ、S2機関。ウチでは?」
「……どこかの誰かさんが頑張ってくれたおかげでサンプルが豊富に入手できたから……まぁ、司令達はいいとして、『上』が、ね……」
「……ゼーレですか」
「ウチにばかりアレコレ集中させたくないみたいね」
「それも何だか……ここが最前線なのに、キナ臭いですよね」
「他で言っちゃダメよ? 睨まれるわ」
「言いませんよ……使徒との戦いが終わったら、どうなるんでしょう、ネルフ」
「……人間の最後の敵は人間、と?」
「……そうならないでほしいですけどね」
「……」
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「分かっております。すべてはゼーレのシナリオ通りに」
「………………………………さて諸君、どう見る」
「伊吹一尉、彼女は危険だ」
「だが切れまい。士気に関わる」
「左様。まだ使徒との戦いは終わっておらん」
「機会を待とう。何、所詮一人だ。どうとでもなる。誰か張り付けておけば良かろう。次の議題に移る」
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「……これで二人目か。
「マヤちゃん先輩は男嫌いだってのに、
ついに、シンジの犠牲なしには対処できない脅威が到来。
その犠牲を回避するべく、マヤは備えていた計画を実行する。
自らの、命すら捨てる覚悟で。
次回 第弐拾九話「自分の命は諦めた」