追放決闘者だけどミラダンテが美少女化したので、もうダメかもしれない   作:タク@DMP

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第2話:カードは裏切らないけど助けてくれない…らしい

 

 ※※※

 

 

 

 

「な、何で──ッ!?」

「悪く思わないでね、白銀君」

 

 

 

 

 ぐにゃり、と大神紅葉の身体が歪んで変貌していく。

 まるで、それが最初から存在しないものであったかのように形を変えていく。

 それは少女には違いなかった。しかし、赤い外套を身に纏った赤い目の少女。

 凡そ日本人とは思えないような端正な顔は若干幼さが残っている。

 赤い死神のような風貌の彼女は名乗った。

 

「ボクは【赤頭巾(レッドキャップ)】。君の力を奪いに来たんだ」

「げほっ、あっ、おげっ、かはっ──俺の力……ッ!?」

「……勿論、君にはこのまま死んでもらう」

 

 槍を引き抜くと、白銀の身体は地面に転がされる。

 口と穿ち傷から鮮血を撒き散らしながら、白銀は悶え苦しむことしかできない。

 とくとくと音を立てる赤い水を素足で踏みにじると、レッドキャップは再び槍を白銀の方に向ける。

 

「それにしても一撃で死なないんだ。案外人体って、しぶといんだね。死ぬ時はアッサリ死ぬくせにさ」

「がはっ、げほっ……お、前、俺をわざわざ誘い出して、何で……!」

「きゃはっ。人嫌いのくせに、人に未練があるのが見え見えなんだよね、キミ。……よっぽど酷い裏切られ方をしたのかな? 裏切られた相手が……よっぽど好きだったのかな?」

「ッ……!!」

 

(畜生、誰も、俺を助けて……くれない……無理だ、助けられない……こんなヤツ、相手に……!)

 

「さーてと。印は何処? 生きてるうちに抉っておきたいんだけど……」

 

(そりゃそうだ……人は困ったときに助けてくれるかもしれねーが……カードは、助けてくれねーもんな……)

 

 

 

 

「ヘンなニオイが──イッ、白銀!? と──誰だ!?」

(──!?)

 

 

 

 その時だった。

 屋上の扉が思いっきり開く。

 そこに現れたのは、明松だ。 

 何故彼がわざわざ屋上に現れたのかは分からない。

 しかし一つだけ言える事がある。彼一人では助けになるどころか、犠牲者がもう1人増えるだけだと白銀は察していた。

 

「逃げ──あけまつ──」

「おまっ、何、血──!? どうなってんだよ、これって──!? 事件現場って奴か──」

「……あーあ。結界を抜けて来ちゃったの?」

「ひっ──大神さん、なのか……!?」

 

 無駄に察しの良い明松は、赤頭巾(レッドキャップ)の正体を悟ってしまっていた。

 しかし、いずれにせよ、彼の運命は変わらない。

 彼女の狙いが増えただけの事だ。

 

「きゃはっ。ざーんねん。もう1人犠牲者増えちゃった」

「ッ……!?」

 

 すっ、とひとっ跳びでレッドキャップは明松の下まで跳ぶ。

 そして──その華奢な手は彼の首を握り締めていた。

 

「あっが──ッ!?」

「……ねえねえねえ。何処から嗅ぎつけたの? ただの人間がこんな所に入って来ちゃダメだよっ」

「ぐっ、ぎぃっ、ぎぎぎ──」

 

 その顔は青くなっていく。

 レッドキャップの手を離そうとしても離せない。

 凡そ、高校生男子の力を超えており、明松一人では太刀打ちが出来ない。

 

「待て……そいつは──明松は関係ないだろ!!」

「あれ? 他人の事なんてどうでも良いんじゃないの?」

「ッ……殺すなら、俺だけで、いいだろ……ッ!?」

「だーめ。両方共に死んでもらう。ボクの本当の姿を見られちゃったからには、生かしておけないよ」

 

 このままでは明松は死ぬ。

 しかし、自分も槍で身体を貫かれている。

 動けない。出血がひどく、身体から熱が抜けていく。

 意識も遠のいていく。

 どうしようもない。

 

(死ぬのかよ? こんな所で、こんな訳の分からないヤツに殺されて?)

