追放決闘者だけどミラダンテが美少女化したので、もうダメかもしれない   作:タク@DMP

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第6話:先生が大ピンチ……かもしれない

 ※※※

 

 

 

 ──HRに、山吹先生は来なかった。

 珍しく「わり、もしもあたしが時間までに帰って来なかったら適当にやって帰って良いよ」と書き置きがあったという。

 そして、陸上部を尋ねても「今日あの人来てねーんだよな、いつも通りのトレーニングしてろ、だって」とのことだった。

 思わず白銀は先生に渡された連絡先に電話を掛けてみることにした。

 ……しかし、何も返事が返ってくることはなかったのである。

 

「大丈夫かなー、なんか二日酔いしてるし、今度は早引き? ボク、心配になっちゃうよ」

 

 と大神は言っていたが、彼女でなくとも心配になる。

 教室は既に皆がバラバラに散っており、残るのは白銀だけになっていった。

 うっすらとだが此処まで来ると山吹の身に何かあったのではないか、と考えていた。

 

(何かあったのか? あまり想像はしたくないが……レッドキャップに襲われた……?)

 

指揮者(マスター)、探しに行く?」

「別に──先生だって忙しいんだし、今電話に出られないだけかもしれない」

 

 

 

「──ジブンさ、去年も山吹センセーが担任だったんだけどさ、あの人約束は絶対守る人なんだよなぁ、くだらねーことで放課後集まる約束を反故にしたりしないと思うんだよなぁ」

 

 

 

 白銀に後ろから話しかけてきたのは、明松だ。 

 

「明松……」

「忘れ物したって言って、先にあいつらは帰らせたよ。センセーも忘れ物って言えば忘れ物だからな」

「……お前を巻き込みたくはない。それに明日になったら帰ってくる可能性だってある」

「だけどよ、昨日の時点でレッドキャップは先生が取り逃してるんだろ? あいつがセンセーを逆恨みして襲ったって可能性は?」

「何を根拠に……」

「カンだ! だけど、こういう時のジブンのカンって決まって当たるんだよな」

「お前はいっつもカンばかりだな……」

 

 しかし現に、昨日も彼はカンだけで白銀の危機を察知して屋上にやってきた。

 何か悪い予感がする、だけではなく「屋上から嫌な気配がする」といったレベルだ。未来予知に片足突っ込んでいる。

 彼の鋭敏なカンは、獣印に由来したものなのかもしれない、と白銀は考える。

 それを踏まえると、明松のそれはあまりバカに出来たものではないのかもしれない。

 そして何より。

 

「センセイ……私は彼女の身に危険が迫っていると予測する」

 

 カードの状態でミラダンテがこう言っているのだ。

 

「……ミラダンテ」

指揮者(マスター)。お願い」

「な!? ミラちゃんもこう言ってるし! ミラちゃんに免じて、な!?」

「……外したら次からは信用しないぞ、明松」

「分かったよ! その言葉、忘れねえぜ!」

 

 ガッツポーズの明松。

 そっけなく返したものの、白銀もだんだん山吹が本当に心配になってくるのだった。

 

「──なになに? 先生を探すの?」

「いっ!!」

「んなっ!?」

 

 聞き慣れた、しかし恐怖を予感させる声で二人は思わず振り返る。

 そこには──大神紅葉が立っていた。

 デッキに手を掛ける白銀に、ミラダンテがフォローに回った。

 

指揮者(マスター)、アケマツ、彼女はレッドキャップじゃない」

「い、いや、それは分かるが心臓に悪くて……」

 

 女子が苦手な白銀は震えあがり、そのまま引き下がる。

 代わりに明松が大神に問いかけた。

 

「大神ちゃん!? いつ頃からジブン達の話聞いてたの……?」

「ん? 気になる話が聞こえたから。ボクも混ぜて混ぜてーっ!」

「聞こえたから、って……聴覚ありえねーっしょ」

 

 明松は昨日、大神の顔のレッドキャップに殺されかけたからか、未だに引き気味だ。

 彼女には罪はなく、むしろ被害者なのであるが。

 

「ボクも気になってたんだよ! 先生、もしかしたらカレシにフラれたのを気に病んで……自暴自棄になっちゃったんじゃないかって」

「昨日の時点で十二分にヤケだったよ」

「だからっ、ボクも着いていくっ! つーいーてーいーくーっ!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……どうする?」

「断ったら永遠についてきそうだ……適当なところで撒くか」

「こらーっ、後ろーっ! ボク聞こえてんだかんねーっ!」

 

 

 

 とはいえ手掛かりは全くと言って良い程ない。

 しかも、前を突っ走っている大神に会話が全部筒抜けになっている。

 小声で話しているというのに。

 恐らく、彼女は尋常じゃないほど聴力が良いのだろう。

 

(いや人間なら有り得ないだろ……本当にレッドキャップじゃないのか?)

