起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
ウマ耳とウマ尻尾があったらとりあえず飽きるまでセルフもふもふしたい。
追記
読者の方からご報告があったのですけど、今日の午前には日間総合ランキング64位に入着していました。これもお読みいただく皆様のおかげです。この場をお借りして御報告と御礼申し上げます。
そういえば寮に戻ってきてから着替えがまだだった。ゲートでスタートに失敗してすっ転び、砂まみれになったジャージ姿のまま今までいたことに気がつく。よく見ると床にはジャージから落ちた砂粒が結構散らばっていて、これは掃除をしないとまずいだろうと思う。しかしその掃除道具もどこにあるのかてんで分からないし、かといってジャージのままでは今も動くたびにポロポロと砂粒の落ちる音が小さく聞こえている。
「とりあえず、着替えが先かな」
そう考えてクローゼットの中を漁る。そしてそこで俺は
ルジェさんは制服に着替えていた。途中で訪れた寮長も制服だったから、寮の中では特に理由のない限り制服を着る決まりでもあるのかも知れない。しかし、だ。今の俺が人の手を借りずにあのやたら複雑な構造のトレセン制服をきちんと着られる自信はまるでない。無理な着方をしたらウマ娘のパワーで破れてしまったりしそうだ。
だから諦めて私服を着ることにした。部屋着だし、良くて寮の中をうろつくくらいだから気張った格好をする必要はないだろう。探っていったらグレーのスウェットパンツと少し厚手で白いプリントTシャツが出てきた。ソックスも探し出してぱぱっと着替えを済ませる。脱いだジャージは洗濯に出したいところだが、洗濯機とかどうなっているのか分からないから、それは後回しにして制服の入っていたコンビニ袋に突っ込んだ。床に散った砂粒は、シャワーブース横に床用ワイパーを発見したのでそれで掃除する。
ここまでの作業を終えてベッド横の目覚まし時計を見ると、午後5時半に少し足りないくらいの時刻だ。夕食が何時から始まるのかは知らないが、食事の香りが届いていないしそれはまだまだ先だと思える。実は腹の虫がさらに目を覚ましつつあって、この調子だとあと1時間もすればまた盛大に唸り声を上げるはずだ。
俺は自分のベッドにゴロンと寝転がった。
疲れる一日だった。早朝、まだ夜も明けきらないうちから目が覚めたのは良いが、そこは知らない場所で知らない自分で知らない同居人で。おまけに性別も人間としての種族も全く変わってしまったという実感だけはある奇妙な状況。昨日までの俺が何者だったのかすら思い出せず、他人の名前を呼ばれる事になって、でもそれは俺だと強制されている。
そんな一日だったが、なぜかこの身体の有り様にはいつの間にか慣れてしまっていた。いや、朝起きた時から感じた違和感は耳の触感ぐらいなもので、その耳にしたって尻尾にしたって特別な違和感と呼べるようなものは日中少しも感じることはなかった。まるで最初から俺の身体はこれでしたと言われているような。
そっと耳をいじる。
触った瞬間はひんやりしているが、そのうち奥の方から温かさがじんわりと伝わってくる。触られている感覚は確かにあって、作り物ではない自分の耳だとすぐ実感できる。細かい毛の生えた案外と肉厚なそれは、握り込むと硬めの弾力が手のひらを押し戻す。毛並みも相まって触り心地はすこぶる良いのだが、触られている方の感覚としては思ったよりくすぐったいものだ。いきなり触られたら多分結構驚くだろうな、とは思う。そして時折何かに反応して勝手に動くことはあるが、未だ自分の意志で自在に動かしたりはできていない。尻尾にしてもそうだ。そういうところは他人の身体だなと思う、この身体でいる事への違和感はまるでないのに。
「俺は一体、……何者……なんだろう……な」
ヴェントドーロというウマ娘なのか……、それとも『きんばらはやて』という名前らしき言葉に何か……関係があるのか。……ゲートを極度に恐れた事にも関係して、あるいは……まだ……何か隠されて…………いるの………………か………………。
§
「ドーロちゃん、ドーロちゃん。起きて下さい。晩ご飯の時間ですよう」
聞き慣れたルジェさんの柔らかな声に起こされた。
次回、掛かってしまっていますね。