ドラえもん~ハルウララ育成記~   作:稗田之蛙

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※7月25日9時、13話終盤の内容を14話冒頭に持っていく形で修正


WINNING LIVE《make debut!》

 それぞれのウマ娘がウイニングライブに向かう為に、一旦パドックを去る。

 ホネカワメイオーもその一人だ。ハルウララ、アリスブルーに続いて彼女は三位になった。

 ……衣装着替えの為に控え室に向かう道中、彼女は悔しさのあまり壁を思いっきり殴りつけた。

 重たい音が鳴り響く。痛む拳などどうでもよかった。ただ、自分よりも劣っていたはずの相手に負けたという事実が許せなかった。そして、彼女の頭の中で、当然の疑問が浮かぶ。

 

『何故、自分がハルウララに負けた?』

 

「よー、メイオー」

 スネ吉トレーナーに連れ添った男性が、ホネカワメイオーに対して声をかける。

「……なんすか、西崎さん」

 なんで連れてきたとばかりにスネ吉を見ると、彼はやけにビクビクと震えていた。どうやら西崎がここに来たのは彼の意向らしい。

「ハッ、問題児を諭しにきたンすか? さすがスピカの御大将。懐が広い事この上ねぇ」

 メイオーは西崎を挑発するような言動で煽り立てる。しかし西崎は真剣な眼差しで、彼女の態度に応えた。

「負けた理由が分かるか」

「ノーエクスキューズが絡んできたからに決まってるっしょ」

「違う。それはお前の言い訳だ」

「あぁ?!」

 西崎の返答に激昂するメイオー。

 だが西崎は臆せず話を続ける。彼女の目を見据えながら、ゆっくりと話す。

「……お前、ジムに籠もって練習してるからあぁいう不良バ場に慣れてないだろ」

 西崎からそう言われて、メイオーはいくらかの困惑を示した。

 ランニングマシーンで1200m走るのと、雨に濡れたダート1200mを走る感覚はまったく違うのはメイオーにももはや明白だった。

 西崎トレーナーから目を逸し、スネ吉トレーナーの方を睨んだ。

「……わざわざソレ自覚させる為に他のトレーナー呼んだのかよテメェは?」

「確かに不満を持つ気持ちは分かる。けど、ぼ、ボクだってトレーナーだから君が心配なんだ! 君の才能をそんな事で腐らせるわけにはいかない!!」

 ――だからこれからはトレセン学園の皆と一緒の練習に加わろう。

 そんな言葉がスネ吉の口から放たれた。いくら他人に見栄を張りたいといえど、担当ウマ娘の人生が左右される問題となれば話が違ってくる。恥を偲んででも先輩トレーナーを頼って説得すべきだと考えた。

 西崎もその想いに応えて、スネ吉への協力を請け負っている。

 

 二人の思いやりに、メイオーは動揺したように呼吸をする。

「……少し、考えさせろ」

 トレーナー達が追っかけてくるのを拒むように控え室の中へ入っていく。

 

 

 そうして、全員衣装への着替えが終わっていよいよウイニングライブの舞台袖。

 ――屈辱だ。

 同格のアリスブルーに負けたのはまだ許せる。自分が道悪が不得手だという事も重々理解した。だが、全戦全敗のウマ娘如きに負けた事がメイオーはどうしても我慢ならなかった。

 心の内に灯るのは憎悪。嫉妬。敗者から勝者に向けられて然るべき当然の感情。

 ――いつか潰してやる。絶対負けねぇ……。

 

「メイオーちゃん!!」

 

 背後からハルウララの声が聞こえる。ホネカワメイオーが振り返ると、彼女は笑顔で手を振っていた。

 メイオーは思わず顔を顰める。正直な話、話したくもない。しかしウイニングライブ前に問題を起こすのも難だ。

「ンだよ?」

 わざと愛想悪くそう返す。しかしウララは表情を崩す事なく、メイオーの側へと寄ってきた。

 そして彼女は屈託のない笑みを浮かべてこう言ったのだ。

「わたし、メイオーちゃんと友達になりたい!」

 

 

 

 

 ―――――――????

