起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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濡れるとものすごく重いんだろうなあとか思いますね。


揉まれるしっぽ

 

「それじゃドーロちゃん、始めますよう」

 

 ルジェ先輩からかかった言葉に息を呑む。

 先ほどから無駄に緊張しているのは自分でも分かるが、ルジェさんとリズちゃんのこれまでの様子を見るに、自分もなにか変なことになるんじゃないかと不安が募る。なにが恐ろしいかといって、ふにゃふにゃになって痴態を曝すのもそうだが、俺の()が出てしまうことだ。素が出てきた時どんな風になるのか、まるで想像も付かないが。

 

「……よろしく、お願いします」

 

 しかし洗わないという選択はない以上、ここで腹を括る必要があった。しっぽをルジェさんに預け、俺は背筋をピンと伸ばしてそれに備える。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですからねえ」

「は、はい。というかですねルジェさん」

「どうしました?」

「このお風呂の工程、毎日やるんですよね?」

「そうですねえ。練習すると汗をかきますし、髪もしっぽも砂ぼこりだらけになりますからね。よっぽど疲れ果ててすっぽかしてしまう以外は基本毎日ですよねえ」

「すっぽかすとどうなります?」

「髪質とかにもよるのでしょうけど、ボサボサになって纏まらなくなりますし。なにより絡んでしまってすごく傷みますねえ。傷むとやっぱりみすぼらしさが出ちゃいますから、普段の見た目もそうですけれど、ライブの見栄えがとても悪くなりますよ」

「ライブの見栄え、ですか」

「走りに、ライブに、食事。この三つは本当に大事ですから」

 

 言葉を交わしつつ、シャワーがしっぽを濡らしていく。そのうちにそれも止まって、ルジェさんの手がしっぽをやさしく包む。

 

「ひゃっ……ぃ」

 

 無意識に声が、上がっ……た。

 まだしっぽの長い毛にしか、ルジェさんの手は触れていないはず、なのに……。ピリピリ……ジンジン……と首の付け根まで響くような……感覚……が()を襲う。

 あぁやっぱり、ダメだこれ。……なんだっけこの……感じ、なんだか昔も味わったことが……あるような。そんな事を辛うじて考えていたら、ジンジンと首の付け根に疼く感覚がもう一度降りていって、今度はお腹の方に響く。力が抜けて、背筋が萎れる。背を丸くして、感覚に耐える。

 

「ルジェ先輩、ちょっと手を止めた方が良いんじゃないかな」

「大丈夫ですよ、ドーロちゃんは以前から反応が少々オーバーなので、これくらいは」

 

 以前からって、今言った。そうか、ルジェさんは俺になる前のドーロにも、しっぽ洗いをしていたはずだ。そのときの感覚をドーロの身体が覚えてると、そういうことなのかも、知れない。

 それにしても、なんでこんなにしっぽだけ、敏感なんだ。もう、息をするのも辛く、なってきた。さすがにこれ以上は、ヤバイ、かも。

 

 これ以上いじられると頭と心臓が持たない。そう感じた俺はルジェさんの手から逃れるべく必死の決意でしっぽを動かそうともがく。

 とにかく、一旦中断、したい。息が上がって声を出せないから、行動で、示さないと。と、そのとき

 

「ああっ、ドーロちゃん。しっぽ動かしちゃいけませんよう」

 

 ルジェさんの焦る声が聞こえた。

 俺の意識が確かに尻尾の先端まで繋がった。それと共にまるで大波に揺られていた小舟のようだった俺の意識が、速やかに凪いでいく。右へ、左へ、しっぽが俺の意思と共に確かに動いていた。

 

「もしかして、ドーロちゃん、今しっぽ意識して動かしてたりする?」

 

 リズちゃんの問いに、まだ息の戻らない俺はただ頷く。お風呂イスの上で背中を丸めたまま、しっぽだけ不規則に左右に動かし続ける。

 

「少々刺激が強かったでしょうか……。少し休憩にしますねえ」

 

 ようやくルジェさんの手が退いた。俺は息を整えながらしっぽを右へ左へ上へと緩やかに振ってみせる。一振りさせるたびに俺としっぽの繋がりが太く、濃くなっていく。大きく振るだけでなく、細かく震わせることもまもなくできるようになった。今までに感じたことのない感覚と意識の持って行き方ではあるけれど、最初からそうであったような自在さに至るまではすぐ。しっぽがこの調子なら、多分耳もすぐに扱えるようになりそうな、そんな予感さえする。

 

「はぁ……やっと落ち着いてきました……。すみませんお二人とも。そろそろ大丈夫です」

「そうですかあ。それじゃちゃっちゃと残りを仕上げてしまいましょうねえ」

 

 今度はしっぽを()()()()()()ぴんと伸ばし、改めてルジェさんに委ねる。再びルジェさんの手に触れられている感覚が上がってくるが、さっきのような敏感さは鳴りを潜めていた。

 

「それでは、付け根に行きますよう」

 

 そう聞いて身構える。しかし今度はそれほどひどい感覚は上がってこない。確かに少々くすぐったいが、それ以上ではなかった。ルジェさんの手つきが良いのか、それとも俺の方があの瞬間から変わってしまったのか定かではないけれど。

 少し首をかしげてルジェさんを窺う。真剣な表情。だけど若干眉が下がっているようにも見えて、なんとなく悲しそうというか物足りなさそうというか。そのまましばらくの間ルジェさんの手がしっぽを弄っていたけど、温かいシャワーが掛かり始めてその時間が終わりを迎えた。

 最後にドライタオルを被せられ、軽く水気が切られてしっぽ洗いはどうにか完了した。

 

「はい、ドーロちゃんおつかれさまでしたあ。終わりましたよう」

「ありがとうございますルジェさん」

「それにしても、急に動かせるようになったんですねえ」

「ですね。最初触られた時は変な感覚でモヤモヤして苦しいぐらいだったんですけど。それを乗り越えたら急に動かせるように。ルジェさんのおかげです」

「いえいえ、どういたしましてえ。でも不思議ですねえ、何かスイッチでも入ってしまったのでしょうかあ」

「そうかも知れません。この流れで耳も動くようにならないかなと期待していますけど」

「それだけしっぽの刺激が強かったってことなのかなぁ?」

「最初訳の分からないぐらい強い刺激だったのは確かですけども。二度目は特にそんな風には感じなくなってしまったんですよね……謎です」

 

 再び三人横並びに座って会話しつつお肌の保湿を抜かりなく済ませると、お風呂セットをきちんと整理していよいよ風呂場を後にする。騒ぎがあったせいでかなり時間が経っていたらしく、周りで入浴していた生徒達の数は目に見えて減っていた。

 




次回、もふもふに自由を!
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