【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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正攻法は諦めよう

 

《リツコの実験室》

 

 

「部品交換で済んだのは不幸中の幸いでしたね」

 

 

「全く……火炎放射器なんて冗談じゃないわ」

 

 

「すみません……思ってた以上に拡大してて、その……」

 

 

「潔癖性はツラいわね」

 

 

「昔よりはマシになったつもりなんですけど……アレはさすがに、ちょっと」

 

 

「科学者としては貴重なサンプルだし一回徹底的に調べたいところだけど、時間がないのよね?」

 

 

「はい、すぐに来るはずです。それで、LHCは……」

 

 

「未だに許可はなし。まぁ例のシステムといい私の件といい、信用ないものね」

 

 

「ぶっつけ本番ですか……怖いですね」

 

 

「MAGIに学習させて攻撃警戒システムは形になったけど、『どちら』が来るか、わからないのよね?」

 

 

「はい、Aタイプなら連携攻撃やLHCだけでも倒せそうですけど、Bタイプが来てしまうと……」

 

 

「……」

 

 

「ところで例の実験、やはりパイロットは必要でしょうか」

 

 

「修復作業のようには無理でしょうね」

 

 

「影響、わからないですよね……」

 

 

「アメリカのは移植による拒絶反応だったと思っているけれど、それだけに他に方法はないでしょうね。まぁ暴走はあり得るでしょうけど」

 

 

「……」

 

 

「不安?」

 

 

「当たり前ですよ……」

 

 

「けど言い出したのは、あなたよ」

 

 

「……はい。ひっくり返すには必要だと思います」

 

 

「なら腹を括るしかないじゃない」

 

 

「……いつにします?」

 

 

「まずは次を乗り切るしかないでしょうね。その後よ。万一を考えれば事故だの戦力減少なんて避けるべきだわ」

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

せめて戦闘シミュレーションで慣れてもらおうと新システムの説明をしていた。

 

 

シンジ君が訊ねる。

 

 

「攻撃警戒システム?」

 

 

「中・遠距離攻撃の予備動作から誰が狙われているか予測して警告を出すシステムよ。警告されたら横に回避して」

 

 

「かなり楽になるわね。さすがマヤ姉!」

 

 

わざと少し姿を変えたバーチャルのゼルエルを表示する。

 

 

「それと今回は新しい迎撃設備にも慣れてほしいから、場所はジオフロント内を想定してるわ」

 

 

「ジオフロント内って、そこまで誘き寄せるっての?」

 

 

「あくまで最悪を想定しての話よ。それに、その設備は威力は大きいけど1回使うと修理するしかない『奥の手』よ」

 

 

あとは自爆ドローンも投入しよう。

本番で混乱されたら困るものね。

 

 

「トウジ君は援護射撃で初参加だから、チームワークに気をつけてね、みんな」

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

発令所に連絡が入った。

日向さんが報告する。

 

 

「国連軍より石川県沖を正体不明物体がこちらに向かって飛行中との連絡あり。使徒と思われます」

 

 

「来たわね。連絡が早くて助かるわ」

 

 

葛城さんの言うように、国連軍が協力的だと準備に余裕が持てる。

ただ、今回ばかりは意味は薄いだろう。

 

 

「攻撃、要請してみますか?」

 

 

「情報はほしいものね。日向君お願い」

 

 

「了解しました」

 

 

結局、強固なATフィールドがあるという事しかわからなかった。

 

 

それでも映像としては確認できた。

 

 

ゼルエルのはずの使徒は『繭』のような姿だった。

 

 

……最悪ね。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

ゆっくりとした速度ながら、着実に侵攻を続けるゼルエル。

 

 

『史実』通り駒ヶ岳防衛線も突破された。

 

 

念のため零号機に盾を持たせ、参号機に改良型の陽電子砲で南方向から狙撃させてみたものの、多重ATフィールド4枚目で無効化、距離や方角が理由か無視され、やむ無く帰還した。

 

 

みんなの事前訓練は万全だけど、あとは祈るしかない。

 

 

「葛城さん、敵は攻撃力・防御力ともに強力で、これまで迎撃に対して無反応のまま突破されています。エヴァの装備でも足止めできるかどうか……恐らく地表の特殊装甲も抜かれるでしょう。ジオフロント内なら強力な迎撃設備を一つ用意してありますし、最初から全機を中で展開する方が移動のロスをなくせるかと」

 

 

私の意見に副司令が反応した。

 

 

「LHCを使うと言うのかね!? あれはまだ」

 

 

「地球上に現存する兵器の中で最大の威力です。事前にテストの許可を頂けなかったのは残念ですが、必要とあらば使うべきです」

 

 

碇司令に目をやり言った。返答は……

 

 

「……いいだろう。使用を許可する」

 

 

「碇!!」

 

 

「使徒を倒せなければ意味がない」

 

 

「ありがとうございます。……葛城さん」

 

 

「えぇ、全機ジオフロント内に。3機で撹乱しつつゼロ地点に誘導。参号機は後方から援護射撃で」

 

 

作戦は決まった。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「第1から18番装甲まで損壊!」

 

 

「18もある特殊装甲を、一瞬に!?」

 

 

葛城さんが指示を飛ばす。

 

 

「参号機には目標がジオフロント内に侵入した瞬間を狙い撃ちさせて! 他はATフィールド中和地点でフィールド最大!」

 

 

3機は散開してフィールドを展開、参号機がポジトロンライフルを撃つが

 

 

「効果なし!」

 

 

