【完結】マヤさんは諦めた(ハーメルン移植版)   作:ブドウ冷やしんす

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シンジ君の方は諦めた

 

《NERV中央総合病院》

 

 

はぁ……「お姉ちゃん」はダメだったけど、可愛かったぁ……

 

 

学校の手続きを早々に終え病院内を歩きつつ、私は出かける時の事を思い返していた。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「……マヤお姉ちゃんって、呼んでみて?」

 

 

 

「…………ぇえ!!」

 

 

さすがにハードル高かったかな……いや、ここは一押し。

 

 

シンジ君は押しに弱いはず。

 

 

「ダメ、かな?」

 

 

葛藤(かっとう)の末、足元辺りに視線を泳がせながらシンジ君が口を開く。

 

 

「……ぅう、ま、マヤ、お姉ちゃん」

 

 

 

 

 

───限界深度を突破! パルス逆流!

ダメです! 止まりません!

 

 

 

 

 

「!(危なかった……還ってこれなくなるかと)」

 

 

なんて破壊力、人類補完計画を待たずに溶けるかと思った……

 

 

「え、何て?」

 

 

「う、ううん! なんでも! そ、そうだ! 今度から家ではその呼び方でっていうのは?」

 

 

「……ぇえええ!! あの、えっと、それは、その……」

 

 

無理? 無理なの? いや、まだよ! これだけは諦めるわけにいかない!

ゴメンねシンジ君、理想の家族を手に入れるためなの!

 

 

「だ、ダメ?」

 

 

するとシンジ君は顔を赤らめ、こちらを上目遣いに言っ

 

 

「……ま、マヤ姉さん、じゃ、ダメ?」

 

 

 

 

 

───ダメです! 停止信号及びプラグ排出コード認識しません! シンクロ率なおも上昇! このままでは

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

……うん、あれはヤバかった。

爪先辺りLCLになってないかとさえ思ったわ。

 

 

ま、まぁネルフ職員としては私情を(はさ)みまくりだと言われるんだろうけど、シンジ君の性格的にしっかり『家族』してれば、つまりメンタルさえ安定してれば無謀や危険などのおかしな行動はしないはず、という考えがあっての話だし、何より『後2年』なのだから多少は許されるだろう。

というか許してほしい。

 

 

さぁ、次はレイちゃんにも呼んでもらわないと!

 

 

意気揚々と、私はレイちゃんの病室へ向かった。

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「……というわけでシンジ君も一緒に食事する事になるから、仲良くしてあげてね? レイちゃん。学校も、明日から同じクラスになるから」

 

 

「……はい」

 

 

「それにしても待ちわびたわ。レイちゃんがいないと寂しいもの」

 

 

「……寂しい?」

 

 

「心が寒くなるって事。寒いって言っても、よくわからないかな。今は夏しかないし。昔は冬って季節もあって、水溜まりが凍ったり雪が降ったりしたの」

 

 

 

 

……いやな昔の事まで思い出しちゃった。

 

 

 

 

「……寒いとね、誰かに傍にいてほしくなるの」

 

 

あの頃を思い出す機会が減った分、冬がなくなった事は私にとってはいい事だったのかも……なんて言ったら、気候変動で大打撃を受けた農家さんたちには怒られるかな。

 

 

「……伊吹二尉、心が寒いの?」

 

 

いけない。

 

 

せっかくの目出度(めでた)い退院日なのに暗い顔見せちゃうなんて。

 

 

と思っていたら、レイちゃんが左手でそっと抱きついてきて、こちらを見上げなが

 

 

「……ポカポカ、する?」

 

 

 

 

 

……こ、この流れでそれは反則よレイちゃんんんんん!!

 

 

 

 

 

私は思わず……といってもレイちゃんのケガもあるから、そっと、抱きしめ返した。

 

 

「ありがと? おかげでポカポカよ!」

 

 

「……そう……きっと、私も……」

 

 

「え?」

 

 

と、その時

 

 

 

 

 

「もしかして、お邪魔だったかしら……」

 

 

 

 

 

声の方を振り返ると、

 

 

「葛城さん! ち、違うんです! これは、アレです! 退院の喜びを分かち合っ」

 

 

「わかってるわよ、んな事。前から仲いいもんね? ……むしろ、そんな反応されたら逆に疑いたくなるじゃない」

 

 

「と、ところで、何故こちらに?」

 

 

「……送ってあげるって連絡してなかったっけ」

 

 

「あ、すみません! そうですよね!」

 

 

「もう……置いてってやろうかしら……ところでシンジ君と暮らしてみて、どう? まぁ、まだ一日目だけど」

 

 

「あ、はい、最初ちょっとテンパっちゃってワタワタしましたけど、逆にコミュニケーションはとれたかなって」

 

 

「……あー、そうなんだ、そりゃ良かった……てか、シンジ君の様子も聞きたかったんだけど……」

 

