ドラえもん~ハルウララ育成記~   作:稗田之蛙

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シニア重賞《フェブラリーステークス》編
重賞勝利の道へ


 新年を終えて1月後半。そろそろ2月が始まろうかという時期に正月気分が抜けない今日この頃。

 野比家でもドラえもんはママと一緒に居間でこたつに入り、のんびりと過ごしていた。

「ウララちゃんって子、いつもニュースで特集組まれてるわねぇ」

 あの1勝クラスレースを勝利して以来、ハルウララはますます世間的に注目されていた。負け組の星、雑草魂、七転八起……とにかく、そういう姿勢が好まれたのかテレビや新聞などで大々的に扱われた。

 特に、あの後は正月シーズンという事もあってイベント行事が多く彼女も引っ張りだこだ。《新春ハルウララ》と称された勝負服を着ていた彼女が、かるた大会に出ていたというのも記憶に新しい。

 そしてそんな彼女のグッズは『負け続けても諦めなければいい事がある』という不屈の象徴となり、験担ぎやお守りの一種として幅広い人々にバカ売れしている。野比家でも彼女のグッズがママ公認でいくらか増えたほどだ。

「のびちゃんもウララちゃんの姿勢を見習ってくれたらいいのだけれど」

 ママがそうぼやくと、ドラえもんは少し苦笑い。

 

 実際にはのび太もハルウララの為にあれこれ頑張っていたし、ドラえもんからも「その事を説明してママやパパに褒めてもらおう」と勧めた。しかしのび太はキリっとした顔つきで言い返してきた。

「いいや、ヒミツにしておこう。あれはウララちゃんが頑張ったからだ。ボクはボク自身の手柄でママやパパに褒めてもらうんだ!」

 そのようにいってドラえもんの言葉をはねのけた。

 のび太はたまに大人顔負けなほど立派な事を言い出すのだから、ドラえもんとしては本当に驚かされる。

 そんな風に微笑ましく思っていると、玄関の方から元気な声が聞こえてきた。

 誰か来たのだろうか。そう思っているとドタドタという足音が近づき、居間の扉が勢いよく開かれた。

「のびちゃん。あなた。どうしたのそんなに急いで」

 ドラえもんもママも目を丸くして驚いていると、二人はこたつの上にあったリモコンを素早く手に取った。

 電源ボタンは押され、テレビの画面にはパドックを走るウマ娘達が大写しになる。

『ハルウララ! 好位置で差しに入った!』

 テレビ画面ではちょうどレース終盤の場面。ハルウララが他のウマを後方から追い抜こうとしている。

 まるで追い込みの様に他のウマ娘に食らいつくその姿に、観客はハルウララコールの大合唱。

「がんばれー! ウララっ!」

「ウララちゃん、負けるなー!!」

 ママは男どもがウマ娘のアイドルにハマっているのを見せつけられて、苦い顔をして額に手を当てた。

「……二人とも。これが見たいからそんなに急いで帰ってきたのね」

 ママが呆れている様子にドラえもんはますます苦笑いしながらも、テレビ画面に視線を向ける。

「そうか、ウララちゃん今日は重賞レースだったっけ」

 テレビに映っているのは《根岸ステークス》。G3ダート1400m(短距離)。

 ダート重賞では長い歴史があるレースで、昨今まで11月や12月に開催されていたらしいが最近は1月の終わり辺りに開催されるようになった。ウマ娘の界隈ではG1《フェブラリーステークス》の前哨戦……なんて言われているらしい。

 奇しくも、その根岸ステークスはこの前と同じように雨が降り続いてて不良バ場だ。そして昨年の華々しい活劇を経ての影響か、ハルウララは重賞初挑戦にも関わらず一番人気。

「やった! この前と同じような足場なら勝てるよ!」

 そうやって大喜びするのび太。その言葉通り、ウララはスピードを落とした先頭集団を後ろから追いかける形で、最後の直線を全力疾走。

 この姿には現場の観客も実況も大盛り上がり。

『ハルウララ! キングヘイロー直伝の差し脚が出るか! 素晴らしい豪脚!」

 ハルウララが先行していた馬群の横を外から追い抜いていこうとする。

 しかしその瞬間、内ラチ沿いを走っていた鹿毛のウマ娘が馬群を抜け出してハルウララと競り合う形になる。

『おっと抜け出してきた8番人気「ノボトゥルー」! ハルウララとハナを競り合う!』

 ウララは必死に対抗しようとするが、相手の馬が一歩前に出ていた。

 ウララの表情は一切諦めていない。最後まで粘り切る。そんな強い意志を瞳に宿しているように見える。

 相手も譲らない。ハルウララよりも先にゴール板を目指して走り続けている。

『速い! これは速いぞノボトゥルー! ハルウララやサンフォードシチーの豪脚をも退け、堂々一位のゴールイン!!』

 

