ノボジャックとハルウララ。
二人は呆然としながらバカ正直に改札口から出て、駅前のベンチに座り「ぼーっ」と大空を見上げる。
「迷子になっちゃったがぜよ……仁先生……」
「……古いですよ。そのネタ」
「夜ぉが明けたぜよぉ~……」
「まだ日も落ちてません……」
土佐弁ボケと軽いツッコミの応酬を力なく繰り返す。
――どうすれば東京駅の方へ帰れるだろう。
二人揃って、そんな事を考えていた。
ノボジャックが視線を泳がせていると、見つけたのは一台の電話ボックス。
これでそれぞれのトレーナーに電話を掛けられる。
「ウララ、電話掛けてみてはどうですか……」
「お金、ない……」
「10円すら……?」
「うん……」
ジャックはため息をついた。ベンチから立ち上がり、単身で電話ボックスへ。
「私のトレーナーに電話をかけて、ハルウララのトレーナーに言伝を頼みます……」
「ありがとー……」
ノボジャックがボックス内に入り、電話を取る。
財布の中を確かめる。硬貨がいくらかあるが、東京駅まで戻る為の二人分の電車賃には足りない。
――まぁ、10分話せればこっちの状況全部伝えられるかな……。
鈍く光る白銅の100円玉の硬貨入れようとして、その直前でノボジャックは固まった。
――……トレーナーの番号、何番だっけ?
トレーナーの電話番号を思い出せず、冷や汗を掻く。普段から携帯電話のダイヤル登録から直接通話しているから、上四桁くらいしか覚えていない。便利な世の中になったがゆえの弊害。他のトレセン関係者に対しての電話番号も同じくだ。
ウララにお金を渡して電話を掛けさせようかとも考えたが、そもそも自分が大慌てで逆方面の電車に乗り込まなければこんな事にはならなかった。いわばハルウララを巻き込んでしまった形である。
「……」
一人分なら東京駅やトレセン学園に戻る為の運賃には足りる。
ノボジャックはそう判断してから、電話ボックスの外へ出てハルウララの元へ戻る。
「あ、ジャックちゃん。連絡とれた?」
ハルウララはもぐもぐと菓子を食べている。
呑気な。そう思いながらも、ため息を抑えつつ、自分の財布の中にあった硬貨を全部ハルウララに押し付けた。
「これで電車を使って東京駅か学園に戻ってトレーナーさんに状況を伝えてください」
「え? でもそれじゃあジャックちゃんはどうやって帰るの?」
困惑した表情を浮かべるハルウララ。
それに対して、ノボジャックは腕を組んで当然のように言い返す。
「徒歩で帰ります」
「えぇ!? さすがにここからだと遠いよ!」
「心配ありません。私も一端のウマ娘です。日が落ちる頃には帰れるでしょう」
ノボジャックは自分の腕時計を見ながらそう言う。
ハルウララは何か言いたげでもあったが、硬貨を受け取ってノボジャックがその場を去るのを黙って見送る……。
ノボジャックはそのまま、駅で設置配布されていた観光パンフレットを手にとってそれに描かれてある地図を参考に、東京駅を目指す事にした。
「……武蔵五日市から東京駅までおよそ55km……」
フルマラソン以上の距離であるが、ウマ娘である自分にとってはそれほど無茶な距離ではない。
『黒船賞までちゃんと休憩する事。疲弊しきってちゃ勝てるモンも勝てないしね』
ウイングアローの忠告が頭の中で想起される。
――大丈夫。長期的に休憩する前に最後の走り込みをするだけ。
観光パンフレットをぐしゃぐしゃと丸めてゴミ箱に捨てる。
疲労している脚を叩き起こし、ノボジャックは駆け出した。武蔵五日市から東京駅までの距離は約55km。
ノボジャックは東京駅に向けて、ウマ娘専用道路の上を一気に走り出した。
「はいはい? ハルウララとノボジャック? あぁ、確かにこの駅に降りましたねぇ」
