記録対象:人間男性3名(異種族婚×2、独身×1)
日時:██年██月██日 19:43〜
場所:都内某居酒屋
──再生開始。
【店主】
「まー……久しぶりだなぁ、こうやって3人揃うのは。何年ぶりだ?」
【会社員】
「下手すりゃ大学の卒業式ぶりじゃない?てか店やってるって聞いた時、まさか女将と一緒とはなぁ……」
【主夫】
「わかる。っていうか、エルフ族の女将さん、あれ美人過ぎない?昔からあの顔だったっけ?」
【店主】
「いやもう……自分でもよく結婚できたなって思ってるよ。未だに信じられてねぇもん」
【主夫】
「馴れ初めとか聞いていい?」
【会社員】
「ぜひ聞きたい。あの美貌と結婚って、何したの?命でも差し出した?」
【店主】
「……覚えてねぇんだよな、実は」
【主夫】
「え?」
【店主】
「その頃さ、ブラック勤めでメンタル限界でさ。常連だったこの店でベロベロになるまで飲んで、『仕事やめてぇ』だの『女将すき』だの言って……気づいたらホテルだった。で、隣で彼女が……『責任取ってくださいね♡』って」
【会社員】
「こっわ!?どう考えても向こうが仕掛けてきてるじゃん!」
【主夫】
「記憶ないってのがマジで恐ろしいわ……。異種族だぞ?酔った勢いで襲っちまっても全然頷けちゃうのよなぁ……」
【店主】
「マジでな。今はもう立場逆転よ。毎晩襲われてる」
【会社員】
「いやぁ、でも惚気が言える相手がいるのは羨ましい。俺もいつか……って思ってたけどさぁ、最近ちょっと……性癖が壊れかけてる」
【主夫】
「壊れた?」
【店主】
「壊れた?」
【会社員】
「いや……俺、元々さ、お姉さん系が好きだったじゃん。年上で包容力あるような。けど最近、うちの上司がね……あの……サキュバスなんよ。しかもなんかメスガキ」
【主夫】
「お、おう」
【会社員】
「で、そいつがやたらと俺に絡んできて、口を開けば『ざぁこ♡ざぁこ♡』で、そんなん言われたらムカつくに決まってんじゃん。でも……最近それが、なんかこう……いいかもって」
【店主】
「催眠されてない?」
【会社員】
「した。俺がしたつもりだった。アプリ作って、『催眠アプリ第一号はてめぇだ!』つってやったら、逆に奪われて俺が催眠された」
【主夫】
「えぇぇぇ……?」
【会社員】
「で、記憶は無いんだけど、最近その上司が夢に出てくるようになって……しかも服を脱いでることが多くて……俺、もう駄目かもしれん」
【店主】
「うん、だいぶ手遅れな気がする」
【主夫】
「催眠アプリを作った理由がヤバいけど、それで負けたのがもっとヤバい」
【会社員】
「慰めてくれ……」
【主夫】
「いや、俺も人のこと言えないんだよな……うちも再婚してさ、奉仕族と」
【会社員】
「えっ!?奉仕族!?それまたすごいな……」
【店主】
「おお……大丈夫か?奉仕族って、全力で尽くしてくるんだろ?」
【主夫】
「それはもう。俺が何か行動起こす前に先んじて準備されてるレベル。問題は……」
【会社員】
「問題は?」
【主夫】
「その娘。連れ子がいるんだけど、うちの息子に毎朝弁当作って『今日もご奉仕できて幸せです♡』とか言ってるの。洗濯物畳んで、靴磨いて、夜は添い寝……」
【店主】
「え、もうそれ結婚前提じゃん……っていうか息子さん何歳?」
【主夫】
「中1。で、娘は中2。当然血は繋がってない」
【会社員】
「やっっっっば……息子くんやばいでしょ」
【主夫】
「ほんそれ。一人娘だからな。息子が手出したら、腹を切って詫びようと思ってる」
【店主】
「逆じゃない?」
【主夫】
「え?」
【会社員】
「いや、そっち(娘)の方が危ない気がするぞ。このままだと息子くんお姉ちゃんいないとなんもできなくされるぞ」
【主夫】
「…………まさか」
【店主】
