起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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起きたら視界が真っ白って、案外怖いと思うんですよね。

おかげさまで総合日間ランキングに出たり入ったりしています。今朝は57位とか。
本当にありがとうございます。


いざ二日目

 

 目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた。

 二度目の朝。少しだけ見慣れた部屋の景色……ではなく、目の前は白かった。

 

「うぇ?」

 

 丸みを帯びた形に流れるような白い筋がたくさん。視線を動かすとウマ耳の先端が見えた。これは、たぶんアレだ。

 

「ルジェさん?」

 

 返事はない。耳を澄ませば彼女の寝息がすぅ、すぅと密やかに聞こえてくる。見えていたのはルジェさんの後頭部。どうやら夜のうちに俺のベッドに潜り込んできていたらしい。

 そーっと上体を起こすと全貌が明らかになった。ベッドの通路側にルジェさんが俺と並ぶようにして横になっている。ベッドは至って普通のシングルベッドで特別幅が広いわけでもないのに、よくぞこんな狭いところに滑り込んできたものだと感心した。

 窓際のチェストの上で針を滑らせる目覚まし時計は5時15分少し前を示している。昨夜リズちゃんが起こしに来ると約束した時刻は5時45分。中途半端な時刻だが、ルジェさんによると自室から出てよい時刻がそれなのだそうだ。ただし寮の出入り口自体は55分にならないと解錠されないとも言っていた。つまりどれだけ早起きしても朝練は6時から、これがトレセン学園のルールということ。

 

§

 

『噂では昔々に競争心から朝練ブームが起きてですね。それでみんな我先にとだんだん早起きになってというか……半分徹夜みたいな感じになってしまって、まだ暗いうちからトラックで大勢走ってる事態になったことがあるのだそうですよ。そうしたら授業でみんな居眠りしちゃうし、体調を悪くして普段の練習中に倒れちゃう人がたくさん出ちゃったらしくて』

『それで門限が決められたと』

『わたしが去年先輩から聞いたお話はそういう感じでしたねえ』

 

§

 

 昨夜眠る前にルジェさんからそんな話を聞かされていた。昨日の朝練の様子を見ていても熱心な娘は本当に熱心なのが分かるだけに、ありそうな話ではある。だがそれはそれとしてそろそろルジェさんを起こさないとまずい事になりそうだ。昨日みたいにリズちゃんがドアノック即入をしてきた場合、俺のベッドでルジェさんが一緒に寝ているこの状況は誤解を招くに余りある。

 

「ルジェさーん。起きて下さいよ」

 

 声を掛けつつ肩を揺する。すると声に反応してかルジェさんの左耳が後ろにいる俺の方に向けられて、そのまますーっと上体が起きてきた。

 再び至近距離に白い頭がやって来て、そして両手を挙げてうーんと伸びを一回。その間も俺は彼女と壁に挟まれた位置で逃げ場のないままいるしかなかった。

 伸びをした後もまだぼーっとしているのか動き始めないルジェさん。もう一度呼びかけるとようやく目が覚めてきたのか、こちらに振り向いた。

 

「あー……ドーロちゃん、おはようございます」

「おはよう、ございます……」

 

 どことなくまだぽやっとした眠気の残る表情が、目を合わせたままにへらと笑みに変わる。

 

「……あの、すみませんけど、私このままだと動けないので……」

 

 俺はそこまで口にすると、彼女は何かに気がついたのかハッと真顔に戻り、慌ててベッドから立ち上がった。

 

「あれ、あれれ? わたし、もしかしてドーロちゃんのベッドで眠っていました?」

 

 頬をほんのり赤くして困り顔を見せるルジェさん。

 その通りですよ。どういう訳だか貴女は私のベッドに潜り込んでいたんです。と、ダメ押ししたくなる気持ちをぐっと抑えてシンプルに肯定する。

 

「どうやらそのようですね」

「あ~……そうでした……思い出してきましたあ。

 ごめんなさいドーロちゃん。昨夜お手洗いに起きてしまって、寝惚けていたから戻るところを間違えてしまいました」

 

 首を竦めて耳も倒して赤くなった顔を隠すように背を丸めるルジェさん。

 やっぱりかわいいかよ。

 

「良いんですよ。そういう勘違いはあることですから」

 

 俺も責めるようなことにはしたくなかったし、なにより朝っぱらからこのカワイさを目の当たりにできた幸甚をもうちょっと感じていたかった。

 

「……それにしても、この狭いベッドによく潜り込めましたね」

「よくは覚えていないのですけど、普通に、するっと……すみませんでした」

 

 その告白が自らよほど堪えたのか、彼女はますます縮こまってしまった。ますますかわいいかよ。

 縮こまったまま動かなくなってしまったので、なんか小動物みたいだなとか思っていたらけたたましいベルの音が窓際から耳を突き刺す。

 俺もルジェさんもその大音量に驚いてしっぽが逆立った。

 

 音の源だった目覚まし時計を慌てて止め、二人で文字盤を覗き込む。

 

「あらら、もうこんな時間ですかあ。45分にはリズちゃんがやって来ますよ、急いで支度しませんと」

 

 時間は5時30分だった。

 スイッチを切り替えたように二人ばたばたと動き出す。俺は寝ている間に乱れた髪をささっとブラシで整えて、ルジェさんはいつもの髪型をしてる時間がないからと言って大きなクリップでロングヘアを後ろに止めた。軽く洗顔して、これまた時短ですからと言ってルジェさんから渡されたのは日焼け止め入りの乳液。「朝といえども紫外線はこの季節対策しませんと」と言われつつ、彼女の愛用品をお借りして指示通り顔にぱぱっと叩く。それから上下ジャージに着替えてふうと一息入ったところでドアがノックされる。

 

「ドーロちゃんおはよう!」

 

 またも返事を待たずに元気よく入ってきたのはリズちゃんだ。ひと言ないのはどうしてか、それは今度改めてゆっくり聞いてみることにして。

 

「リズちゃんおはようございます」

 

 なんとか間に合った笑顔で俺は挨拶を返した。さあ、心機一転してヴェントドーロ、今日から自分の走りを取り戻すためにがんばるぞーと気合いを入れ直した。




次回、彼の名は。
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