ドラえもん達がどこでもドアを使って武蔵五日市駅に行き、駅員に迷子の相談をすると、見事大当たり。二人の知名度が高かった事もあってか、駅員の一人が覚えていてくれた。
「は、ハルウララさんのトレーナーの宗石小春と申します!」
「あぁ、はいはい。宗石さんね。フェブラリーステークスでウララちゃんにしがみついて泣いてた。あれは、いやぁ、ニュースでよく流れてたよ。一着と1.2秒に迫るなんて頑張ったってコメンテーターの人が褒めててねぇ……」
そう言われて小春はカァッと顔が赤くなる。あの時は、自分の大泣きする姿が全国放送で何度も流れるなんて思わなかった。
「え、えっと。彼女達乗り間違えで迷子になってて! 私達、探しに来たんですけど……」
「っとと、そうだね。確か30分か40分前くらいにあっちの方の改札口から出ていきましたよ」
要点を伝えると駅員は親切にハルウララの行方を教えてくれるが、それと共に難しい顔をした。
「駅乗り間違えてたんなら声かけてあげればよかったなぁ。事情話してくれれば運賃は後日支払いでも構わなかったのに……」
彼女達も迷子になったと自覚して放心してそこまで思いつく余裕がなかった側面もあるのだろう。ともあれ、改札口から出たのなら駅前で待っているか直近にある交番へ駆け込んでいるに違いない。
ドラえもん達はそうした気持ちでホッとして駅前に出てみると――見当たらない。一応交番の方にも相談してみたが、来ていないそうだ。
「ドラえもん……もしかしてこっそり東京駅の電車に乗り直したんじゃ?」
「うぅん……」
ドラえもん悩むような声をあげながら30分前くらいの駅前をおくれカメラで撮影する。ハルウララが一人でベンチにポツン。ノボジャックは電話ボックスで受話器を手に取っているが、自身のトレーナーには電話を掛けていない。
お金があるようだから電車に再び乗車したのだろうか? 写真の光景だけでは、判然としてこない事が増えてきた。
「よぉし、そういう事ならうってつけの道具があるぞ!!」
ドラえもんは小説や映画に出てくるようなシャーロックホームズをモチーフにした格好をしたかと思えば、気取った風にパイプを咥えた。
「えぇー、ハイ。真実はいつも一つ。22世紀猫型ロボットの名にかけて! 名探偵ドラえもん、ただいま参上!!」
「なんか色々と混ざってません?」
探偵モノの主人公のような名台詞を放つドラえもんがノリノリなところへ、小春は小さく突っ込む。
だが、そんな事はお構いなし。ドラえもんは杖を剣のように天高く掲げてから、その先を地面へコツンと打ち付けた。
「この行方不明事件、ハルウララやノボジャックは一体何処にいるのか。見事推測してみましょう!」
『レーダーステッキ』:
地面に立てると、自動的に犯人がいる方角を指して倒れるステッキ。それだけでなく、犯人が移動するとステッキもそれに合わせて向きを変える。
犯人と呼べる人物がいない場合、ステッキを地面に立てても倒れることはなく直立不動の状態になる。
また、犯人だけではなく事件に関わる重要人物も探し出せる時がある。
ドラえもんがステッキから手を離すと、重力に逆らうような不自然な形で杖が倒れる。その先は駅とも東京駅の方とも全く違う方角。ほぼまっすぐに西を示していた。
「……つまりハルウララかノボジャック、あるいは両方が西へ向かった、と」
ドラえもんはゆっくりと推理するように顎を撫でて、次に探偵ごっこで定番の虫眼鏡のようなものを取り出す。
『手がかりレンズ』:
この虫眼鏡で周囲を見ると、事件解決の手がかりや事件に関する物しか映らなくなる。
レンズは駅前にあるゴミ箱の中に入っていたぐしゃぐしゃの紙を強調的に映す。
ドラえもんは迷わずゴミ箱に手を突っ込み、それを回収。
ぐしゃぐしゃに丸められたその紙を広げる。東京の観光パンフレット。地図も書いてある。
