起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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お風呂回だけで1万文字を遙かに超えて1万5千文字6話分に迫る小説があるらしい……。

ご愛読いただきありがとうございます。ブクマやここすきをいっぱいいただいていて、本当にありがたいお話です。


ふにゃふにゃ

 

「洗う順番ってふつうは髪からだよね」

「上から洗うのは基本でしょうね。髪から洗って次が体、最後がしっぽ。ふつうはこの順番ですよねえ」

「ドーロちゃん、耳って動かせるのかな?」

 

 リズちゃんの問いに俺は首を横に振る。

 

「物音とかに反応して勝手にピクピク動きますけど、自分の意志で動かすのはまだできませんね」

「そうなんだね。それだと髪を洗う時少し困るかも」

「どうしてです?」

「シャンプーの泡もそうだけど、洗い流す時耳にお湯が入っちゃうよね……」

「頭を下げれば多少マシになるかとは思いますけど、耳の周りを流すときは入ってしまうかも知れませんね」

「動かせるようになるまでは手伝ってあげた方がいいね」

 

 こうしてお風呂タイム本番が始まった。

 まずは髪を洗うところからだが、地肌をしっかり洗おうと手を動かすと確かに耳がすごく邪魔になる。泡が目に入らないように目をぎゅっと瞑り、耳にも入らないようにとおっかなびっくり手を動かす。

 

「想像以上に耳が邪魔ですね、これは」

「耳が立ったままだと頭のてっぺんの辺りに手が届きにくいんですよね。だから耳を寝かせたり絞ったりするんですけど」

 

 なんとか動かすことができないかと耳に意識を集めてみるが、少しばかりぴくりと動くだけでルジェさんみたいにあちらこちらへ自在に動かすことはできない。練習したら動くようになるのだろうか。

 

「耳が動かないと走った時も少し困るんだよ。立てたまま走ると風切り音がすごいの。我慢するか、慣れるかしたらいいんだけど」

「リズちゃんの耳はひときわ大きいから、もしそうなったら大変でしょうねえ」

「ダメだったらイヤーカバーがあるけど、どうしてもカバーを付けられない人もいるし……」

 

 どうやらウマ耳問題は髪を洗う時以外も色々あるらしい。今は良いけど今後走る練習を本格的に始めたら解決しなければならない事がまた増えそうだ。

 手の動かし方をあれこれ悩ませていたら、不意に別の手がわしゃわしゃと耳周りをくすぐってきた。

 

「耳にお湯が入っちゃうのは困るけど、この耳周りをしっかり洗わないと臭っちゃうし。なかなか難しいよね」

 

 リズちゃんの細い指先が耳の周りをていねいに擦っていく。その手つきに合わせてくすぐったいような気持ちいいような安心するような妙な感覚が頭を覆っていった。

 

「あらあら。ドーロちゃんがふにゃふにゃになってしまいました」

「うぇへ?」

「そ、そんなに気持ちよかった? お耳洗うの」

「うぇ?」

 

 先ほどからなんだか眠気が湧いてきてトロトロした感じだ。ウマ耳洗うのってみんなこんなに気持ちいいのか。

 

「あらら。お耳が垂れて来ちゃった」

「ドーロちゃーん、気をしっかり持ってくださいねえ」

「それじゃお湯で流すよ。頭を前に下ろしてくれるかな?」

 

 リズちゃんの手に従って首を下げる。後頭部の方からシャワーが注がれて、耳の後ろを伝って顔にこぼれてくる。

 頭のサイドに溢れたお湯が目元にまで容赦なく流れ込む。耳が目の後ろではないから防波堤になるものがないせいだ。そしてそのおかげでつい今までふにゃっとボケていた頭に活が入る。

 

「うえぇ、目元にお湯と泡がー」

「少しの辛抱だからね、ドーロちゃん少し堪えていてね」

「ふあぁ」

 

 シャワーのお湯がかかるのに反応して耳がピンピン勝手に動く。そのたびにシャワーの角度を変えなきゃならなくて、リズちゃんは大変そうだ。

 

「ごめんねリズちゃん、耳が勝手に動いて止められなくて」

「大丈夫だよ。耳にお湯、入っちゃってないかな?」

「そ、それは大丈夫ー」

 

 思ったよりも長くかかるすすぎが終わってホッと一息。しかし休む暇もなく次の手が頭に乗る。

 

「さ~てドーロちゃん。シャンプーが終わったからコンディショナーの番ですよう」

 

 そう言って今度はルジェさんの手が髪の上を滑る。毛先の方は少し揉み込むような動きも加わって、だんだんと滑る手の抵抗感が消えていく。そして再びすすぎ。

 シャンプーの時とは違って、お湯の流れに沿って髪のまとまっていく感じがした。

 

「耳も流しますからね」

 

 左の耳がきゅっと押さえられてお湯の当たる音が響く。次は右も同じように。そして乾いたタオルが頭の上に乗せられた。

 

「リズより髪が短めだからやっぱり早く終わるね」

 

 またもやリズちゃんに交代したようだ。ふんわりとしたタオルの感触で頭のあちらこちらが押さえられていく。最後に耳を避けるように髪をタオルで巻いて、手が離れた。

 

「はい、できたよ。巻き方もそのうち覚えないとね」

 

 鏡を見ると額の上で結んだタオルが器用に頭を包んでいた。両耳だけがその隙間からピコンと飛び出している。あまりに器用に巻いてあるものだから一体どうなっているのか鏡でじっくり観察していると、ルジェさんとリズちゃんも髪を洗い始めた。

 

 俺はこの間に体を洗うことにした。

 ドーロのお風呂セットに石けんはなく、ボトルが大小7つほど入っている。うち2本はシャンプーとコンディショナーなのは分かった。残りも大きい方はボディソープと印刷されているが……

 

「んー……、この小さい方4本が正体不明ですね」

「それ、たぶんその中の2本はクレンジングと洗顔じゃないかな」

「くれんじんぐ?」

「メイク落としたりする方だよ。洗顔は分かるよね? それより、先に体を洗ったら良いと思う」

「……そうします」

 

 髪を洗うリズちゃんがこちらに聞き耳を立てていて、見ずに俺の独り言に答えてくれた。セットにはちょっと目の粗いタオルも入っている。多分これで身体を洗うのだろう。タオルを濡らしてソープをプッシュして取り、こすり始める。

 

「ドーロちゃん、もう少し泡を立てた方が良いと思いますよ?」

 

 ちょうどルジェさんがコンディショナーに移るところで、俺の方を見て言った。

 

「タオルで直に肌をこすると力加減によっては痛めちゃいます。とはいえウマ娘のお肌はそんなに(やわ)でもないのですけれど、手の力もそれなりにありますからねえ。

 でもなるべく痛めないように、こういうのは日々の積み重ねがものを言うんです」

「シャンプーの時もそうだったけど、泡でやさしく触れていく感じだよ。それじゃ洗った気がしないのなら、仕方ないけど」

 

 二人から言われたのでは逆らうわけにもいかない。俺はソープの付いたタオルを揉みに揉んでもっこもこをたっぷり泡立てた。

 




次回、TSモノとしてはあるまじき。
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