※この小説は、作者が別に連載している小説”悪意に囚われし戦士”のIF展開になります。世界線はXDUのストーリー”片翼の奏者”とほぼ同じです。
俺は、呪われている。
いきなりこんなことを言われれば、誰もが”どうした”と聞いてくるであろうこの台詞。まずは順を追って説明しよう。
俺の名前は”立花 響”。どこにでもいるような普通の中学生だ。
そう、あの時までは…。
俺は昔からアイドルというものが大好きだった。特に好きだったのは、2人のボーカルアーティストで構成されたユニット”ツヴァイウィング”だ。俺が中1だった頃、親に勧められてそのユニットが登場するライブに行くことになった。
1人で会場に行った俺は、無我夢中でそのライブを楽しんだ。そして会場全体がヒートアップしたその時、
災いが降り注いだ。
突然として空から大量のノイズが現れた。ノイズはまるで幽霊のようにいきなり姿を見せ、触れた人間を自身もろとも炭素分解させて消滅させる。さらに現代兵器も通用せず、一度姿を現れせば逃げる以外に助かる手段がない、まさに”認定特異災害”と呼ぶべき怪物だ。
ノイズの襲来に俺だけではなく観客全員が混乱状態に陥り、逃げ惑う。しかしノイズ共はそれも見逃さず、大勢の人を消滅させた。
その大群の中で特に目立っていたのは、たった1体の黒いノイズだった。従来のノイズは人間に触れると同時に自身も消滅するのだが、そいつだけは例外。自身は一切消滅せずに連続で何人も消し去るその有り様を俺はその目で見ていた。
だが、それが命取りだった。黒いノイズの蹂躙を見るのに気を取られていた俺は、足場が崩れ去っているのに気づかなかった。
落下の衝撃で俺は足を負傷した。落ちた先でノイズがこちらに向かっているのを見て、こう思った。
(俺…これから死ぬんだな…)
目の前に蒼い人影が映ったのを最後に、俺はその場で意識を失った。
◇◆◇◆◇
次に俺が目を覚ました場所は病室のベッドだった。起き上がった俺は生きているのを感じた。足は怪我したままだったから動かせなかったが。
数分後、俺の父さん、母さんがお見舞いに来てくれた。一緒にいた医師の話では、リハビリを頑張れば今月中には退院できるという。
友達の皆に早く会いたい、心配をかけさせたくない。その一心で俺はリハビリに取り組んだ。そして努力の結果か、予定よりも早く退院することが出来た。
その翌日に学校を訪れた俺に待っていたのは…
この世の地獄だった。
ライブ会場で起こったあの事件。その生存者である俺は幾つもの罵声を受けた。ある時は人殺し、ある時は人でなし。家に帰れば石を投げられたり、塀にペンキで落書きされたり、悪口が書かれた紙を貼られる等、何処に行っても嫌がらせが絶えなかった。
そしてある日、父さんが突然家から姿を消した。この迫害に耐えられなくなっての行動だろうか。こうして家に残ったのは俺と母さん、婆ちゃんだけになってしまった。
俺は心の中で決意した。もしこのまま俺がこの家にいれば、間違いなく母さんと婆ちゃんにも被害が及んでしまう。これ以上家族が傷つくのを見たくなかった俺は、近い内に家を離れる事にした。
その思いを母さん達に話すと、俺を責めることなくその意思を汲み取ってくれた。荷造りを二人に手伝って貰い、その日の翌日に俺は家を出る事になった。
その日の夜だった、俺が不思議な夢を見たのは…。
夢の中と思われる真っ白な空間の中で、俺はある一人の男の人に出会った。
「君が、新しい戦士の卵かな?」
至って普通の服装に身を包んだその男性は、パッと見ると何処かおチャラけているようにも見える。しかしその人の目には、何かしらの強い意思が感じられた。
「貴方は…?あっ、俺は”立花 響”と言います」
「そうかしこまらなくてもいいよ。俺の名前は”五十嵐 元太”!優しい妻と三人の子供に恵まれた、幸せな父親さ」
「五十嵐さん、戦士の卵って一体?」
「”元太さん”でいいよ。俺は元いた世界では、一人の戦士となって戦っていた。その力を受け継ぐ者として、君は選ばれた!…らしいんだよね(笑)」
元太さんはニカッと笑うと、俺に近づく。すると元太さんは、両手に持った二つの物体を俺に差し出した。
その物体はどちらも、掌サイズの懐中時計のような見た目をしていた。右手に持っているのは茶色と灰色、左手に持っているのは青と白のカラーリングをしている。
「これを響君に授けるよ。こうして君と俺が出会えたのも、きっと何かの縁だ」
「けど、これは元太さんの…」
「いいんだよ。それに君の目は、俺の子供の一人によく似ている」
「えっ…?」