「ほら、お前んとこも大概ヤバいからな?」
【主夫】
「……俺が一番まともだと思ってたのに……」
【会社員】
「てか……なんでこんな美人で個性的な異種族が、俺らみたいな凡人を選ぶんだろうな……って考えない?」
【店主】
「考えるけど、結局のところ“自分をちゃんと見てくれるかどうか”なんだろうなって思うよ」
【主夫】
「奉仕族の奥さんも言ってた。“元夫は完璧を求めたけど、あなたは弱さを受け入れてくれた”って。……あれは刺さったな」
【会社員】
「マジか……尊すぎる……」
【主夫】
「……でも、正直……弟にご奉仕してる娘を見るたびに、胃が痛くなる。思えばあれはもう、完全にロックオンしてる目してる」
【店主】
「おいおい、胃腸薬か?」
【主夫】
「最近息子が“女の子の髪っていい匂いするなぁ”とか言い出しててさ……」
【会社員】
「それもう階段の上り口に足かけてんじゃん」
【店主】
「というか、娘さんのほうが既成事実作る気満々なら、そのうち家族構成が再更新されそうな気が……」
【主夫】
「やめろおおおおおお」
【会社員】
「まぁ、でもそれはそれで……アリじゃね?」
【主夫】
「倫理観が死ぬんだよ!人間の倫理観が!」
【会社員】
「こちとらサキュバスに性癖破壊されてる最中だっつーの!倫理とか感覚とか、とっくにぶっ壊れてんだよ!」
【店主】
「(酒を注ぎながら)はいはい、おかわりな」
【会社員】
「ありがとう……っていうか、お前の方はどうよ?」
【店主】
「まぁ普通。妻が厳しいかな。箸の向き間違えただけで“教育し直しますね♡”って夜中に連れ出されるから」
【主夫】
「何その幸せ拷問……うらやま……いや、うらやましいのか?」
【会社員】
「結局さ、異種族ってのは見た目とか能力とか色々すげぇけど、惚れた時は人間以上に真っ直ぐなんじゃないかって思うよ。俺なんか、振り回されてばっかだけど」
【主夫】
「振り回される人生って、案外……悪くないよな」
【店主】
「……うん、悪くない」
【会社員】
「俺も……悪くないって思える日が来るかな……」
【主夫】
「……その催眠アプリ、今度貸して?」
【会社員】
「地獄に堕ちるぞ?」
【主夫】
「姉が弟を押し倒すよりはマシだろ!!」
【会社員】
「振り回されてるといえば、昨日さ、プレゼン準備で資料手こずってたら、後ろから“もうちょっとでできそ♡?”って声かけてきやがってさ……あれ絶対、わざと俺の耳たぶに息かけてきたぞ」
【主夫】
「それアウトじゃね? 社内倫理的に」
【店主】
「でも、サキュバスだから許されてるとこあるよな。妙に“甘え”が通用するんだ、あの種族」
【会社員】
「それがまた腹立つんだよなぁ……! でも最近、あの声とか、あの目線とか……嫌じゃなくなってきてて……っ!」
【主夫】
「性癖の捻じれって、怖いよな」
【店主】
「そのうち、“耳たぶに息をかけてほしい”とか言い出すようになったら、完全に落ちてるな」
【会社員】
「うぐっ……すでに一回夢に出てきた……」
【主夫】
「夢っ!? 催眠……!?」
【会社員】
「やめろぉ……ッ!(机に突っ伏す) ……俺、昔はしっとりしたお姉さんに“よくがんばったね♡”って頭撫でられるのが理想だったんだよ……それが……それが今じゃ“なにその統計♡まさかそれで提出しようとしてんの♡?データスカスカ♡”とか煽られて……勃つようになってきた……!」
【店主】
「なかなか……深刻だな……」
【主夫】
「でもさ、逆に考えたら、それだけその子に影響受けてるってことじゃね?」
【会社員】
「っ……認めたくない……認めたくない……!俺は年上お姉さんが好きなんだぁ!」
【店主】
「落ち着け、取り乱すと事実化するぞ」
【主夫】
「……いやでも、わかるよ。俺も奉仕族の奥さんと暮らしてて、自分がどう扱われてるか分かんなくなる時ある」
