追放決闘者だけどミラダンテが美少女化したので、もうダメかもしれない 作:タク@DMP
「……取り合えず、服を着せとこう、そうしよう」
「?
「ほっとけ!!」
女物の下着は用意出来なかったので、取り合えず自分のシャツを着せることにした。
局部を見ないようにしながらだったので、かなり苦労したが、一先ずこれで話せる。
出来る事ならば、クリーチャーの姿で居てほしいとも考えたが、曰く「あの姿で居るとガス欠する」とのことであった。
(相手はクリーチャー相手はクリーチャー相手はクリーチャー!! つーかコイツ、何で女の子になってんだ!? 男じゃなかったのか!? 俺はそう思ってたぞ!!)
何時もなら女子と同じ空間に二人っきりで居れば吐き気がして眩暈がしてくるのである。
しかし、
(ど、どうなってんだよ! もう意味が分からねえ、俺はガワが女でもクリーチャー相手なら興奮出来るタチだったのか!? も、もう、ダメかもしれない……俺はおかしくなっちまった……!)
「?」
ガンガン、と壁に頭を打ち付けたのち、頭の冷えた白銀は──目の前の少女に問いかけた。
「もう1回聞く。お前はミラダンテだよな?」
「ん」
ぽんっ! と彼女は一度、カードの姿に戻ってみせる。そしてすぐに元の少女の姿に変身してみせた。
「実体化に当たって、この星は魔力が少なすぎる。これはこの星の言葉で言うなら”省エネモード”。現地の知的生命体の姿をコピーして、小さい姿で実体化を保ってる」
「何で、女の子?」
「強いて言うなら、
「その言葉は美少女に変身した側が使う言葉じゃねーんだよ……」
それでも、彼女が飛びぬけて綺麗であることを白銀は否定できなかった。
「で? 結局何でお前は……俺の所に来てくれたんだよ」
「呼ばれたから。そして、呼ぶだけの力が
「……そ、そんな理由?」
「ん。それだけ」
「マジかよ……《ミラダンテⅩⅡ》ともあろうものが、俺なんかの呼びかけで降臨して良いのか?」
「ⅩⅡ──? 違う」
彼女はハッキリと否定する。
白銀は目を丸くした。自分がデッキに入れていたのは《ミラダンテⅩⅡ》だ。
「私は当代じゃない。言ったはず。
「じ、次代? ど、どういうことだ?」
「ん。
「……待って。当代ってどういうこと? 俺の中のミラダンテ観が崩れつつあるんだけど」
白銀は思わず、部屋から探せるだけの《ミラダンテ》と名のつくカードを持ってきた。背景ストーリーによれば、ミラダンテとはランド大陸が侵略者の急襲にあった時、光文明の祈りに応じて到来した未来の革命軍の長である。そして、その時の姿が《時の革命ミラダンテ》であった。
「……えーと、先ずこれは? 《時の革命ミラダンテ》……」
「それは3代前」
「3代前……じゃあ、これは? 《ミラクル・ミラダンテ》……」
このミラダンテは、先の《時の革命》が窮地に立たされた時に祈りによって更に先の未来から降臨した個体である。そのため、同一人物ないし、同じ名前の別人であることは察せられていたが──
「それは2代前」
「2代前なのか……じゃあ、これは? 《時の法皇 ミラダンテⅩⅡ》……」
「それは当代。歴代で最も強いミラダンテとされている」
最強と呼ばれても納得だ。背景ストーリーでの活躍は勿論のこと、このカードは今までのミラダンテの中で唯一「殿堂入り」を果たしているカードだ。強すぎてデッキに1つしか入れられないのである。
コスト7以下のクリーチャーの召喚ロックは、相手の次のターンの行動を抑制するだけではなく、S・トリガークリーチャーさえも封殺するものだったからだ。現に先のデュエルでも、このカードで白銀はレッドキャップの逆転の芽を摘み取った、フィニッシャーである。
「しかし、何でロマノフ一族みたいになってんだよ。じゃあこれは? 《神曲の法皇 ミラダンテ》……」
「それは3代前と同じ。同盟を結ぶ時の、火の国の王とのツーショットだったはず」
「そうなんだ……そういやそうだったな、絵が《伝説のレジェンド ドギラゴン》と繋がってるんだったか。じゃあこれは? 《奇跡の革命 ミラダンテf》……」
「それも3代前のマイナーチェンジだったはず」
「多いな3代前……」
(そして多いな、ミラダンテの派生カード……)
それだけ公式から愛されている証拠なのだろうか。
メディアでの露出も多く、プレイヤーからの人気も高い。
使い手であるルシファーの人気も手伝い、ミラダンテは今や生ける伝説だ。
「しっかし、当代ってことはミラダンテも世代交代するってことだよな? 子供が継ぐのか?」
「子供? 生殖による子孫繁栄……不合理なシステム。否定はしないけど、私には本来搭載されていない機能」
「あ? そうなの?」
「そもそも、
「プログラム?」
「ん。言い換えれば──魂。そこに不正義がある限り、時を超えて断罪する。私たちはそういうシステム。誰が生んだわけでもない。最初から、そういうものとして存在している」