ドラえもんは気取った仕草で、帽子のつばを手で弾いた。
『推理ぼう』
これを被った状態で帽子のつばを指で弾くと、頭が冴えてどんな事件や謎も解決することが出来る。
――ノボジャックは写真で倒れていた事からおそらく疲労困憊。ならば判断力が著しく鈍っている。
電話ボックスで受話器を手に取っていたものの、電話を掛けてこなかった理由は電話番号を思い出せなかったから。
彼女は電話ボックス内のトレーに継ぎ足し用の硬貨をいくらか広げていた。
一人分の運賃ならきっとそれで足りる。ハルウララか、ノボジャックどちらかが帰って来れるに違いない。
しかし多くの駅員に訊ねても、彼女達が再び電車に乗った様子という証言は一つもなかった。
二人とも電車に乗るでもなく、電話を掛けてくるでもなく、駅前や交番で助けを待っている様子もない。
ステッキが指し示したのは『西』。トレセン学園や東京駅への道のりは『東』。
そしてぐしゃぐしゃに丸められた観光パンフレット……描いてある地図……。
「ドラララーン! 謎はすべて解けたぞ!!!」
そう言ってドラえもんは自身の推測を宗石小春と野比のび太へ打ち明ける。
二人はそれに驚き、すぐさま三人で駅前のバスに乗り込む事にした……。
空に光る太陽が夕焼けになりつつあった頃。
「……ここ、本当に東京?」
ノボジャックは専用路を一時間近く走って、ようやく異変に気づいた。
東京から出る事はないと思っていたのだが、見えてくるのは田舎道ばかり。
ビルはおろか、民家すらまばらで、木々や林が乱立している光景が目立つ。
山奥に迷い込んだかのような錯覚に陥らせる。
ノボジャックはどうしようかと悩んでいると、道路脇の方に古ぼけた看板を見つけた。
『檜原村』
「…………」
ノボジャックはまたもや自分の不注意に気づき、目から涙がこぼれそうになった。
「帰らなきゃ……また、逆方向に一時間走らなきゃいけないの……?」
どれだけ少なく見積もってもトレセン学園や東京駅まで3時間。それも全力で走らなきゃ日が落ちるまで帰れない。
ノボジャックは絶望してその場に座り込んでしまいそうになったが、後ろに人の気配を感じてゾッとする。
――……こんな時間帯に、森の中で……。
幽霊か、変質者か、それとも熊か猪か。何にしてもトレセン学園に戻る為には振り返らなければならない。
ノボジャックはガタガタと震える肩の後ろへと、恐る恐る振り返った。
そこには――ハルウララが遠巻きにこちらを観察するようにうかがっていた。
「見つかっちゃった!」
ハルウララはバツが悪そうに顔を俯かせる。ノボジャックは呆れたような、安心したような顔で小言を放った。
「……言いましたよね? 電車で帰ってトレーナーに状況を伝えてください、って」
その言葉にハルウララはますますバツが悪そうに黙り込む。
ハルウララがそんな風に落ち込む様子に何も言えず、ため息をつくノボジャック。そのまま、今まで走ってきていた道と逆方向に走り出そうと踵を返した。
――ずりゅっ。
ノボジャックのすり減った靴裏から、濡れた泥を踏み潰すような嫌な音がした。
身体がふわっと浮き上がり、ヒリッとした電撃のような寒気が走る。
足を滑らせて道路脇の窪地へとバランスを崩す――。
「ジャックちゃん!!」
ハルウララは咄嗟に飛び込む形で、ノボジャックの体へ腕を伸ばす。
ノボジャックの体が浮いたままのところで掴みかかり、一緒に地面を転がる。
ハルウララは左半身から叩きつけられるようにして地面に激突する。
「ぅ……」
痛みに悶えそうになるものの、すぐ上半身を起こしてノボジャックの様態を確認する。
彼女は仰向けに倒れたままで、呼吸も浅い。まるで死んでいるかのようだ。
「そ、そんな……」
ハルウララは言葉を失い、そして思わず大声をあげそうになった。
