【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
あの時は、てっきり仕事の話だと思ったんだ。
だけど「お見舞い」だって言われて、少し驚いたけど、嬉しかった。
しかも僕に頭を下げて「ごめんなさい」「ありがとう」って言ってくれた。
僕の気持ちを、わかってくれたんだ。
あの後、ミサトさんから「立派な事をしたんだ」って言われたけど、ピンと来なかったし、マヤさんの言葉の方が、すごく心に響いたんだ。
だから、みっともないくらい泣いちゃった。
あんなに泣いたのは、父さんに置いていかれた時以来かも知れない。
目が覚めた時、ミサトさんが迎えに来て「マヤさんの所に住む事になった」って聞いて、驚いたし嬉しかったけど、同じくらい不安になった。
だって、嫌われたくなかったんだ。
あんな優しい言葉をくれた人に嫌われたら、もう立ち直れなくなりそうだったから。
「おかえり」って言ってくれて、僕の住む部屋を空けるために大事なものを処分したっていうし、嬉しさと同時に不安も膨らんでいった。
せっかくの手料理「美味しかった」って言ったけど、実は気が気じゃなかった。
僕が何か失敗したら、そんな暖かい時間が二度と来なくなるんじゃないか、って。
でも、そんなのは杞憂だったんだ。
「本当の家族になりたい」「パイロットとか関係なく、ここにいてほしい」って言ってくれたんだ。
……マヤさんの前じゃ、泣いてばっかりだ。
戦うのは実際怖いし、あんな痛い目にあうのは嫌だけど、それでもパイロットは続けようと思ってる。
守りたいんだ。
マヤさんが「おかえり」って言ってくれる、この居場所を。
……けど、まぁ、嬉しいんだけど、その……
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「今日はレイちゃんも退院するっていうし、学校の手続きしてくるけど、そんなに遅くはならないと思うから」
「はい、夕食の準備だけしておきますね? オムライスでしたっけ」
「うん、せっかくだから退院祝いに、ね。それじゃ、いってきま……」
「……どうしたんですか?」
「……うん、敬語とか丁寧語っていうのも変かな、って。家族なんだし。すぐにじゃなくてもいいけど、慣れてくれたら嬉しいかな」
「はい、じゃなかった……うん、わかった」
「よろしい! ……あと、えーと、その……」
「……何?」
「……試しに、っていうか、ちょっとお願いしたい事が……」
「え、何? なんでも言ってよ!」
「……マヤお姉ちゃんって、呼んでみて?」
「…………ぇえ!!」
「ダメ、かな?」
「……ぅう、ま、マヤ、お姉ちゃん」
「!(危なかった……還ってこれなくなるかと)」
「え、何て?」
「う、ううん! なんでも! そ、そうだ! 今度から家ではその呼び方でっていうのは?」
「……ぇえええ!! あの、えっと、それは、その……」
「だ、ダメ?」
「……ま、マヤ姉さん、じゃ、ダメ?」
「……いい! そ、それでお願い!!」
「う、うん、わかった……いってらっしゃい、ま、マヤ姉さん」
「うん、いってきます!」
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「お姉ちゃん」呼びは勘弁してほしい、かな……は、恥ずかしいよ……
自分の願望に気付いたマヤは、レイも自身の家族に迎え入れるべく、その退院を喜ぶ。
しかし、そこに水を差すように、心の古傷が開かれる。
第拾話「シンジ君の方は諦めた」
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