のび太は学校から帰る道すがら、ジャイアンスネ夫、そして年上のウマ娘に絡まれていた。
「で、今日ものび太ったら静香ちゃんにいいとこ見せようとして跳び箱に挑戦したんだけどね。飛ぶの失敗したどころかそのまま激突!」
「ありゃ笑えたぜ! 前々に8段飛んだのもきっと何かズルしてたんだぜ」*1
「だよねぇ。3段や4段も飛べないだなんて、ボク達の学年だとのび太くらいだよ~」
「静香ちゃんもクスクス笑ってたぜ~?」
ジャイアンとスネ夫は、体育の授業の出来事を言いふらす形でのび太をやじる。
「ほーほー? 跳び箱も跳べねぇなんて女の子に格好つかねぇなぁ。……で、実際のところどうなんだよ。お前の意中の相手はあの静香って綺麗な娘か? それともハルウララか? 大穴で秋川理事長って線もあるが、よもや二股三股って事ァないだろうな?」
スネ夫と一緒になってそのウマ娘は身振り手振りを大げさに、野比のび太をからかう。のび太は怒りやら恥ずかしさやら、そんな感情が入り乱れて真っ赤になって俯いている。
「メイオーさんったら、やめなさい。年下相手にかわいそうよ」
一緒についてきたキングヘイローは、さすがにかわいそうだとホネカワメイオーを叱りつける。
「スネ夫さんに武さんも。お友達をそんな風にいじめてはダメ。わかった?」
キングヘイローは小学生二人にも諭すように注意をした。
三人はキングヘイローの言葉を受けて、バツが悪そうな顔をする。
「……わかったら返事!」
「へいへい、キング様の仰せのままに」
「はぁ~い」
「ちぇっ、はーい」
なにゆえにウマ娘とのび太達が一緒に帰宅しているかといえば、遠征している宗石小春から昨日連絡があったからだ。
なにやら「ドラえもんの力を借りたい」という話であり、スネ吉トレーナーの従兄弟であるスネ夫や担当ウマ娘であるホネカワメイオーを橋渡しとして野比家へと向かっている。
「ほら、鼻水垂れてみっともないわよ。チーンしなさい」
「キングヘイローはやっぱり優しいなぁ~……」
のび太は泣きべそを掻きかけ涙鼻水でみっともない顔になり、その顔を持っていたティッシュでぐしぐしと拭ってやるキングヘイロー。
(……ハルウララや秋川理事長よりも、存外“コッチの線”ってのもあるか?)
そんな事を言ってからかえば、またキングヘイローに説教されるのが目に見えている。くだらない事は手短に、メイオーはのび太の家へと真っ直ぐ向かった。
のび太の家に辿り着いて、一同は玄関で掃除をしていた野比玉子もといママと鉢合わせる。
「あら、のびちゃん。お友達つれてきたの?」
「うん。あがっても大丈夫?」
「えぇ、だいじょうぶよ。スネ夫さん武さん。いらっしゃい」
「どうも、こんにちはのび太のおばさん!」
「へへ、こんにちはー!!」
ニコニコと快活に笑って、元気よく挨拶を向けるスネ夫とジャイアン。先ほどまでの意地悪な態度は何処へやら。
それにしても、ママからしてみれば後ろにいる二人の女性が気になった。
年齢は容姿からして中学生か高校生くらいだろう。そういう年上の友達もいるのだというのは、特にどうこう言う事でもない。
ただ、髪艶が綺麗な巻き髪のウマ娘は私服の様子からしてどこぞの良家か、ご令嬢か、そんな品の良い衣服を慣れた様子で着飾っている。それとは対象的に、もう片方のウマ娘は夜中の新宿か歌舞伎町でやんちゃをしている女性のような、典型的な不良を思わせるピーキーカラーな私服。
「………のびちゃん。あのお二人とはどういうご関係……?」
「へ?」
ママは色々な意味でのび太の事が心配になったが、子供達が全員揃って自分達の関係性を丁寧に説明したので納得してもらえたのであった。
のび太の部屋へ行くと、やはりそこにはドラえもんがいて、しかも部屋中に未来のひみつ道具がしっちゃかめっちゃかに散らかしている。
「あ、皆さんお揃いでこんにちは」
