追放決闘者だけどミラダンテが美少女化したので、もうダメかもしれない   作:タク@DMP

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第10話:転校生が増えた……とかなんとか

「本日より2年B組に転入することになりました、フランス留学生のエクレール・デュパンです。よろしくお願いしますね」

「……」

「……」

「……」

 

 しばらくしたある日の事。

 2年B組には異例の二人目の転校生が現れていた。

 そして、その見覚えしかない姿に白銀と明松、そして大神は困惑を隠せなかった。

 

「そんじゃあエクレは……後ろの席かな、用意してっから」

「構いませんわ。……今勝手に略しました?」

「早よ行けエクレ、デッキからドラグマをサーチしろ」

「やっぱその略し方イヤなんですけど!?」

「あの留学生1日目で先生とコントしてるぜ」

「もしかして知り合いなのかな……?」

 

 知り合いではあるが、付き合いは然程長くはない。

 だが、この教室の中ではエクレールは生徒。

 そして山吹は教師だ。完全に彼女が手玉に取っていた。

 一番後ろの席に座ると──エクレールは、凄い形相で白銀達を睨んでいた。

 その視線は見られているこちらからも分かるほどで。

 

「監視ってか、絶対敵視してるよね、あれ……」

「ん。指揮者(マスター)、重々気を付けるべき」

 

 言われなくても分かる。

 元より生ける猜疑心の塊の白銀は、既にこの時点でエクレールに対して警戒心MAXであった。

 極力関わりたくないのは確かだが、彼女が何かを企もうものならば、先んじて防ぐ心づもりであった。

 さもなくば、また誘拐被害者が出るかもしれない。

 そして、エクレールもエクレールで監視という目的以上に、自らを打ち負かした白銀に対して対抗心をめらめらと燃え滾らせつつあったのである。

 

 

 

 

(今に見てなさい、白銀 蒼馬……! 私は余計なプライドはこの際捨てます。どんな手を使ってでも強くなってみせます。そしていつか! いつか必ず! 借りを返してみせましょう……!)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 特にこれと言った問題を放課後までに起こさなかったエクレール。

 しかし、行動する度に視線を感じており、やはり「監視役」であることに変わりはないようだった。

 漸く居なくなったと思ったのは、学校を出てしばらくしてからであった。

 だが、その数分後。思わぬ場所で白銀はエクレールを見かけることになる。

 

「げっ、なにやってんのアイツ……」

 

 河川敷にはデカいデュエル台を設置されている。デュエル台とは、カードを置く場所がテーブルに分かり易く書かれているアレである。たまに小学生の遊び場になっているのが見えるが、今日は鉄槌を持った危ないお姉さんが占拠している所為か誰も寄り付いていない。ツッコミどころは多いが、こっそりと白銀は覗くことにした。

 そこでデッキを一人回ししている少女は誰が見てもエクレールその人であった。

 

「……正直関わり合いになりたかないけど、なんか企んでても困るな……見てみようか」

「ん。前科者には警戒すべき」

「前科者って……まあ良いか」

「見て指揮者(マスター)、エクレール、台に頭を打ち付けてる」

「多分アレ、俺のデッキを想定して回してたんだろな。どうやっても本来なら勝ってたはずなのに、負けたのが悔しいんだろう、鬼羅.Starって天門にガン有利なのに」

 

 最も、白銀がエクレールに勝てた原因は《ルルフーラ》の存在が大きい。このカードを意識すると手札に《T・T・T》を更に1枚キープしなければいけなくなるのである。

 

「あ、デッキを変えた」

「呪文が完全にケア出来ないビートダウンだと天門に無限の負け筋を生むからな。しかし鬼羅.Starは良い線いってる方なんだが……血迷ったか?」

「今度は途方に暮れてる」

 

 露骨に項垂れているエクレール。実は思った以上に感情が表に出るタイプだったらしい。

 

「多分慣れないループデッキで回すの失敗したんだろ。血迷ったみたいだ」

「……? 首を垂れた拍子に、茂みに何か見つけたみたい」

「何やってんだあいつ」

「本? ……拾って必死に読み込んでる」

「あー、落ちてた本がたまたま役に立つ本だったって展開ね? 秘伝書とかそういう感じ? アニメや漫画じゃあるまいし」

 