が、ノボジャックのお腹が「ぐう」と可愛く鳴って、ハルウララはピタリと止まる。
「……お腹すきました……」
「やっぱり食べなきゃだめだよ」
お互いが落ち着きを取り戻すと、ハルウララが所持していた菓子パンをノボジャックに手渡し、自分もそれを美味しそうに頬張る。
「……太りそうです」
とろとろに蜜砂糖がかけられた甘いパン。美味しいのは否定しないが、見るからにカロリー爆弾でノボジャックには食う気が失せる。
「大丈夫! ウララも小春トレーナーから『もっと体重をつけて』って言われてるから!」
自信満々にそう言う彼女を見て、ノボジャックは苦笑いをする。ノボジャックは菓子パンを指で小さく千切って、口に入れる。
――甘い。
久々に糖分を取った気がする。思えば、体重の自己管理を始めてからお菓子など食べてなかった。
『まず一番の優先事項は体重を戻して。急に減らし過ぎて、脂肪だけじゃなくて筋量が減っちゃってる』
ウイングアローの忠告を思い出す。確かに、スピードやスタミナの源である大事な足も近頃痩せ細っていた。
自分のトレーナーがもっと食べる事を勧めて来る理由も、痛いほど身にしみた。
ノボトゥルーに近づきたい。そう思っていたけれど、やはり彼女の体型に寄せるのは自分に不向きのようだ。
胸の内にある悩みを解消すればなおさら飢餓感が増して、ノボジャックは拳くらいの大きさがある菓子パンを一気に頬張る。
「どう? 美味しい?」
ハルウララがワクワクとしたポーズで訊ねてくる。その質問に応じるように、ノボジャックは目を閉じて味覚に集中した。
甘さの中に少し酸味を感じる。これはジャムだろうか。
噛み砕けばザクッとした歯ごたえと共に香ばしさが鼻孔を通り抜ける。
――美味しい。
「……まあまあですね」
「よかったー! じゃあ、こっちのも食べ比べてみよっか!」
ノボジャックは素直じゃない返答をしつつ、ハルウララが嬉々として差し出すパンを手に取った。
そんなやり取りをしていると、何やら道路の方から騒がしい大声が聞こえてくる。
『ステッキの方向が大きく変わったよドラえもん!?』
『ここらへんにいるんだ! 運転手さん! ごめんなさい!! 降ろしてくださぁーい!!』
ぎゃあぎゃあと誰かが大騒ぎする声を共に、バスが致し方なく停車する音。
そんな状況を受けて、ハルウララはパッと表情を明るくさせる。
「ドラちゃんとのび太くんだ!」
バスから降りてきたのはドラえもん、のび太、宗石小春の三人。
三人はバスから降りるなり、道路脇の窪地で腰を落ち着かせているハルウララとノボジャックの二人へと大喜びしながら駆け寄った。
「もう! 今度から乗り間違えたら駅員さんに頼るんですよ。二人とも!」
「ハイ……」
「はぁ~い……」
ひとしきり大喜びした後は、宗石小春がノボジャックとハルウララに説教を始めた。
二人はしゅんとした様子で俯きながら、トレーナーの言葉にはちゃんと耳を傾けている。
「……うぅ、ウララ達のせいで高知に行くのは明日以降になっちゃったね……」
「……そうですね……」
本来素直な二人は、潔く自分達の非を認めて反省の態度を取っていた。
説教が続く最中、のび太がドラえもんにコソコソと声をかける。
「なんで分かったの? こっちの方角にいるって」
シャーロックホームズセットを身にまとったドラえもんは、まるでドラマの探偵が犯人を追い詰めた時のようにとことことその辺りを小幅に歩きながら、のび太くんに向けて種明かしをする。
「単純な話さ。ノボジャックは睡眠不足で判断力が鈍って、駅を乗り間違えている。同じように地図と現在地の方位を逆に間違えた」
ドラえもんはその地図を頭に叩き込んだから、逆方向に向かった場合の経路の的が絞れる。
