追放決闘者だけどミラダンテが美少女化したので、もうダメかもしれない   作:タク@DMP

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第3話:S・トリガーが出なくても割と何とかなる……らしい

「俺は3マナで《コッコ・ルピアGS》を召喚……!!」

「るっぴるぴーっ!!」

 

 

 

 空中にカードを置くと、マナとして逆さに置かれる。

 そしてマナとしてセットされたカードをゲームと同じように決められた数の分横向きに倒すと──甲高い鳴き声を上げて、笛を担いだ小鳥が姿を現した。

 本当にクリーチャーが実体化した様を見て、白銀は言葉を失う。

 

「るっぴおぇぇぇええ」

「んで、召喚酔いもするのか……」

 

 ゲロを吐く《コッコ・ルピアGS》。

 クリーチャーは召喚したターンには攻撃する事が出来ない。

 それを召喚酔いと呼ぶが、こんなに露骨な形で現れるのか、と一周回って感激する。

 

(クリーチャーも大変だな……)

 

 一方のレッドキャップは、既に1ターン目に《ストリエ雷鬼の封》を展開している。

 あっちは吐くまではいかなかったので、余計にコイツが貧弱なだけでは、と白銀は推察した。

 パワーはデュエル・マスターズでは最底辺の1000しかないのも手伝い、余計に説得力が出てくる。

 

「それにしても、ミラダンテ……この空間は一体……!?」

「マナを身体に宿す者同士が合意の下で行う決闘。そのために行われる空間」

「つまり、異空間ってわけか……!」

「この場では指揮者(マスター)に全てを委ねる。覚悟してかかれ」

 

 そう言い残してミラダンテの声は消えた。

 白銀は不安こそ感じていたが──デュエルにはこれでも自信があった。

 名前も聞いた事の無いような相手に負ける程、ヤワではないという自負もあった。

 

「話は終わった? じゃあ行くよ。《ストリエ雷鬼の封》から進化──」

「このタイミングで進化……あのデッキか!」

 

 クリーチャーの上に、より強い「進化クリーチャー」を重ねる。

 それを──進化と呼ぶ。

 《ストリエ雷鬼》の身体を鬼の鎧が飲み込んでいく。

 

 

 

「《カチコミ入道<バトライ.(オーガ)>》!!」

 

 

 

 そして、炎と共に武装した鬼の龍が姿を現して咆哮した。

 《コッコ・ルピアGS》と同様、燃え盛る火文明の力が刻まれている。

 そして同時に、赤く燃える熱血の龍が鬼の力に取り込まれた邪悪なクリーチャーでもある。

 

「《カチコミ入道》が場に出た時、その効果で相手のクリーチャーをブッ殺す!!」

「ぴぷぷーっ!?」

 

 刃の鬼が《コッコ・ルピアGS》を引き裂き、爆散させる。

 熱気が、断末魔の叫びが、白銀にこれがゲームではないことを実感させた。

 

「クリーチャーが、死んだ……ッ!?」

「《カチコミ入道》で攻撃ッ!!」

 

 そして、進化クリーチャーは召喚酔いしない。

 出てすぐに相手を攻撃することが出来るのである。

 そのまま白銀のシールド目掛けて《カチコミ入道》は突貫する。

 しかし、それに向かってレッドキャップは1枚のカードを目の前に投げた。

 

「その瞬間、侵略発動──《轟く侵略レッドゾーン》!!」

 

 侵略は、自分のクリーチャーが攻撃する時、条件に合ったクリーチャーであればその上に重ねて進化することができるという能力。

 《レッドゾーン》は火文明で尚且つコマンドを種族に持つクリーチャーが攻撃する時に手札から重なって場に出てくる。

 そして、《カチコミ入道》は火文明で、種族はレッド・コマンド・ドラゴン。

 条件を満たしているのだ。

 加えて、この侵略は1度に条件さえ合えば何度でも行う事が出来──

 

「更に──その上に、侵略進化!! 条件は火のドラゴンの攻撃時だ!!」

 

 轟轟と燃える太陽の化身が、《レッドゾーン》に覆いかぶさる。

 それは、根源に至るべき炎の化身。

 そして、決して滅びることのない不死鳥。

 