【会社員】
「たとえば?」
【主夫】
「“朝食に何をお望みですか、ご主人様♡”って聞かれて、パンって答えたら、焼き加減・厚み・塗るバターのブランドまで選ばされるんだぜ……?選択肢無限かよって思うだろ?」
【店主】
「ある意味、究極の自由と責任の交差点……」
【会社員】
「なんかもう、俺……異種族と付き合う覚悟……いるかもしれん……」
【主夫】
「いや、そのメスガキサキュバスさん相手だと、付き合うっていうか、飼われる覚悟じゃね?」
【店主】
「……お前にとって、その“飼われる”が嫌じゃないなら、もう答え出てるんじゃないか?」
【会社員】
「…………」
【会社員】
「……でも……もう少しだけ抗わせてくれ……年上……捨てたくないんだ……!」
【主夫】
「頑張れ。でもたぶん無理だぞ。つーかサキュバスなんだから年上では?」
【店主】
「酒、もう一杯飲むか?」
【会社員】
「くれ……アルコールで理性を誤魔化させてくれ……!」
◇◇◇
【主夫】
「……まぁな。嫁と出会ったとき、まさか奉仕族だとは思わなかったよ。あの人、仕事できるし、理路整然としてるし、“ご主人様♡”ってキャラじゃないんだよ、全然」
【店主】
「ギャップがいいんだろ? 人前じゃきっちりしてるけど、家では……的な?」
【主夫】
「いやほんとそれ。“お帰りなさいませ♡ご主人様♡”って言われたときといったらもう……」
【会社員】
「……はえー、娘さんもそうなのか?」
【主夫】
「あいつ、弟のこと“旦那様”って呼んでるからな」
【会社員】
「未来に怯えるわ……俺があのメスガキサキュバスともし万が一くっついたら……子供できたら……どう育つんだ?」
【店主】
「サキュバスだろ? たぶん……生意気で、甘えたがりで、ちょっと小悪魔で……お前そっくりになるぞ」
【会社員】
「俺っ!? なんでだよ!」
【主夫】
「子供って、割と親を見てるからな? 俺の息子も最近、お姉ちゃんの膝に顔うずめながら“ご奉仕ありがと♡”とか言っててさ……」
【店主】
「それはお前が止めろ……」
【主夫】
「いや、あれ、どっち止めればいいのか悩むんだって……! 連れ子同士が険悪すぎて離婚とかも聞くし……仲悪いよりはいいのかな…って」
【会社員】
「怖い……異種族家庭、怖い……」
【店主】
「でもな……悪いことばかりじゃないんだよ」
【主夫】
「……ん、急に真面目トーンか?」
【店主】
「うちの嫁……エルフだから、料理も手際いいし、家も綺麗だし、静かに微笑んでくれるしさ。で、時々、俺の仕事ぶり見て“あなたのおかげで、毎日が楽しいです”って言うんだよ」
【主夫】
「……いいな、それ」
【会社員】
「え……ちょ、ズルくない?俺、毎日“ざぁこ♡もっと頑張らなきゃ♡今月ノルマ割ってるぞ♡がんばれー♡”だぞ……」
【店主】
「それ、お前にとっては今や褒め言葉だろ?」
【会社員】
「っっ……!」
【主夫】
「お前……その顔……今ちょっと嬉しそうだったぞ……」
【会社員】
「違う! 違うっ!これは……これは……慣れだっ!!」
【店主】
「“快感は慣れから始まる”って、うちの嫁が言ってたな」
【主夫】
「名言だな……異種族、深いわ」
【会社員】
「……でさ、結局、異種族ってどこで出会うんだよ。エルフの女将とか、奉仕族のキャリアウーマンとか、そんなの普通に生活してたら遭遇しないだろ?」
【店主】
「お前には生意気メスガキサキュバス上司がいるじゃないか」
【会社員】
「バカがよ」
【主夫】
「んー、まあ確かに“日常の中にいますよ”って感じじゃないな」
【店主】
「でも、お前も奉仕族の奥さんとどうやって出会ったんだよ? 詳しく聞いてねぇな、そういえば」
【主夫】