 

 目を瞑る。

 脳裏に過るのは──忌まわしい日々の記憶だった。

 

 

 

(結局、何にも成し遂げられないまま、何も無いまま……奪われるだけで、終わるのか……)

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……俺は、直前にデッキのチェックまでしたんだ!! 不正だなんて──」

 

 

 

 運命のあの日。あの時。

 試合中に発覚したレギュレーション違反がきっかけで、蒼馬の評判は地に落ちた。

 普通では考えられない程にネットは炎上し、蒼馬の実名は全国に知れ渡ることになってしまった。

 

「それでも、君のデッキには殿堂カードが2枚入ってた。これは事実だ」

「そんな……」

「悪いね、蒼馬。本来なら君みたいな優秀なヤツをこのくらいで追放なんてしたくないんだけどね。庇うには少々、話が大きくなりすぎた。ネットじゃあ、君の悪い噂が出回り過ぎている。この間の優勝も不正があったんじゃないか、ってね」

「俺は不正なんかしてない!! 俺の事を守ってくれないのかよ? ロキ……!?」

「……チームを守るためだ。やむを得ない。君ならどこででもやっていけるだろ?」

「バカを言えよ……何で、俺を見捨てるんだ? なあ、リル……お前からも──」

「ごめん、蒼馬……」

「ッ……何でだよ。何で、俺を庇ってくれないんだよ、リル……? なあ、お前は信じてくれるよな?」

「やめないか、見苦しい!!」

「……!」

「……さっさと去ね、蒼馬。僕達の為に、そして君の為に、ね」

 

 その日、蒼馬は泣きながら、チームを後にした。

 どうしても納得が出来ず、蒼馬は後日、一人でロキの居る部屋に足を運んだ。

 しかし──

 

「これで邪魔な蒼馬は居なくなった。僕一人で君も、このチームも、そして──も独り占めだ」

「……ねえ、ロキ。今度は何処に旅行に連れてってくれるの?」

「そうだね、オーストラリアなんてどうだろう」

「あはっ、良いね、ロキ。大好きっ」

「僕もだよ、リル。あんなヤツの事なんか忘れて……僕だけを見てくれるよね?」

「ん……っ」

 

 間もなくして。 

 部屋の中からは二人の矯正が聞こえてきた。 

 厭らしい水音と、喘ぎ声が響く度に──蒼馬は吐き気を催した。

 

「おぇえっ……ごぼっ、え……!!」

 

 殴り込みにいってやろうかと思った。

 怒鳴り込んでやろうかと思った。

 だけど、既に摩耗しきった蒼馬にはそんな気力は無かった。

 とぼ、とぼ、と雨の降りしきる道を歩く中、何度も何度も死のうと考えた。

 

「やっとわかった……! 不正も、炎上も、全部あいつらが、仕組んだんだ……! あいつら……最初から、俺を……陥れるつもりで……俺は今まで……何のために戦ってたんだよ?」

 

 

 

 親友の為に、彼女の為に戦ってたんじゃないのか?

 そう思っていたのは俺だけで……あいつらからすれば、俺はただの利用できる都合の良いコマでしかなかった?

 そんな考えがぐるぐると回っていく。

 

 

 

「は、はは、助けてくれよミラダンテ……俺は……どうすりゃいい? ……もう、どうだって良いや……」

 

 

 

 そうして、白銀蒼馬は──自らの殻に引き籠り、光を浴びる事を拒むようになった。

 もう、自らが傷つかないために。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

(ああ、そうか……本当は、分かっていたんだ、カードは俺の傍から離れない。だけど、俺の事を助けてくれるわけじゃないって……)

 

 

 

(あいつ、俺に、逃げろって言ってんのか……!? なんてお人好しの馬鹿だ!)

 

 

 

(だけど俺も、もう、動けない……!)