 

 

 

「究極進化ッ!! 《超神羅星 アポロヌス・ドラゲリオン》ッ!!」

 

 

 

 

 文字通りの──太陽神だ。

 膨大な熱量を放ち、見上げる程に巨大な神羅を前に、白銀は言葉を失った。

 あまりにも、クリーチャーから見れば人間はちっぽけすぎる。

 

「核熱に飲み込まれちゃえ! 《アポロヌス・ドラゲリオン》のメテオバーンで、進化元をエネルギーにして相手のシールドを全て破壊!!」

 

 火球が放たれる。

 そして、白銀のシールドは一瞬にして全て焼き払われた。

 熱が襲い掛かる。

 シールドの破片が砕け散り、肉を切り裂いていく。

 

「がぁっ熱い……!?」

「耐えろ指揮者(マスター)、シールドが無ければ今頃蒸発しているぞ」

 

 再度、ミラダンテの声が聞こえてくる。

 腕の焼け爛れた後を眺め、背筋が凍った。

 ひりひりとした痛みがずっと続いている。

 

「おかしいだろ……ッ!? こんなの……!」

 

 加えて、《アポロヌス・ドラゲリオン》の攻撃はまだ止まっていない。

 今度はがら空きの白銀を焼き払うべく突貫する。

 デュエル・マスターズに於いて、シールドの無くなった相手への直接攻撃は勝利を意味する。

 そしてそれは、白銀が今の熱量をまともに喰らう事を意味していた。

 即ち、今度は影も残らない。

 

(逆転札はシールドの中には無かった──だけど!)

 

「ばいばい! じゃあね! 《アポロヌス・ドラゲリオン》でダイレクトアタック!!」

「……だけど。こっちのトリガーならある……!」

 

 ──しかし。

 白銀は諦めていない。

 この猛攻を止められないようでは、彼は全国大会で戦えてなどいない。

 

「──革命0トリガー、《革命の絆(マスター・オブ・レボリューション)》!!」

「ッ……!?」

「トドメを刺されそうな時、こいつらを見せてデッキの上が火か光のクリーチャーなら──俺を守ってくれるんだ!!」

 

 現れたのは灼熱に燃える熱血の龍、そして青い薔薇に包まれた純白の龍。

 双龍は身を挺して白銀を庇うべく、幻となって現れる。

 山札の上が捲られた。

 そのカードが火か光の進化ではないクリーチャーならば、彼らは具現化し、白銀を敗北から守る盾となる。

 もし、捲れたカードが呪文や進化クリーチャーであれば、その時点で不発。カレの敗北となる。

 だが、白銀は疑わない。己のデッキが応えてくれることを。

 

「上のカードがクリーチャーじゃないなら、君の負けだよっ! 白銀蒼馬!」

「生憎、俺は自分のデッキは信じるタチでね……! こういう時は絶対に、来てくれる──んだ!」

 

 捲られたのは──《ボルシャック・NEX》。

 火のクリーチャーだ。

 

「《革命の絆(マスター・オブ・レボリューション)》は捲ったクリーチャーから進化して場に出てくる! 進化元になった《ボルシャック・NEX》の効果で、デッキからルピアと名のつくクリーチャーの《凰翔竜機ワルキューレ・ルピア》を場に出す!」

 

 そして、火の鳥を引き連れて現れた《ボルシャック・NEX》が龍達の幻影と重なり合う。

 主を守る盾となるために。

 

「進化──《革命の絆(マスター・オブ・レボリューション)》! 《アポロヌス・ドラゲリオン》の攻撃をブロックだ!」

「っ……本当に防いだ!?」

 

 しかし、不死鳥の放つ熱はあまりにも強く──そのまま溶解してしまうのだった。

 《アポロヌス・ドラゲリオン》のパワーは15000。《革命の絆(マスター・オブ・レボリューション)》のパワーは8000。

 バトルに負けたクリーチャーは破壊されてしまう。

 

「危ねぇ……ッ! 間一髪かよ……!」

「あーあ、後もう少しだったのに……だけど、次に焼き払われるのは君の方だよ! 白銀蒼馬!」

「……そいつはどうかな? 案外、未来が無いのはお前の方かもしれないぞ」

「はぁ!?」

「俺は《チャラ・ルピア》を召喚」

 