「わぁ、なんだいなんだいこんなに散らかして!!」
「うるさいなぁのび太くん。散らかしているんじゃないよ。ひみつ道具を点検・修理しているのさ」
ドラえもんはそういってドライバーやその他の機材を使い、ひみつ道具一つ一つをいじくり回している。
「へぇ、やっぱりお医者さん鞄やグルメテーブルかけ以外にも、たくさん道具があるのね」
キングヘイローとホネカワメイオーは、初めてみるひみつ道具に興味津々で近づいて、その形状をつぶさに観察する。
「このずんぐりした円筒状のものは……わかった。22世紀のタイムカプセルね?」
「あ、ソレは触っちゃだめ!!!!」
キングヘイローが指先でちょんちょんと触ろうとしているのを、ドラえもんは飛びかかるように止める。
「ど、どうしたのドラさん? これ、そんなに危ない道具?」
「危ないなんてもんじゃない! 『地球はかいばくだん』はいたずらに触ると皆吹っ飛ぶぞ!!」
「ハァァッッ!!!!?!?!!」
その名称を聞いておっかなびっくり。キングヘイローは尻尾や耳を逆立てながら、尻餅をついて後ずさる。
そのやりとりを見聞き、じっとりとした冷や汗を掻くホネカワメイオーはその地球はかいばくだんと似た形状のひみつ道具に指を指す。
「……じゃあこのおどろおどろしいタイムカプセルみたいのは?」
「それは『銀河はかいばくだん』。天の川銀河もろとも銀河すべてを吹っ飛ばせる。もちろん、興味本位で触っちゃダメだよ!!」*2
……あれ、とんでもなくヤバくないこの22世紀のロボット? 今の内に皆で協力して縄で縛り付けてから未来に送り返した方がよくない?
のび太達小学生三人を含めた皆は、そういう目で視線を合わせる。
「むむむ、この背中に感じる異様な殺気……ッ」
ドラえもんはそれに悪寒を感じたのか、びくりと肩をふるわせて皆の方に振り返って、その道具について注釈を並べ立てる。
「とはいっても、こういう道具はちゃぁんとセーフティロックが掛かってる。ボクだって本当に本当の、地球に危機が迫っている時くらいにしか使わないさ」
「……たとえば?」
キングヘイローもホネカワメイオーも、ジャイアンやスネ夫、のび太みんな揃ってじろーっとした視線でドラえもんを見つめる。
「うーん、地球に巨大な隕石が迫っている時とかにも使う事を想定されているね……」
ドラえもんはえらく気取った素振りで、修理していた手元の道具のスイッチを入れる。
するとどうだ。ドラえもんが宇宙服を着込んだように転写されたかと思えば、彼を囲むように映画のスクリーン状の幕が投影される。その場面はどうやら、地球に接近している隕石の上らしい。
――――
『こちら管制塔。ミスタードラ……あと1分で爆破地点だ』
ドラえもんは、隕石の上で爆弾を傍らにして佇んでいた。
爆弾を起爆して、隕石を破壊し地球を救おうという計画である。
「了解……ドラ・スタンパー。地球を救う為、爆破待機に入ります……オーバー」
『……オーバー』
管制塔との通信が切れた。そして画面に流れるはドラえもんの走馬灯。のび太やその仲間達との思い出。そのバックに流れるのはあの超有名なロックバンドのサビ。
「……さようならのび太くん。静香ちゃん。スネ夫にジャイアン……」
ドラえもんは今まで関わってきた大勢の人間の名を、一つ一つ挙げていく。
ほろりほろりと、涙が落ちる。腕で目をぐしぐしと拭って。
「ボクの事……忘れないでね……皆と仲良く、そして立派な大人になるんだよ……」
「よいしょっと、それじゃあそろそろスイッチONっと」
やたら軽いノリで傍らに置いてあった爆弾のスイッチを入れる。
なんかその爆弾、やたら禍々しいような……。
「……ちょ、まって! あ、こっち銀河はかいばくだんの方だ!! ストップ!!! カットカット!! まっ――」
ちゅどーん。
