起きたら金髪ケモ耳美少女だったんだが自分の記憶がとんとありません   作:裏白いきつね

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タキオン氏はきれいに見えててもやっぱり本質はタキオン氏なんだよ。(論理ループ)

評価が立て続けに入りました、ありがとうございます。
残念ながら評価平均はついに8を割り込んでオレンジ色の領域に至ってしまいましたが、毎日欠かさずお読み戴いていますことは感謝の極み。


怪しさ満点

 

 タキオン氏と織田先生の後ろに付いてビルの廊下を歩く。医務室とは違って薄暗く、そこかしこに段ボールが積まれていたり機材が放置されていたりした。人の気配は多少あるものの歩く姿はなく、壁の向こうで何かしている、そんな感じだ。

 

「こちらだ。入りたまえよヴェントドーロ君」

 

 タキオン氏が無機質な鉄の扉を開いた先にあったのはコンクリートの壁に囲まれた小さな一室。その真ん中には無骨なデザインで太いコードがいくつも繋がったイスが一脚。一歩中に入ると横の壁にはガラス窓が嵌められていて、隣の部屋の様子が見えた。

 

「手荷物は入り口のかごの中にでも入れておいてくれたまえ」

 

 タキオン氏がそう言って俺に案内をしてくる間に、織田先生はイスに気を留めることもなくガラス窓の向こうへと去って行った。

 引き続きタキオン氏がこのイスについて説明してくれる。

 

「この一見イスのような機械がこれから君を検査するための装置だ。主に映像や音を流してそれに対する君の脳の反応を見る。君にとって少々刺激の強い内容が流れる可能性はあるが、身体的に危害を加えるようなことはないよ。

 今日はこの装置を使って、君の記憶喪失やゲート難の心理的原因を探ろうという算段さ」

 

 なるほど、簡単な検査というのはこれを使ってやるのかと合点がいく。合点はいったがこの装置そのものと、それからタキオン氏自身がどうにも怪しさ満点なのはいただけない。

 そんな事を思っていても、彼女の解説はこちらの意向にかかわらず続いていた。

 

「……頭部の位置にある半球形の構造には各種のセンサーや映像投写ユニット、スピーカーなどが装備されている。この装置のいわば心臓部、というわけだねぇ。他にも手や足の乗る部分に筋肉の活動量を捉えるセンサーが埋め込まれている。無論脈拍や酸素飽和度など基本的なセンサーも付いていて、常に生体の状態をモニターすることによって生命に危険が及ばないように配慮されているのさ」

 

 タキオン氏の説明を聞きつつ、紹介された装置の各部を目で追いかけていく。説明の大半は訳が分からないが、ともかく高そうな機械であることだけは認識できた。俺はおずおずと手を上げてタキオン氏に問いかける。

 

「あの……」

「なんだねヴェントドーロ君?」

「この機械、すごく高価な物なんじゃないかと思いますけど、その、ウマ娘の力で壊れたりは」

「あぁ、それについては大丈夫だ。強度に関してはウマ娘を考慮して作られているし、被験者の君には悪いが拘束ベルトは併用させてもらう。やはり見せる映像によっては身体の不随意運動が起こる場合はあるからねぇ。事故予防だよ。機器が高価というのはあるが、被験者の受傷防止が主目的だねぇ。それに万が一壊れたとしても、君に修理代の請求が行くことはないよ。

 それではさっそく取りかかろうか。ヴェントドーロ君、装置に腰掛けてくれないか」

 

 タキオン氏が俺の方ににじり寄る。俺はどうにも判断に迷い、ガラス窓の向こうにいる織田先生へ助けを求めて視線を送った。

 それに気がついた先生がこちらの部屋に移ってきた。

 

「ヴェントドーロさん、どうしましたか?」

「……いえ、先生、この装置本当に大丈夫なんでしょうか?」

「ああ、そういうことか。それは大丈夫ですよ。試作段階から私も関わっていますし、これまで実際に多くの被験者でテストを重ねてきました。これまでそれら被験者の心身にダメージが残ったということはありません。

 ですよね? タキオン君」

「織田君の言う通りだよ。

 これまでうちの研究員を中心に延べ100人以上でテスト済みだ。その中にはもちろんウマ娘もいたさ、だがただ一人としてダメージが残った者はいなかった。それは保証しよう」

「……そうですか。そこまでおっしゃるのなら、信じます」

 

 装置に座り、腕や足、胴体をベルトで固定されていく。指先や足先などにもセンサーが被せられて、最後にイスと一体化したヘルメットを被せられた。ヘルメットにはウマ耳の形に合わせた突起が出ていて、顔部分の内側は顎の下まで届くモニター画面になっている。被せられた時既に耳にはクラシック音楽が流されていて、モニター画面にはどこかの景色が映し出されていた。

 ヘルメットが完全に被せられると、視界は上下左右ともこのモニター画面の風景でいっぱいだ。準備が整って検査開始の声が耳に伝わる。指示通り目を瞑ってその時を待つ。

 画面が暗くなり、音楽の調子が変わったせいか眠気がやって来た。

 

 再び気がついた時、俺は見知らぬ景色の中にいた。

 真っ青に晴れた空、所々に浮かぶ白い雲。地面は見渡す限り青々と茂る草。やや高台にいるのか見晴らしが良く、遠くの山々まで見渡すことができる。時折涼やかな風が吹いてきて、濃厚な草の香りがする。なんとなく『おいしそう』みたいな感想が浮かんだ。どうして草を美味しそうと感じるのかは分からなかったが。

 

 俺の身体は何かにもたれかかっているらしかった。それも岩とか木とかではなく温かさと息づかいが背中から伝わってくる。どうやら大きな動物を背にして草の上に直に腰を下ろしている、そんな体勢のようだ。そんな中、顔にバサッと髪の毛が被さってきた。

 

「ぶわっ! な、なんですかこれ!?」

 

 手で慌てて払いのけると、髪の毛はそのまま後ろの方まで引っ込んでいった。引っ込んだ方に顔を向けてまず見えたのは、銀白色に輝く斜面だ。そしてその奥に先ほど被さってきたと思われる長い髪の毛がちらちらと見え隠れしている。その動く様子には見覚えがあった。

 

「まさか、ウマ尻尾?」

「ブルン」

 

 今度は後ろから何かが鼻を鳴らしたような音がした。とっさに振り向くと、そこには大きな鼻の穴。

 

「うわっ!? なになに!?」

 

 驚いた勢いでそのまま立ち上がる。そこにいたのは

 

「……もしかしなくても……馬ですよね」

 

 銀白色の馬が一頭、草の上に座り込んでこちらをじっと見ていた。




次回、うつくしいせかい。



次回27話か、その次28話くらいに至ると多分ストックが切れます。そろそろ絵を描け、とも言われてプレッシャーがきつくなってきてますので、一時的に休載するかも知れません。
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