追放決闘者だけどミラダンテが美少女化したので、もうダメかもしれない 作:タク@DMP
ステンドグラスの如き荘厳な鎧を身に着けた巨大なゴーレムのクリーチャー《正義星帝<鬼羅.Star>》。
その能力は登場時と攻撃時にコスト4以下のクリーチャーを手札から場に出すというもの。
しかも、この効果を使う度にドローが挟まるため、手札が減ることは決してない。
加えて、エクレールは既に手札補給を完了している。最早、好きなように盤面を支配することが可能であった。
言わば光文明の得意とする戦術の一つ、”集団で固めて押し潰す”の具現化。
「《煌ノ裁徒 ダイヤモン星》! 《エヴォ・ルピア》! 《<鬼羅.Star>》の力により、出て来なさい!」
「連鎖したか……!」
「《エヴォ・ルピア》の効果により、2体目の《<鬼羅.Star>》を進化して場に。更に2体目の《<鬼羅.Star>》の登場時効果で──《奇天烈シャッフ》を呼び出しますッ!」
現れたのはディーラーのようなロボットのクリーチャー。
その手からは数字が浮かび上がる。
「宣言した数字のコストの呪文は封じられます! ”5”を宣言です!」
「や、ヤバい! 白銀のデッキにとっては天敵みたいなカードじゃねーかよぉ!?」
「宣言するコストなんて分かり切ってるじゃん……!」
「ッ……《ドラゴンズ・サイン》が止められたか」
「そのまま、W・ブレイクです!」
「!」
割られたシールドの中には──コスト5の呪文、《ドラゴンズ・サイン》が入っていた。
S・トリガーを持つため、破壊されたシールドから唱える事が出来るこの呪文だが、今の白銀は《シャッフ》の効果でこれを唱える事は出来ない。
(落ち着け
(残るS・トリガーはマナに置かれた《ヘブンズ・ゲート》! 2度目の《<鬼羅.Star>》の攻撃で2枚目の《シャッフ》を引き込めれば私の勝ち──!)
(慌てふためくような無様な敗北は己のデッキへの、カードへの裏切り行為だろが!)
砕けたシールド。
そこから白銀は──数少ない延命の一手を編み出す。
「繋がった──G・ストライク! 《エナジー・Reライト》で《<鬼羅.Star>》の攻撃を止める……!」
「なっ!?」
「……正直苦しいが、これでもう展開は出来ないな……!」
「それなら……此処は引き下がらせていただきます」
ほぅ、と一息入れるとエクレールはターンを終える。
熱くなりすぎていたことを彼女は反省した。
そもそも幾らこれだけカードを引いているといっても、次のドローが《シャッフ》である確証はないし、展開札だったとしても《ヘブンズ・ゲート》を踏めば全てが元の木阿弥である。
「……頭が冷えました。これで別のコストのS・トリガーを撃たれでもしたら堪ったものではないですから。そちらは、随分と冷静なのですね?」
「クリーチャーが実体化するようなデュエマやってて冷静なわきゃないだろが。こちとら心臓バクバクだよ……!」
それでも、と彼は続ける。
「……俺は、デュエルだけが取り柄なんでね。《音響の精霊 ルルフーラ》を召喚して、
「なっ……!? えっ、何、そのカードは──」
「楽しもうぜ、シスター……デュエルは始まったばかりだ」
極限の緊張の中で──努めて、蒼馬は冷静だった。
最も没頭できるデュエルの最中こそ、彼が遍く恐怖症や過去の呪縛から解放される唯一の瞬間だった。
彼は、デュエルの時だけ、最も自分らしく居ることが出来る。
叩きつけたカードは、呪文メタに対するメタ。彼のデッキの弱点を補完するカードだった。これにより《シャッフ》は無力化される。
しかし同時に、そのピンポイントな効果から採用が難しいカードでもあった。
「タダでさえ事故が起こりそうなあのデッキにあんなカードを詰んだの……!? 火水光の3色はマナブーストが無いから重いカードが使いにくい色なのに……!」
「完全に銀の弾丸じゃねーかよ、白銀ェ……!」
白銀の使っているラッカ天門は比較的デッキの中身が分かり易いデッキだ。
そして、デッキスペースがカツカツであるがゆえに《ルルフーラ》のようなカードは積みにくい。
「あくまでも真っ向勝負を望む、と?」
「そうだ。後は互いに殴り合って立ってた方の勝ちだ。あんたは攻め切ったら勝ち。俺は守り切ったら勝ち、だ」
「……良い手筋。そしてあまりにもピーキーな構築。やはり貴方はこちらに来るべき人材だ」
「言っただろ! 女所帯なんてまっぴらごめんだってな!」
「そんな風には見えませんが?」
「ハッ……デュエルの相手なら、誰が相手だろーが倒すだけだからな」