 

 

 

 メイオーは嫌々と蛇蝎を睨むような顔から、豆鉄砲を食らって虚を衝かれたような顔になった。

「えっとね、メイオーちゃんやエクスキューズちゃん『ずびゅーん!』って速くて、すごいなーって思ってて……それでそれで、今回一回きりじゃ、もったいないって思って」

「……もったいない?」

 ハルウララが言っている意味が分からず、メイオーはオウム返しにそう尋ねる。

 ハルウララはにっこりと笑ってこう答えた。それはメイオーからみても無邪気な子供のような笑みだった。

「アリスさんやエクスキューズちゃんや、他の子ともそうだけど……わたし、メイオーちゃんとも一緒に走るの、すごくワクワクして、楽しかったんだ!」

「…………」

 メイオーは無言でウララを見つめる。その瞳は、何処か熱を帯びている。

 嫌味も、皮肉も、傲慢も、勝者の誇りすらも、そんな煩わしいものは眼中にないとばかりの危うい幼さが見えた。

 

「それに失恋したって聞いてたから、寂しくならないように……」

「いつまでそのデタラメ信じてんだテメェは」

 

 気を取り直して。

 ハルウララは真っ直ぐとメイオーを見つめて自分の気持ちを伝える。

「――もう一度、うぅん、何度でもメイオーちゃんと走りたい! だから、お友達になりたい!!」

 そう言って、手を差し伸べる。メイオーはその手を睨むように見据えたあと、舌打ちをした。

 

 ――コイツに嫉妬してる奴らが表立って問題起こさねぇ理由がようやく分かったわ。

 

 全戦全敗のハルウララが1万人以上のファンを稼いでいた事について、それを面白くないと思うウマ娘はどうしてもいる。今回の推薦出走だってそうだ。アリスブルーも含めて、少なからずピリピリした闘争心を帯びていた。

 だがハルウララの純粋さと無垢さを前にすると、どうにも毒気が抜かれるというものだ。

 その振る舞いは誰かが楽しいと自分も楽しいという性根の幼子のようで、そこに真っ向から悪意をぶつけるのはしょうもなく感じてくる。

「……だめかな?」

 ――ま、コイツも私もまだまだガキって事か。

「次はぜってぇアタシが勝つ」

 メイオーは挑戦的な笑みを浮かべながら、メイオーはウララの手を取った。

 

 

「そもそもの話。思春期の彼女達が、同年代の女の子が脚光を浴びてるのに自分が添え物にされて気に病むなってのが酷な話なんです」

 落ち込んでいるスネ吉トレーナーの横に座り、そのように慰める宗石小春。いや、諭していると表現した方が近い。スネ吉はそんな彼女に不安そうに漏らす。

「そんな扱いを受けた事にショックを受けて田舎に帰っていったウマ娘だってたくさんいるって……」

「……実際、そうです」

 彼女達の夢のような華々しい活躍の陰には、当然の帰結として敗北した者達の苦い現実がある。

 そもそも、一勝クラスまで辿り着けなかったウマ娘はどれだけいようか。そうでなくとも、G1に出る事を目指して夢破れた子はどれだけいようか。

 目指したものに手が届かなかった事を切っ掛けとして、走る事をやめてしまうウマ娘もいる。

「あぁ、メイオーがそんな風になるなんて考えたくもないっ!!」

 スネ吉がそんな風に思い悩んでいる様子に、スネ夫ものび太も何も言えず黙り込んでいた。さすがにお互いをからかったり自慢したり、いつものような振る舞いをする余裕がない。

(ほ、本当にメイオーって子が田舎に帰っちゃったら……)

 のび太はメイオーという子の事はよく知らないが、少なくとも他人が本当に苦境へ陥って喜ぶような薄情さは彼になかった。

 普段は横暴を働いているジャイアンやスネ夫が多少痛い目みるならくすくすと遠くから笑っていられようものだが、今回はそんな笑える話ではない。

 チラッとスネ夫の顔を見る。まるで大事な物をどこかで無くしたかのように落ち込んでいた。ジャイアンにプラモデルを取り上げられた時以上だ。

「ど、ドラえもん。さすがにスネ夫やメイオーって子もかわいそうだよ。なんか道具で手助けしてあげられないかな……」

「うーん……そうだね、慰めるくらいなら……」

 何か良い道具はないかとポケットに手を突っ込むドラえもん。そうしている内に、会場のライトが徐々に薄暗くなってきて、ウマ娘達が舞台上に集まってきたようだ。

 そして中心にライトの光が照らし出され、そこにハルウララの姿が浮かび上がる。

 