 現れたのはヘッドフォンを付けた小鳥。

 しかし、その能力によってドラゴンのコストは2軽減される。

 白銀の手札は先ほどのブレイクで潤沢に増えていた。

 ──反撃には十二分なほどに。

 

「……やっぱりお前は、わざわざ呼ばなくても一番大事な時に来てくれるよな」

「……?」

「ドラゴンのコストは《チャラ・ルピア》で軽減される。そして、こいつは相手のシールドを増やす代わりに自力でコストを2軽減して場に出せる──2マナで《聖霊龍騎サンブレード・NEX》を召喚!!」

 

 僅か4マナ。

 猶予の無い中、白銀は一気にファイヤー・バードとドラゴンを同時に召喚してみせる。

 だが終わらない。此処まではただの布石だ。

 

「《サンブレード・NEX》は召喚酔いしないスピードアタッカーだ! 攻撃する時、革命チェンジ!!」

「……革命、チェンジ!?」

 

 相手が侵略で重ねてくるならば、こちらは入れ替わり。

 手札にあるエースとのバトンタッチだ。

 天命を受けた時間の龍が今、降臨する。

 

 

 

「──《時の法皇 ミラダンテⅩⅡ》!!」

 

 

 

 幾つもの時計が浮かび上がる。

 天使の羽根を広げた天馬の如き風貌の龍は静かにその場に降り立った。

 その瞬間、再び世界は停止する。

 周囲は灰色に染まり、そしてその場は──白銀とミラダンテだけの世界となる。

 

「よう相棒。シールドに埋まってくれたの、今回は感謝するぜ」

「しまっ──」

「全てが止まった、俺達だけの世界。もう……お前の好きにはさせない」

 

 《ミラダンテ》が甲高く嘶く。

 それは、革命軍のリーダーが持つ最大の奥義が放たれる予兆だった。

 革命チェンジで場に出た時のみ発動する、必殺技が──

 

 

 

「ファイナル革命発動。コスト7以下のクリーチャーの召喚を封じる!」

 

 

 

 チェーンが現れ、レッドキャップの身体を縛り上げる。

 ミラダンテの持つ時間停止能力。

 それにより、彼女はクリーチャーを場に出すことが敵わなくなる。

 

「そして、《時の法皇 ミラダンテⅩⅡ》でシールドをT・ブレイク!!」

「まっ、マズい──G・ストライク、《新世界王の思想》で《ワルキューレ・ルピア》の攻撃を止める!」

 

 《ワルキューレ・ルピア》の身体が痺れたように動かなくなる。

 シールドから手札に加えられた時に発動する逆転札、それがG・ストライクだ。

 相手に見せるだけで、相手のクリーチャー1体の攻撃を止める事が出来る。

 しかし──

 

「お前は次のターン、コスト7以下のクリーチャーが召喚出来ない。そして、《ワルキューレ・ルピア》の効果で俺のファイヤー・バードはブロッカーになっている」

「う、うぐ……まだトドメを刺せないっての!?」

「違う。もうお前は俺には勝てない」

 

 後続はもう召喚されることはない。

 そして、《アポロヌス》1体ではブロッカーを突破してトドメを刺すことは出来ない。

 時間が停止し、完全に場は掌握された。

 レッドキャップには、もう、ムダと分かっていても攻撃するしか道がない。

 

「《アポロヌス》! ブロッカーだけでも焼き払え!」

「《ワルキューレ・ルピア》でブロック」

「ぐぅっ……! こ、こんな事が……!」

「──《時の法皇 ミラダンテⅩⅡ》でシールドをT・ブレイク!!」

 

 元より、速攻とパワーに振り切った所為か、守りは薄いデッキだ。

 1枚G・ストライクが出ただけでも幸運だったのだ。

 二度目は無い。

 天馬龍の嘶きに続き、小鳥が飛び出していく──

 

 

 

 

「──《チャラ・ルピア》でダイレクトアタック!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 ──終わった。

 あれだけ怪力を振るったレッドキャップは、クリーチャーの突貫を受け、身体が跳ね飛ばされていった。

 白銀は思わず、未だに倒れている明松に駆け寄る。

 

