AI: ソムニウム ファイル THE futurity Decker 作:ガンダムラザーニャ
「…!…さん!」
誰かの呼び声に、意識がわずかに覚醒する。
誰だ…?
「…して、…たさん!」
少しずつ、意識が覚醒してきた。
目も開き、ぼんやりと誰かが俺を起こそうとしているようだ。
ポタポタと、頬に何かが落ちるのを感じる。
これは…、涙…なのか?
その瞬間、俺は一気に覚醒した。
そして目の前には……。
「彼方さん!」
簪ちゃんだ、簪ちゃんが意識を失った俺を必死で呼び起こしていたんだ。
「簪、ちゃん…?」
「良かった、目を覚まして……」
安堵したのか、彼女の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
そして同時に、俺はある事を思い出していた。
そうだ…、俺は大型のスフィアを倒そうとして!
「そうだ、スフィアは!バリアは…うぐっ!」
「落ち着きたまえ、今の君は満足に体を動かせないんだ」
「けど、起き上がれるぐらいには、元気があるみたいよ?」
やれやれといった感じのクロトさんと、お菓子とお茶を持ってきてくれた鳳蓮さんがやってきた。
「クロトさん、鳳蓮さん…、俺…」
体が痛むし、よく見たら包帯が巻かれていた。
だから、何となくだが察しはつく。
俺は大型スフィアを止められなかったんだ。
「ふふっ、気にしなくてもいいわよ坊や?
生きていればチャンスは訪れるし、まだ全てが終わったわけじゃないわ」
「だが奴らが地球にバリアを張ったおかげで、地球は今絶望的な状況に置かれている」
「どういうことですか?」
と聞くと、クロトさんが映像を出して説明した。
「まず、バリアを張られたことにより、ロケットなどの打ち上げが出来なくなってる。
それに特殊な電波を発してるようで、バリアが張られた直後に大規模な電波障害が起こってしまった。
今は復旧してるが、ミサイルのような遠隔操作型の兵器は全て使えなくなってしまったな」
つまり、地球にはあのスフィアに対する防衛手段があまりにも絶望的なことになってしまったということだ。
それとは別に、と。
クロトさんはあるものを見せてくれた。
それは、ボロボロで所々黒焦げになったフラッシャーだ。
「フラッシャーが…!」
「さっきの戦闘で負担が掛かったんだろう。
私の神の才能を持ってすれば、直せない訳ではないが、かなり時間を有することとなる」
「…そうですか」
フラッシャーが壊れたということは、俺はデッカーに変身できないってことだ。
俺は正直、気分が最悪だ。
今聞いた2つで、自分たちにスフィアに対抗する手段がなくなってしまっているのだからなくなってしまっているのだから。
「だが、勘違いしないで頂きたいな。
別にそれで希望が潰えた訳じゃない」
「えっ」
「どういうこと、ですか?」
「これを見たまえ」
と、クロトさんが映像であるものを見せてきた。
それは黒いロボットだ。
「これは…?」
「電脳魔人 テラフェイザーだ。
これまでの君が戦った怪獣たちの戦闘データを元に開発したものさ。
これを、鳳蓮が操縦する。
流石に大型スフィアを破壊できるかどうかまではわからないが、それでもスフィア合成獣を倒すことは可能さ」
「こ、これを鳳蓮さんが…」
「心配しなくてもいいわよ坊や、すでに試運転も終わってるし、ワテクシも必ず戻ってくるわよ」
「あくまでも、テラフェイザーは時間稼ぎみたいなもので、君が主体なんだ。
私も、フラッシャーを一日でも早く直せるように、これから修復作業に戻る」
「じゃっ、ワテクシは店番に戻るわね」
「あぁ、はい、どうぞ…」
クロトさんと鳳蓮さんはそのまま部屋を後にした。
「…はぁ」
俺は、どこか安堵を覚えその場でため息をついた。
だが、同時にどこか虚無感を得た。
それはデッカーに変身できないからか、テラフェイザーがいるからか、それは分からなかった。
「彼方さん…」
簪ちゃんは、そんな俺のことを、優しく抱き締めてくれたのだった。