 

 

 

「──や、やらしい! やらしい! やらしいですっ! な、何でこんなものが、こんなところに……は、はうあうあう……!」

 

 

 

 

「……いや違ェ!! あれはエロ本だよ!!」

 

 もう台無しであった。途中まで真面目に修行していたエクレールだったが、落ちていたエロ本を見るなり、周囲を見て誰も居ない事を確認すると読みふけり始めたのである。最も、誰も居ないことは無く、実際には白銀とミラダンテが二人して彼女を見張っていたのであるが。

 

「エロ、ホン……? 情報収集開始──」

「しなくて良い! お前にはまだ早い!」

「ん。指揮者(マスター)がそう言うなら止める」

「あいつ【教会】で何の修行してたんだ! やっぱり【教会】って生臭シスター共の集まりなんじゃねーか!! ああ見てられねー……こんなところ俺ら以外に見られたら、あの修道女サマ一生学校に来れなくなるぞ」

「それならそれで懸念が1つ無くなって良い」

「……それもそうだな。帰るか」

 

 白銀とミラダンテはそそくさとその場を立ち去る。何も見なかったことにした。しかし、現実は非情かな、流石【教会】のシスターというべきか。すぐさまこちら目掛けて鉄槌を振り回しながら登場するのだった。

 

 

 

「み、見ていましたね、白銀蒼馬! 気付かないと思ったら大間違いですっ!」

 

 

 

 むしろ今更ようやく気付いたのだろうか、と白銀は疑問を投げてやろうかと思った。しかし、これ以上彼女のプライドに傷をつけても仕方がないので、立ち去ることにする。

 

「カードの修業はカードショップが一番いいと思うぞ、シスター・エクレール、じゃあな」

「待ちなさい! い、言いふらすつもりですね!」

「何のことだよ、俺達はお前が特訓してるの見てただけだ、な? ミラダンテ」

「ん。シスターはエロ本? を読んで発情していた」

な? ミラダンテもこう言ってるし、特訓してたってことで良いじゃねえか。つまり俺達は何にも見てねー、さっさと帰せ、ってか帰る」

「待って待って待って! 約一名が致命的な誤解をしております! このままでは私の社会的な生命が終わります、待ってくださいっ!」

「じゃあ特訓の成果はあったのかよ」

「当然ですっ、え、えーと、そ、その──」

 

 言いよどむエクレール。しばらくして、頬を赤らめると彼女はぼそり、と呟いた。

 

 

 

進化VとG・リンクは、男女の交わりを示す隠語らしく──」

「ダメだこりゃ」

 

 

 

 これでは生臭シスターと言われても文句は言えまい。普段、抑圧された環境で育ってきたからか、解放してはいけないものを解放してしまったようである。

 

「お前は今の今まで何やってたんだ、悪いことは言わねえからカドショで修行しろ」

「やっぱり全部見てたのですね!? こ、この卑怯者!」

「見てたから気を遣ってやったのにお前が全部台無しにしたんだよ! こんなところでぼっちでカードしばいてて、しかもエロ本まで読みふけって何がシスターだ言ってみろ?」

「日本では特訓は河川敷が定番だと、他のシスターが言ってました!」

「お前騙されやすいだろ、河川敷で特訓するのはイナズマイレブンだけなんだよ」

「情報収集、演算開始、視野からバックアップに画像データを保存」

「オメーもしれっと読んでんじゃねえ!」

 

 エロ本を片手にピピピピ、と電子音を立てて演算を始めたミラダンテを白銀は必死に止める。穢れを知らない無垢な彼女に、これ以上良くない知識が芽生えてはいけない、という使命感での行動だった。

 

