起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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ちょっと特殊文字タグを使ってみたので、初投稿です。



別腹は誤差

 

 リズちゃんは俺を挟んでルジェさんと反対側のイスに腰掛ける。

 それを見て、固唾を呑んで見守っていた周りの生徒たちが色めき立った。あちこちでひそひそ話が始まる。

 

 『ヤッバ、バチバチの三角関係じゃん』『真ん中の()って今年の新入生だよねえ』『左に座ってるの、高等部2年のオンダルジェントさんですよね。おっとりしてるように見えて……やっぱりG1入着だから負けん気強~い』『右の()、新入生やんなあ。先輩相手によーやるわあ』『真ん中の、あんな()いたっけ?』『あの()新入生で、こないだまで結構イイ線行ってた()だって。なんか今日はゲート失敗して大コケしてたけど』『キレイな()だとは思うけどさあ……なんての? ちょっともっさい?』『先輩と並ぶと金と銀って感じでキレイだねぇ~』『さらに隣が黒だからあの一角だけなんかカッコイイ』『ていうか、あの量、なに?』

 

 ヒトだったら多分聞こえないような声だが、さすがはウマ耳地獄耳、全部丸聞こえになっている。両隣をそっと窺うと、ルジェさんもリズちゃんもとりあえずは平静を努めていた。

 

 リズちゃん乱入のおかげでルジェさんの攻勢が一旦止んだので、周りの雑音はともかく、これでようやく晩ご飯に集中できそうだ。俺は箸を取るといただきますと一拝、先ほどルジェさんにオススメされたミートボールをまずは頬張った。

 

「わっ、これ、美味しいです」

 

 思わず声が出る。本気で美味しい。「そうでしょう~」と隣から声が掛かるが、そこから俺の箸はもう止まれなかった。

 これでまだ三食目だが、なんかもうこんな調子にも一日で慣れてしまった。満腹になるか料理が空になるまで止まらないこの食欲に。一度このモードに入ると脇目も振らずに食べ続けるというか、周りを見ている余裕がなくなる。半ば体だけが自動的に食べ続けているような、そんな感覚だ。

 この様子が初見になるはずのリズちゃんは多分隣でドン引きしてるだろうななどと考えはするのだけど、だからといって箸は止まらない。周りの生徒もこの食べっぷりには大半ドン引きだろうが、今は何も聞こえずただ黙々と食べる食べる食べ続ける。

 

 気がつくと積まれていた料理はすっかり消え失せていて、残るは鶏の唐揚げただ一個。ぽつんと取り残されたそれとじんわり対峙しつつも、箸が完全に止まった。

 

「ドーロちゃん、満足されましたかあ?」

 

 その訳を知るルジェさんはにこにこ顔。周りの生徒達は案の定ドン引きで、顔を青くしてる娘も多くいる。そして反対側のリズちゃんはというと、ざわめく食堂にはお構いなく平然と食べ続けていた。その様子が気になったので、そのままリズちゃんの観察を続ける。

 確か俺と同時ぐらいに食べ始めたはずで、ルジェさんも同じようにスタートしてそちらの方はもう食べ終わっている。ではリズちゃんの食べるペースが遅いのかというとそうではないように見えた。むしろルジェさんより少し早めペースだ。なのにまだ食べ続けているということは……?

 

「ねえリズちゃん、もしかしてそのトレーの中身って、二回目ですか?」

「うん、そうだよドーロちゃん。よく分かったね?」

「はい……ルジェさんよりも食べるペースがちょっと速いのに、どうしてまだ食べてるんだろうって気になったんですよ」

「えへへ、ドーロちゃんほどじゃないけど、リズもいっぱい食べる方だねって友達にはよく言われるの」

 

 バツの悪そうに少し照れの入った顔を見せるリズちゃん。

 いやいや、人より多めに食べるとは言っても俺みたいに爆食するでなし、見た目優雅だから全然問題ないと思うけど? むしろ小柄な体に潜む意外性みたいなものすら感じてウマ娘として好ましい、まである。

 そんなことを考えながら彼女のことをじっと見ていたものだから、「ド、ドーロちゃん、あんまりじろじろ見ないで、恥ずかしい……」と言って彼女は箸を置いてしまった。

 

「それにしてもドーロちゃん、よく食べるようになったね。前は少ないぐらいだったのに……。わ、すごいお腹だね」

「それがその……、今朝からこんなドカ食いするようになってしまいました」

「例の件と関係ありそうな感じ?」

「分かりませんけど、多分そうじゃないかと」

「そうなんだね……。いよいよ本格化が来てたりするのかな」

「……それも、どうなんでしょうね。そうだと良いのですけど……」

 

 ぽつぽつと話しながらリズちゃんは再び食べ進む。ルジェさんは静かに俺たちの話に耳を傾けていて、最初のように迫ってくる気配はなくなった。食べ終わりが見えてくる頃には俺の腹もすっかりしぼんで、最後に残っていた唐揚げを改めて口に放り込む。

 

「完食しましたねえ」

「なんとか入りました」

「実はお昼よりも量が多かったはずなんですけどねえ」

「えっ!?」

「正確に量ったりはしてませんけどお、わたしがドーロちゃん用として用意したおかずの量は6キロを超えていましたから。それにご飯とお味噌汁合わせたら7キロ近かったんじゃないかと」

 

 その話を聞いてさすがに俺も青ざめる。

 

「……明らかに食べ過ぎですよね、これ」

「一概にそうとも言い切れませんけれど、運動が足りなければ普通に体重が増え過ぎてしまうでしょうねえ……」

「リズ驚いたんだけど、ドーロちゃんさっきまでお腹ぽっこりだったよね。どうしてもうぺったんこになってるの?」

「どうしてって言われてもですね、私もよく分からないんですよ……これ」

「ふわぁ……ウマ娘の神秘だねぇ……」

「ウマ娘がそれを言ってしまうんですか……。それはそれとしてですねえ、食後のデザート、いただきませんか?

 ドーロちゃん、もう入りますよね?」

「……たぶん大丈夫……お腹の方は。でも太りすぎとか話が出てくると心理的に抵抗感があります」

「リズもデザート食べれるよ。ドーロちゃんの場合は誤差の範囲なんじゃないかな」

「……そうですね。少しだけなら、ご、誤差かな?」

 

 そうして三人揃って食器の載ったトレーを抱えて席を立つ。返却口に向かおうとしたら、まだ取り囲んで様子を見ていた生徒達がザザザっと左右に分かれて道ができた。

 

「なんだか偉い人にでもなったみたいだね」

 

 リズちゃんは暢気にそんなことを言うけれど、これは俺の食べっぷりからみんなが警戒してるだけでは。しかしそれを口には出さず、ただ肯定の笑みを浮かべておくだけにした。

 

 ……明日になったらまたとんでもない噂話が流れてるんだろうなあ、これ。




次回、お・ま・ち・か・ね。
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