起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません 作:裏白いきつね
ブクマ、評価戴きありがとうございます。毎日読んでいただく方には感謝しかありません。結局昨日は総合日間ランキング54位を終日維持していたようです。目次UA数も過去4位をマークしまして、良い感じだなーと思ったんですけど、今日は日間も週間も一気にランク外へ沈んでおります。おかげで毎時UA数がすごくフラットに。
本日、仕事の都合で更新が大幅に遅れました。申し訳ございません。
「ルジェさん、昨日の動画をまた見せてもらっても?」
スマホを借りて昨日撮った動画を再び見比べる。見比べながらその場で足運びの確認。前傾姿勢を取ってみると、昨夜から動くようになったしっぽがピンと後ろに伸びて、昨日よりもさらに姿勢が前のめりにできるのが分かる。なるほど、こうであれば。
「リズが見てる限り、姿勢は良いと思うんだけど」
「昨日は棒立ちでしたからね。私のフォームを見てもらったらだいぶ良くなりました」
「あとは足の回転が追いつけば前に走り出せるかな……っていうところなんですよ。レースをするにはまだまだだと思いますけど。
ルジェさん、スマホありがとうございました」
少し離れたところで俺は昨日と同じように脚を運ぶ。地面と平行に爪先を出し着地、体重を預けつつ爪先を立てて行き、フィニッシュは後ろへ蹴り抜く。二度三度それを繰り返して脚を出すタイミングを身体に覚え込ませた。行けるかな、と1歩2歩3歩。半ば跳ねるような脚運びでポンポンポンと前に出てみる。
「ゆっくりから始めてみたいと思います」
軽く手を上げてそう声を出すとルジェさんが頷いてくれた。昨日と同じウッドチップコースが空くのを待って走り出す。
今朝はゆっくりから始めて脚の回転を上げていく。昨日に比べると前へ出る感覚は格段に強い。しかし、隣の芝コースを走るウマ娘達にはあっさりと抜かれてしまった。現状で脚の回転は今できる上限に達しているのに、スピードは半分も出ていないようだ。直線が終わりを迎えると俺はそのままコースの外に出た。
「ドーロちゃん、どうでしたか? 見ている限りでは昨日よりはかなり脚が回っていたようですけれど」
「今のところあの回転が精一杯ですね。あれ以上になると追いつかない気がしています。
スピードが他の娘の半分もないですね。まだまだです」
今撮影した映像を見せてもらう。昨日のそれと比べれば遙かに滑らかな動きではあったが、他の娘に比べるとまだぎこちない。ここから1カ月で他と伍を成して走れるようにまでなるのか、いや、ならなければいけないのだが。
その後もルジェさんやリズちゃんの意見を聞きながら短距離走を繰り返した。徐々に足運びにも慣れてきて前に出るようになっては来ているらしいが、スピードはまだまだだ。
「……やっぱり、簡単にはいきませんね」
「リズが見せてもらったのは今日だけだけど、それでもこの短時間でだいぶ変わったよ?」
「そうでしょうか……」
「ええ、ずいぶんと良くなったように感じますよう。ともあれ、今はウマ娘の走りに慣れることが先決なのではないでしょうか。
毎日少しずつでも走り続けていれば、きっとどんどん良くなります」
二人の表情は一様に明るい。俺が走れるようになると一片の疑問も抱いていない、そんな表情だ。まだまだやるべき事は多いと思うけど、それでも一歩前進できた今日の朝練だったように感じた。
『きゅるるる♪』
そして今日も腹の虫が遅めのおはようを伝えてきた。
「まあまあ、今日もドーロちゃんのお腹は元気そうですねえ」
「そろそろ7時になるね。今日はここまでかな?」
「そうですね。お二人とも練習に付き合っていただいて、ありがとうございました」
一礼し、三人連れ立って寮へと戻る。今日はこのまま普通に学園生活の一日が過ぎる、この時はそう思っていたのだが。
§
『高等部1年E2クラスのヴェントドーロさん、直ちに運動系教官室へ来て下さい』
その放送は1限目の授業が終わった休憩時間に流れてきた。
「ドーロちゃん……」