 

「……え、あ! そうですよね、すみません……えっと、すごくいい子ですよ? 家事とか率先(そっせん)して手伝ってくれるし」

 

 

「へー、料理とかもできる感じ?」

 

 

「はい、もう分担の予定も立ててます」

 

 

「良好、良好。メンタル的にも大丈夫そう? 戦いの後だし」

 

 

「そうですね、昨日もグッスリ寝てましたし」

 

 

「そっか……ちょっち心配してたのよね。結構やられてたし……まぁ、むしろ慣れてないのはマヤちゃんの方かも? まだ浮き足立ってるぽいし」

 

 

葛城さんが少しニヤニヤしながら言う。

 

 

「あ、あはは……まぁお互い少しずつ、って感じですかね」

 

 

「けどまぁ意外と平気そうね? リツコからちょっち潔癖性だって聞いてたから」

 

 

「……ぁー(そういえば案外……)」

 

 

まぁ、シンジ君の性格かなぁ……『不潔』には感じないのよね…それか私の『記憶』とかが原因、とか? でも潔癖性が治った感じじゃないし……うーん?

 

 

「ま、うまい事やれてるなら良かった良かった」

 

 

「はい! とっても可愛いんですよ!」

 

 

「……マヤちゃん、あんま可愛いからって手ぇ出しちゃダメよ?」

 

 

「葛城さん、発想が不潔です」

 

 

「え、逆にダメ出しぃ!?」

 

 

「あくまで保護者なんですから! いわば姉です!」

 

 

「姉、ねぇ……てか、いっそのこと養子にでもする? レイの事も含めて、むしろ『お母さん』って感じだけど」

 

 

 

 

 

……その響きに、反射的に少し身構えてしまった。

 

 

 

 

 

もちろん、その方が手っ取り早いのはわかるけど、『お母さん』呼びされるのは抵抗がががががががが、あー……

 

 

……こんな事でまで、私を苦しめるの?お母さん……

 

 

 

 

 

「……私に母親なんて、無理ですよ」

 

 

「そう? 似合いそうなもんだけど」

 

 

 

 

 

……母親の不在は守れても、『母』にはなりたくないし、『母の代わり』なんて、もっと嫌!

 

 

 

 

 

……だから『姉』でいたい、なんて、自分で滑稽(こっけい)に思ってしまう。

 

 

ダメダメ!

 

 

これから退院祝いしてあげるのにネガティブになって……

 

 

「……母親の素質なら葛城さんの方がありますよ」

 

 

「それは暗に年齢の事を言ってるのかしら?」

 

 

「ち、違います!?」

 

 

 

 

 

しっかりしないと。『お姉さん』なんだから!

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

「ただいま! シンジ君!」

 

 

玄関から声をかけると奥からパタパタと、

 

 

「おかえりマヤ姉さ、んんんっ、あ、綾波! た、退院おめでとう!」

 

 

 

……つい言っちゃったのね?

 

 

定着してるようで何より!

 

 

 

「あ、改めて自己紹介しとくよ! 碇シンジっていうんだ! よろしく!」

 

 

勢いで誤魔化そうとしてるのね?

 

 

照れてるのが可愛いくて、ついニヤニヤしてしまった。

 

 

「……よろしく。碇君、何故、伊吹二尉を姉と「ああああああ」ぶの?」

 

 

誤魔化しに失敗して頭を抱えてしまうシンジ君。

 

 

ちょっと可哀想だし、助け船を出してあげますか。

 

 

「私がお願いしたからよ。本当の家族として付き合いたかったから。あなたもよ? レイちゃん」

 

 

不思議そうに首を傾げるレイちゃん。

 

 

「一緒に住む許可がもらえてないだけで、私はあなたの事も家族だと思ってる……迷惑かな?」

 

 

「……迷惑じゃ、ない」

 

 

「よかった! さ、約束通りオムライス作ってあげるから入って?」

 

 

「……お邪魔します」

 

 

「……綾波、『ただいま』って言った方が喜んでくれるよ?」

 

 

ナイスアシストよシンジ君!

まだ照れてるけど。

 

 

「……喜ぶの?」

 

 

「うん、自分の家だと思ってくれたら嬉しいわ?」

 

 

交互に私とシンジ君を見て、少し考える素振りをしたレイちゃんが

 

 

 

 

 

「……ただいま……マヤお姉ちゃん」

 

 

 

 

 

キターーー!!

あ、ヤバ、ついガッツポーズしちゃった。

 

 

「おかえり、レイちゃん!」

 





シンジやレイと家族になれたマヤだったが、課せられた使命に心を重くする。
秘密を明かされた時、マヤに対する二人の答えとは。

次回 第拾壱話「考えるのは諦めた」

さぁ! 今度もサービス、サービスぅ♪
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