綾小路清隆にラッキースケベは難しい?   作:雅みやび

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最高傑作にラッキースケベは難しい?

「おはようございます茶柱先生」

 

職員室に向かっている道中で運よく茶柱先生に遭遇した。

職員室に行く必要がなくなったな。

 

「きたか綾小路。お前が遅刻とは、珍しいことも...いや、これが初めてなんじゃないか?」

 

こっちは大遅刻をした身だが、茶柱先生はいつもと変わらない調子で接してくる。

文化祭が終わってから数日は、俺に対して睨みつけるような視線を度々向けてきていたが、ようやく消化できたようだ。そもそもあれは学校のルールに則った正当な行為なので、攻められる謂れはない。

 

「多分そうですね。まさか自分が遅刻する日が来るなんて思いませんでした」

 

「遅刻は遅刻でも、二時間以上の遅刻は珍しいぞ?以前の須藤でも、精々一時間が最高記録だ。ああそうだ、遅刻の理由を聞いておこうか。形式上必要な質問だ」

 

ここで自分に非がないという旨の理由を見繕ったところで、恐らくマイナスがなくなることはないだろう。

 

「寝坊です」

 

実際には違うが、『登校中に気を失ってしまい遅刻しました』なんて自分でも意味不明な事実を言って先生を混乱させるメリットはどこにもない。とりあえず当たり障りのない理由にしておく。

 

「承知した。あと、次の授業は体育だから急い...」

 

「あーー!いけないんだぁサエちゃん!自分のクラスの生徒だからって、遅刻した生徒は先生としてちゃんと叱んないとダメじゃない!」

 

言い終わる前に、茶柱先生の背後から星ノ宮が持っていた紙を丸めてメガホン代わりにして言ってきた。

奥の教室から出てくるのが見えたので、十中八九絡んでくるのは予想できたが。

 

「チエ、お前な....」

 

「では、俺はこれで失礼します」

 

「コラコラ!遅刻くんまだ行っちゃダメでしょ?社会に出たら遅刻の一つで相手の信用を失っちゃうことだってあるんだから!ちゃんと反省してから行きなさい!」

 

茶柱先生の『お前が言うな』と言わんばかりの視線を見る限り本心ではなく単に俺と茶柱先生への嫌がらせだろうが、言っていることは珍しく筋が通っているので、ここはいう通りにしておくことにする。

 

「すごく反省してますもうしませんすみませんでしたでは失礼します」

 

「全然反省の色がみえないデース。かえしまセーン」

 

突如、背中に圧迫を感じる。

素早く逃げようと試みたが、失敗に終わった。

星ノ宮が背を向けた俺に抱きついてきたのだ。

俺の背中に密着し、首に両腕を回してもたれかかってくる。

当然、俺の背中、具体的には広背筋の上辺りに母性の象徴が押しつけられる形に。

昨日もお酒を飲んだのだろう、若干だが香水の匂いの中にアルコールの匂いが混じっている。

いや、こんな分析をしてどうする。

ここは普段からあまり人が通らない廊下だが、それでも全く通らない訳ではないため、いつ誰が通り掛かっても不思議はない。

そんなことは気にも止めず、一般生徒と過剰なスキンシップをする星ノ宮。

仕方なく強引に抜け出そうと試みようとするが、その必要はなかったようだ。

 

「いい加減にしろチエ。お前はこれで綾小路が次の授業に遅れたら責任をとれるのか?」

 

たかが遅刻、されど遅刻。

俺やクラス全体の不利益につながる行為だと諭されれば、中立を守らなければならない教師である星ノ宮は引かざるを得ない。

そう思われたが...。

それを聞いた星ノ宮はムッとした顔をしたかと思うと、わざとらしく泣いているふりをしながら言った。

 

「いや~んそんなに怒らないで~~!いい年してコスプレ羞恥プレイ好きなのがバレたからって怒らないで~!私はノーマルだから巻き込まないで~!」

 

そう言って、さらに俺の背中との密着度を上げてくる星ノ宮。

押しつけ過ぎて、服越しにブラの形まで鮮明に伝わってくる。

そろそろ限界が近い。

 

「うっ......チエ...お前はまだそれを言うのか!」

 

「みてみて~綾小路く~ん。大勢の年配おじさんにエロい目で見られて嬉しそうな顔してる君の担任の先生。綾小路くんも鬼畜なことするよねぇ笑」

 

怒る茶柱を他所に、星ノ宮はどこから取り出したのか、例のチェキを後ろから俺に見せてくる。

 

「なっっ!!!チエ!どこからそれを!というか職場に持ち込むな!没収する!」

 

「え~、いいじゃない別に~。どうせこの学校の男教師どもの9割は肌身離さず持ってるわよ~っていやん!ちょっと引っ張らないでよ~!」

 

流石にそんなことはないだろうが、きっと自室のベット付近にでも置かれていることだろう。

 