「……あー、あれか……。実は、俺がまだ妻と出会ったころって、こっちもまだ仕事しててさ。通ってたカフェで毎朝必ず会ってたんだよ、彼女と」
【会社員】
「へぇ、ベタだな意外と」
【主夫】
「で、ある日、俺が息子連れてそのカフェに行ったら、偶然彼女も娘さん連れてて……。うちの息子が“お姉ちゃん、かわいい”って言ったんだよな、堂々と」
【店主】
「……やるやん」
【主夫】
「それに対して彼女が、“まあ……ありがとうございます、ご主人様♡”って娘に言わせて……。それがもう、俺には衝撃でさ。たぶんあの時点で娘さん、うちの息子に奉仕モード入ってたんだと思う」
【会社員】
「始まりから狂気……」
【主夫】
「で、なんやかんやあって、彼女の元旦那さんのこととか、子供との距離感とか、いろいろ相談されてさ……。そういう流れから、気がついたら一緒に住む話になってて」
【店主】
「気がついたら、か。まぁ、お前優しいからな」
【会社員】
「優柔不断とも言う」
【主夫】
「黙れ。でも、娘さんとの距離感、マジで悩むぞ……。嫁も“2人が結婚したら私たちおじいちゃんとおばあちゃんですね”って冗談めかして言ってくるし」
【会社員】
「うちの上司に聞かせたい……そんなセリフ、あの人言わないもん。“お前今月の数字ザコ過ぎ♡クビんなったら飼ってあげよっか?3食首輪付き♡”とか言ってくるもん……」
【店主】
「お前、そろそろ自分の立場を見直せ」
【主夫】
「そうだぞ。お前、もう好きだろ? その上司のこと」
【会社員】
「……す……す……」
【店主】
「“す”?“好き”って言えるか?」
【会社員】
「……すき焼き食べたいなって……」
【主夫】
「誤魔化し下手か!」
【会社員】
「……なあ、俺さ、本当に年上が好きだったんだよ。ほんとに。包容力とか、落ち着いた声とか……甘やかされたいって、ずっと思ってて……」
【主夫】
「……うん。知ってる」
【店主】
「お前、“お姉さんがタイプ”って、大学の頃から言ってたもんな。“耳長い方が良い”とか、しつこかったぞ?」
【会社員】
「そうなんだよ。でもさ……最近、あの人の顔が……浮かぶんだよ、寝る前に。いや、嫌いなんだよ? ウザいし、口悪いし……“雑魚”しか言わねぇし……」
【主夫】
「……でも?」
【会社員】
「でも……なんか……すげぇドキドキするんだよな。もう、わけわかんねぇよ……!」
【店主】
「それ、恋じゃね?」
【会社員】
「違う!違う違う違う違う!俺は騙されてるだけだ!催眠だ!絶対そう!あんな幼い顔してあの上司、ぜってぇ俺のことなんか……」
【主夫】
「いや、でも、お前……。そもそも催眠アプリ作る動機がすでに歪んでたろ?」
【会社員】
「は、歪んでねぇよ!?ちゃんとした、技術研究の一環だってば!」
【店主】
「でもその“技術研究”の成果が今、お前の性癖に逆流してんのは事実じゃねぇか?」
【会社員】
「くっ……俺は年上お姉さんで抜きたいだけなんだ……!」
【主夫】
「それ、録音されてるぞ」
【会社員】
「怖ぇこと言うなよなッ!?」
【店主】
「なぁ……お前さ、その上司がもし、万が一、お前のこと好きって思ってるとしたら、どうすんの?」
【会社員】
「……やめろよ、そういう……。そんなの、あるわけ……あるわけ……」
【主夫】
「あるかもしれないじゃん?」
【会社員】
「……うぅ、マジでどうしよう……」
【店主】
「飲め。まずはそれからだ」
【会社員】
「うぅぅぅ……」
【会社員】
「……俺、どうすればいいんだろうな。あんなん、好きなわけないのに……」
【主夫】
「無理に好きにならなくていいよ。でも、“好きじゃない”って無理に言うのも違う」
【店主】
「自分の気持ちに嘘ついても、身体は正直だぞ?」
【会社員】
