追放決闘者だけどミラダンテが美少女化したので、もうダメかもしれない   作:タク@DMP

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第7話:【教会】はろくでもない……かもしれない

 ※※※

 

 

 

「人の声がするって言うけど、本当にこっちで合ってるのか?」

「ボク、昔から耳が良いんだよねっ」

「お前のカン的にはこっちで合ってるのか? 明松」

「え? あ? あってるんじゃねえ?」

「……使いづらいな、カンって」

「何でそういうこと言うんだよ! センセーが危ないのはあってたろーがよ!」

 

 辿り着いたのは廃ビルだった。 

 足元は暗く、埃っぽい。

 そして、地下へ続く階段を降りながら、3人は進んでいく。

 此処まで来ると、先生の居場所を探すのに大神の聴覚だけが頼りであったが漸く、大部屋に辿り着いたのだった。 

 元は倉庫だったのだろうか。防火扉のような重い鉄の扉を押すと──だだっぴろい空間だけが広がっていた。

 

 

 

「ごきげんよう、白銀蒼馬。ついでに、色々釣れたようで時間が省けて何よりですわ」

 

 

 

 3人を待ち構えていたのは、巨大な槌を持った修道女だった。

 しかし、その体躯は白銀達よりはるかに小さい。小学生か、中学生のようだ。

 落ち着いた黒髪だが、目は青く、整った鼻立からも見た所外国人であることは間違いない。

 喋る日本語は少し英語訛りが入っている。

 だが、佇まいに幼さは一切感じさせない。

 

「シスターさんだ……! 漫画以外で見るの、ボク初めてだよ!」

「先生は無事か?」

「古巣に噛みつく悪狐を懲らしめただけのこと。ついでに大獣印の持ち主について色々喋って貰いました。それ以外は何も」

「おい……センセーが生徒を売るわけねえだろ!」

「ええ、その通りです。少々心苦しかったですが、自白剤を打たせてもらいました。命に別状はありませんよ」

「こいつ……! 久々にジブン、キレそうだぜ!」

 

 と言いつつ、もう明松は駆け出していた。

 白銀が止める間もなく、彼はシスターに向かって殴りかかる。

 しかし。

 

「やめろ明松!!」

「……愚かな。目覚めてない獣印で何が出来るのです?」

「っ……!?」

 

 次の瞬間、彼の身体は硬直した。

 その身体は──何かに押さえつけられている。

 そして、彼の身体を押さえつけていた何かが姿を現した。

 荘厳な鎧に身を包んだクリーチャーだ。

 

「《正義星帝》……!!」

「私の眷属です。ご容赦願いたい」

「へぶっ!?」

 

 ぱちんっ!!

 

 巨大な腕から放たれたデコピン一発で明松の身体は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 大神がそこに駆け寄っていく。

 

「大丈夫!? 明松君っ!?」

「あれー? 星が見えるぞー? 明るいなあ、彗星かなぁ、でも彗星ってもっとピカーッて光るよなあ」

「明松君しっかりぃ!!」

「……こいつ……!!」

指揮者(マスター)。もう我慢の限界ッ……!」

 

 カードから勝手にミラダンテが飛び出す。

 その人間体からは時計が浮かび上がっており、その針が正義星帝に向いていた。

 

「……センセイを攫ったこと。それを餌に指揮者(マスター)を誘き寄せたこと。指揮者(マスター)の身の回りの人を傷つけたこと。全て、断罪する」

「断罪? 必要悪と言ってもらいましょう。【教会】は元よりそういう組織ですので」

「必要悪などただの言い訳。……私は私が悪だと判断したものに対し、断罪を執行する」

「随分と聞き訳が無いですね。大変でしょう? しかし流石大獣印の持ち主──最初からそのようなクリーチャーを呼び出せるとは」

「何者だ? お前、レッドキャップの仲間か?」

「逆ですよ。人聞きの悪い」

 

 淡々と修道女は答える。

 

「私は【教会】の悪魔祓い(エクソシスト)、エクレール。お見知りおきを」

「【教会】……ッ!?」

「言ってしまえば、獣印を研究し、それを悪用する者を諫める。そのために修行をする者達の集まりです。まあシスター・ヤマブキを見て分かる通り、少々気性の荒い者の集まりですが」

「自分はそうじゃないとでも言いたげだな」

「まさか。戦い……大好きですよ?」

 

 にこり、と笑ったエクレールは得物である大槌を振り回して地面に突きさした。

 レッドキャップ然り、裏の世界に関わる女はどいつもこいつも怪力ばかりか、と白銀は呆れる。

 真っ向から戦って勝てる相手ではない。

 

「私は【教会】からの命令で、大獣印の持ち主たちを確保せよとの命令を受けています。貴方達を、私たちの仲間に引き入れたいのです」

 

(達……? 明松も狙ってるのか、こいつ)

 

「それに従ったらどうなる?」

「我が修道院でシスターたちと共に暮らしていただけます。そして、世のため人のために大獣印の力を使っていただきます」

 

 彼女の語る理想は確かに素晴らしい。

 しかし、その行動はあまりにも白銀には野蛮に映った。

 そもそも──修道院が女ばかりならば、女アレルギーの白銀にとっては文字通り地獄のような環境である。

 

