ドラえもん~ハルウララ育成記~   作:稗田之蛙

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キングヘイローの悩み

「はぁ、まったく。驚かされたわ。今度から深い水辺があるところでは、あぁいう事をしちゃだめ。……いい?」

 キングヘイローは形だけはハルウララを叱りつけながら、彼女の頭を優しく撫でていた。

 ハルウララは申し訳なさそうに項垂れて「ごめんなさい……」と言いながらされるがままになっている。撫でてくれる事については。どこか嬉しそうだ。

 彼女とよく過ごしているキングヘイローは前々から思っていた事だが、ハルウララは愛嬌とは違う方向性の危うさを感じさせられる場面がちょくちょくあった。

 去年ぶっ倒れるまで訓練を続けていた時もそうだし、他人の夢を砕く事に怯えて無意識に手加減する癖があったのもそうだ。あれは頑張り屋だとか、愛嬌だとか呼べない。

 彼女は自分よりも他人を優先しがちである。それが悪い事とは言わないが、近頃は少し目に余る。

 その原因がなんであるかまでは分からない。泉から現れたハルウララが激励してくれた事で、多少は和らいだように思えるものの……。

(……色々、抱え込んでないといいのだけれど)

 

 そして場所は移る。ホネカワメイオーと二人でドラえもんを探している時に「ハルウララの様子が変だ」といった旨の事を相談した。

「付き合い長いお前が分からねぇんだから、アタシが知るわけねぇだろ」

 メイオーがハルウララと知り合ってから半年未満。ハルウララの深い事情など知る由もない。

「……そうよね」

「つーかアタシ達がどうこうせずともトレーナーの小春や他のウマ娘がどうにかしてくれんじゃね。アイツ、ライスとかと仲良いだろ」

 ぶっきらぼうにそう述べてみるが、キングヘイローの表情は芳しくない。

 メイオーは自分の頭をガシガシと掻いて、苛立った様子でため息を吐いた。

「お人好しめ。ハルウララが関わる事だと、揃いも揃って同じような顔をしやがる」

「え?」

 キョトンとした顔で聞き返す彼女に、メイオーは指をビシッと指して言い放つ。

「それだよソレ。さっき見たばっかだろ。泉のハルウララがアタシらを心配してた時の顔。それに普段からアタシ達が知るハルウララも、よくあぁいう顔をする。まるで悲劇のヒロイン気取りだ」

 彼女が指摘すると、キングヘイローは驚いたように目を見開く。彼女の刺々しい言い草に狼狽させられた。

「し、心配だなんて。それにヒロイン気取りなんて、そんな言い方……」

「じゃあ、なんだ? アンタもハルウララも、他人の気を惹きたいが為にそんな孤独なウサギみてぇな面しやがるのか? ずいぶん狡猾だなオイ」

 真剣な表情でそう言われて、キングヘイローは何も言い返せずに思わず黙り込む。

 メイオーは彼女の反応を見て、またガシガシと乱暴に頭を掻いた。

「キングヘイロー。アンタはワガママな女だ。どれだけ親の七光りと嘲笑されようと、他人のゲート枠奪ってまでG1に挑戦し続けやがった」

 ハルウララの相談から唐突に自分が的にされて、キングヘイローは戸惑った。

 怪訝そうにしている彼女を真っ直ぐ見つめて、メイオーは言葉を続けた。

「――そんなワガママで我を通したからこそ、最後にゃ高松宮記念の勝利という立派な結果出して、自分の誇りを証明出来たんだろ」

 彼女なりの不器用な指摘を受けて、キングヘイローは今までの言葉が罵倒でない事に気がついた。

「キングよう。水も与え過ぎると花は育たねぇ。ハルウララにだって、テメェらが優しくしすぎると毒になるぞ」

 メイオーはキングヘイローに対して、ソレを迫るように指を突きつける。

「言いたい事があるならさっさと胸の内を打ち明けろ。レースの時みたいに、気高くて傲慢でお強いお嬢様になりやがれってんだ。このお人好しどもめ」

 彼女はいつもの棘のある口調で話しながらも、どこか諭すような声音でそう言った。

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