「光文明の在り方そのもの、ってわけか……」
「だから、いずれはバグが起きる。強大な力を持った正義が暴走すると大変。だからその前に機体変更が地球時間換算の1000年周期で行われる」
「途方もないな……しかしお前達は機械だったのか……」
「機械とも言えるし機械とも言えない。エンジェル・コマンドっていうのは──元々そういうもの。本体は魂で、身体はあくまでもそれを閉じ込める檻だから」
そう言えばそんな設定だったな、と思い返す。
エンジェル・コマンドのロボットのような外見は、魂である本体を守るための鎧だと聞いた事がある。
進化クリーチャーの聖霊王であれば、猶更だ。
「なーるほどなぁ……分かったような分からないような。取り合えずミラダンテってのは襲名式で、今までのミラダンテは皆記憶を共有している。それでOK?」
「うん。正解。だから──身体は違っても、魂は変わらない。ううん……次代の魂を重ねることで、魂もアップグレードされていく」
「で、お前は……次代のミラダンテ、なのか」
「ん。だから正式な継承はまだしていない。本来なら私は製造中だったから。でも、当代は未だに健在で忙しい。だから──代わりに私が来た」
「なんか、仰々しいな。そんなすごいのが来てくれるなんて」
「かしこまらなくて良い。今の指揮者は
白銀は未だに実感がわかなかった。
目の前でTシャツ1枚の少女が、実際は光文明の最終兵器にも等しい存在であることが。
しかし、レッドキャップを跳ね除けられたのは間違いなく彼女のおかげだ。
だが、よく考えてみると昨日のデュエルに彼女は出ていない。
白銀が使ったミラダンテは当代である《ミラダンテⅩⅡ》だけだ。
「待てよ。じゃあ、お前って昨日のデュエルじゃ出て来てないよな? 《ⅩⅡ》は当代のミラダンテなんだろ? じゃあお前は次代のミラダンテってわけだ」
「ん。出て来てない。昨日は顕現した直後で──
「……あーマジか……」
思い当たるカードが白銀には1枚あった。
《ミラダンテⅩⅡ》のその先の先。更なる未来のミラダンテ。
そのカードは、昨日のデュエルでは使用していない1枚だ。
「ただ、私を呼んだのは──《ⅩⅡ》、当代のカード。そして
「ややこしいな……まあでも確かにこのカードが美少女になったってわけじゃないからな。んじゃあ、お前はカードとしての姿はあるのか?」
「ある。だけどきゅーくつだからあまりなりたくない」
「正義の執行者のくせにワガママだな!」
「んぅ……きゅーくつなのは本当なのに」
「んで、俺はどうすれば良いんだ? これから」
「わからない」
「ええ……」
取り合えず、この極大の力を振り回す少女を手に入れたのは良い。
しかし、今から彼女を引き連れて、今何処に居るか分からないロキやリルに復讐しに行くかと言えば、白銀はそんなことは考えなかった。
そもそもこちらにも生活があるし、もう彼らとは関わり合いになりたくない、というのが白銀の思いだ。
「じゃあ現状は……あのレッドキャップをどうにかしないとなあ」
「……
「怖い怖い! やめろその目」
抑揚のない声だが、確かにそこには怒りが込められていた。
「じゃあまずは、山吹先生の所に行きますか」
「
「学校だよ」
「ん。学校……場所を確認。じゃあ私も同行する」
「同行するって……その恰好でか? 着いてくるのか?」
「? 何か問題?」
「……お前さ、今自分がどういう姿か分かってるか?」
「Tシャツ1枚。正直いらないと思う」
「色々マズいんだよ!!」
「何がマズい? ……演算開始」
そうして少し思案した後、ミラダンテは何かを閃いたように言った。
「ん……情報更新。人間の雄は、服を着ていない人間の雌を見ると時期に関わらず発情、番を作りたいと考える」
「あの? ミラダンテさん?」
「……以上より演算開始。演算完了。
「あのー? もしもーし?」
「つまり、
白銀は沈黙していた。
知識は取り込んでいる。まるでロボットのように。
しかし演算機能が少々ポンコツのようであった。
だんだん説明が面倒になって来た白銀は──
「……良いからカードの姿に戻れぇぇぇぇーっ!!」
「命令? ……なら仕方ない」
そう言うと、ミラダンテは「ポン!」と音を立てて1枚のカードとなってしまった。
それを拾い上げると、白銀は呆れたように肩を竦める。
流石光のオーバーテクノロジーの産物、何処にも接続していないにも関わらず情報収集が出来るのは大したものだ。
しかし、彼女は理解していない。知識はあっても、その使い方が理解出来ていない。
否、そもそも元が性別の概念を超越しているであろうエンジェル・コマンド・ドラゴンの時点で人間と価値観が相いれない。
そして何より、自分の身体が以前とは違う事を自覚していても、その意味が分かっていないのである。
「こりゃあ……色々大変だ……知識はあっても常識がねーときたら……」