【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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群像、嵐の前の静けさ

 

「どういう事が説明してもらおう」

 

 

「どういう事、とは?」

 

 

(とぼ)けるな! 明らかに参号機はS2機関を搭載している! 何も報告がなかったではないか!」

 

 

「あぁ、あれか。報告も何も、君たちだってデータを持っているだろう?」

 

 

「そういう問題ではない! そもそも、あれはどこから出てきた!」

 

 

「忘れたのかい? ガギエルさ」

 

 

「……なるほど、あの時のか。修復が済んでいたとは聞いていないぞ。……ここにきてシナリオの修正が必要になるなど怠慢(たいまん)ではないか」

 

 

「ダミープラグについてもだ。起動実験はしないまま破棄したようだが、完成はしていたのだろう」

 

 

「はいはい、わかったよ。資料を送っておく」

 

 

「……貴様は我らの計画のためにいるという事を忘れるな! 以上だ!」

 

 

 

 

 

 

「………………………………やれやれ、今さらそんなものを(そろ)えたところで彼女は止められないというのに。それに、ガギエルとは言ったけど修復じゃなくて複製だし、(すで)に全機搭載済みなんだけどね」

 

 

「司令もお人が悪い。カンカンでしたよ」

 

 

「ふん、『計画のため』? それは司令に()いた時点で終わってるよ」

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

sideレイ

 

 

「目標を確認」

 

 

クルクルと、輪の状態で空中を回っている。

 

 

大丈夫、やれるわ。

 

 

色々な形を想定して、この日のために訓練をしてきた。

 

 

……やっぱり、マヤお姉ちゃんは何かを知ってる。

 

 

でも、話してはくれない。

 

 

理由はわかる。

人は、自分が信じられる事しか、信じようとしないわ。

 

 

でも、私は、お姉ちゃんが話してくれたら信じるわ。

 

 

だから、少し(さび)しい。

 

 

だけど、私も同じだわ。

 

 

自分から聞けばいい。

それをしないのは、恐れているから。

 

 

……信じてないの? お姉ちゃんを。

 

 

頭を振って、考えを振り払う。

 

 

今は任務に集中しないと。

 

 

「どうしたの? レイ、大丈夫?」

 

 

「……何でもないわ、シンジ君。始めましょう」

 

 

「うん」

 

 

零号機から、やや(じく)をずらした後ろに移動してライフルを構える初号機。

 

 

発砲。着弾。

 

 

動きを止め、輪を解除して一本のロープのような形になり、こちらに飛んでくる使徒。

 

 

そう、その形なのね。なら、簡単だわ。

 

 

私は、真っ直ぐに飛んでくる使徒へ、真っ直ぐに槍を放った。

 

 

ATフィールドなど無いかのように、槍は使徒の先端から入り、竹を割るように使徒を引き裂きながら、後方へ抜けた。

 

 

金切り声を上げ、飛んできた勢いそのままに、地面へと振り()かれるようにして落ちた。

 

 

〈パターン青の消失を確認。殲滅完了よ、レイ。お疲れ様。訓練の成果、というにしても呆気(あっけ)なかったわね〉

 

 

そう、呆気なかった。

 

 

だけど、それが逆に、これから先の未来に何かがあるようで、私は少し不安になった。

 

 

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「……それにしても、本当にいいのかい? 君しか知らないとは言え、僕は」

 

 

「どうせ死ぬなら、願いを叶えてから死ねばいいじゃないですか。LHCがあればエヴァなんてなくても、あなたは死ぬ事ができますよ」

 

 

「……天地創造の力……確かにね。なら、お言葉に甘えるとしよう。ところで君は、本当にやる気かい? なにも君が動かなくても」

 

 

「私は、楽に死んでいい人間じゃありませんから。失礼します」

 

 

 

 

 

 

「…………………………やれやれ、つまり『本当にそう』なのか。僕はてっきり……自分で気付いていないというのは難儀(なんぎ)なものだね。もっとも、僕が言えた口じゃないだろうけど」

 

 

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S2機関搭載以降、パーソナルデータに変化なし、か。

やっぱり、そうなるわよね……

 

 

「作業中に考え事なんて珍しいわね? マヤ」

 

 

「あ、すみません」

 

 

「別に構わないわ。ほとんど完成してはいるし」

 

 

「あとはソフト面だけですね」

 

 

「……マヤ、私は反対だわ」

 

 

「けじめですよ。私にとっては必要な事なんです」

 

 

「……ハァ、ところで、何やってるの?」

 

 

「XAP-16、味気ないじゃないですか。最後の戦いなのに」

 

 

私はマスキングテープを()がした。

 

 

下からは妖精のシルエット。その横には

 

 

「……Tinker Bell(ティンカーベル)……愛称?」

 

 

「あの子たちを、(みちび)けるように」

 

 

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sideリツコ

 

 

私は、ある公園を訪れていた。

 

 

奥のベンチには男が一人、(はと)にエサをやっている。

 

 

私はタバコに火を付け、男の前に歩いてゆく。

 

 

彼もこちらに気付いたようで、億劫(おっくう)そうに顔を上げた。

 

 

「ここにいたのね、ゲンドウさん」

 

 

格好はそのままだが、入浴も洗濯もしていないのだろう。ヨレヨレで少し小汚ない印象。

ヒゲも整えてはいなかった。

 

 

「……俺を(わら)いにきたのか」

 

 

「えぇ。でも、それだけではありませんわ」

 

 

「?」

 

 

「……それにしても意外でしたわ。てっきり処理されるものだと」

 

 

「……ふっ、俺は」

 

 

右手を握りしめる。

 

 

「……保険なのだろう。冬月さえ押さえておけば、その程度の存在でしかないと、屈辱(くつじょく)を与えているつもりなのだろう……事実だ。周りを利用するばかりだったツケを(はら)わされたという事だ」

 

 

「……それで? 全て諦めるおつもりですか」

 

 

「それは、どういう」

 

 

私は、彼の顔に煙を吐きかけた。

 

 

「ユイさんはわかりませんが、シンジ君の助けにはなれますわよ? 『お父様』?」

 

 

フッ、『貸し1』よ。

 





ついに始まった最後の戦い。
アスカの危機に駆けつけたマヤが、とうとう明かす真意。
そんなマヤに、思いの丈をぶつけるアスカ。
アスカの熱情は、マヤの決意を砕けるのか。
世界の、そして二人の未来は……

第四拾話「意地を張るのは諦めた」

さぁ! 次回もサービス、サービスぅ♪
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