【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
家族のため、友のため、世界のために、トウジは一人、宇宙へと孤独な戦いに赴く。
そこで、トウジは何を見て、何を思うのか。
第参拾八話「トウジ、心の向こうに」
さぁ! 今回もサービス、サービスぅ♪
二話連結での移植です。
渚司令の紹介、シンジ君オンリーの挨拶とか一瞬「えっ」と思ったけど、とりあえず何の問題もなく済んで安心したわ。
内緒で進めていたS2機関搭載も、司令が変わって(ゼーレには変わらず内緒で)許可を得て行えるようになった。
まぁ、アスカちゃんやシンジ君は
「……これ、使徒のコアじゃないの……食えって? これを?」
「……大丈夫なの?」
「……食べるのはエヴァよ。あなたたちじゃないわ?」
「そりゃそうだけど……」
さすがに気持ち悪かったらしい。
……ゴメンね……
とはいえアラエル戦までに宇宙用装備は一式しか用意できないだろう。
なのでトウジ君は別メニューで訓練をする事に決まった。
レイちゃんは『槍での戦闘習熟』、シンジ君とアスカちゃんは
「マヤ姉、乱戦の訓練とか意味あるの?」
「どんな使徒が来るかわからないし、乱戦が平気になれば一対多も余裕になるでしょ?」
「まぁ確かに」
……そういう事にしておく。
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国連軍から衛星で宇宙空間に使徒を発見したとの報告があった。
直ちに参号機を宇宙用装備に換装、種子島からロケットに乗せて打ち上げる事が決まった。
攻撃衛星に搭載する予定だった改良型陽電子砲が唯一の武装で、あとは背中に推進力としてヴァジマールエンジンを搭載している。
……この作戦でゼーレは参号機にS2機関が搭載されていると気づくだろう。
けど使徒も残り2体。
渚司令も味方になった事だし『なるようになれ』だわ。
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─sideトウジ─
無音。
宇宙いうんはエライ静かなもんやな。
アニメとかで見るような派手な音とかするんかなと思っとったけど、最後の切り離しをしたら何も聞こえん。
「ヴァジマールエンジン点火や」
電気推進やて。デカイ割りに音は全然や。
……静かすぎてプレッシャー思い出してまうわ。
ワシの指先一つに全人類の命運が、なんて勘弁してほしいでホンマ。
気を紛らわそうと下に目をやる。
地球……キレイやなぁ。
「地球は青かった」いうたんは誰やったかな。
確かにそれ以外言葉出ぇへんわ。
ワシは神さんも仏さんも大して信じとらんけど、信じとる人は「宇宙に神はいなかった」いうくらいカルチャーショック受ける景色やで。
サクラにも見せてやりたかったなぁ……
後で映像いうても機密やろし、そんなん宇宙ステーションからのと同じや。
やっぱ、この目で見とるから実感
宇宙旅行とか、できる時代くるんやろか。
二言目にはカネないカネない言うような世の中じゃ、10年20年たっても変わらんとちゃうか。
おかしな話やで。
カネいうても数字書いてあるタダの紙切れやん。
なんで足らんくなるんや。
だいたい税金とるほど余っとるようには思えへんのやけど。
マヤさんも「予算が~」て、おかげでワシ一人で戦うはめになっとるし。
アカンアカン、せっかくの景色が台無しや。
と、電子音。ミサトさんや。
〈トウジ君、準備はいい?〉
「そろそろですか」
〈えぇ、まもなく地球の向こう側から見えてくるはずよ〉
「地球の向こう……SFですな、現実感ありませんわ」
〈確かにね。まぁ私たちはヤシマ作戦でSFには慣れたけど〉