「まっぴらごめんだわ。俺は女が大の苦手なんだ、今だってゲロ吐きそうなんだよな……!」

「では、世のため人の為に大獣印の力を使って献身するのもイヤですか?」

「生憎、俺は自分の好きなように生きるって決めていてね。別に正義のヒーローがやりたいわけじゃない。自分の身にかかる火の粉を振り払いたいだけだ」

「それはいただけません。力は秩序のために振るわれるべきです」

「それに、もう何かの共同体に籍を置くのはゴメンなんだ。学校でも大概イヤなのに、よく分からん教会はもっとイヤに決まってんだろ」

 

 白銀は続ける。

 

「……俺は先生の事を完全に信じられたわけじゃない。だけど、ちょっと見直した。こんなに俺を身を挺して守ってくれようとする人、初めてだったから。その分はお返ししてもバチは当たらないだろ」

 

 従って、白銀の選択肢はたった1つ。

 此処でエクレールを撃破し、山吹先生を連れて帰ることだ。

 

「あれもイヤ、これもイヤ。まるで子供のワガママですね。気に入らない」

「もっともマシな選択肢を選んで生きてる、って言ってくれ、慣れた場所とよく分からん場所ならどっちがマシだ?」

「辛いも酸いも甘んじて受け入れる。それが、善き生き方というものですよ。それで被る悪名も汚名も受け入れましょう」

「それを……独善的(オナニー)って言うんだぜ、生臭シスター」

 

 バッサリ、と白銀は切って捨てる。

 好きで辛酸を舐めて生きてきたわけではない。

 ましてや、己の受ける悪名や汚名を引き受けることがどれほど辛いかを彼は知っている。

 

「……口が悪いですね。再教育が必要のようです」

「逆。再教育が必要なのは、貴女の方。シスター・エクレール」

「……彼らに我らの光が本物であることを思い知らせてやりましょう」

 

 二人はほぼ同時にデッキを取り出した。

 始まる。クリーチャーを実体化させる、真の決闘が。

 

 

 

「──決闘(デュエル)!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「いっててて……」

「何あれ……明松君」

「あ?」

 

 起き上がった明松は驚愕した。

 白銀と、あのシスターの間に5枚のシールドが現れている。

 山吹から話は聞いていた。獣印の持ち主同士は、クリーチャーが実体化する真のデュエルで勝負をつける、と。

 

「あの二人、デュエルしてる……んだよね!?」

「もしかして、見えてんのか、大神ちゃん……!?」

「見えてるよっ! クリーチャーもアニメみたいに出て来てる!」

「っ……!」

 

 明松は食い入るように二人の戦いを見やる。

 今、彼に出来るのは白銀の勝利を祈る事だけだ。

 

「俺は3マナで《T・T・T(ザ・トリプル・スリー)》を使用! 3枚ドローだ!」

「ではこちらも《T・T・T(ザ・トリプル・スリー)》で手札を増やしましょう」

 

 一方、白銀とエクレールは序盤から同じ呪文を飛ばし合っていた。

 《T・T・T》はカードを3枚引く、相手を3体タップする、そして次に召喚するクリーチャーのコストを3軽減して「スピードアタッカー」を付与するうちのいずれかを選べる呪文だ。

 互いのデッキの色は火、光、水で同じ。

 初動カードが強力なこの呪文に帰結するのは当然であった。

 

「互いに同じ色のデッキ……! 白銀君とシスターちゃん、ミラーマッチなのかな!?」

「いや、マナのカードが若干違う、同じ色だが戦い方は真逆かもな! シスターちゃんの場には《赤い稲妻(サバイバルスター) テスタ・ロッサ》が居るぜ」

「逆に白銀君のマナには《龍風混成 ザーディクリカ》……確かに、全然違う」

 

 《赤い稲妻(サバイバルスター) テスタ・ロッサ》は場に居る限り、相手が自身のターンに召喚以外でクリーチャーを場に出す行為を実質的に禁止する。

 即ち、白銀は革命チェンジや侵略といった飛び道具無しで戦わなければならない。

 そればかりか、《ドラゴンズ・サイン》のような踏み倒し呪文で《ザーディクリカ》のような光のドラゴンを出す事も叶わない。

 そのため、あのカードを破壊するカードを探すためにデッキを掘り進めるしかない。

 望みは現状、相手がS・トリガーを踏んでくれることだけ。しかし、相手のデッキならば見え透いたS・トリガーをケアするくらい容易い、と白銀は踏んでいた。

 

「《蒼狼の大王 イザナギテラス》の効果で《エナジー・Reライト》を唱えて、2枚ドローする……! ターンエンド……!」

「やっぱり動いて来ませんでしたね? ……では、こちらは4マナで《エヴォ・ルピア》を召喚です」

 

 そのクリーチャーの効果を白銀はよく知っていた。

 手札から進化クリーチャーを呼び出すファイヤー・バードだ。

 

「貴方の戦術、全て封じて勝利しましょう。覚悟の準備はよろしいですか?」

「……来るか」

「《エヴォ・ルピア》よ、福音を授けましょう。綺羅星の名のもとに」

 

 《エヴォ・ルピア》の身体に星が現れ、そこから巨大なゴーレムが姿を現す。

 

 

 

 

「スター進化です──《正義星帝(スティルジャスティス・ティルジエンド)<鬼羅.Star>》!!」

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