 

『響け ファンファーレ』

 

 

 歌い出しはウマ娘16人による合唱。その声色に薄暗いものを微塵も感じずに、のび太やスネ夫達は自然と顔をあげた。

 徐々にライトアップされる中、手を前に出したハルウララに対してアリスブルーやメイオーが手を重ねるような仕草を取る。

 

 

『届け ゴールまで』

 

 

 

 ドラえもんは道具を探す手が止まる。スネ吉や小春は思わずそのライブに、ウマ娘達の表情に眼を奪われる。

 バックダンサーの子達も、満面の笑顔を浮かべて手を重ねるジェスチャーを取る。

「……なんだ。あの様子だとオレがお節介焼いてやる必要もなかったんじゃあないか?」

「……元々あぁいうもんよ。ウマ娘なんて」

 西崎トレーナーとキングヘイローがスネ吉や小春を横目にしながら、ライブを邪魔しないように小声で呟く。

 ――あぁ、きっとあの子達みんな走る事を、夢をまだまだ諦めないだろう。

 観客達全員は、彼女達を見てそのように思った。

 

 ハルウララはアリスブルーやメイオーと顔を見合わせる。

 

『輝く未来を 君と見たいから』

 

 

ウマ娘

プリティーダービー

 

 

 

 

 

 

原作

【ドラえもん】

【ウマ娘プリティーダービー】

 

『ドラえもん~ハルウララ育成記~ クラシック未勝利編』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『i believe  夢の先まで♪』

 

⇒シニア重賞編










 ここまでお付き合いありがとうございました。
 今回にて『ドラえもん~ハルウララ育成記~』のクラシック編は終了となります。

 書いている途中「ウマ娘とドラえもん、どちらの側を重視して描写するか」といった事が悩ましい点でした。
 あちらを濃くすればこちらが薄く、という状況で上手く描写できたかどうか。

 その中でも四話ののび太のパパとママのくだりは、とても書いていて自分でも満足できました。ドラえもん側の登場人物の「らしさ」を上手く表現できたと。

 一方で、「これはどうなんだ?」と思った側面もあります。
 史実馬モデルの子を出していいのか、オリジナルウマ娘にスポットライトを当てていいのか。
 ウマ娘ネームドキャラも史実馬モデルも『明確な負け役』を任せるのには気が引けて、ホネカワメイオーというオリジナルウマ娘を負け役を担わせてスポットライトを当てざるを得なかった側面。
 ウマ娘原作や漫画版など度々匂わされる陰の部分を一手に引き受けてもらった彼女ですが、感想で「悪役が居ないのがドラえもんらしい」と好評を受けていたので、スポ根漫画序盤の悪役っぽく登場させたのは一種の賭けだったかもしれない。
 ハルウララ中心だとネームドキャラがどうしても出走レースでライバルに挙がらないので、ネームドキャラを出せないという事情もありつつ。

 史実馬モデルの子やオリジナルのウマ娘について特に読者の感想を聞いてみたいので、その辺りの意見いただけたら幸いです。

 それでは、またシニア編で。





【おまけ】

クラシック未勝利編終了時のステータス。

ハルウララ
スピ:Cスタミナ:Cパワ:A根性:B賢さ:D
スキル:固有スキル
【末脚】【電撃の煌めき】【どこ吹く風】【空回り】【道悪◎】

キングヘイロー
スピ:Aスタミナ:Cパワ:S根性:B賢さ:A
スキル:固有スキル
【末脚】【電撃の煌めき】【大局観】【外差し準備】【負けん気】【外枠得意◯】
特筆点:長距離C

アリスブルー
スピ:Cスタミナ:Bパワ:B根性:C賢さ:C
スキル:
【迫る影】
特筆点:短距離B

ホネカワメイオー
スピ:Sスタミナ:Bパワ:D根性:D賢さ:E
【先行焦り】【集中力】【道悪✕】

ノーエクスキューズ
スピ:Aスタミナ:Dパワ:D根性:D賢さ:A
【コンセントレーション】【トリック(前)】【小心者】【引っ込み思案】



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今後も史実馬モデルをライバルに宛てるかどうか

  • ウマ娘のネームドキャラ中心がいい
  • 史実モデル・ネームド両方ともバランスで
  • 史実モデル多めでもよい
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