そしていずれノボジャックは進路を間違えた事に気がつき足を止めるか、逆方向へ進路を変えて走り始める。
「そしてウララちゃんの性格からして、ノボジャックがそんな状態で心配だから電話や列車に目もくれずにすぐ追いかける。駅員さんに聞いても、乗り直したって証言はなかったからね」
それで二人とも同じ方向に進んだのだと推測出来る。
「そしてバスで追いかければ、いずれは鉢合わせになるからレーダーステッキに頼れば見つけられる」
自身の推論を述べきって、ドラえもんは得意げな顔をした。それから。
ドラえもんは何か思い出したかのように、どこぞの刑事のように皆へ向けて人差し指を立てるジェスチャーをする。……まんまるな手で。
皆の注目を集めると、そのままポケットからどこでもドアを取り出してそのドアを開いた。
そのドアの向こうに広がる光景は東京駅。ノボジャックのトレーナーが目を丸くして、自分達の姿を視界に捉えている事までも分かる。
「このどこでもドアを使えば、東京駅でも高知の駅でも今日の内にすぐ行けるから解決さ!」
「わぁっ!」
ハルウララと宗石小春はその手があったか、と嬉々とする。
ノボジャックは、唖然としながらも目の前にいるロボットへ再び問い訊ねた。
「貴方、一体何者なの……?」
ドラえもんは、満面の笑みで再びノボジャックへと自己紹介を述べた。
「――ボクドラえもんです。22世紀からやってきた猫型ロボット。どうぞよろしく」
ノボジャック、ハルウララ、二人のトレーナーを高知の駅までどこでもドアで送り届け、トレセン学園にもその連絡をしてもらった。
これにて行方不明事件は万事解決。
やる事をやり遂げた二人は、軽快な足取りで自分達の家へと帰路につく。
「やれやれ、のび太くんも電車に乗り間違えたら駅員さんにちゃんと言うんだよ? わかった?」
「ドラえもんったら、ボクはそんな風に迷ったりしないよ~~」
いやいや、大人でさえたまに乗り間違えるんだからのび太が乗り間違えないはずないだろう。
ドラえもんはそう言いたげな視線をするが、のび太は気にする素振りもない。
「それに、二人を見つけられたのはボクのおかげもあるじゃない」
「まったくもう。でも、まぁ今回はその通りかもしれないね」
きっかけこそはキングヘイローの入浴を覗いてしまうという情けないものだったが、結果だけは褒めてあげてもいいだろう。
のび太くんがおくれカメラを使う事を思いつかなければ、もっと発見が遅れていたかもしれない。
「キミの悪知恵も、たまには人の役に立つ事もあるんだねぇ」
「なんだいその言い方」
「いやいや、褒めてるんだよ」
今回ばかりはちょっとは成長しているのだと、認めてあげた方がいいだろう。
ドラえもんはそう微笑ましくのび太を眺めていると、家の玄関を開けるなり彼の顔が凍りついた。
「の~び~太ァ~……!」
「こんな遅い時間まで何処をほっつき歩いてたんだ!!」
両親二人ともカンカンに怒って、のび太を睨みつけている。いや、まぁ、そうだろう。小学生の御身分で日が落ちる時間帯までほっつき歩いていたらそりゃ怒る。
「あは、あはは……どうもどうもお二人ともお揃いで……わわわ!!」
のび太が誤魔化すように笑い浮かべたかと思うと、家の中を駆け回った。
「待ちなさいのび太っ!」
「今日という今日はパパとママ二人でみっちりしごいてやる!!」
両親に追いかけられ、家の中でアスレチックコースをくぐり抜けるが如く逃げ回っている。
さすがにこれにはドラえもんも呆れるしかなかった。
「ドラえもーん!! ボクも高知に行くから今すぐどこでもドア出してよォーっ!!!」
「……『窮地を脱するには、気力あるのみだ』よ。のび太くん」*1
ドラえもんはただ、シャーロックホームズセットのパイプをふかしてのび太を見守るだけにした。