隕石のみならず地球ごと巻き込んで、ビッグバンに等しい爆発が巻き起こり銀河一つが崩壊していく。
超有名ロックバンドの曲は、いつの間にかお笑い番組のテーマ曲にすり替わっていた。
ドラえもん~隕石破壊大作戦~【END】
――――
「アルマゲドンかと思いきやイデオンじゃねぇか!!!! こんなオチで映画がカタついたらユーザーから大不評の星1レビュー隕石流星群でサイトがパンクするわッッ!!」
映画のオチに不満をぶちまけるホネカワメイオー。スネ夫とジャイアンも釣られてドラえもんに向かってブーイング。
「キングヘイロー、『いでおん』ってなぁに?」
「さぁ……? アルマゲドンの方なら有名だから知ってるけど……」
よく分からない二人は首をかしげた。ドラえもんは銀河はかいばくだんをポケットに収納しつつスクリーンから降りてきて、しょげた様子で『万能舞台装置』のスイッチを切った。
『万能舞台装置』:お芝居などの舞台のセットや衣装を、思いのままに作り出すことのできる道具。
「まぁ、星の数がいくつ減ったか増えたかなんて事は置いておくとして……」
「レビューでも惑星でも、隕石以外の星は減らない方がいいんだけど……」
ともかく、使用用途は分かった。銀河はかいばくだんも、規模の大小の違いだろう。
「あとの使い道は、そうだね。にっくきねずみを退治する時とか」
なんか先の例と話の規模が全く繋がらないが、ドラえもんなりのジョークなのだと解釈してメイオーとキングヘイローは吹き出すように笑う。
「ふっ、くく……」
「ハッ、鼠退治と地球の滅亡を同列に語るなんざ、ロボットにしちゃずいぶんウィットに富んだジョークだぜ」
これは二人にとっては中々に面白い冗談だ。
それを余所に、のび太とスネ夫とジャイアンは思わず黙り込んで「ゴクリ」と唾を飲み込んだ。
……たぶん、冗談じゃないだろうなぁ……。
「え、えっと、そ、それはさておいて」
のび太が話題を変えるように切り出した。
「ドラえもんって、いっつも思うんだけどひみつ道具一つ一つを自分で点検したり直したりするの?」
「うん、やっぱり実際に目で見ていじくり回してみるのが一番だしね」
「変わってるなぁ~」
のび太からも『ひみつ道具を直すひみつ道具』なんてすぐ思いつく。ドラえもんもそれは同じだろう。
だからこそ、ドラえもんの言う事がなおさら偏屈に感じた。
「ひみつ道具を使えば、モノを直すなんてちょちょいのちょいなのに」
「信頼出来るのは己のみ、だよ。のび太くん」
「だってよ、のび太?」
「お前、やっぱひみつ道具に頼りすぎなんだよ」
「ちぇっ、こんな時まで説教か……」
それぞれが笑い合う。おそらく彼らにとっていつもの光景。
そんな光景を眺めつつも、キングヘイローとメイオーは真剣な表情で口を開いた。
「よう、ドラ公」
「うん、こんにちはメイオー。キミが訪ねてくるなんて。何か用事? 脚が速くなる為の道具なら貸さないよ」
「ンなんじゃねぇよ」
メイオーは頭を掻きながらキングヘイローの方にも目を向ける。自分達は目的同じくして此処を訪ねにきた。
キングヘイローもそれに頷いて、ドラえもんに向けて用件を告げる。
「……トレーニング施設の機具や機材をたちまち直せる道具って、あるかしら?」
作中ののび太と一番仲がよさそうなウマ娘は……
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ハルウララ
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キングヘイロー
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ホネカワメイオー
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秋川やよい