「は?なにいやらしいこと言ってんだよお前……!」
【主夫】
「でも、わかる。俺も、再婚とか絶対無理だと思ってたし」
【店主】
「俺も、まさか女将と結婚するとはなぁ……彼女と別れたその日のうちによ」
【会社員】
「……ん?」
【店主】
「なんでもねぇよ。泥酔したら記憶がなくなるのは罪だって話だ」
【主夫】
「お前も酔う度に言ってたよな、大学の時。“耳長いお姉さんに看病されたい”って風邪ひくたび」
【会社員】
「……そういうのは夢のままでいいんだよ。現実が、こう……刺さってくるのが一番キツい」
【店主】
「現実に刺されるから、生きてるって感じするだろ」
【主夫】
「……お前、たまに詩人みたいなこと言うな」
【店主】
「伊達に女将に毎日“愛してます♡”って言われてないからな。愛の深さは言葉に出るんだよ」
【会社員】
「うわ、なんだそれ……。でも、……羨ましいかもな。そうやって言ってもらえるの」
【主夫】
「俺のはちょっと違うけどな。嫁さんには“いってらっしゃいませご主人様♡”って言われるし、息子も……まぁ、やめとこ」
【会社員】
「なにがあったんだよお前の家族構成……」
【店主】
「それぞれが、それぞれの地獄を歩んでるんだよ。でも、まぁ、あったかい地獄だ」
【主夫】
「それは言えてる」
【会社員】
「俺も、帰る場所……欲しいのかな」
【主夫】
「欲しくないやつなんかいないよ」
【店主】
「欲しいと思った時点で、お前はもう、そこに向かってる」
◇◇◇
【店主】
「おい、お前ら。そろそろ閉めるぞ。俺、明日も朝から仕込みなんだ」
【主夫】
「はいはい、帰るよ。……にしても、ほんといい店だな。落ち着く」
【会社員】
「……俺も、こんな風に“帰ってこられる”場所、持てたらいいのになぁ」
【店主】
「作れよ、自分で。場所は勝手にできねぇけど、人と一緒に作ることはできる」
【主夫】
「まぁ、最初は失敗ばっかだけどな。嫁さんの好物と息子の嫌いなもん、いつも間違えるし」
【店主】
「でも、それを笑いながら教えてくれる嫁がいる。そんで、怒りながらも食べてくれる息子がいる。それでいいじゃねぇか」
【会社員】
「……明日、会社行くのちょっとだけ楽しみにしてみるか」
【主夫】
「……なんで?」
【会社員】
「いや……まぁ……じょ、上司に会えるから……?」
【店主】
「ぷはっ、ついに認めた!」
【主夫】
「はい拍手〜」
【会社員】
「やめろバカ!!クソがッ!」
【店主】
「よし、そんじゃラスト一杯だ。お前の門出に、乾杯しようや」
【主夫】
「まだ始まってもねぇけどな」
【会社員】
「……まぁ、飲むけどさ」
(三人)
「――乾杯!」
───再生終了。
【記録者注記】
本録音は対象者の会話を通じ、人間と異種族間の共生における「家庭形成」および「恋愛価値観の変化」に関する貴重な市井の意見を収録したものである。特に、サキュバス族への恋愛感情の発展や奉仕族との再婚生活については今後の政策設計において参考となる可能性が高い。なお、対象者B(会社員)の催眠影響下における精神的変容については、異種族対策庁精神衛生局の補足調査を推奨する。
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調査対象者:B氏(ヒト・男性・会社員)
対象種族:サキュバス族(一般種)
調査目的:サキュバス族による継続的な催眠影響下における精神状態の変容に関する経過観察
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Ⅰ. 調査概要
本調査は、サキュバス族個体による継続的な催眠影響を受けた人間男性(以下、B氏)の精神的・性的嗜好および恋愛傾向の推移を追跡し、異種族間恋愛における意思形成の自由性と、法的自律性の担保について再検討するために実施されたものである。