着順

1ノボトゥルー

2サンフォードシチー:クビ

3ハルウララ:3/4バ身

 

 しかし、それでもハルウララの頑張りを称える声は多く上がる。

 そんな会場の歓声を浴びながら、ウララはまたニコニコと笑顔を見せていた。

 そして画面が切り替わり、表彰式の様子へ……。

 

「あぁ、惜しい。せっかく勝てそうだったのに……」

「いやいや、大きなレースで掲示板入りの五着以内に入賞しただけでも大したものさ」

 のび太とパパはそのようにレースの感想を言い合った。

 二人とも昨年のハルウララの勝利から、ウマ娘のレースを観戦する事にハマってしまったらしい。

 ママは溜息を吐きつつ首を横に振ったが、そうなったのは二人だけでなく世間の反応は熱狂的であった。

 少し大きなマーケットに行けば、ハルウララに関連したグッズが目につくほどだ。幼稚園児から社会人といった幅広い世代の女の子達が、ハルウララのグッズを鞄などに着けているという事も珍しくない。

 オグリキャップだのシンボリルドルフだのキングヘイローだの、そんな一流の者達の名すら知らない一般人も巻き込んで、世間のウマ娘に対する熱は最高潮に達している。

「……すごいねぇ。ウララちゃんって」

 ドラえもんは彼女の影響力に、ただただ驚嘆していたのだった。

 

 

「あー、面白くねぇ」

 そんなハルウララに対して苦々しい感情が聞こえてくる夕時のトレセン学院。

 トレーニング室で悪態をついていたホネカワメイオーに対して、キングヘイローは呆れた様子で視線をやった。

 メイオーはハルウララに負けて以来、共同トレーニングにも前向きに参加するようになったのだが……なぜか今日は機嫌が悪い。

「今更ウララさんに負けたのが悔しくなってきたの?」

「ちげぇよ。あいつが他の奴に負けてンのが面白くねぇ」

 どうやら根岸ステークスの内容を思い返していたらしい。

 ハルウララはこのレースでも好走したが、結果は三着と負けてしまった。

 しかもメイオーやアリスブルーに勝った時と同じようなハルウララお得意の不良バ場。それでいながら彼女は三着に甘んじたのだ。

「ウララさんは頑張ったわよ。重賞レースに初挑戦で掲示板入りなんて」

 確かに、一ヶ月前まで全戦全敗のハルウララがG3で結果を残せたのだから大金星といっていい。メイオーもその点においては否定する気はない。

「でも間接的に格付けされた気分で面白くねぇ」

「……はいはい」

 ――この子も素直じゃないわね。

 しかしキングヘイローもその気持ちはなんとなく理解出来る。

 ウマ娘というのは、負かした相手の名誉の為にも次以降で良い走りを見せなければいけない部分はある。『あいつが弱かったから負けたんじゃない。勝ったウマ娘が強かったんだ』という証明をする為に。

「それによー、あいつ1400m走り切れるように一ヶ月間ずっとスタミナ強化してたんだぜ」

 メイオーがそう愚痴る通り、ハルウララはこれまでの適正距離を伸ばす為にトレーニングを続けていた。

 ハルウララはその努力の甲斐あって見事に1400mの入着を果たしている。しかし……。

「キングよう。ダービーで負けといて高松宮に勝ったアンタなら分かると思うんだが……」

「……言いたい事は分かるわよ。私達個人個人にも限界というものはある」

 ハルウララの身体能力から鑑みて、長い距離は不適正だ。距離適性はウマ娘の個人個人に向き不向きがあって、それは易易と変えられるものではない。得意とする距離からの差が200mでさえ、スタミナに大きく影響する事さえある。

 メイオーは手に取ったスマホでハルウララが次に出走するレースのデータを目に入れると、やれやれと苦笑いを浮かべた。

「ハルウララにとっちゃ、走れる距離あと200m伸ばすのにどんだけ苦労するかねぇ」

 

 

G1《フェブラリーステークス》

ダート1600m (マイル)

今後も史実馬モデルをライバルに宛てるかどうか

  • ウマ娘のネームドキャラ中心がいい
  • 史実モデル・ネームド両方ともバランスで
  • 史実モデル多めでもよい
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