【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版) 作:ブドウ冷やしんす
《NERV中央総合病院》
はぁ……「お姉ちゃん」はダメだったけど、可愛かったぁ……
学校の手続きを早々に終え病院内を歩きつつ、私は出かける時の事を思い返していた。
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「……マヤお姉ちゃんって、呼んでみて?」
「…………ぇえ!!」
さすがにハードル高かったかな……いや、ここは一押し。
シンジ君は押しに弱いはず。
「ダメ、かな?」
「……ぅう、ま、マヤ、お姉ちゃん」
───限界深度を突破! パルス逆流!
ダメです! 止まりません!
「!(危なかった……還ってこれなくなるかと)」
なんて破壊力、人類補完計画を待たずに溶けるかと思った……
「え、何て?」
「う、ううん! なんでも! そ、そうだ! 今度から家ではその呼び方でっていうのは?」
「……ぇえええ!! あの、えっと、それは、その……」
無理? 無理なの? いや、まだよ! これだけは諦めるわけにいかない!
ゴメンねシンジ君、理想の家族を手に入れるためなの!
「だ、ダメ?」
するとシンジ君は顔を赤らめ、こちらを上目遣いに言っ
「……ま、マヤ姉さん、じゃ、ダメ?」
───ダメです! 停止信号及びプラグ排出コード認識しません! シンクロ率なおも上昇! このままでは
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……うん、あれはヤバかった。
爪先辺りLCLになってないかとさえ思ったわ。
ま、まぁネルフ職員としては私情を
というか許してほしい。
さぁ、次はレイちゃんにも呼んでもらわないと!
意気揚々と、私はレイちゃんの病室へ向かった。
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「……というわけでシンジ君も一緒に食事する事になるから、仲良くしてあげてね? レイちゃん。学校も、明日から同じクラスになるから」
「……はい」
「それにしても待ちわびたわ。レイちゃんがいないと寂しいもの」
「……寂しい?」
「心が寒くなるって事。寒いって言っても、よくわからないかな。今は夏しかないし。昔は冬って季節もあって、水溜まりが凍ったり雪が降ったりしたの」
……いやな昔の事まで思い出しちゃった。
「……寒いとね、誰かに傍にいてほしくなるの」
あの頃を思い出す機会が減った分、冬がなくなった事は私にとってはいい事だったのかも……なんて言ったら、気候変動で大打撃を受けた農家さんたちには怒られるかな。
「……伊吹二尉、心が寒いの?」
いけない。
せっかくの
と思っていたら、レイちゃんが左手でそっと抱きついてきて、こちらを見上げなが
「……ポカポカ、する?」
……こ、この流れでそれは反則よレイちゃんんんんん!!
私は思わず……といってもレイちゃんのケガもあるから、そっと、抱きしめ返した。
「ありがと? おかげでポカポカよ!」
「……そう……きっと、私も……」
「え?」
と、その時
「もしかして、お邪魔だったかしら……」
声の方を振り返ると、
「葛城さん! ち、違うんです! これは、アレです! 退院の喜びを分かち合っ」
「わかってるわよ、んな事。前から仲いいもんね? ……むしろ、そんな反応されたら逆に疑いたくなるじゃない」
「と、ところで、何故こちらに?」
「……送ってあげるって連絡してなかったっけ」
「あ、すみません! そうですよね!」
「もう……置いてってやろうかしら……ところでシンジ君と暮らしてみて、どう? まぁ、まだ一日目だけど」
「あ、はい、最初ちょっとテンパっちゃってワタワタしましたけど、逆にコミュニケーションはとれたかなって」
「……あー、そうなんだ、そりゃ良かった……てか、シンジ君の様子も聞きたかったんだけど……」
「……え、あ! そうですよね、すみません……えっと、すごくいい子ですよ? 家事とか
「へー、料理とかもできる感じ?」
「はい、もう分担の予定も立ててます」
「良好、良好。メンタル的にも大丈夫そう? 戦いの後だし」
「そうですね、昨日もグッスリ寝てましたし」
「そっか……ちょっち心配してたのよね。結構やられてたし……まぁ、むしろ慣れてないのはマヤちゃんの方かも? まだ浮き足立ってるぽいし」
葛城さんが少しニヤニヤしながら言う。
「あ、あはは……まぁお互い少しずつ、って感じですかね」
「けどまぁ意外と平気そうね? リツコからちょっち潔癖性だって聞いてたから」
「……ぁー(そういえば案外……)」
まぁ、シンジ君の性格かなぁ……『不潔』には感じないのよね…それか私の『記憶』とかが原因、とか? でも潔癖性が治った感じじゃないし……うーん?
「ま、うまい事やれてるなら良かった良かった」
「はい! とっても可愛いんですよ!」
「……マヤちゃん、あんま可愛いからって手ぇ出しちゃダメよ?」
「葛城さん、発想が不潔です」
「え、逆にダメ出しぃ!?」
「あくまで保護者なんですから! いわば姉です!」
「姉、ねぇ……てか、いっそのこと養子にでもする? レイの事も含めて、むしろ『お母さん』って感じだけど」
……その響きに、反射的に少し身構えてしまった。
もちろん、その方が手っ取り早いのはわかるけど、『お母さん』呼びされるのは抵抗がががががががが、あー……
……こんな事でまで、私を苦しめるの?お母さん……
「……私に母親なんて、無理ですよ」
「そう? 似合いそうなもんだけど」
……母親の不在は守れても、『母』にはなりたくないし、『母の代わり』なんて、もっと嫌!
……だから『姉』でいたい、なんて、自分で
ダメダメ!
これから退院祝いしてあげるのにネガティブになって……
「……母親の素質なら葛城さんの方がありますよ」
「それは暗に年齢の事を言ってるのかしら?」
「ち、違います!?」
しっかりしないと。『お姉さん』なんだから!
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「ただいま! シンジ君!」
玄関から声をかけると奥からパタパタと、
「おかえりマヤ姉さ、んんんっ、あ、綾波! た、退院おめでとう!」
……つい言っちゃったのね?
定着してるようで何より!
「あ、改めて自己紹介しとくよ! 碇シンジっていうんだ! よろしく!」
勢いで誤魔化そうとしてるのね?
照れてるのが可愛いくて、ついニヤニヤしてしまった。
「……よろしく。碇君、何故、伊吹二尉を姉と「ああああああ」ぶの?」
誤魔化しに失敗して頭を抱えてしまうシンジ君。
ちょっと可哀想だし、助け船を出してあげますか。
「私がお願いしたからよ。本当の家族として付き合いたかったから。あなたもよ? レイちゃん」
不思議そうに首を傾げるレイちゃん。
「一緒に住む許可がもらえてないだけで、私はあなたの事も家族だと思ってる……迷惑かな?」
「……迷惑じゃ、ない」
「よかった! さ、約束通りオムライス作ってあげるから入って?」
「……お邪魔します」
「……綾波、『ただいま』って言った方が喜んでくれるよ?」
ナイスアシストよシンジ君!
まだ照れてるけど。
「……喜ぶの?」
「うん、自分の家だと思ってくれたら嬉しいわ?」
交互に私とシンジ君を見て、少し考える素振りをしたレイちゃんが
「……ただいま……マヤお姉ちゃん」
キターーー!!
あ、ヤバ、ついガッツポーズしちゃった。
「おかえり、レイちゃん!」
シンジやレイと家族になれたマヤだったが、課せられた使命に心を重くする。
秘密を明かされた時、マヤに対する二人の答えとは。
次回 第拾壱話「考えるのは諦めた」
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