「私の事は倒すべき相手としか見ていない、と」
「そうだよ。じゃなきゃやってらんねーからな!」
デュエルハイ、とでも言うべきか。
白銀の目はギラギラとしていた。
クリーチャーが実体化する。襲い掛かる。
初めてではないが、この異常な状況に心の音は早打ちしている。
しかし、それでもこれは彼の良く知るデュエルに違いは無い。
勝てば良いのだ、と彼の脳は命令し続ける。
「良い心意気ですが、倒されるのは貴方の方です! 物量でまとめて伸す! 《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》に《その子供、可憐につき》を召喚!」
現れたのは白銀の次のターンの展開を封じるメタクリーチャー達。
しかも、《その子供、可憐につき》によってエクレールのコスト4以上のクリーチャーはスピードアタッカーとなる。
「《シャッフ》の効果は呪文にだけ及ぶわけではありません! 《シャッフ》で攻撃する時、”4”を宣言して《イザナギテラス》を行動不能に!」
「……その攻撃は受ける」
砕けるシールドを前にしても。
白銀の表情は揺るがない。
「や、やばい! そもそもシールドにトリガーが埋まってなかったら……!?」
「そもそも、メタクリの所為で次のターンの展開が出来ないじゃんっ!」
「《<鬼羅.Star>》で攻撃する時、2体目の《シャッフ》を出して”5”を宣言! 《ルルフーラ》も行動不能です!」
──《<鬼羅.Star>》の鉄拳が迫る。
「貴方ももう分かり切ってるのではなくて? 都合よく奇跡が起こるわけが無い、と! 最後のシールドを──W・ブレイク!」
「……自分のデッキも信じられないようなヤツはデュエリスト失格だよ」
砕かれるシールドからは──
「ほうら来た。S・トリガー超動──《ヘブンズ・ゲート》!!」
──天国への門が開かれた。
S・トリガー。
デュエル・マスターズにおける最大の逆転札だ。
それを持つカードが破壊されたシールドから手札に加わるとき、コストを支払わずに使う事が出来るのである。
「ッ……!? そんな、最後の1枚に……!」
「俺が信じられるのは元からカードだけだ。ブロッカー2体を降臨させる。出すのは《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》、そして《神聖龍エモーショナル・ハードコア》」
邪神と天使が連結された異形、そして神の如き威容の龍が場に現れた。
その力は圧倒的で、一気に白銀は場を支配する。
「で、出たぁ! 《ロマイオン》はパワー14000のデカブツ! あれを超えられるクリーチャーはラッカ鬼羅.Starにはいねーぜ!」
「土壇場で本当にS・トリガーを……! やっぱり持ってるのかな、白銀君って……!」
「《ロマイオン》は登場時のEXライフ効果でシールドを増やす」
2つのクリーチャーが繋ぎとめられた「ディスペクター」を種族に持つ《バウ・M・ロマイオン》。
彼らの持つ二つの命は固有能力である「EXライフ」に現れている。
登場時にシールドを増やす事が出来、場を離れる代わりにそのシールドを犠牲にすることができるのだ。
これによって除去されても1度は生き残る上に、シールドが単純に増えるのでプレイヤーは延命される。
ビートダウン側からすれば厄介極まりない能力である。
「ッ……面倒な……! しかしまだ、アタッカーは残っています! 《シャッフ》で《ロマイオン》を攻撃出来なくすれば良い!」
「《その子供、可憐につき》」
ずぅん、と周囲の場が重くなる。
エクレールは異変に気付いた。
華やかな衣装を身に纏っていた《可憐》の身体が灰のように白くなっていることに。
そして、本来ならば即座に攻撃出来るはずの《シャッフ》が召喚酔いしていることに。
「な、何が起こって──しまった!」
「気付いたな。《エモーショナル・ハードコア》の効果だ。宣言した名前のクリーチャーは、その効果の全てを剥奪される」
「ぐっ……! ターン終了です……!」
白銀は凌ぎ切った。
そればかりか、2体の巨大ブロッカーを立てたことで一気に巻き返す。
エクレールの手札に、3枚目の《シャッフ》は無く、これ以上の攻撃は無意味だった。
だが、彼女の場にはまだアンタップしている上にブロッカーとなっている《シャッフ》2体と《テスタ・ロッサ》、そして《「曲通風」》が残っている。
(大丈夫よ私。まだクリーチャーは残っているし、鉄壁のブロッカーが場を覆っている。このターンにヤツは私にトドメを刺せません……!)
