起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
三人揃ってあわあわのもこもこだったのがシャワーでスッキリと洗い流された。
お風呂セットの中にあった謎の小ボトル4本を二人に見てもらうと、2本はリズちゃんの見立て通りクレンジングと洗顔フォームだった。残る2本はというと
「こちらは保湿のスキンミルクですね。えーと、これは濡れていても使えるタイプのようですから、お風呂場から出る前、少し肌の水気を切ったところで使えますね。
それからこちらは……、しっぽ用のコンディショナーですか。使い方は髪用のと同じみたいです」
「ケア用品っていっぱいありすぎて困るよね」
「そうですねえ。ああそうだドーロちゃん、今はこれで揃っているので大丈夫ですけど、あとあと色々と試したくなったらドライヤーコーナーにいっぱい置いてありますから試してみると良いかもですよ」
「試供品とかちょっと使ってみて合わなかったものとか、持ち寄って集めてあるんだよ。結構みんな使ってるよね」
「肌に合わないとか髪に合わないとかそういうのはしょっちゅうですから。いきなり廃盤になったりしますし」
「販売終了しちゃうのはすごく困るよね」
「そうなんですね。いろいろ大変そうです」
「ドーロちゃんもそのうち人ごとじゃなくなるかもですよ?」
「……心しておきます」
そんな調子でクレンジングと洗顔のレクチャーを受けつつ、いよいよしっぽのお手入れへと進む。
「しっぽはですねえ、髪のお手入れと基本は同じなのですけれど、自力でやるのはなかなか難しいんですよねえ。
髪と違って後ろに付いているものだから思うように行かなくて。だから、ここは二人以上で洗いっこするんですよ」
「洗いっこ」
「うんうん。リズが最初に言っていた二人以上でお風呂に入るっていうのは、しっぽ洗いがあるせいなんだよ」
そう言われて洗い場を見渡せば、なるほどみんなペアで入浴している。三人組は今のところ俺たちだけだ。
「でも今日私たちは三人ですよね?」
「うん、だから三人輪になってやるんだよ」
それまで座っていたお風呂イスを動かして、三人輪になるように座り直す。洗い場の壁と壁の間をいっぱいに占領して通路をふさいでしまうことになるが、そこはお互い様らしい。
「わたしがドーロちゃんのしっぽを洗いますから、ドーロちゃんはリズちゃんのしっぽをお願いしますね」
「リズはルジェ先輩のしっぽをやるから、よく見ながらやり方を覚えてね」
「しっぽの付け根と裏は敏感ですから、そこを触る時は一声かけてからの方が良いかもしれませんねえ」
「それじゃルジェ先輩、始めますね」
リズちゃんは自らの揃えた膝の上にルジェ先輩のしっぽを横たえさせると、シャワーで丁寧に付け根の方から洗い流していく。青みがかって輝く銀色の長い毛の上を、水滴が弾けて駆け下りる。リズちゃんがしっぽを手で受けながらシャワーを当てていくと、たっぷりお湯を含んだ毛先から水滴が滴り落ちた。
ルジェさんが髪を洗う時に使っていたシャンプーを手に取り泡立てる。そして、その泡を優しくしっぽの毛になじませていく。
「ルジェ先輩、付け根の方やるからね」
「お願いします」
一声掛けたリズちゃんの手がしっぽの付け根に伸びる。軽い力でしっぽを包み込むようにして、しっぽの毛も使ってさらに泡立てていく。よく見るとしっぽは細かく震えていて、何かに耐えているようにも見えた。ルジェさんの表情には力が籠もり、淡紅の頬はお風呂場の熱のせいか。
そのうちに先の方まで泡で包まれたしっぽが現れると、そこで一息入れて再びお湯が滑った。さらにコンディショナーが続き、とうとう現れたのは先端まで艶やかに青白く輝く銀色のしっぽ。
「終わったよ」
リズちゃんが短く伝えると、ルジェさんの上気した頬が振り向く。その目は俺を捉えるが、どこかしらとろんとして夢心地のようにも感じられた。
「ルジェ先輩、この様子だとちょっと時間かかりそうだね。ドーロちゃん、先にリズのしっぽを洗ってくれるかなぁ?」
「は、はい。でもルジェさんはこのままで大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。思ったよりもキマっちゃったけど、すぐに戻ってくるよ」
キマるという言い方に引っかかりを感じながらも、俺は膝の上に差し出されたリズちゃんのしっぽを先ほど見たように洗っていく。濡れ羽色に艶めくしっぽが白い泡で塗りつぶされていって、そしてとうとう
「付け根に行きますね」
リズちゃんの返事はないままゆっくりとしっぽの付け根に手を這わせる。こちらもやはりルジェさんと同じように小刻みに震えていた。リズちゃんを驚かせることのないように、あくまでも柔らかな力加減でゆっくりと手を動かす。しっぽの表、裏と泡を広げていくと気がつくことがあった。
(しっぽの裏って、毛がないんだな)
普段は表側しか見えないせいで気がつかなかったが、しっぽの裏には毛がなくてつるっとした感覚だ。表との感触の違いに興味が湧いて、ついつい確かめるように手を這わせてしまったのが良くなかった。不意にリズちゃんのしっぽが縦に大きく振られる。
「ゔぇっ!?」
ウマ娘のパワーはしっぽといえど強かった。しっぽの毛は鞭のようにしなり、俺の顔面をクリーンヒットした。
「えっ!? あっ!! ド、ドーロちゃんっご、ごめんなさいっ!!」
しっぽと共に飛んできたシャンプーの泡が目に鼻に入り込み、一瞬にして目を開けられなければ息も絶え絶えになる。床に手を突いてうずくまると、リズちゃんの「今流すから息止めていてね」の声と同時に顔面にシャワーがかかった。
ぷはーっと口から息を吐いて、また吸う。顔面の泡は流れたが、鼻の奥はジンジン痛いし目もまだ開けるのはキツい。シャワーのお湯で目をすすぎ、収まるのを待った。
「ごめんねドーロちゃん」
「い、いえ。……私がいけないんです、デリケートな所なのに無造作な触り方を……してしまったので。……すみませんリズさん」
「実質初めてだし、仕方がないよ。それより目とか鼻とか無事ならいいんだけど」
と、そこへ謎のダメージから回復したルジェさんが加わった。
「リズちゃんのしっぽの続きはわたしがしましょうか。ドーロちゃんはちょっとお休みしてもらって」
そうしてリズちゃんのしっぽ洗いが終わる頃、俺の目はようやく回復し、鼻も少々ひりつきが残るもののなんとか普段通りになった。
「すみませんでした。リズちゃんとルジェさんにも大変ご迷惑を」
座ったままではあったが二人に頭を下げた。
いやウマ娘のしっぽ、敏感すぎやしませんか。それに俺のしっぽ洗い今からされるんだが……ルジェさんみたいになってしまったらどうしよう……不安だ。
次回、覚醒。(ちょっとだけ)