【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
私は基本『結末』に関しては諦めてしまっている。
でも、そこに至るまでの悲しい事や苦しい事は回避したいし、子供たちにできる限りの事はしたい。
『汚い大人』には、なりたくないのだ。
だからN2使用による緊急の設備点検を施設部に要請はしたし、シンジ君にATフィールドの説明はした。
だけど、それだけだ。
私にできる事なんてたかが知れてる。
シンジ君は可哀想だけど、戦ってもらうしかない。
全て司令の『策』なんだろうし、口を
自分が、嫌になる。
結局『史実』通りに初号機は頭を貫かれた。
痛い思いをさせてしまった。
さっきまで軍人でも何でもない普通の男の子だったのに。
自己嫌悪で吐きそうになる。
戦闘が終わり各報告書をまとめ、先輩と今後の対策について議論し、すぐに病院へ向かう。
せめて二人のお見舞いくらいはしないと…
今回は解析するべき使徒の残骸もないし、損傷した初号機の点検を含め猛スピードで片付けてしまえば他には何もない。
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「その後はどう? 怪我も治ってないのに動かしてごめんね、レイちゃん」
「……大丈夫。エヴァに乗る事しか、私には何もないもの」
全てわかっている。
運命として定められている事。
本人も、見えている世界があまりにも狭いという事も。
でも、だから、
私は彼女の左手を握り、しっかりと目を見て、言った。
「私は、エヴァのパイロットだからとか、そんな事とは関係なく、レイちゃんと仲良くなれた事が嬉しいよ? あなたが生きててくれる事が嬉しいの」
不思議そうに私を見るレイちゃん。
いつか、理解してくれるといいな。
「退院したら、何か料理作ってあげるね? 何が食べたい?」
「…………ニンニクラーメンチャーシューぬき」
「……ら、ラーメンは、ちょっと、難しい、かな。……オムライスとかでもいい?」
彼女はコックリと頷いた。
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次はシンジ君の病室へ。
どうやら目は覚ましていたらしい。
「よかった。気がついたのねシンジ君。気分はどう?」
「……あ、えっと、はい、大丈夫です」
「そういえば、ちゃんと自己紹介してなかったね。オペレーターの伊吹マヤです。よろしくね?」
「オペレーター……あ、あの時の。よろしくお願いします……」
「今日は、お見舞いに来たの。どうしても伝えたい事があって……」
私は、シンジ君に深く頭を下げた。
「怖い思いをさせてしまって、ごめんなさい」
「えっ」
「急に連れて来られて戦えだなんて、怖かったよね……私達の都合で、すごく痛い思いまでさせて、本当に、ごめんなさい!」
普通の子供なのに、何も悪い事なんてしてないのに、大人達の都合で色々なものを押し付けてしまった事に申し訳なくなって、涙が出た。
「死んじゃうかも知れないような事を押し付けてしまって、ごめんなさい……つらかったよね……それでも戦ってくれて、本当に、ありがとう……」
私がそう言って数瞬、きっと、つらかった思いが込み上げたのだろう。
シンジ君は泣いた。
私はそっと頭を撫でてあげたり、抱きしめてやったり、泣き止むまでそうしていた。
やがて泣き疲れたのか、そのまま彼は眠ってしまった。
その顔を見ながら私は思った。
きっとこの後、彼は『史実』通り葛城さんに引き取られる事になるのだろう。
けど、そこに彼の幸せはあるのだろうか。
『記憶』で葛城さんは「家族ごっこ」と
実際、彼女はその生い立ちからシンジ君の扱い方は不器用なものとなった。
表面上は穏やかな居場所だったかも知れないけれど、どこかギブアンドテイクのような割り切ったものではなかったか。
彼も、彼女も。
『理想の』家族とは、そんなものじゃないはずだ。
危険な『運命』を背負わされ、大人が与えてやれるものが『それ』だけでいいのだろうか。
それじゃ、まるで……
気がつけば私は先輩に電話をかけていた。シンジ君を引き取る、と。
衝動的なのは事実だし、自己満足や代償行為なのも理解している。
それでも、私は……
─────あんな『汚い大人』には、なりたくなかった。
シンジとの同居を決めた伊吹マヤ。
新しい家族を迎え入れるため、彼女は自身と向き合う事を決意する。
激しい葛藤の末に、彼女は何を得るのか。
次回 第六話「保存用は諦めた」
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