 

「マスター。気分悪そう」

「大丈夫……同じ空間に二人っきりじゃなけりゃ平気だ、同じ空間なら吐く」

「難儀な体質してんな……白銀……」

 

 そう思っていた時だった。

 ぴこん! とスマホの通知が鳴る。

 思わず開くと、ショートメールが書いてあった。

 それを見て、白銀は固まった。

 

 

 

『レッドキャップに捕まった。助けてほしい。殺される。鷹野町1-3-19の廃ビル』

 

 

 

「……あれ? どうした、白銀?」

「どしたの? 白銀君っ」

「……や、ヤバいかもしれない」

 

 白銀は近寄って来た二人に──メールの文面を白銀は見せた。

 二人は固まり、仰け反る。 

 それは、山吹が誘拐されたことを確実にするものだったからである。

 

「ってことはぁ、先生はレッドキャップに捕まったってことかぁ!?」

「ね、ねえレッドキャップって何! 先生、誘拐されたの!?」

「明松、これは罠だ。100%罠だ」

「ってのは!?」

「ねー! ボクにも分かるように教えてよ!」

「先生は誘拐された。これは事実だ。しかし、捕まった後でスマホで悠長にメールしてられると思うか?」

「それは……確かに。フツーはスマホとか真っ先に取り上げられ──あっ! 犯人が取り上げたスマホでお前にメールした!」

「じゃあ、警察に連絡しないと──!」

「ダメだ! 先生殺されちまうぞ! 俺達だけで行かねえと、先生を殺された上に犯人に逃げられる……!」

 

 まず、レッドキャップの名前を出している時点で、犯人が獣印について知っている人間であることは確かだ。

 そして犯人は白銀も狙っている。でなければ、こんなあからさまなメールは出さない。

 一方で、相手が本当にレッドキャップならこんな回りくどい事はしないだろう、という確信があった。

 自分達が単独になる時間は幾らでもあったので、その隙を突けばいいだけなのだ。

 最も、変装はミラダンテに看破されるので、その線の心配は無いのであるが。

 

「どーすんだよ! 行かねえと先生マジで殺されちまうかもだし、通報してもダメ、何をやっても裏目があるぞ!?」

「白銀君、どーするのっ!?」

 

 白銀は既に答えは出ていた。

 相手が獣印を持つ者ならば、自分の力で対抗できる。

 そして明松は獣印が目覚めておらず、そもそも大神は部外者だ。

 

「……俺だけで行く。お前達まで危険な目に遇わせるわけにはいかない。敵の狙いは……俺だ」

 

 だからと言って──白銀には山吹を見殺しにすることが出来ない。

 白銀蒼馬は人間不信だ。女性恐怖症だ。

 だが、受けた恩を仇で返すほど、人間腐っているわけではない。

 自分を追放した彼らと同じにはなりたくなかった。

 しかし。

 

「ダメだよそんなの! 1人だけだなんて絶対に危険だもん!」

「だけど先生が危ない……! それに危険な目に遇うぞ、絶対に」

「水臭いぜ白銀! 助けてくれたお礼くらいさせろい!」

「ボクも着いていくっ! イヤって言われても、着いていくよっ!」

「……」

指揮者(マスター)。戦力は多いに越したことはないと判断。敵が一人とは限らない」

「だとしてもなぁ……」

 

 そうこうしている間に、山吹の命が危ないかもしれない。

 彼らの決意は固い。それを振り切るよりも、もう先に進んだ方が良いのではないか、と白銀は判断した。

 

 

 

「あーもうっ、勝手にしやがれっ!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「こう書けば、イヤでも来るでしょ」

「お、おのれこいつ……!」

 

 

 

 廃墟の奥。

 椅子に縛られて横に倒された山吹は息も絶え絶えだった。

 上着は脱がされ、下着だけ。

 その二の腕にはまだ新しい注射痕が残っていた。

 

「【教会】特製の自白剤を味わった気分はどうですか?」

 

 自白剤はその名の通り、尋問用の薬剤注射だ。

 打たれれば最後、神経に作用し、質問に対して答えられずにはいられなくなる。

 

「さ、最悪だ……こんなもんまで作ってたのかよ……げほっ、ごほっ……!」

「ふふっ。無論、都市伝説のように使われたら廃人になる、なんてことはありませんよ。貴女から聞きたいことは山ほどありますから。今真っ白になってもらっては困ります」

「て、めぇ……! ぜってーただじゃ置かねえ……!」

 

 質問は二つ。

 「スマートフォンのロック画面のパスワードは?」。

 そして「今かかってきた電話番号の人物は誰か?」。

 これにより、彼女は白銀の電話番号を突き止め、ショートメールで餌を撒くことに成功した。

 

 

 

「後は何を質問しましょうか……ふふっ。壊れないでくださいね? シスター・ヤマブキ」

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