「ゼロ地点に誘導開始! 参号機は引き続き援護射撃を!」

 

 

それを受け私も

 

 

「ドローンを全機展開。LHC起動。粒子加速開始します」

 

 

自爆ドローンは超小型のVTOLジェット機で、全てMAGIのコントロール下。

 

上空で旋回しながら待機、ゼルエルの攻撃を察知すると射線上に急降下し自爆、命中を阻害するようプログラムされている。

 

 

零号機は少し離れた場所からライフルで、

 

初号機はソニック・グレイブ、

 

弐号機はアスカちゃんがATフィールドの扱いに長けている事から、試作のビゼンオサフネで。

 

 

ただし深追い厳禁。あくまで誘導だ。

 

 

降下してきたゼルエルは『繭』を解き、不気味に帯を(なび)かせながら前進する。

 

 

弐号機が上段で飛びかかる。

 

 

中和されているはずにも(かかわ)らず、振り下ろした刃はフィールド3枚で止められる。

 

 

すかさずフィールドを蹴り飛び退く弐号機。

 

 

カウンターに光線を、というタイミングで初号機が横から突撃。

 

 

気を反らす間に退避する弐号機。

 

 

零号機がライフルで援護し、初号機は下がる。

 

 

ゼルエルが零号機に帯を丸め、突く。

 

 

すぐさまドローン2機が吶喊(とっかん)、自爆。

命中場所がわずかに下がり、零号機は回避成功。

 

 

こちらの攻撃は効かない前提で、食らわない事を徹底し誘導する。

 

 

だが、ここでゼルエルは上空にフィールドを放った。

 

 

上空に旋回していた残りのドローン8機が爆散、全滅した。

 

 

……もっとMAGIに空戦経験を積ませたかったのに。

 

 

「みんな、ドローンが尽きたわ。気をつけて!」

 

 

〈警告のタイミングにも慣れてきたから問題ないわ!〉

 

 

〈ゼロ地点まで200メートル、やれます!〉

 

 

その後も慎重に誘導。

 

 

ただ、さすがに全ては回避できず

 

 

「零号機ケーブル切断! 内部電源に切り替わります!」

 

 

「一度下がって! 再接続を!」

 

 

葛城さんの指示で後退。

 

 

参号機の援護はあるけど、少し回避が危ない場面が増えてくる。

 

 

残り50メートル。

 

 

しかし

 

 

〈まずっ〉アスカちゃん!?

 

 

弐号機が帯に左腕を落とされた。

 

 

〈づぅぅっっ!?〉

 

〈アスカ!?〉

 

 

「神経接続カット! 援護を!」

 

 

……なんとか窮地は脱したものの、みんな徐々に疲弊する。

 

 

初号機は右のウェポンラックがなくなり、参号機は至近に光線が着弾、吹っ飛ばされた。

 

 

零号機が再接続を済ませ戻ったが、全体的に最初ほどの余裕はなくなっていた。

 

 

残り距離10……7……3……

 

 

「ゼロ地点です!」

 

 

「やって!!」

 

 

「リリース!!」

 

 

ジオフロント内周を回る形で足元に配置された巨大な円形加速器、その中を走っていた素粒子は別のコースへと円環から解放され、反対側から打ち出された粒子と衝突。

 

 

そのエネルギーは一時的に空間を歪め、事象の地平を生み出した。

 

 

すなわちマイクロブラックホール。

 

 

ゼロ地点、ゼルエルの直下で。

 

 

10の-8乗秒、『(しゃ)』という人間が認識し得ないわずかな時間、使徒の足元に生じた小さな黒い点が周りの風景を引き寄せるかのごとく歪ませ、蒸発。

 

 

引き伸ばされた景色が戻った時、ゼルエルの肋骨下半分から地面までを含む球形に、全てがゴッソリと(えぐ)られていた。

 

 

──金切り声──

 

 

即座、使徒に殺到する弐号機と初号機。

 

 

弐号機がビゼンオサフネで右から袈裟斬りに、

 

続く初号機が開かれたフィールドにソニック・グレイブの切っ先を突き込みコアへ

 

 

 

 

 

あと一枚、届かなかった。

 

 

 

 

 

〈やらせへんぞ!!〉

参号機の援護射撃で後退する2機。

 

 

しかし、万策は尽きた。

 

 

加速器はブラックホールを発生させた代償に衝突コース周囲が消失しており使えない。

 

 

先輩が口を開く。

 

 

「司令、現有戦力でアレを打倒するのは不可能かと。……『槍』を除けば」

 

 

「…………レイ、ドグマを降りて槍を使え」

 

 

「碇!? それは」

 

 

「今ここで初号機や弐号機を失うのは得策ではない」

 

 

「ゼーレの許可なく使うのは面倒だぞ」

 

 

「使ってなくなるわけではない。使徒を倒すためだ」

 

 

葛城さんが

「司令、『槍』とは」

 

 

「説明している余裕はない。3機で時間を稼げ」

 

 

 

 

 

ややあって戻った零号機が放ったロンギヌスの槍によって、いともあっさりとゼルエルはコアを貫かれ、戦いは終結した。

 

……先輩の一言がなければ、危なかった。

 





最強の敵を倒し、最後の戦いに向けて準備を進めるマヤ。
それと共に膨れ上がる自己嫌悪。
比例して強まる悲壮な決意。
そして、動き始めたのはゼーレも同じだった。
彼らが送り込む、新たな総司令とは……

第参拾伍話「理解するのは諦めた」

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