起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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3万文字を超えてきてもまだ1日の話が終わらないぐらいスローペースな小説があるらしい……。


甘くならない女

 

 いつの間にかすっかり眠っていたらしい。昼に病室で起こされた時と同じように、ルジェさんの優しく微笑んだ顔が目の前に広がっている。

 

『ぐぎゅるんるんるんるん♪』

 

 そして俺の腹はおはようの返事代わりに絶好調の雄叫びを上げた。……心なしか嬉しそうにも聞こえるが。

 ルジェさんが少し離れた隙に素早く起き上がり、ベッドの上で平伏する。

 

「す、すみません。また、私のお腹が……」

「いいんですよう。お腹が鳴るのは元気な証ですからあ。それにお腹の鳴き声も込みでドーロちゃんですし」

 

 そう言って笑顔を絶やさないルジェさん。重くはないけどその愛は分厚すぎです。

 

 その後も小さく鳴き続ける腹を気にしつつ、彼女に付いて寮の食堂に向かう。道すがら、衣服の洗濯のこととか個室の掃除のことを尋ねながら並んで歩いて行った。

 

「お洗濯はですねえ、基本的にはランドリーサービスがあるのでそこに出すんですよう。あ、もちろん寮生は無料ですよ?

 クローゼットの引き出しにランドリーバッグが何枚か入っているので、それにお部屋の番号とお名前を書いてお洗濯したい衣服を入れて口を縛って、お風呂場の脱衣室横にあるランドリー回収口へ差し出すだけです。次の日の朝に回収されて翌々日の午後には食堂のテーブルの上に置かれますから、自分の分を受け取るという訳ですねえ。

 でも急ぎの時とかデリケートな下着とか、ちょっとお願いするのが難しいなっていう衣類は自分でお洗濯できますよ。脱衣室の一角がコインランドリーになっているんです」

 

 ランドリーサービスは一人分ずつ個包装されて返っては来るものの、寮に届く時は人数分がまとめて届くので仕分けなければならない。それはその日当番になった寮生の仕事なのだそうだ。

 

「当番は部屋単位で回ってきますのでえ、そのうちドーロちゃんとわたしも担当する日が来ますよ」

 

 トレセン学園の寮は自治寮なので、寮の運営にまつわる仕事の多くは寮生に割り振られる。ランドリー係だけではなく公共スペースの掃除整頓なんかも回ってくるのだとか。

 個室の掃除はもちろんその部屋に住む人の責任で、掃除機やバケツといった掃除用具とぞうきん、住宅洗剤などのストックは廊下の専用ロッカーにあるという。

 

「あれ? 今日ルジェさんは晩ご飯の調理に呼ばれましたよね? あれも当番なんでしょうか?」

「あれはですねえ、個人的なご依頼なんです、寮長さんの。

 寮の食事は基本的に寮の調理スタッフさんがやってくれるのですけど、それとは別に寮長さんが手料理感のある食事を出したいと希望されていて。

 それで少しばかりですけど調理のできるわたしが寮長さんのお手伝いをするように」

「そうなんですね。ルジェさんの手料理ですかあ」

「ドーロちゃんがお腹空かせてると思って、今日はい~っぱい作っておきましたから。思う存分食べて下さいねえ」

 

 そう言いながら俺の顔を見るルジェさんの顔はとても嬉しそうだった。やはり、愛が厚い。

 

 食堂は既にお腹を空かせた生徒達が三々五々集まってきていて、数人のグループごとに固まって食事を始めていた。俺はルジェさんに案内されるままテーブルの間を縫っていく。すると進行方向になにやら料理と思しき物がうずたかく積まれた一角が現れた。ルジェさんは迷うことなく、予約席と書かれたその一角に向かって歩いて行き、俺を料理の前に座らせた。

 ……いや待って、この料理もしかして俺のために用意されてる?

 

「さあドーロちゃん、ここにある分はみんな食べちゃって良いですからねえ。足りないようならわたしがお代わりを持ってきますからあ」

 

 そう言ってルジェさんは右隣の席に着いた。そして

 

「それじゃあいただきますしましょうかあ。今日のおかずはわたしが精魂込めましたのでえ。ぜひ最初に一口……」

 

 そう言いつつ目の前にあるミートボールの山から一つ箸でつまんで俺の口元に出してきた。

 

「……はい、あーんですよう」

 

 あーん……って、ルジェさんに釣られて口を開こうとしたところで、食堂に広がる異様な雰囲気に気がついた。って、ルジェさんちょおっとまったああああ!?

 彼女の行動ばかり見ていたので気がつかなかったが、その場にいた生徒達の熱視線が俺たち二人に注がれていた。ルジェさんはそれを知ってか知らずか……いや完璧に分かった上でこの行動に出ていると俺の直感が告げる。

 このまま為すがままにされてしまってはいけない。このまま進んでしまったら、先ほど予感した『仕打ち』が俺に降りかかるのも時間の問題になってしまう。なんとかこの場はルジェさんの暴走を止めなければならなかった。

 

「あ、あのルジェさん。一人で食べれますから」

 

 多分こう言っておくのが一番穏当だろう、今のところは。だが彼女も簡単には引き下がらない。

 

「ドーロちゃん手をケガしてるじゃないですかあ。食べにくいでしょうからわたしがお手伝いしてあげますう」

 

 それは事実だけに否定はできないが、しかしお昼はこの手でカフェテリアのご飯を平らげていた。その時には何も言われていなかったし、食事を手伝って貰ったりもなかったから、今それを殊更に強調するのはルジェさんの作戦なのが明白だ。

 その時、ルジェさんにとっては都合の悪い、俺にとっては都合が良いか悪いか判断の付かない声が聞こえた。

 

「ルジェ先輩、ドーロちゃんを独り占めしちゃダメだよ?

 それに、ドーロちゃんがちょっと困ってる」

 

 リズちゃんが料理の載ったトレーを抱えて現れた。




次回、ドン引き。
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