起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
またもや誤字修正をいただきました。いつもいつもありがとうございます。
もっこもこに泡立てたソープをボディタオルで肌に伸ばしていく。ふわふわで少し弾力のある手触りは記憶になく新鮮だ。
タオルは腕から始まって胸元へと進む。今まで敢えて気にはしていなかったけど、つまりそこには女の子ならではのでっぱりがあるわけで。
(敢えて見ないように心がけてたんだけどな)
ここに来てどうしたってそれに注目せざるを得なかった。手触りは柔らかくぽちゃっとしてるが、その下は案外硬い。たぶんドーロ自身今まで鍛えていたせいで筋肉があるのだろう。でも
俺の記憶が朧気で曖昧ということは、この胸をまじまじ見るのも今回が初めてというわけで。そしてその第一印象を正直に語るなら、『邪魔』の一言に尽きた。
もうちょっと自意識がはっきりしていたのならもっと違う感想だったのかもしれない。例えば『これが女の身体かあ、ふんすふんす』とかなんとか。ところが過去の自分に関する記憶が本当に薄いせいで、これだけしっかりサイズのある胸を見ても興奮を起こすような事態に陥らないのだ。たぶん世の男性がこれを聞いたら総ツッコミを受けそうな自信はあったりする。まあ誰に対してとは分からないが、本当にすまないと心の中で謝っておこう。
しかしだ、自分がこれを見て興奮しないのとは別に、そのサイズ感が適正なのかどうかは先ほどから気にはなっている。俺の胸は標準なのか、そうではないのか。
俺はもっこもこのあわあわをくまなく延ばしつつ、さりげなく両サイド、つまりルジェさんとリズちゃんのサイズを確認してみた。
ちらっと右隣、ルジェさんの方に視線を配る。さすがに直視はまずいと思うので鏡に映った姿を最小視線で追いかけるだけだが。彼女は既に髪のトリートメントも終えて、水分を取った髪をビニールのキャップみたいなものに収めているところだった。両腕を上げているので肘までの距離で大体の目算を付けると、俺よりもやや大きいんじゃないかという結論が出た。そしてリズちゃんはどうか。
リズちゃんは身体を洗いはじめていて俺と同じく泡まみれになりつつあった。なのでサイズ感が分かりにくいが、身体のサイズそのものが俺よりも一回り小さい事もあって、どう見てもルジェさんよりはずっと小ぶりのようだ。おそらく俺よりも小さいのではないかと予想が付く。想像の域を出ないが二人の平均よりはやや大きめ、というのが俺のサイズだろうと思われた。
しかし、このサイズが標準的かどうかは不明だ。サンプルを増やす事もできはしないし、これ以上気にしても始まらない。だからこの件はもうここでお終いにしようと考えていたのだが、ボディ洗いが終わった頃に爆弾が投下された。
「ドーロちゃん、あんまり人の胸じろじろ見るのは良くありませんよ」
は? なんでバレてんの?
「リズのことも見てたよね? ……その、あんまり自信ないから恥ずかしいな」
アイエエエエ! ナンデ!? ナンデバレテンノ!!??
いや待って、なんでバレてんのホントに。ちらっと見ただけだよ? しかも鏡越しで顔も動かしてなかったはず。君ら超能力者かなにかか? あ、いやウマ娘だったわ二人とも。超能力者みたいなもんかヒトから見たら。いやいやいや、いくらウマ娘でもそんなん分かるわけないでしょ……って、分かっちゃってるんだよなぁ……。
「まあ気になる気持ちは分かりますよお。わたしも小さい頃は気にしてた時期がありましたから」
「……そうだったんですね」
「周りの人と比べて違っていたらどうしよう、目立って何か言われたらどうしようとか、悩んでしまうものですからあ」
「うんうん。リズもね、背が低めだから周りが気になっちゃう。けどね、トレセンに入ってからは気にならなくなったよ。
ここでできたお友だちの中にはリズより背の低い娘もいるけど、みんな走るの強いからね。走ることに集中してるからリズもやらないとって、だからね」
リズちゃんの言葉はシンプルだけど深く心に染みてきた。
トレセン学園での生活は俺にとってまだ初日だけど、既に優しい友達がいて、ご飯はとても美味しくて、ついつい本分を忘れそうになる。けれどここは走りを磨く場所。少しサボればあっという間に置いて行かれて底辺入りになる厳しい世界なんだって。ルジェさんは一年先輩だからそれは骨身に染みているだろうし、同輩のリズちゃんすらもその事を完全に理解できていることが、今の言葉からはっきり分かる。俺、ヴェントドーロはこの二人よりも遙か後塵を拝する身。明日からは巻き返さなければと改めて決意する。
そうは言っても今はお風呂タイムでのんびりふわふわもこもこなんですけどね。こういうメリハリもきっとレースを勝つためには不可欠なんだろうな。
「そうですね、ここは走りを磨く場所です。
「ドーロちゃんがいきなり真面目なこと話してます」
「えっ? 私、いつも真面目ですよ?」
「…………」
「…………」
「ちょっと! そこで黙りこくらないで下さいよ、お二人ともぉ!?」
「ふふふっ。ドーロちゃんがいると色々飽きないよね」
「本当です。人が変わって面白くなりましたねえ」
「それって誉められてないような」
「いえいえ、誉めているんですよお。ドーロちゃんは元々一徹なところが強かったので、生徒の間では少し怖い人という印象が強かったみたいなのですけど」
「それも今日からは少し柔らかくなったかなぁって」
「少し」
「いえ、だいぶん、でしょうか」
両側から二人の軽い笑い声が漏れる。釣られて俺も声が出た、堪えながらも。
次回、いよいよしっぽ洗い。