起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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しっぽが動かせるようになる、ということはセルフもふもふも楽にできるということ……。

昨夜評価を新たに入れていただきました。ブックマークも徐々に増えていますし、感想もいただきましたし、日間ランキング総合の方にも今朝方94位で返り咲いていました。
毎日毎時間、ありがとうございます。


ゆらゆらふりふり

 

 鏡に映る自分のしっぽが楽しい。

 ルジェさんのロングヘアーをドライヤーで乾かしながら、自分のしっぽを右に左にゆらゆら揺らしている。自分の思い通りにしっぽが動くというだけで、お風呂上がりからこちら俺のテンションは爆上がりだ。

 

「ドーロちゃんとっても嬉しそうだね」

「うん」

「やっぱり、しっぽが動くと嬉しいですかあ?」

「うんうん」

「耳も動くようになるといいね」

「うんうんうん」

 

 ルジェさんとリズちゃんが交互に声を掛けてくる。傍から見ても俺の様子はすごく嬉しそうに見えるらしく、その様子を見た二人も嬉しそうで、さっきからこんな調子で三人揃って上機嫌のバラマキ放題だ。

 

「もうこんな事もできるようになりましたからね。これが嬉しくないって言ったらウソになります」

 

 しっぽを大きく曲げてお腹に回す。鏡越しに見える自分のしっぽは照明の光を浴びて黄金色に艶めいていて、我ながらいつまでも見ていたいと思えるほどだ。

 

「しっぽが動かせるようになったから、走りやすくもなるはずですよ」

「へえ。それってどういう理由なんです?」

「レース場には直線だけではなくてカーブもあるでしょう?」

「ですね」

「ウマ娘が全力で走ると時速60キロ以上出ると言われているのですけど。そんなスピードでカーブに突っ込んだらドーロちゃん、どうなると思います?」

「ううーん、遠心力で外に膨らむとか?」

「そうですねえ、正解です。思っているより強い遠心力が掛かるんですよ。ですので体を内に傾けるんですけれど、そうでなくても前傾姿勢で走っているからバランスがとても取りにくいんですよねえ。

 そこで。しっぽの出番というわけですよ。細かな重心のブレを、しっぽの向きを変えることで補正するんですね。もちろん限界はあるのですけれど、もしこれがなかったらもっと上体を起こさないとバランスが取れません。当然スピードも今ほどではなくなる、というわけです」

「うぇぇ……、なんだか難しそうですそれ」

「大丈夫ですよ。ドーロちゃんにはこれまで培ってきた優秀な素地があります。しっぽの動かし方も思い出したんですから、きっとそういう走り方のコツも思い出すはずです」

「……そうでしょうか……」

「リズもそう思うよ。ドーロちゃんは元々、同級の中では強い方から数えた方が早かったんだから」

 

 ルジェさんもリズちゃんも鏡越しに素直な笑顔を贈ってくる。その様を見ていると、なんだか自信が湧いて出るような気がした。

 

「そんな風に言われると自信持ってトレセン生をやっていけそうな気持ちになれますね。

 明日もよろしくお願いします」

 

 俺は二人に向けて頭を垂れる。リズちゃんの「まかせて」という快活な声が響いた。

 

§

 

「じゃあリズはこっちだから。ドーロちゃん、ルジェ先輩、また明日の朝ね」

「うん、それじゃリズちゃん。おやすみなさい」

「おつかれさまでした。おやすみなさい」

 

 濡れ羽色の髪をさらに艶々にさせたリズちゃんがニコニコ顔で別れていった。

 残ったルジェさんと二人、横並びで自室に向かう。

 ルジェさんもお風呂上がりの銀髪から光が零れている。もしかすると俺の髪も今こんな風に光を零しているのか。生憎と自分でそれを確かめる術はないのだが。

 そしてしっぽは相変わらずゆらゆらふりふり揺れている。なんというか嬉しさがまだ尽きずにいて、こうやって訳もなく動かすのが癖になってしまいそうだ。上機嫌、ってこういう事を言うんだろうな。

 いつまでもゆらゆら動いている俺のしっぽにルジェさんも気づいたのか、柔らかに慈しむようなその表情が俺をやんわりと刺してくる。やっぱり美少女の笑顔は色々と効く、効くのだ。

 

 自分たちの部屋に戻り、お風呂セットを片付けて学習机に向かう。ルジェさんも明日の用意をしているのか、背後で物音が続く。俺はスマホのスケジュールアプリで明日の予定を確認しつつ、必要な教科書、ノートなんかをスクールバッグに詰めていった。

 その作業も終わる頃、ルジェさんから声が掛かる。

 

「ねえドーロちゃん。明日の朝練、どうしましょうかあ?」

 

 イスごと振り向くと、同じようにイスに座ってこちらを見つめる彼女がいた。

 

「そうですね、今朝と同じように練習、したいですね。ゲート練習じゃ大コケしましたけど、今朝はもう少しで掴めそうな気がしていたので」

「わかりましたあ。リズちゃんにも来てもらっていいでしょうか?」

「ええ、それはもちろん」

「それじゃ、彼女への連絡はわたしの方からしておきますねえ」

 

 慣れた手つきでスマホが操作されて、すぐにピロンと着信が鳴った。ルジェさん操作速! リズちゃんも返事速いな!?

 

「オーケーだそうです。朝起こしに来てくれるそうですよ?

 ドーロちゃんは彼女に大層好かれていますよねえ……。わたしも負けられません

 

 言葉の後半は聞き取れなかったが、言葉尻からは羨ましい気持ちが漏れているように感じた。




次回、誤解の元。
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