「俺は、《めっちゃ映えタタキ》で《テスタ・ロッサ》を破壊する。《エモーショナル・ハードコア》で相手プレイヤーを攻撃──」
(シールドに攻撃を! しかも、《エモーショナル・ハードコア》でならまだ望みがある! 最後の最後で敵はしくじった! カウンターで再展開すれば──)
「お前に未来は無い。先生は返して貰うし、俺達からは手を引いて貰うぞ。……行けるな?」
「ん。準備オーケー」
ミラダンテの声が響く。
「……一体何を!?」
「革命チェンジ──光または水のコスト5以上のドラゴン、条件達成だ!」
神なる龍は閃光のように白銀の手札と入れ替わる。
「必要悪? 自分から名乗ってくれて助かった。どんな理由があっても、
淡々としていたが、その声には──確かに怒気が籠っていた。
そして、それは徐々に少女の者から裁定者の声へと変わっていく。
「──未来は俺達が手に入れる。来たれ《未来の法皇 ミラダンテ
それは天駆ける駿馬の如く。
しかし、完全にして無機質な神の如く。
黄金の鬣をたなびかせた調停者がその場に降臨した。
「各種機能オールグリーン、戦闘態勢、私は次代”ミラダンテ”。《未来の法皇 ミラダンテ
「──革命チェンジ!? 一番通されてはいけないものを──! しかしこちらにはまだブロッカーが居ます!」
「《未来の法皇 ミラダンテ
《ミラダンテ
そこにエネルギーが充填されていく。
今度は契約の印が開かれようとしていた。
「当代ではない私に時を止める機能は未実装。しかし──呪文を扱う力は、標準搭載済み」
「《ミラダンテ
「座標指定、演算開始──演算完了。我が命に従い開け、《ヘブンズ・ゲート》!」
開放。
今度は雪崩れ込むようにして《エモーショナル・ハードコア》2体が現れる。
「──1体目の《エモーショナル・ハードコア》で《正義星帝<鬼羅.Star>》を! 2体目で《奇天烈シャッフ》を宣言だ!」
「っ……手札に戻したのは《エモーショナル・ハードコア》の効果を使い回すため!?」
「そう言う事だ。そしてラッカ鬼羅.StarはG・ストライクこそ積んでいるが、まともなS・トリガーは無いに等しい! だから先に踏みに行く! 《ミラダンテ
彼の言った通り、エクレールの割られた3枚のシールドからは2枚のG・ストライクが飛び出す。
《バウ・M・ロマイオン》の攻撃は止まり、このターン、白銀の場に攻撃出来るクリーチャーは居ない。
しかし、かと言ってエクレールも反撃は非常に厳しい状況だ。
場には効果を失った《鬼羅.Star》2体と《シャッフ》2体。そして《「曲風通」》に《可憐》。合計6体。
対して、白銀の場のブロッカーは《エモーショナル・ハードコア》2体に《バウ・M・ロマイオン》、《イザナギテラス》に《ルルフーラ》の5体。
そして白銀のシールドは残り1枚しかないが、その1枚が問題であった。
(《バウ・M・ロマイオン》のEXライフシールド……! アレを破壊すれば《ロマイオン》の効果が発動する……!)
そして、白銀の手札には確実に《T・T・T》が握られている。
その効果はカードを3枚引くことだけではない。
次の召喚するクリーチャーのコストを3軽減して「スピードアタッカー」を付与する事。
そして──相手のクリーチャーを3体、タップする事。
「ッ……認めません! 私は【教会】のシスター! こんな所で負けるわけにはいかないのです! 《エヴォ・ルピア》を召喚して《<鬼羅.Star>》に進化!」
「無理矢理繋げて来たか……! だけど、もう通らない!」
「通らないと分かっていても、通さねばいけないものがある……! 《「曲風通」》でシールドをブレイクです!」
「……トリガーは無い。だけど──《ロマイオン》の効果発動。手札から《T・T・T》を撃って《<鬼羅.Star>》2体と《シャッフ》1体をタップだ」
「っ……!」
これ以上の攻撃はクリーチャーを無駄死にさせるだけであった。
白銀蒼馬の鉄壁は──エクレールのそれを遥かに上回っていた。
猛攻を制し、遥かなる長城を築き上げたのである。
「この私が負ける? 何の修行もしていない、大獣印を持っているだけの少年に──!?」
「いーや。これでもデュエルの修行だけはしっかりしてきたつもりだ。……それだけは、自信を持って言える」
《バウ・M・ロマイオン》が残るシールドを叩き割る。
がら空きとなったエクレールに、白銀は、ミラダンテは、最後の一撃を突きつける。
「──《未来の法皇 ミラダンテ