「明松っ! 明松、しっかりしろ!」

「あ、うっ、ぐ」

 

 首にはくっきりと絞め痕こそ残っているが、息はある。

 彼を病院に連れて行かねばならないとは分かっていたが、この状況をどう説明するか、と過る。

 一先ず彼を負ぶい、保健室に運ぼうとしたその時だった。

 

 

 

 

「殺してやる……殺して──やる……!!」

 

 

 

 思わず、振り向き、ゾッとした。

 レッドキャップが槍を振り上げて立っていた。

 しかし、それが振り上げられることはなかった。

 彼女の身体は再び、空き缶のように吹っ飛ばされ、屋上に転がされる。

 

 

 

「ぐっえ──!?」

「そこまでだ赤頭巾(レッドキャップ)

 

 

 

 白銀は声のした方に向き直る。

 屋上の扉から現れた声の主は──彼もよく知る人物だった。

 

「山吹先生……ッ!?」

「白銀。お前がやったのか?」

「え」

「やったんだな……はぁ……色々聞きたい事はあるが、先ずは目の前のドブネズミからだ」

 

 溜息を吐くと、彼女の持つカードに何かが吸い込まれていく。

 一瞬で見えなかったが、今の攻撃がミラダンテのように実体化したクリーチャーが放ったものであることを、白銀は察した。

 そうでなくては、あの少女の皮を被ったバケモノが吹き飛ぶはずがない。

 前に進み出た山吹はポキポキ、と拳の骨を鳴らすとドスの効いた声でレッドキャップに詰め寄った。

 

「おいレッドキャップ。あたしの生徒に手を出すなら……次はあたしと、ウチのゴリラが相手だ」

「ッ……分かったよ。教会のヤツらはめんどくさいなぁ、本当に……!」

 

 そう言い残すと、レッドキャップは──最初からそこに居なかったかのように姿を消した。

 そして山吹は一言。

 

「……とっくにクビになったわ、バーカ」

 

 そう言い返すと、白銀に向き直る。

 そしてヒューヒューと呼吸している明松を腕で抱えると「帰れ」と目配せして続けた。

 

「白銀、明松はあたしが車で病院に連れていく。すまんが今日は何も見なかったことにして大人しく家で休め」

「……は、はぁ」

「何かあったら、あたしの連絡先に言え。()()()駆け付ける」

 

 ピッ、とメモ用紙に電話番号を書くと彼女は白銀に手渡す。

 ふらふら、と立ち上がり、それを受け取ると──白銀は問うた。

 

「……先生は何者ですか。味方ですか。敵なんですか……?」

「心配するな、生徒である限り、あたしはお前の味方だ」

 

(そう言われても……)

 

 含みのある返しに、白銀は「はい信じます」とは言えなかった。

 だが、今日は促されるままに帰るしかなかった。

 そして──全てを出し尽くしたかのように、帰るなりベッドに倒れ込み、死んだように眠りこけてしまったのである。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──翌朝。

 白銀は、重さと寝苦しさで目を醒ました。

 

「何だ、一体……まだ寝てたいんだが」

「……起床を確認。おはようございます、指揮者(マスター)

「……?」

 

 白銀の目は一気に覚め、上半身を起こす。

 掛け布団の上に誰かが座っている。

 そして聞いた事の無い声が聞こえてくる。

 家には居ないはずの少女の声──

 

「って誰だ君は!?」

「……姿の相違による誤認識と判断」

「……!? ……!?」

 

 それは──少女。

 一糸身に纏わぬ少女。

 それが、ベッドの上で白銀の上に跨っていた。

 ぱっちり、と開いた金色の目。

 そして透き通った金色の髪。

 そして硝子のような肌。

 全てが儚く、消えてしまいそうな少女。

 だが、不思議と白銀は彼女に嫌悪を抱くことは無かった。

 そればかりか、その無機質な喋り口と──姿の印象から、白銀は彼女の正体について一つの結論に辿り着く。

 

 

 

「お前、まさか──」

「再度名称を確認……私はミラダンテ。光文明の執行者」

「……な、何でお前は女の子になってんだぁぁぁぁぁ!?」

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