「諦める事が嫌いな世話焼きの性格でな、自分を”日本一のお節介”って言う位に、とても正義感が強い子供だよ。俺も最初は絵に書いたようなかっこ悪い父親だったけど、何かあった時はいつもあいつが家族を引っ張ってくれていた。そんなあいつとそっくりな目をしている響君にこそ、受け取って欲しいんだ」
そう言うと元太さんは、改めて二つの懐中時計を俺に差し出した。俺はおずおずとしながらも、その時計を受け取る。
「その時計には、かつて俺が使っていた戦士の力が宿っている。もし君の身が危険に晒された時は、時計の丸い部分を回して、上に付いてあるボタンを押すんだ。そうすれば、君に力を与えてくれる」
「元太さん…ありがとうございます!」
「但し、これだけは覚えておいてくれ。その力は、誰かを傷つける為にあるんじゃない、誰かを守る為にあるということを。それをいつだって胸に抱いていれば、響君も一人前の戦士になれるぞ!」
元太さんは屈んで俺に目線を合わせると、わしゃわしゃと俺の頭を強く撫でた。しかし、撫でられて嫌な気持ちは微塵もなかった。
「さて、俺が響君に言う事はもう無い。君の行く先が、明るい未来になることを俺も願っているよ」
「はい!この力…大切にします!」
それを最後に、俺は夢から目覚めた。ベッドから起きた俺の両手には、元太さんから受け取った二つの時計があった。
夢にしてはハッキリと記憶に残っていたし、頭を撫でられた感触も確かにあった。
随分と不思議な夢だったなと思いながらも、俺は着替えると二つの時計をポケットに入れてリュックを背負い、書き置きをリビングに置いて家を出た。
◇◆◇◆◇
―二年後―
ある市街地で、ノイズが発生した。ノイズの発生警報が街中に響き渡り、民間人が一方方向に逃げ回る。そんな中、1人の少女が道中で転んでしまった。
「きゃあっ!」
「大丈夫か?」
すると、少女の元に手が差し伸べられた。
少女の目に映ったのは、ウェーブのかかったベージュ色の髪に、赤と青のヘアピンを着けた少年”立花 響”だった。
「ほら、早く逃げなよ」
「ありがとうお兄ちゃん!」
少女は響にお礼を言うと、逃げ去っていった。そして響は、ポケットから茶色と灰色の懐中時計”ベイルライドウォッチ”を取り出すとリングパーツを回転させ、上部のボタンを押して起動させる。
『ベイル!』
すると響の腰に、両端から茶色いカバーが黒いコードによって取り付けられ、中央にディスプレイが搭載された赤いベルト”ベイルドライバー”が出現する。
『ベイルドライバー!』
『カブト!』
間髪入れずに響は、カブトムシが刻印された赤と黒のスタンプ型のデバイス”カブトバイスタンプ”を起動させると、ドライバーの上部に押印する。
『Deal…』
ドライバーからスタンプを確認した音声が鳴ると、世界の終焉を表すようなファンタジー風の待機音が鳴り響く。そして響はスタンプを両手で持つと、自身の姿を変えるあの言葉を叫ぶ。
「変身!」
そう言うと響は、ドライバー中央のディスプレイにスタンプを押印した。
『Bane Up!』
するとディスプレイに紫色の吊り上がった目が映し出され、ドライバーから金色のカブトムシが出現して響の周囲を飛び回る。そして、同時に発生したドス黒いオーラの中から悪魔のような赤い吊り目が現れると、オーラがカブトムシごと響の身体を包み込む。
『破壊!(Brake)世界!(Broke)奇々怪々!(Broken)』
そして黒いオーラの中から、黄色い目が爛々と光る。
『仮面!(Rider!)ベイル!』
最後に、左側にあるカブトムシの角を模した装備が、顎から起き上がるように頭部に装着されると、響の姿は変わっていた。
軍服にも見えるミリタリー風のアンダースーツの上から、胴体や左肩に銀色のアーマーが装着されている。
右肩からはカブトムシが抱きついているかのように特徴的な意匠があり、頭部からは黄色い複眼が睨みつけている。
そして口元から左側頭部にかけてカブトムシの角型の意匠が伸びており、右側頭部にはガスマスクのチューブを模した部位がある。
全体的にカブトムシのデザインがあり、赤い悪魔の力を宿すその戦士に与えられた名は、”仮面ライダーベイル”。
たとえ響の体内やドライバーの内部に悪魔が存在せずとも、彼は”白波 純平”…かつての元太が持つ、悪魔の力から生み出されたライドウォッチを授かった人物。
ライドウォッチを介す事で、響でも仮面ライダーベイルの力を十全に引き出す事が出来た。
(元太さん…貴方の意思は、俺が紡ぎます!)
「ハァッ!!」
ベイルの右手から発せられた衝撃波によって、大量のノイズが消滅した。