 

 

 

(せめて、無関係の明松は死なせたくない……どうすれば……!!)

 

 

 

 

 

(どうすればとかじゃない……どうにかするんだ……ッ!!)

 

 

 

「畜生! 奇跡の体現者なら……奇跡の一つでも、起こしてみせろよ……ッ!!」

 

 

 

 

 ──奇跡を願うなら、我は今こそ召喚に応じよう。

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 何処からともなく、声がした。

 白い雷が──蒼馬に落ちた。

 

「何だッ……マナの急上昇……起点は、白銀蒼馬──のデッキ!?」

「がほっ、がはっ……!? なんだっ……!?」

 

 思わずレッドキャップは明松の首を握り締めていた手を離す。

 

「もう死にかけのはず……何が──!? このとてつもなく膨大なエネルギーは……!?」

「白銀……!?」

 

 それは、黄金の鎧に包まれていた。

 それは、黄金の鬣を束ねていた。

 それは、黄金の瞳を煌かせ──不正義を成す者に名乗りを上げた。

 

 

 

「──我が名は、《ミラダンテ》……光文明の執行者。我が主の召喚に応じ──()()()()()()()()()()()、貴様の不正義を断罪しに来た」

 

 

 

 それは、奇跡の体現者。

 それは、未来の来訪者。

 それは、伝説の革命者。

 天馬の如き容貌の機龍は、無機質な機械音声で彼らに名乗りを上げた。

 

「ッ……な、ウソでしょ……ミラダンテ……!? まさか、土壇場で召喚を成功させたっていうの!?」

「……クリーチャーが……実体化した……!!」

「認証確認。白銀 蒼馬を召喚者と断定。これより保有者(マスター)登録を開始──100%完了。これより、我が戦闘の指揮権全てを白銀蒼馬に任命する。承認せよ、我が指揮者(マスター)

「だ、だけど、俺……あれ? 傷が──」

 

 答えあぐねている間に、白銀は己の傷も痛みも全て癒えていることに気付いた。

 しかし、困惑を隠せない白銀に畳みかけるようにミラダンテは問いかける。

 

「承認せよ、我が指揮者(マスター)

「命令形かよ……良いぜ、分かった。お前相手なら……信じてやっても良いかもな」

 

 人間は──信用できない。

 だけど、常に一緒に戦ってきた相棒の言葉ならば、蒼馬はすんなりと受け入れられていた。

 

「……まずは、明松を助けたい……! あいつは何も関係無いのに巻き込まれたんだ……! それに、赤頭巾(レッドキャップ)は俺を狙ってる……でも、俺は此処で死ぬわけにはいかないんだ!」

「承認した。対象は赤頭巾(レッドキャップ)。戦闘行為を開始」

「……ちょっと調子に乗ってない?」

 

 ドスの効いた声が響く。

 赤頭巾(レッドキャップ)の背後から極大の熱量を放つバケモノが姿を現した。

 それはまさに不死鳥と言う言葉が相応しい。

 

「ちょっと予定が狂っただけ……実力行使がデュエルに変わっただけだからね!!」

「……指揮者(マスター)。これより決闘(デュエル)──デュエル・マスターズでの戦闘を開始する」

「は!? いや、だけど相手は槍をブン回すようなヤバい奴だぞ!? ゲームで決着だなんて」

「否定。ゲームではない……真の決闘(デュエル)。デュエル・マスターズで命のやり取りを行う戦闘行為だ」

「そーゆーこと──ッ!!」

 

 要領が飲めないまま、蒼馬のデッキケースから40枚の束が飛び出した。

 それが勝手にシャッフルされ、蒼馬の手元に浮かび上がる。

 そして、そこから5枚のカードが飛び出し、硝子状の盾として展開されていった。

 

「ウッソだろオイ……漫画やアニメじゃねーんだぞ!」

指揮者(マスター)。戦闘を開始したい」

「……仕方ねえな……ッ!」

 

 

 

 

「やってやるよ……やられっぱなしで、終わって堪るか……!」 

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