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Ⅱ. 催眠誘導のメカニズムと頻度
• 使用ツール:B氏自身が開発した「簡易催眠アプリ(Ver.0.91β)」
• 使用経緯:本来は異種族女性への性的アプローチを目的とした実験アプリであったが、サキュバス個体により逆用。現在は彼女の端末にインストールされ、週1〜2回程度の頻度で使用されていると推定される。
• 催眠誘導内容(観測ベース):
• 年上属性の上書き→年上の中でも“見た目が幼い”個体への許容拡張
• 服従・好意の刷り込み(言語記憶に残らない程度)
• 自発的な認知ゆがみの強化(例:「あれ、可愛く見えてきた?」「やたら夢に出る」)
───
Ⅲ. B氏の精神的影響の推移(報告・観察による)
フェーズ・影響内容
初期・催眠アプリの効果が発現せず、上司への反発感強し。「雑魚」呼びに強いストレス反応
中期・性的嗜好に変調。年上好きを自称しながらも、上司の存在に違和感のない好意を持ち始める
後期・無自覚的好意を伴った混乱。言動に照れや動揺が見られる。
※注:B氏は最初期の行動以外、催眠中の記憶を一切保持しておらず、以降の催眠が行われた事実を認知しない。自己責任認識が希薄であるが、精神的な混乱を訴えている様子はなく、むしろ“悩んでいることを他者に相談できる”程度に安定している。
───
Ⅳ. 上司個体による戦略的介入の可能性
• サキュバス個体は意図的にB氏の性的認知構造を変化させている可能性が高い。
• 対象アプリのソースコードに「トリガーフレーズによる定期洗脳」「反転防止用バックアップ暗示」等が追加されていた形跡あり。
• 本事例は人間側が“倫理的に加害されたと訴えることが困難”な境界状態を作り出す典型例とされ、今後の法整備上の事例資料としても有用。
───
Ⅴ. 推奨対応(精神衛生局より)
• 【推奨】経過観察の継続(ただし明確な精神被害が表出した場合は速やかなカウンセリング介入)
• 【検討】催眠アプリに対する使用制限、またはサキュバス族への同アプリのアクセス制限
• 【留意】B氏本人が精神的に安定し、関係を肯定的に捉え始めた場合、介入は不要とする方向で再評価
──
備考
“ざぁこ♡ って言われてキュンとした時点で、もう詰みなんだよなぁ…”
── B氏、飲酒時の独白より
店主:都内某所にある居酒屋の店主。エルフの妻がいる。酒の勢いで自分がエルフを襲ってしまったのだと思っているが、事実はその逆で、彼は襲われた側なのだが、泥酔すると記憶が無くなる性質のため、男がそれを知ることはない。ちなみに妻は妊娠後期に入ったため入院中。
会社員:都内某所のIT企業にてアプリケーションの開発を行う社員。技術者と営業がマンツーマンでタッグを組んで売り上げていくスタイルを取っており、彼とその相棒は若輩のため、他のメンバーに比べ成績は低め。その成績を売り上げ断然トップのメスガキサキュバス上司に詰られる毎日。筋金入りの年上お姉さん属性好きだった彼だが、催眠アプリを開発した弾みで上司に復讐を企て、返り討ちに遭った挙句性癖をいじられる始末。最近は詰られると気持ちがいい。
主夫:バリキャリの妻に代わり家庭を支えている男。前妻に先立たれ、忘れ形見の息子を男手ひとつで育ててきた。連れ子同士が仲睦まじいことには安堵しているが、最近は仲が良すぎて逆に心配になっている。
異種族対策庁精神衛生局:精神干渉による人間への被害に対処するべく設立された機関。異種族と直接相対する仕事が少なく、異種族対策庁において最も定着率が高い。馬鹿みたいな案件が多いため、飲みの席での話題には事欠かない。