七色の魔法使いの現代入り   作:Awino

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1 森に住む魔女

 魔法の森…そう呼ばれる森に一軒の家がある。

 その家の主はこの森の放つ瘴気に耐性があり、魔力を自由に操ることができる所謂魔法使い。

 魔法使いには二つの意味が存在する。ひとつは単に魔法を扱う者の意味。ひとつはその存在の種族の意味。

 この家の家主は後者の方に属している。

 また、他者とのかかわりに対しては消極的な姿勢を見せる人物ではあるが、夜の森に迷い込んでしまった者に対しては自宅に泊めるというなんとも掴めない性格の持ち主でもある。

 現在は昼を過ぎたところだが、常に霧の立ち込めるこの場所では時間というのは実感が湧きにくい。

 しかし、長くこの森に住んでいる者からすれば、ちゃんと時間は進んでいるのだそう。

 木々に止まる小鳥たちは、つい数秒前までさえずっていたが、突然声を止め一斉に飛び去ってしまった。

 何かに反応したような様子だったが、その相手は数秒と経たずにこの場所めがけて突っ込んできた。

 地面に激突する寸前のところで空中停止し、スタッと音を立てて華麗に地面に降り立つ。

 そのまま家の玄関へ…かと思いきや、家の裏の方へと周っていった。

 そして裏口の戸を開け中へと入っていった。裏口の戸を閉めると槍を持った数体の人形に囲まれた。

 突然現れた人形に対し若干の驚きを露にし数歩後ずさる。

 この状況をどう打開しようかと思考をめぐらせていると一人の女性が睨みを利かせながら現れた。どうやらこの家の家主のようだ。

 「ようアリス…今日はまた物騒なお出迎えだな…」

 「あんたが泥棒目的で家に来るのがいけないんでしょ。家にはあんたに無償で渡す本なんかないわよ」

 アリスと呼ばれた少女は鋭い眼差しを相手に向けながら冷ややかな口調で言い放つ。対する侵入者は苦笑を浮かべながら突破口はないかと目を動かしている。

 「そう硬いこと言うなって…私とお前の仲だろ?」

 「そんな仲になった覚えは欠片もないのだけど。あと隙を突いて盗ろうなんて思わないで」

 そう指摘され思わず目を見開く。どうやら図星のようだ。

 「そんなこと思ってないって…」

 「目が泳いでるわよ」

 完全に逃げ場はない。そう判断したのか侵入者の少女は溜め息を一つ吐く。

 「わかった。今回はあきらめるよ」

 「今回はじゃなくて二度と盗みに来ないで。さっきも言ったけどここには霧雨魔理沙に無償で渡す本なんかないのよ」

 魔理沙はそう言われると、帽子のつばを持ち胸を張って言い放った。

 「私は盗んでるんじゃない。死ぬまで借りてるだけだ!」

 「あんたそれ本気で言ってるなら最早⑨以下よ」

 アリスは溢れ出る様な謎の自信に心底呆れたのか大きく溜め息を吐くと、魔理沙の周りの人形たちを払った。

 「とりあえず、お茶でも飲む?」

 「そう来なくっちゃ」

 魔理沙はそう言うと満足げに自分の席へ向かった。

 

 ♦

 

 「そう。でもどうせ巫女とあんたで解決するんでしょ?異変っていわれても気付いたら解決してるから実感がないな」

 お茶を飲み始めてから数分後。魔理沙の切り出した異変の話題に対して、アリスは若干興味を持てずにいた。

 「まあそうなんだけど…でも、私と霊夢じゃ手に負えないヤツが来ないとも限らないから一応知ってて欲しくて」

 完全に人事な態度をとるアリスに対し魔理沙は説得する。自分とて完璧ではないと魔理沙も自負しているようだ。

 「魔法に対する技術じゃアリスのほうが上だし。私って基本火力に振っちゃってるから攻略されやすいんだよね」

 代名詞であるマスタースパークも当たればかなりのダメージだが実質一本の極太レーザーなので避けることに成功すれば魔理沙自身は隙だらけとなってしまう。

 「じゃあなんでもっと複雑なスペル作らないのよ」

 「細かい術式は苦手なのぜ…」

 そう言って頭に手を置きながら魔理沙は答える。複雑な術式を作れないからこそ火力でカバーしているのだろう。

 「わかった。主犯はどんな奴?」

 「主犯はまだわかってない。だけど黒いコートを羽織った組織ってことはわかってる。だから同じ服装の奴には注意して」

 「わかった」

 そのあとは雑談などをして過ごした。霊夢が最近釣りを始めただの魔法薬の実験に失敗しただのいきなり妖怪に襲われただのと、なかなかの盛り上がりを見せた。

 時刻はついに四時をまわり魔理沙はそろそろ帰ることにした。

 「またなアリス。またくるぜ」

 「本は渡さないわよ」

 魔理沙は「わかってるって」と答えると彗星の如き速さで飛び去っていった。

 嵐のように去っていった魔法使いを見送ると、踵を返し玄関の戸に触れた。そのまま中に入ろうとしたが、妙な気配を感じて踏みとどまった。

 暫く森のほうを見ていると二人ほどこちらに歩いてきていた。そしてついに森から出てきたかと思うと…

 「?!」

 黒いコートに身を包んでいた。魔理沙の言っていた異変を起こしている組織だろう。

 アリスは二人の黒服を観察し様子を伺う。すると黒服のうち一人がポケットに手を入れた。何を取り出すのかと思考を巡らせる。

 そしてポケットに入れていた手が取り出される。しかし相手は何も持っていなかった。一瞬不思議に思ったがその答えは瞬く間にやってきた。

 「ッ?!」

 とっさに何かを感じ取り身を翻す。するとすぐに壁に何かが当たった。

 背後に壁にはナイフが刺さっていた。再び相手のほうを見ようとするが…

 「?!」

 無数の弾幕によって囲まれていた。驚きのあまり行動を起こせないアリスに対し容赦なく弾幕は襲い掛かる。

 弾幕による砂埃が収まる頃にはアリスは立ったまま拘束されていた。既に満身創痍のアリスは抵抗することもままならない。

 するともう一人のほうがポケットから長方形の箱を取り出した。それを開けると中から一本の注射器と液体の入った試験管が取り出される。

 黒服は試験管のコルクをはずすと注射器で中の液体を吸い出していく。それを今にも閉じてしまいそうな瞼を必死に持ち上げながら見ていると髪をどかされる。

 すると露出した首元に注射器の針が刺さる。そのまま中の液体を体内に注ぎ込まれると拘束を解かれそのまま地面に倒れ伏す。

 「さらばだ。七色の魔法使い。悪いが我々の計画のため消えてもらう。悪く思うな」

 そうして二人の黒服は去っていった。朦朧とする意識の中手だけでも伸ばそうと試みるがそれは叶わない。

 そして、たちまち自身の身は蝕まれ始めた。

 (何…これ…身体が熱い…骨が…溶けるような…)

 そうして意識は完全に落としてしまった。

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