「多分、昨日のゲートの件じゃないかと思います」
「リズも一緒に行こうか?」
「それには及びませんよ。大丈夫です」
沈んだ表情を見せるリズさんにスマイルを返すと、クラスメイトの視線を浴びつつ教室を後にする。大丈夫だよと言ってリズちゃんを置いては来たものの、よく考えてみれば俺はその教官室がどこにあるのか知らなかった。どこかに案内図でもないかと探しながら1階へ降りていく。知っている道をたどってエントランスホールにたどり着くと、果たしてそれはあった。
「えーと今このエントランスホールがここで、トラックがこちらで、医務室があちらで……運動系教官室は……ここ。
一旦外に出て左に抜けてトラックの方ですか……よし」
外はすっかり夏の日差しだ。真っ青な空に白い雲。天気はすこぶる良いが、この中を練習で走り続けるのは少し大変かも、とか思いつつ、スカートを
今は学園制服のローファーを履いているので練習の時に履いていた蹄鉄シューズとは感覚が全然違う。一言で言えば『柔らかい』。蹄鉄シューズはその名の通り鉄の靴底だったから舗装路の上を走るとすこぶる硬くて衝撃がすごく、とても滑りやすかった。逆に芝やウッドチップといった未舗装の上では明らかにグリップが良く、しかも前に出る。
こういう所だと普通の靴底の方が断然楽。そんな感想を抱きつつ教官室前にはすぐ着いた。何も考えずに外から回ってきてしまったが、教官室から直接外に繋がる出入り口があったので事なきを得る。
その外出口の方からコンコンコンと3回ノック。そしてそーっとドアを開いて
「失礼します! 高等部1年のヴェントドーロです。呼び出しを受けました」
そう言って元気に挨拶した。運動系高校生だから、なんとなくこうした方が良いと感じたからだ。どうしてかは分からないが。
すると書類に埋もれたデスクの奥で、茶色のウマ耳が2つこちらを窺うのが見えた。すぐに立ち上がって顔が見える。昨日ゲート練習のときに話をした教官だ。
「ヴェントドーロさん、呼び立ててすまないわね」
「昨日の件……でしょうか?」
「そうね。その件で進展があったので、その話よ。
それで……、記憶喪失がある、急にゲート難になった、そして走れなくなった。これらの事柄を教員会議で検討しました。走りたい強い意志は聞かせていただいていたので、それも加味してですね。そこで決まったのは、あなたには医学的な見地から何か故障が起きていないか、しっかりと検査してもらうことになったわ。まずはその結果次第ね」
「そうですか。それで、授業の方は?」
「できる限り今までどおり……って、記憶がないのだったわね。他の生徒と同じように受けられるものは受けてもらいます。大丈夫よね?」
「はい、問題はないと思います。
走る方は同室と同級の子に見てもらって、今朝から少しずつ朝練しています。走る方はほんの少しですが、マシになったとはその子達から褒めてもらいました」
「そう。朝練はかまわないけれど、やり過ぎは禁物よ。まああなたはトレセン学園以前の履歴を見ても大きなケガはなかったようだから、無理をしなければ大丈夫だとは思うけど」
「そうなんですね。ケガには気をつけます」
教官が言うには昨日のうちに医務室の方と連絡は取り合っていて、確かに運動器の方には問題は見当たらず、その観点からは走ることが可能なようだとの回答を得たという。だが記憶喪失や急に起こったゲート難といった事柄は昨日の検査では掴めておらず、それらに関してはもっと別の角度からの検査が必要だという。
「そこで、これから医務室の方に出向いてもらって、そこからは医師の指示に従って検査を受けてもらうわ。医務室に向かえば分かるけど、担当してくれるのは昨日貴女を診察した織田先生よ」
ああ、あの高身長な好青年のドクター。織田さんというのか。
ともかく今からすぐに医務室に出向いて欲しいとのことだったので、退出の挨拶もそこそこに俺は医務室へと走る。今日の授業に関しては検査のため公休扱いになるから心配しないでとのことだった。
「ごめんくださーい。高等部1年のヴェントドーロです」
昨日も訪れた医務室玄関。そこで俺は声を上げた。
次回、ウマ娘の意外な弱点。