「断言できる。この世で一番それを持っちゃいけないのは、チエ!お前だ!」(ライナー風)

 

どこかで聞いたことのあるセリフを言いながら、茶柱は星ノ宮のもつ自分の黒歴史チェキに手を伸ばす。

気持ちは察するが、少々冷静さを欠き過ぎている。

そんなに必死に押しあったらバランスを崩しかねない。

そう思った直後、茶柱と星ノ宮が"何か"に足を取られ体勢を崩す。

一瞬、二人の足元に影のようなものが見えた気がした。

 

「あっ...」

 

「えっ、ちょ....」

 

そして二人は、反射的に近くにいた俺の腕を掴んでしまう。

その瞬間、俺の右腕は、"成人女性二人分の体重"に引っ張られることになる。

およそ100kgだ。

普通ならこのまま引っ張られて二人の上にかぶさるように倒れてしまうところだが、俺なら一瞬で掴まれている腕を振りほどくことができる。

つまり見捨てることは簡単な訳だが、それなりに勢いがあるので、このまま転んだ場合先生たちは最悪怪我をする恐れがある。

一週間後に修学旅行を控えているこのタイミングで怪我をしたら、学校待機は確実。

星ノ宮はまあいいとして、茶柱が修学旅行に行けないのは、俺にも不利益が生じる。

旅行中にホワイトルームからの刺客が仕掛けてきた場合、その辺の事情を知っている茶柱先生の存在は非常に使い勝手が良いのだ。

星ノ宮は茶柱先生ほど重要ではないが、先生という存在は一人でも多いに越したことはないか。

俺は二人の腕を掴み返す。

これは以前、無人島試験で高円寺と対峙した際の綱引きと同じ要領。

極力重心を落として二人とは逆方向に体重を目一杯傾ける。

ただ今履いているシューズが屋内用なので、滑らないようにそことのバランスも調節する必要がある。

やがて2力は拮抗して、静止させることに成功する。

 

「もう、危ないじゃないサエちゃん!転んじゃうところだったじゃない!」

 

「元はと言えばお前が......はあ、もういい。綾小路、悪かったな。助かった」

 

「いえ。大したことでは」

 

「いやいや、綾小路くんの腕、すごく逞しかったよ!私たち二人まとめて支えちゃうなんて......私、綾小路くんみたいながっしりした男の子、好きだな〜」

 

そう言って今度は腕に抱きついてくる。

この人、今日はいつにも増してしつこいな。

心境の変化、というより焦りが募っているといった方が正しいか。

しかし、流石に長居し過ぎた。

これでは本当に三限目も遅刻してしまう。

そう思い今度こそ振り切ろうとした時。

 

「あ、星ノ宮先生!こんなと、こ、、ろ、、、に、、、、」

 

「ありゃ、やっほー一ノ瀬さ〜ん。私に何か用?」

 

「あ、はい......」

 

幸か不幸か、一ノ瀬が来てくれたおかげで星ノ宮が腕から離れる。

結果的に星ノ宮から脱出できたので良しとしよう。

 

「オッケー。じゃあ向こうで話そっか♪じゃあねぇ綾小路くん♪」

 

俺は特に何も返答せず見送ることにした。

星ノ宮は当初の言い分などすっかり忘れているようで、いつもの調子で廊下の向こうに消えていった。

 

「相変わらず嵐のような人ですね」

 

「本当にな...あ、写真を没収するのを忘れた.......」

 

「一体どこで手に入れたんでしょうね。星ノ宮先生自身でチェキを購入するのは不可能ですし」

 

「さあな。大方他の先生から譲ってもらったか...く、最悪だ。あいつの手にあれが渡ってしまうなんて...一生揶揄われる........も、元はといえば、綾小路!お前があんなことをさせ...」

 

「では次は体育なので急ぎます。茶柱先生」

 

心中察するが、その説教は遅刻のより長くなりそうなので、早々に切り上げる。

背後から『覚えてろよ綾小路』と言わんばかりの圧を背中に感じながら。

またしばらく睨まれることになりそうだなと思いながら、俺は教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おいおい嘘じゃろこいつ、せっかくあの女どもを転ばせてやったというのに、あの状況からエロい展開にならないじゃと.......!?このトラップをあそこまで冷静に掻い潜ったやつなんぞ見たことないぞ!?強靭な肉体に加えてあの精神力......カカカカカっ!面白い!最初はこんな冴えなそうな奴なら楽勝と思っておったが、もしかしたら妾が出会ってきた中で一番楽しませてくれる奴になりそうじゃ.......。それに、感情の起伏の少ない奴じゃが、性欲は年相応...いやそれ以上にあるようじゃし、付け入る隙はなくもないしの。しかも、学校ならチャンスは無数にある。なんとしてでも、此奴に大恥をかかせてやるわ!』

 

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