「とにかく。私は貴方を超えます。そのためにもう手段は選びません」

「選ばない結果がこれかよ、もっとなんかあっただろ。大人しくカードショップ行けよ、俺は行かねえけど」

「そ、その、カードショップには行き辛く……犯されるかも、って思ってしまって」

「オメーん中のカドショってどんなダークファンタジーなんだよ!!」

「ほ、他のシスターからはそう聞きましたが……」

「お前それからかわれてんぞ。なあ、もしかしてお前、生まれてこの方【教会】から出てこなかったのか?」

「……」

 

 薄々勘付いていたが、白銀はそんな気がしていた。常識知らずの世間知らず。【教会】の教えを妄信し、突っ走る。【教会】からしても都合の良いコマだったのだろうが、こうして転校してきたということは、やはりこのままでは扱いづら過ぎると【教会】も判断したのだろう。

 ぺたり、と地面にへたり込んだエクレールは顔を俯かせると話し始める。

 

「私は──捨て子でした。そして生まれつき獣印を持っていました。修道院での修行の中で、私は──【教会】でも5本指に入るほどの実力者にのし上がり、多くの異教徒を粛清してきました」

「粛清って……」

「でも、貴方との敗北で気付いたのです。私にはまだ、足りないものがある。そして外の世界にはまだ、強者が沢山いる、と。相手が貴方だからよかっただけで、レッドキャップや異教徒が相手ならば私は死んでいたでしょう。」

 

 ぐっ、と彼女は胸に手を当てる。

 それほどまでに、白銀に敗北したことは彼女にとってはある種のショックだったようだった。

 

「敗北という失態で一度失った信頼は簡単には戻りません。ですが! 一度何もかものプライドを捨て、どんな手を使ってでも強くなろうと──そう決めたのです」

「その結果がコレか……」

「はい……修道院の皆が居ない生活は新鮮で……1人で特訓しようにもよく分からず……」

「迷走っぷりがプロだな……まあ良いや、特訓ならカードショップに行け、話はそれからだ」

「待ってください! そもそもカードショップって何なのでしょう!? カードはお店で売られてるものなのですか!?」

「そこからァ!? 今までお前カードどうやって手に入れてたの!?」

「カードは【教会】から支給されるものだったので……」

 

 そう考えると、最早一周回って哀れと思えてくる。彼女はこの先、日本で生きていけるのだろうか、とも。完全に箱の中のお嬢様同然だ。かと言って、これから二人っきりでカドショに連れていくのは白銀的にもしんどい。そこで浮かんだのは、明松と大神の顔だった。

 

(いや、しかしだな……幾ら何でもイヤだろ、あいつらも……一週間前に戦った相手だぞ? エクレールがあまりにも世間知らず過ぎるから何か問題を起こされる前に色々教えてやりたいけど、協力してくれ、だなんて頼み……)

 

 少なくとも同じ立場の自分なら良い気分はしない。しかし白銀は、先程の彼女の行動の一連の抜けっぷりから、不信よりも心配の方が上回ってくるのであった。しかし、流石に一緒に過ごしているだけはあるのだろう。ミラダンテの方から提案が上がる。

 

指揮者(マスター)アケマツとモミジに相談。彼女は閉鎖的環境で育ったことで社会性や常識が欠けていると判断」

「うぐっ、それは事実ですが、いざ言われると傷つきます……ましてやクリーチャーに言われるだなんて」

「お前も同じこと考えてたか……だけど俺があいつらの立場ならぜってーイヤだぞ。それに常識が欠けてるのはお前も人の事言えねーよ」

「社会性の欠けてる指揮者(マスター)では手に負えないと判断。此処は社会性のプロフェッショナルの力を借りるべき。彼らはカテゴリー「陽キャ」に分類されるから」

「誰だオマエに余計な知識吹き込んだヤツは」

「あの二人は断らなさそう。良くも悪くも引きずらないし、引っ張らない、気にしない。獣印の事をすぐに受け入れたようなパーソナリティだし」

「……仕方ない。お前の言う事なら信じるよ」

 

 そう言えば、と白銀は彼女の顔を見やる。常に情報収集を行っており、他の人間の事を見ているからだろうか。最初は機械のようだったが、だんだん表情が柔らかくなってきた気がした。

 

 

 

「……陽キャ共に相談するか……」 

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