「そん時ワシはいませんでしたからな……すんません、アホな話でもしとらんと手ぇ震えてまうんで」
〈……トウジ君、あなた一人に任せる事になってごめんなさい。でもこれだけは忘れないで。そこにいないだけで、みんながあなたを支えているわ〉
深呼吸。LCLやけどな。
で、思っきり
「……いっちょ、やったりますわ」
〈あなたならできると信じてるわ。それじゃ〉
べっぴんさんに
こっから先は通信も基本はない。
向こうでモニターはしとるけど、地上と違って陽電子砲ぶっ放すと電磁波でマトモ通信できへんらしい。
……自分との勝負や。
照準やらの調整はシステムが勝手にやる。
チャージは既に終わっとる。
ロックオンのマーカーが表示されて『OK』になったら、引き金を引くだけや。
……出た。
3,000㎞の遥か彼方、砂粒くらいにしか見えへん。
けどエヴァいうんは目がエェらしく、ワシが見よう思ったら砂粒くらいやったんがゴマ粒くらいまで見えるようなった。
ま、ゴマ粒でも見えとったら攻撃かわすくらいは……できたらえぇなぁ。
予想やと宇宙におるから光線撃ってくるか精神攻撃らしい。
精神攻撃って何やねん。
惣流のやつに聞いたら「うっさい死ね、とでも返したら?」とか言われてアホか思ったら、マヤさんが「……ある意味あってるかも……」いうとったから、まぁそういうのなんやろ。知らんけど。
「心にATフィールド」?
すんません。
そもそもATフィールド張るんを何となくでやっとるから、わからんのですわ。
ともかく、一発で決まれば関係あらへん。
『OK』の表示が……きた!
「当たれや!!」
音も何もなく、光の線が伸びていった。
……これで敵の反応が消えたらマーカーも消えて作戦終了なんやけど……
……消えへん! クソが!!
そう思ったら敵が光っ
あああああああああああああああ !?!
なん、や、これ、自分、考えてへん、関係なく、頭に、浮かぶ
頭ん中いじくっとるんか!?
今までの『考えても仕方ない事』が、悪い解釈で流し込まれる。
あん時の、誰それの、視線、態度、何とはない言葉…
疑心暗鬼で塗り潰そうっちゅうんか!?
これ、は、アカン、ホンマ
「じゃかぁしぃわボケがぁぁぁぁ!!!」
ホンマ不愉快や。ガマンできへん。
育ててくれたオヤジ、じっちゃん、めったにワガママなんて言わんえぇ子のサクラ、マブダチのケンスケ、サクラを救ってくれたマヤさん、必死に戦ってくれとったシンジ、惣流、綾波、ミサトさん、赤木さん…
今まで、どんだけの人に、どんだけ助けてもろたと思っとんねん。
それを…
「みんななぁ、お前がいうほど性根ひん曲がっとらんのやダァホゥ!!」
再チャージは終わっとる、はず。
けど、今も頭ん中いじくられとる最中やから、目ぇの焦点が合わん。
ロックオンしとるんか?
えぇい、ままよ!気合いで当てたらぁ!!
「いっぺん死んどけや、こんドグサレがぁぁぁ!!!」
引き金を引いた。
また音もなく光が伸びた。
相対速度いうやつか、さっきまでゴマ粒やったんが急にバスケボールくらいに見えたと思ったら、アッちゅう間にすれ違う。
……当たったように見えたんやけど、どうや。
敵の攻撃からは外れたらしく、流れ込んできとった気色悪い考えは消えとるけど、まだ頭がクラクラしとる。
なんとか首を回して後ろを振り返ると、音もないまま派手に吹っ飛ぶ使徒の姿。
「……勝った」
なんも実感あらへんけどな……
あとはオートで再突入や……気だるいけどフィールド張らな真っ黒こげや。
……あぁ、さっきのが「うっさい死ね」やったんかな。
帰ったら、礼、言わなアカンな。
最後の戦いに向けて、秒読みは静かに進んでいた。
時間を稼ぐカヲル、準備を進めるマヤ。
そして、レイは最後の『倒すべき使徒』に槍を放つ。
次回 第参拾九話「群像、嵐の前の静けさ」